【完結済み】怪力な聖女様は伝説の魔王に愛されている~追放と称してダンジョンで突き落とされた私、最下層に封印されていた美少女魔王を力技で救ったので一緒に旅をしようと思います~   作:早乙女らいか

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第27話:勇者リコットとの遭遇

「ねぇ……今日は一緒に寝てもいい?」

「こ、子供か……まぁ構わんが……」

「ありがとう」

 

 今日は甘えたい気分だ。

 弱気な心を元に戻すのは結構難しい事で……というか何かと理由を付けてムーナと一緒にいたかった。

 

「へ、変な事するなよ……?」

「しないよ!?」

「どうだか……」

 

 さっきよりも顔を赤くしないで!?

 なんかやらしい雰囲気になりそうじゃん!!

 

「警戒されるようなことしたっけ……」

「警戒というか、お主は少し大胆じゃからな……」

 

 ……そうですね。

 思えば今までムーナと少し激しめのスキンシップをしていたような気がする。キスとか、ギュッとしたりとか。

 大体そうせざるを得ない状況ではあるけど、友人でもしないような事を何回かやらかしてますね……

 

「と、とにかく!! 今日は変な事しないから!!」

 

 ただ、今日は大人しくするつもり!!

 単純にムーナの温もりを感じたいだけだし。いっつも変な事ばかりしてる私じゃないですよ!!

 

 と、意気込み通りその夜は二人共大人しく、ゆっくりお休みできた。

 

〜〜〜

 

 ドカアアアアアアン!!

 

「「ッ!?」」

 

 それから何日か過ぎた頃の朝。 

 突如外から響いた轟音に叩き起こされた。

 

「なになになに!?」

「とりあえず外じゃ!! 早く準備するぞ!!」

「う、うん!!」

 

 大慌てで身支度を整えた後、外に出る。

 一体何が起きたのか。若干の眠気が残る中で私が見た光景とは

 

「ま、街が壊されてる!!」

 

 周辺のいくつかの建物が壊されていた。

 既に街の人は叫びながら逃げ惑っており、これが如何に異常な事態である事を伝えている。

 

「あの先かな……」

「恐らく……」

 

 私は武器を取り出し、住人の逃げる方向とは逆に進んだ。

 

「ふふふ、勇者に拘らず悪役ムーブって言うのも面白いもんだねえ」

「っ……!!」

 

 禍々しい剣を振るい、周囲の建物を破壊する一人の女性。

 首まで伸びた赤い髪に少しキツめのメイク。そして嫌味がたっぷり込められた、今まで何度も聞いたムカつく言葉。

 

「リコット……!!」

「ん?」

 

 元パーティリーダーであり勇者。 

 リコットがそこにいた。

 

「へぇ、聖女と聞いて少しだけ頭によぎったけど田舎娘だったのかい。生きててよかったよ」

「私を殺そうとした癖に……」

「あー? あれは助けようとつい魔法を撃っただけだよ。別に奈落に突き落とそうなんて悪い事考えやしない……ねぇ?」

「ちっ……!!」

 

 いかにも確信犯といった悪そうな笑み浮かべている。

 そんな相変わらずな態度にギリギリと歯ぎしりをし、先程よりも杖を強く握りしめてしまう

 冷静に対処しないといけない状況。だが、今までのトラウマと憎き相手を前にしたせいで、平静を保てない。

 

「落ち着け、あやつに乗せられるな。今はわらわもおる」

「ムーナ……」

 

 ムーナの言葉で少しだけ頭を冷やす事が出来た。

 そうだ……焦る必要は無い。

 目を閉じ落ち着いて深呼吸をし、再び目を開いてリコットと向き合う。

 

「へぇ、あんたが500年前の魔王かい? 今の魔王とは随分雰囲気が違うねえ」

「あやつが特殊すぎるだけじゃ。それで、お主は何しにここに来た? ただの憂さ晴らしか?」

「それもいいねぇ……ただ、目的はあんた達だよ」

「私達?」

 

 じゃあ破壊は陽動する為?

 何故私達を狙う必要があるのだろうか。

 

「あんたらを生け捕りにするのが組織の目標だからね。死なない程度にたっぷり痛めつけてやるよ」

「……それがアクト?」

「へぇ、アタシらの事をよく調べたねぇ。アクトはいいよぉ……こんなに素晴らしい力が手に入るんだからなッ!!」

「「っ!!」」

 

 突然、私達の方へと剣を振り下ろすと、直線方向に巨大な斬撃波を生み出した。 

 

「ぐっ!!」

 

 急いで盾を構えて防御態勢を取る。

 斬撃波は盾に接触した瞬間、衝撃の強い爆発を生み出し、辺りに砂埃を舞わせた。

 

「ケホッ……こんなに強かったっけ……」

「変わったんだよアタシは……これで誰もアタシを見下さなくなる、誰もアタシに逆らわなくなる……!! 力ってのは最高だねぇ……アハハハハハハハ!!」

 

 プライドをへし折られ、自らより上の立場にいる人間に強い憎しみを抱いている。

 アクトに身を委ね、新たな力と恵まれた才能を生かした結果だ。

 

「……」

 

 正直、まだ怖い。

 だけど……

 

「だったら私達は全力で抵抗させてもらうよ……」

「ほう?」

「お主がどんな境遇であろうと知った事ではない。勝手に巻き込まれるのは困るんじゃよ」

「ふふ、随分余裕だねぇ」

 

 今は無理やりにでも自分を奮い立たせ、立ち向かう時だ。

 盾を構え、杖先をメイスに変化させた後、リコットに向けて突きつける。

 

「結構痛いけど我慢してね……!!」

「はっ!! 田舎娘が偉そうにしてんじゃないよ」

 

 私だって……いつまでも過去に囚われたくないんだ……!!

 

「そういえばステラ達が来ないね……」

「離れた所にでもいるんじゃろう。なーに、すぐ来る」

「それはどうかな?」

「え?」

「戦う人間はアタシだけじゃないって事さ……」

 

 パチンと指を鳴らすと瓦礫の奥から蜘蛛の巣のマスクを被った黒ずくめの兵士達が現れた。

 

「あれがアクトの……?」

「量産型の魔力増強剤を使用した選りすぐりの兵士だよ。並の人間じゃ太刀打ちできない」

「アクト戦闘員…… といったところか」

 

 魔力増強剤というのが盗賊やリコットを変えてしまった元凶なのだろう。

 それを量産型とはいえこれだけの数に投与してるとなると……厄介だな。

 

「現魔王や聖騎士も確保するよう言われてるからね。あちこちに手配しているのさ」

「うそぉ……」

「援軍は期待できんな……」

 

 とはいえ私とムーナでも十分戦える。

 魔力だってここ最近激しく使っていないから、ほぼ全開と同じ状態だし。

 コンディションはバッチリだ。

 

「ならさっさと終わらせるべきじゃな!!」

「だね!!」

 

 ムーナが炎の魔力を込め、私がメイスを構えて突撃を行う。

 

「ヘルフレイム!!」

「ホーリーインパクト!!」

 

 多数のアクト戦闘員を巻き込んで、大爆発が巻き起こる。

 そんな爆炎の中でも関係なく、私は突き進む……憎き彼女の元へと。

 

「リコットォ!!」

「田舎娘が私に歯向かうなんて百年早いんだよッ!!」

 

 因縁の対決が、今幕を開けた。

 

「ハァ!!」

「田舎娘が戦闘かい? 随分調子に乗ってるみたいじゃないか」

「えぇ……おかげさまで上手くやってるよ!!」

「ならその認識を変えないとねぇ……田舎娘じゃアタシに叶わないって事を……!!」

「ッ!!」

 

 素早く剣が振り下ろされる。

 私は再び盾を取り出してガードを行った。ここまではさっきと似たような状況。

 だが、

 

「爆炎蹴り!!」

「ッ!?」

 

 炎の魔力が込められた蹴りが私の腹に直撃する。

 

「がっ……」

「どうだい!? これを機に自分の愚かさを再認識出来ただろう!?」

 

 身体が宙に浮き、直線方向に勢いよく吹き飛ばされた。

 だけど、私だってここで終わりじゃない。前とは違うんだ!!

 

「はぁ!!」

「ッ!?」

 

 すかさず杖先をかぎ爪に変化させ伸ばし、リコットに絡みつかせる。

 やがて私の身体が地面についた瞬間、痛みをこらえて勢いよく引っ張り上げ、今度は逆にリコットの身体を浮かせた。

 

「くっ!! なんだいこれは!?」

「はああああああああ!!」

「うわああああああ!!」

 

 リコットの悲痛な叫び声と共に思いっきり地面に叩きつける。

 ドォーン!! という強い衝撃音と共に風が吹き、周囲に砂埃を舞わせた。

 

「あぐっ……ハイヒール……!!」

 

 ただ結構無理をした。

 未だ鈍い痛みが続く腹に向かって私は回復魔法をかけて、傷を癒していく。

 

「はぁ……はぁ……お前、お前ええええ!!」

「どう!? 田舎娘にやられる気分は!!」

「ははは……死ぬ一歩手前まで痛めつけてやるよ!! 覚悟しなぁ!!」

 

 怒り狂ったリコットが先程よりも殺気を強くむき出しにする。

 戦いはまだまだ始まったばかりだ。

 

 

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