【完結済み】怪力な聖女様は伝説の魔王に愛されている~追放と称してダンジョンで突き落とされた私、最下層に封印されていた美少女魔王を力技で救ったので一緒に旅をしようと思います~ 作:早乙女らいか
「せやぁ!!」
「っ!? 増えた!?」
剣が空中に浮いたと思えば、まるで分裂するかのように増えた。やがてリコットの周りを剣が埋め尽くし、それらが合図を送った途端、雨のように私達に襲いかかる。
「テンペストォ!!」
「くっ!!」
だが黙ってやられる私達じゃない。
ムーナは風の全体魔法で剣を弾き飛ばし、私は盾を構えて正面の攻撃を防いだ。
しかし、
「くっ……流石に多いか……!!」
テンペストの隙間を通り抜けて、剣が私達の身体を掠めていく。
一つ一つのダメージは小さいが、積み重なることで大きな傷を生み出してしまう。
「はぁはぁ……オートヒール!!」
この程度なら自動回復で補える。
癒しの波動が二人を包み、掠めた傷を塞いでいく。
「厄介だねぇ……なら直接っ!!」
「舐、めるなぁ……!!」
剣の雨が止んだ直後に、再び襲い掛かるリコットの突撃。
彼女の真っ直ぐな突きに対し、私は再び盾を構えてガードする。
「はぁ……はぁ……」
……暴走状態でも、腕力ならこちらの方が上のようだ。
剣がこれ以上、私達の方へと進むことはなかった。
「力だけなら、貴方にも勝てるんだよ……!!」
「みたいだねぇ……けど、力以外ならどうかなぁ!?」
「っ!? 地面が!!」
突如として私の周りに渦のように魔力が周りだし、やがてそれは竜巻のように成長していく。
「フレアスクリュー!!」
「きゃあああああああ!?」
炎の竜巻が私の身体を宙に浮かせる。
熱と竜巻の風圧で身体が痛めつけられ、風力を無くして地面に叩きつけられた事でそのダメージは更に増した。
「あいつ……やばい……」
「じゃな……」
これが勇者の力、いや魔力増強剤の本気なのか。
(さて、どうしようか……)
一番厄介なのはあの剣による多彩な攻撃だ。
なら剣さえ何とかできればこちら側へと有利に戦いを持っていけるはず。
少し目を閉じて戦いのシュミレーションを頭の中で行った後、再び目を開けてムーナの方へと振り向いた。
「ねぇ、ムーナ……炎系の全体魔法って使える?」
「ん? 出来るが……何か思いついたのか?」
「うん……それをリコットが空中に浮いた状態で撃ってほしいんだよね……私もなんとかするから」
「よし……やってみるかっ!!」
リコットの方へと向き直り、武器を改めて強く握り直して突撃した。
「せやっ!!」
「はっ!! 攻撃が単調だねぇ……そんなのじゃ当たらないよ!!」
リコットへメイスを振り下ろすもひらりとかわされてしまう。
確かにパワーなら私の方が上だがスピードはリコットの方が高い。
いくら火力があっても当たらなければ意味がない。
「ダークネスバレット!!」
リコットがかわした瞬間、闇魔法の弾が雨のようにリコットへと襲いかかった。
「ふんっ!! 小賢しい!!」
「何その防ぎ方!?」
だがリコットは剣をぐるぐると円を描くように回転させ、自身へと降り注ぐ魔法を全て防いだのだ。
いくら剣が厄介とはいえ、そんな器用なこともできるの!?
彼女のポテンシャルの高さに改めて恐ろしさを感じた。
「まだまだっ!!」
「ちっ!!」
だからこそ、あの剣を手から離さなくては勝てない。
私は盾を構えてタックルを行う。連続して行われる攻撃の対処は流石のリコットも難しいらしく、剣で自らを守るというやや苦し紛れな防御手段で防いだ。
その隙をムーナは見逃さない。
「ジャンプじゃ!! スパイラルクエイク!!」
ムーナの掛け声とともに私は右方向へ飛び上がると、地面を泳ぎながら進む魔法がリコットの方へと向かった。
「こんなものぉ!!」
地面からの攻撃への対処はリコットにとって簡単なもの。
だけどその避け方は?
そう……彼女は飛び上がったのだ。
私達の思い通りに。
「今!!」
「フレアウェーブ!!」
「っ!?」
当初の作戦通り、波のような炎魔法がリコットへと襲いかかる。
炎は辺りの瓦礫を燃やし尽くしながら進み、対象を灰にしてしまおうと彼女へと迫る。
その姿にチッと舌打ちをしながら剣を構え、魔力を込めて振り上げる!!
「小賢しいんだよ!!」
放たれた斬撃波がフレアウェーブを真っ二つに割る。
「はっ、これで終わりかい!?」
度重なる猛攻にイライラしつつも全てを防ぎきった事から生まれる慢心した表情。
随分と余裕そうだ……
確かにダメージは与えられていない。だが、あらゆる行動によってリコットに大きな隙が生まれている。
その事実に彼女は気づいていない。
「いや……ここからだよっ!!」
「!?」
私はフレアウェーブの影に隠れてチェーンを伸ばすと、彼女の剣をガッチリと掴んだ。
「そーれっ!!」
「わ、わわわわ!?」
思いっきり引っ張り上げると剣を掴んでいた彼女のもろとも宙に浮く。
地面に浮かせたのも、全体魔法で彼女を覆ったのも。
全て剣を引っ張りあげる隙を生み出す為。
空中という人間が自由に動かせない場所で、炎の全体魔法で目くらましをされた結果、私が伸ばしたチェーンの存在に彼女は気づけなかったのだ。
「これで終わりだリコット!!」
剣だけ奪えなくても彼女ごと引っ張ることができれば、かわす空間が少ない近距離でボコボコに殴り倒せる。
抵抗してきても前方向なら盾で防げるし。
一気に有利な状況に運ばれた事にリコットは驚愕し、苦しい表情を浮かべていたが……
「なめるなあああああ!!」
「っ!? 加速した!?」
彼女は私の方へ空中ダッシュし、チェーンで引っ張り上げるよりも先に近づいたのだ。
「チェーンに余裕があれば、アタシだってまだ自由に動ける!! 奪われる前にあんたを刺し殺してやる!!」
「ちぃ!! ショコラ!!」
「無駄ぁ!!」
「ぐぅ!!」
リコットの企みにムーナが気づくも遠距離魔法によって妨害されてしまう。その隙に彼女は私に近づき、自慢の剣を私に突きつける。
「しねええええええ!!」
瞬時に盾を構える。
だが突然の行動に身体が追いついておらず、盾は剣を防ぐことなく僅かに掠める程度。
「っ!!」
キィンと虚しい掠めた音と共に、魔力の込められた刃が私の懐へと入り込み、そして……
「が……はっ……!?」
「ははははは!! いい顔してるねぇ!!」
「ショコラ!? ショコラあああああああ!!」
私の腹へと深く突き刺さった。
「どうだい!? 田舎娘じゃアタシに敵わない!! さっさとくたばりな!!」
「……」
鋭い痛みに意識が奪われそうになる。
腹だけでなく口から血が流れており、全身から気力と力が失われていくのを感じた。
だが
「っ!? 剣が……は、離せ!!」
「ふー……ふー……」
私は血だらけの手で剣を掴む。
絶え間なく続く激痛を歯ぎしりしてこらえ、絶対に剣を渡さないと力を込める。
「ぁあああああ……!!」
「うわああああっ!?」
そして最後の力を振り絞って身体を回転させ、リコットを剣から引き剥がして空中に飛ばした。
「ムー……ナ……!!」
「任せろ!! ヘルフレイム!!」
その瞬間を見てムーナが十八番の魔法を放つ。
剣を失ったことで先程のように魔法を切り裂くような防御手段は取れない。
ましてや今は空中。ご自慢の身体能力でかわす事すら難しい。
「ちぃ!! ウォーターシールド!!」
なので水の盾でムーナの魔法を防ごうと、魔力を込めた。
それしか出来ないからだ。
「そんなもので防げるかぁ!!」
「ぐっ!? がああああああああ!?」
だがそんなもので防げるほど、ムーナの魔法は弱くない。
元々単純な火力ではこちらの方が上回っていたのだから。
炎が水の盾をたやすく壊し、やがてリコットの身体を包み込んだ。
「はぁ……はぁ……」
動けなくなったリコットの身体が地面に叩きつけられる。
かなり厳しい戦いだったが、なんとか勝利を収めることが出来た。
しかし
「ぐ……が、は……」
「ショコラ!!」
次はこの剣の対処をしないと……ね