【完結済み】怪力な聖女様は伝説の魔王に愛されている~追放と称してダンジョンで突き落とされた私、最下層に封印されていた美少女魔王を力技で救ったので一緒に旅をしようと思います~   作:早乙女らいか

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第30話:魔力供給

「お主大丈夫か!?」

「はぁ……はぁ……」

 

 絶え間なく続く出血と痛み。

 そんな朦朧とする意識の中で私は、自ら刺さった剣を掴み

 

「っ……あああああああ!!」

「っ!?」

 

 勢いよく引き抜いた。

 

「あ……う……」

「な、何をしておるんじゃ!! 死ぬ気か!?」

 

 傷口がズタズタにされ痛みが更に増す。

 正直、今度こそ意識を持っていかれるかと思った。

 だが何とか意識を保ち、自らへハイヒールをかける。

 

「ふぅー……ふぅー……」

 

 ハイヒールの癒しが傷を塞ぎ出血を抑えていく。

 正直、荒療治ではあると思う。

 けど、このまま放置しても出血多量でくたばるのは分かっていたし、今すぐに治療したかった。

 

「はぁ……なんとか、なった……」

「心配させおって……少し休め」

「いや……まだやる事があるから」

「やる事?」

「リコットの魔力増強剤を消す……これだけはやってしまいたい」

「……あまり無理はするなよ」

「……分かってる」

 

 這いずるようにリコットへと近づく。

 傷口は塞げたが、まだ重い痛みと死を覚悟させたあの感覚が物凄く気持ち悪い。

 さっさと終わらせよう……そう考えながらリコットに手を触れる。

 

「リフレッシュ……」

 

 浄化の光を出すと、彼女の身体から邪気が徐々に消えていく。

 やがて正常な人間へと姿が戻ったのを確認し、私はふぅと一息ついた。

 

「お疲れ……これでもう」

「うっ……おえぇ……」

「っ!?」

 

 浄化を終えた瞬間だった。

 突然訪れた吐き気に耐えきれず、私は血の混じった嘔吐物を地面に吐き散らしたのだ。

 

「ゲホッ……ま、りょく……きれたかも」

「っ……!! そんなギリギリだったのか!?」

「ごめん……多分なんとかなると思って……」

「このバカ者……!!」

 

 頭が痛い。

 身体全体がだるい上に鬱々しい気持ちでいっぱいになる。

 おまけに回復しきれなかった激痛で更にしんどい……

 

 状態としては最悪だ。

 

「ここですかね……ってショコラさん!? 大丈夫ですか!?」

「なんかヤバそうな雰囲気やん!?」

 

 遠くの方からステラとエメラルが駆け寄って来た。

 恐らく、戦闘員達との戦いを終えてこっちに来たのだろう。

 結構激しい戦いだったし、居場所を特定するのは簡単だと思う。

 

「傷口は塞がったがまだ痛みはあるようじゃ。オマケに魔力切れまで起こしてもうて……」

「なんやそれ……はよ治療しないと命に関わるで……!!」

「ならボクの城に来てください!! ポーションとかもあるので!!」

 

 ムーナに抱き抱えられながら、私達は城へと向かう。

 

(……ムーナ)

 

 薄れゆく意識の中でムーナの必死そうな表情が印象に残った。

 

〜〜〜

 

「……とりあえずポーションはここにあるので、後はお任せしてもよろしいですか?」

「任せろ。わらわがしっかり見ておる」

 

 次に目が覚めた時、私はベッドの上で寝ていた。

 恐らく、皆が私を寝室に運んでくれたのだろう。

 遠くの方で知っている声がいくつも聞こえる。

 

「ボクはデモニスト全域にトラップを張ってきますね……流石に動かないとヤバいので」

「ウチも見回りしてくるわ」

「そうか……二人とも気をつけるのじゃぞ」

 

 やがて声は無くなり、近くにいるのはムーナ一人になった。

 

(しんどい……)

 

 未だ続く身体の不調。

 今すぐにでも寝てしまいたい気持ちなのだが、重く続く痛みがそれを良しとしない。

 楽になりたいのに楽になれない。

 そんな地獄のような状況に、私の心はどんどんすり減っていく。 

 

「とりあえずポーションを飲め……少しは傷も和らぐ」

 

 ポーションの瓶が開けられ、口に注がれていく……だが

 

「ッ!! ゲホッ、ゲホッ!!」

 

 飲み込む力がない。

 喉を通ることすら出来ず、口の中に溜まり続けるポーションで呼吸が出来なくなる。

 結果、私はポーションを外に吐き出してしまった。

 

「ここまで弱ってしまったか……」

 

 ヤバい……眠気とは違う感覚で意識が遠くなってきた気がする。

 気持ち悪さもさっきより増したし、痛みだって未だに続いている。

 

「……ぁ……っ」

「大丈夫じゃ……大丈夫」

 

 不安でいっぱいになり、それが涙という形で外へ出ていく。

 その様子を見てムーナはそっと私の頬へ手を伸ばし、優しく撫で始めた。

 

(落ち着く……)

 

 絶え間なく続いた鬱な気持ちが、少しだけ和らぐような気がした。

 ……そういえばムーナが倒れた時も私は似たような事をしたっけ。

 あの時のムーナも、同じような気持ちでいっぱいだったのだろうか。

 

「……あの時はお主が助けてくれたな」

 

 目を閉じ、少し顔を赤らめながら思い出を語るムーナ。

 確かに思い出す度恥ずかしくなる出来事だった。

 ムーナもそう思っているのか、時々身体がビクッてしているし。

 

「あんな大胆な方法を取るとは思わなかったが、わらわは感謝しておる……だから」

「……?」

 

 覚悟を決めた目付きで、机に置かれたポーションを手に取り、自らの口に含む。

 そして

 

「今度はわらわの番じゃな」

 

 私の口元へと近づき、そっと唇を重ねた。

 

「っ……!?」

 

 突然の唇の感触に驚いてしまう。

 更には舌をねじ込まれ、無理やり口内への入り口が開かれると、液体がゆっくりと流れ込んで来た。

 

「っ……ぅ……」

 

 飲み込む力がムーナの呼吸によって補助され、液体が喉を通っていく。

 ただ慣れていないからか、口の隙間から肌をつたってこぼれ落ちるのを感じた。

 

(……まだ、つづく?)

 

 互いの口の中から液体が消えても、ムーナは唇を離そうとはしなかった。

 一定の間隔で呼吸が行なわれ、彼女の吐き出す息が私の中へと入る。

 いや、空気だけじゃない。魔力のようなものも流れてくる。 

 

 私は気づいた。ポーションだけでなく、魔力供給も行っているのだと。

 

「ふぅー……」

 

 ムーナの魔力が口を通して私の中へと入っていく

 そして、自身の魔力が少しずつ回復していくのを感じ、朦朧としていた意識がはっきりとしていく。

 

(きもち、いい……)

 

 柔らかくて、熱くて、この温度に身を任せたら自分が溶けてしまいそうで。

 でも、凄く心地いい。幸せな気持ちで包まれる。

 なんだろうこれ。

 

 言葉で説明するのは難しいけど、どんなものにも代えられない。

 私を夢中にさせる何かがある。

 

「っ!? ぁ……」

 

 魔力が注ぎ込まれて苦しみが和らぎ、少しだけ余裕が出来た。

 そんな僅かな余裕から生まれた行動とは……ムーナの舌に、私の舌を絡ませる事だった。

 

(……すごい)

 

 舌を絡ませた瞬間、互いの身体が電流を流し込まれたかのようにびくっと反応する。

 だが受け入れるのは早く、ちょっとだけ激しい魔力供給が再開した。

 

「……っ」

「ぁ……」

 

 水音が激しくなる。ムーナの匂いや柔らかさに過剰な反応をしてしまう。

 ただ舌を絡ませ合っているだけなのに、幸せは増すばかり。 

 

 それらが何度も繰り返され、心臓を過剰なまでに激しく動かしていく。

 

(ムーナは……どうなっているんだろう……)

 

 唇を重ね合わせてから、私はずっと目を閉じていた。全てを受け入れるよう、ムーナに身を任せていたからだ。

 だから気になる。ムーナはどうなっているのか。

 

(少し……だけ……)

 

 不調と快楽に支配されている為、目に力を入れるのにも時間がかかる。

 それでも、彼女の顔を確かめたい。

 僅かに残された気力を振り絞って、自身の目をゆっくりと開いた。

 

「……?」

 

 眩しい光が視界を埋めつくす。だが光は鮮明な形へと徐々に変化し、目の前にいるムーナの姿をハッキリと映し出した。

 

「「っ……!!」」

 

 お互いに目が合う。

 熱っぽい表情に、涙まじりのとろけた瞳。その目に私は吸い寄せられ、少しの間ムーナを見つめてしまう。

 

「「……」」

 

 舌の動きが止まる。

 あれだけ激しく響いた水音が無くなり、布の擦れる僅かな音しかしなくなった。

 

(……)

 

 静かな時間が流れ、ムーナは無言で口を離す。

 口元からキラキラとした糸が伸び、やがて頬へと落ちていった。

 頬から感じられるその糸の冷たい感覚が、この静けさではやけに強く感じてしまう。

 

「……しばらく、やすめ」

「わっ……うん」

 

 ムーナに布団を顔までかぶせられたので、再び目をつぶる。

 僅かな時間だが、とても濃密な体験をした。

 

 重ねられた唇。流し込まれる液体。以前よりも激しい、舌と舌の混ざり合い。

 そして……お互い熱が込められた視線。

 

(忘れられない……)

 

 布団の中だからか、さっきまでの熱はしばらく冷めることはなかった。

 何よりもムーナのあの目がずっと頭から離れないのだ。

 言葉では言い表せない、思い出すだけで胸がドキドキしてしてしまうあの視線。

 

 悶々とした感情を抱えながら、私はベッドの上で一日を過ごした。

 

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