【完結済み】怪力な聖女様は伝説の魔王に愛されている~追放と称してダンジョンで突き落とされた私、最下層に封印されていた美少女魔王を力技で救ったので一緒に旅をしようと思います~ 作:早乙女らいか
「ステラ様ー!!」
「私も私もー!!」
「あわわわ……人がこんなに!! 嬉しいんですけどね!!」
人の波は減る様子を見せず、むしろ増加していく一方。気がつけばステラの周りは民衆で埋め尽くされており、遠巻きで眺めていた私達も彼女の姿が見えない程だった。
「……いつもこんな感じだっけ?」
「今日は休みのとこが多いからなー。後珍しく昼間におるし」
「あー……」
そういえばステラは基本夜に行動してた。ムーナが無理やり連れ回すからあんまり気が付かなかったけど。
「あーれぇー……」
ああ……運ばれちゃってるよ。
ここだと狭いからだろうか。よっぽど魔王様とお話がしたいらしい。
「凄い人気だねー……」
「あはは、魔王様やからなー……ってやば!? もう日が落ちかけとるやん!?」
「ん? 何かあったのか?」
「昼過ぎから森に来て欲しいって頼まれてたんや!! ステちゃんは後で説明しておいて!! またな!!」
「え、あぁ……またねー……」
バタバタと慌てた様子でその場を去るエメラル。
って早!? もう見えなくなったよ……
たまーに冒険について行ってくれるけど、エメラルはエメラルで仕事があるんだよねぇ。
「……」
二人とも誰かに必要とされている。
そんな様子を見て、私は少し心にモヤモヤした思いを抱えていた。
「ん? どうした?」
「え? な、なんでもないよ?」
「そんな訳あるか、顔が悩んでおるぞ」
「う……」
察しがよすぎる。
人生経験の前では隠し事も通じないという事か……
「まあここでは落ち着いて話せん。どこかでゆっくりお茶でもしながら話そうか」
「ん、わかった」
〜〜〜
「さて、ここならどうじゃ?」
「わー、結構落ち着く。いい店だね」
ムーナに連れられて来たのは、茶葉の臭いが漂うオシャレな店。
そういえばエメラルからお菓子や紅茶が美味しい場所があると聞いた事がある。
私もムーナも行ってみたかったけど、中々機会に恵まれなかったんだよね。
「お待たせしましたー」
「わー、いい香り」
テーブルに運ばれる二つの紅茶。
優雅な紅茶の香りがふんわりと立ち込め、落ち着いた気分にさせてくれる。
「紅茶でも飲みながらゆっくり話そう……さて、何か悩みでもあるのか?」
「うーん……悩みというかなんというか……」
「イマイチはっきりせんのう……まあよいわ」
紅茶を口に含みながら少しづつ考えを具体的にしていく。
私の悩み……というか憧れ?
ここに来た目的もなければ、ステラやエメラルのように誰かから求められているわけでもない。
それは……
「私って……何がしたいのかなって」
「ほう?」
「流されるままにここまで来たけど、結局やりたい事とか、何がしたいのかとかよく分かんなくて……」
「ステラとかエメラルはちゃんと役割があるのに、私には何も無いなぁって……」
「なるほどのう……」
ティーカップをゆっくりと皿に置いた後、ムーナは再び口を開いた。
「そんなの、わらわだってない」
「え?」
「言っただろう? わらわは役目を終えて封印されたと。それが解かれた今、使命もなにも残っておらん」
「そっか……」
「ま、それを探す旅でもあったのじゃが……のう、ショコラ」
「ん……わっ」
呼びかけに答えたと同時に、頭を撫でられる。
「え、なになになに?」
「そんなに焦らんとゆっくりでいいんじゃよ」
「う、うん……」
「大小関係なく、お主の目的がきっと見つかるハズじゃ。なんせわらわより若いんじゃから」
「ま、まあ……そうだね」
若いというのは可能性の塊だ、なんて大人達が言ってたけどまさかムーナにも言われてしまうとは。
でも、ムーナが言うと妙に説得力があると言うか……なんて困惑している私に笑みを浮かべるムーナ。
「お主の隣にはわらわがいる。だから安心せい」
「っ……」
彼女の眩しい笑顔に胸が高鳴る。
安心感と独占欲、まるで初日の宿屋で一緒にくっついて寝ていた時のような気持ち。再び呼び起こされた感情に私は思わず顔を熱くし、彼女から顔を逸らしてしまう。
「? どうしたのじゃ?」
「いや……別に」
「まーだ隠し事か? ほれ、こっちを向け 」
「やっ……あ」
無理やり顔を捕まれ、ムーナの方へと向けさせられる。
それでも視線だけは別の方向を見ていたのだが、妙に強い圧を感じた為、大人しく目線をムーナの方へと動かした。
「……随分顔が赤いな」
「あうう……」
恥ずかしいから見たくなかったのに。
これも変な意味に捉えた私のピンクな脳内が悪いのだが、考えてしまった以上仕方ない。
「何を考えておったのじゃ? お?」
聞かないでよぉ!!
この状況で追求されるとか地獄ですか?
「う、うう……分かったよ」
けど、何でも話していいと言われた手前、黙るのは失礼かもしれない。
降参だ……全てを白状しよう。
「なんかさ、わらわがおるから安心しろって……すっごい頼もしく聞こえて……」
「ふむ」
「胸がキュンって……なっちゃった」
「は……」
あああああああああああ!!
はっずかしいなぁ!!
意地でも黙っておけばよかったって少し後悔してるもん。
自らの乙女な一面にドギマギしつつ、チラッとムーナの方を見ると。
「……」
「へ……」
耳まで真っ赤にして、顔を俯かせていた。
「……やめない? この話?」
「な、悩みが解決したなら……」
「う、うん……解決した解決した」
「そ、そうか……ならよい」
お互い気まずい空気。
さっきまで紅茶の味と香りを堪能する余裕があったのに、今では何も感じない。
「「……」」
ああ、どうしよう。
無言の時間が長く感じる。初々しいカップルかよ。
頼む、誰かこの空気をぶち壊してくれ……
「「す、すみません!! ムーナ様とお姉様はいますか!?」」
「「っ!?」」
グットタイミング……いや、バッドタイミング?
この空気を破壊する見知った顔が来店してきた。
「ど、どうしたのアイマイちゃん」
「随分慌てておるようじゃが……」
「とんでもない事件が起きたんです!!」
「もしかしたらデモニストに影響があるレベルで!!」
「「?」」
手足をバタバタとさせ、汗をダラダラと流している姉妹ちゃん達。よっぽど慌てて来たのだろう。
イマイチ実感が湧かないが、デモニストに影響がある事件とは一体……
「パーシバルの国王が暗殺されたんですよ!!」
「「え!?」」
予想以上にとんでもない事だった。
「パ、パーシバルが!? 何があったの!?」
「それが、私達が調べた時には城そのものが破壊されていて……」
「城内に死体の数々が……加えて」
「加えて?」
「「……」」
深刻そうな面持ちで互いを見た後、再度私達の方を向いた。
「跡地が……アクトらしき組織に占拠されていました」
「……!?」
「なんと……」
まさかのアクト絡み。
姉妹ちゃん達の情報力も凄いが、それ以上に国王を殺すという大事件をアクトが成し遂げるなんて。
とんでもない組織を相手にしているのだと、この時改めて実感した。