【完結済み】怪力な聖女様は伝説の魔王に愛されている~追放と称してダンジョンで突き落とされた私、最下層に封印されていた美少女魔王を力技で救ったので一緒に旅をしようと思います~   作:早乙女らいか

21 / 40
第21話:暴走を止めよう

「グオアアアア!!」

 

 暴走した盗賊が殴りかかる。

 肥大化した拳は壁をガラスのように粉々にし、その風圧がこちらまで届いていた。

 

「うっわぁ!! 何あれ!?」

「単純な魔力暴走? いや、それにしてはケタ違いじゃな……」

 

 一旦距離を取って様子を見る。

 力任せで拳の振り方もデタラメだが、威力がバカみたいに高い。

 なんとか受けきれる範囲? いやでもミスったら流石の私でもぐしゃぐしゃにされそうだなぁ。

 

「あっ、あれは!!」

「姉妹ちゃん達、知ってるの?」

「はい!! 最近デモニストの裏で流行っている、暴走する矢です」

「暴走する矢?」

「あの矢に射貫かれたものは一定時間暴れ続けるのだとか……私達も数回しか見ていませんが」

「まんまだね……」

「じゃな」

 

 流石情報屋、それなりに知っている。

 姉妹ちゃん達の言う事から推察するに、一定時間が経てば元通りになるハズ。

 ただ……

 

「グオァ!!」

「あれ放置するのヤバくない?」

「少なくともあの城はぶっ壊れるじゃろうな」

 

 あの破壊力があれば城くらい余裕で破壊可能。それどころか、街中に入ったら被害は更に拡大してしまう。

 

「姉妹ちゃん達は下がって!! いくよムーナ!!」

「おう!!」

 

 私達は覚悟を決め、盗賊の元へと接近した。

 

「そういえばさ、こいつの攻撃で街が壊されたら追加で弁償するのかな?」

「それはないのでは? 悪いのはこいつじゃからなっ!!」

 

 ムーナが風魔法を放ち、盗賊の身体を吹き飛ばす。

 吹き飛ばされた身体は城の中へと入っていき……あっ

 

「うわぁ!? 監視塔が!?」

「逃げろー!!」

「……こっちは弁償じゃない?」

「……じゃな」

 

 監視塔に激突し、瓦礫と共に崩れ落ちた。

 

「な、なるべく破壊しないようにしないと……」

「というかこやつを離れた場所に移動させるのが先じゃな」

 

 ここで派手に暴れ回ったら私達の弁償額が倍増してしまう。

 なるべく被害を最小限に、かつ迅速に移動させたいのだが……

 

 ビイイイイイイ!!

 

「目から光線!? 魔族ってあんなこと出来るの!?」

「知らん知らん!! しっかし早さと火力を兼ね備えた厄介な代物じゃな!!」

 

 突如、盗賊の瞳から発射された光線によって動きが止まる。

 光線は私達がいた地面を貫き、綺麗な穴を開けた。

 

「あれじゃ近づけないよ!! どーしよ!!」

「くぅ……わらわ達の力では被害が出てしまうからのう……」

 

 全力を出せない状況に歯がゆさを覚えつつ、盗賊に向き直る。

 最早手は無いのか、そう考えていた時だ。

 

 ズバァン!!

 

「グオ!?」

「腕が切れた!?」

 

 突如、高速で何かが近づき、盗賊の腕を切り落とした。

 

「大丈夫かいな!!」

「エメラル!!」

「おぉ!! お主の力だったか!!」

「せやでー!! 速さには自信があるんや!!」

「おかげで私は酔いかけましたけどねー……うっぷ」

 

 細剣を携えたエメラルの姿。

 あの速さと正確な切り込み、一瞬の出来事ではあったが見事なものだ。

 これなら街の破壊を防ぎつつ対処が出来る!!。

 ……っと、その前にステラを回復させないと。多分高速移動で酔ったんだ。

 

「はい、ヒールとリチャージ」

「ううう……ありがとうございますぅ……」

 

 さて、四人揃ったことだし、反撃と行きますか!!

 

「ほな先陣は行かせてもらうわ!!」

 

 エメラルが再び駆け、盗賊に切りかかる。

 盗賊も先程の攻撃を警戒して片腕で防御態勢を取った。

 

「それじゃウチは抑えきれへんで!!」

 

 しかし、腕で防ぎきれない腹を狙って的確に切り払う。

 線のような切り傷が入り大量の血を流した後、盗賊は膝をついてしまう。

 

「お次はトラップです……おえっ」

 

 少しだけ吐き気が残るステラが盗賊の周りに魔法陣を展開した。

 

「グアッ!?」

 

 キングリザードと同じようにあらゆる捕縛系のトラップが盗賊に絡みつき、身動きを封じる。

 盗賊の力は相当なものだが、ステラのトラップの方が上回っているようだ。流石魔王様。

 

「じゃあ……行くよ!!」

 

 そして準備は整った。

 私は身動きの取れない盗賊の元へ駆け出し、数メートルまで迫ったところで飛び上がる。

 

「んー……!!」

 

 頭上まで近づいた所で大きく振りかぶり浄化魔法を拳に込め、グググ……っと溜めた後、その拳を

 

「ハァッ!!」

 

 頭へ目掛けて思いっきり下に殴った。

 

「グアアアアッ!!」

「リフレッシュ!!」

 

 殴られて地面にめり込んだ盗賊を手で押さえつけ、浄化魔法をかける。

 浄化をかけられた盗賊は最初こそ暴れていたものの、動きが大人しくなるにつれ邪悪なオーラが消え失せた。

 

「よくやったショコラ。まあ今回はわらわ何もしておらんがな……」

「何とかなって良かったよー。あ、腕くっつけないと……」

「なんと、そんな事まで出来るのか……」

「うんー聖女だからねー」

 

 無からは出来ないけど元があれば再生は可能だ。腐ってたり余りにもぐちゃぐちゃになっていなかったりと細かい条件はあるけど。

 

「流石ですお姉様!!」

「見事でした!!」

「えへへ、ありがとうー!!」

「んー? また可愛らしいお二人さんやなぁ」

「あーこの姉妹ちゃん達はさっき助けて……」

「こやつがたぶらかしたんじゃよ」

「誤解を招くような事言わないで!?」

「あー……なんや大変そうやな」

「……ですね」

 

 色々と察したらしい。

 まあ私も私で悪い所はあるけど誤解も多いんだ、そろそろ許して……

 

 何にせよ、盗賊の引渡しは全員生け捕りという形で引き渡す事が出来そうだ。

 

「どうやら何かあったみたいですね」

「あっ、大賢者スライム!!」

「はいどうも、非常に賢いでお馴染みの私です」 

「自分で言うんやな……」

「事実ですので」

 

 瓦礫の周囲からぴょんぴょんと向かってくる大賢者スライム。

 自慢話ならわざわざ足を運ばないだろう、恐らく今回の騒動絡みだ。

 

「さて、裏でちょこちょこ暴れていたのは知ってしましたがまさか表立って行動するとは……」

「何者なの? こんな事をするやつは?」

「組織の詳細は分かりませんが……名前くらいは」

「ほう、どんな名じゃ」

 

 ムーナの問いに大賢者スライムが答える。

 

「その名は……アクトです」

「「「「アクト?」」」」

「今分かるのはそれだけですね。まだ調べてる途中ですから」

 

 アクト……初めて聞いたその名前に全員が首を傾げた。

 

 そう、全員が。

 

 

 

 

 ……ちょっと待って

 

「なんでステラが知らないの?」

「……寝てたので」

「国の有事じゃぞ!? 少しは関心を持たんか!!」

「ぴぃっ……すみません」

「まあまあ……その辺にしたって」

 

 問い詰められて半泣きのステラの頭を撫でるエメラル。

 あぁ……いつもそうやって甘やかされてきたんだなぁ。ダメ人間製造機だ。

 

「アクト、ねぇ……」

 

 とりあえずきな臭い事に巻き込まれたというのは分かった。

 まーた何かやってくるんだろうなぁ……面倒くさい。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。