【完結済み】怪力な聖女様は伝説の魔王に愛されている~追放と称してダンジョンで突き落とされた私、最下層に封印されていた美少女魔王を力技で救ったので一緒に旅をしようと思います~   作:甘なつみ

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第9話:実家で大暴れ

「おらおらおらぁ!!」

「どかぬか貴様らぁ!!」

「「「うわあああああああああ!?」」」

 

 城内では壮絶な戦いが繰り広げられていた。

 二人の侵入者に魔族達が押し寄せるも、近づいた者からどんどん吹き飛ばされていく。

 

 

 ある者は持ち上げられて投げられたり。

 ある者は炎魔法で焼き尽くされたり(一応生きてる)

 ある者は拳で城外へとぶっ飛ばされた。

 

 つまりだ。聖女と元魔王がボッコボコに暴れ回っている。

 

「フレイム!!」

「アイスショット!!」

「ウィンドカッター!!」

「痛っ!? 危ないなぁ!!」

 

 拳と杖で暴れ回る私の元に、遠距離魔法の雨が襲いかかる。

 一応盾はあるものの、取り出すまでに時間はかかる。

 それに私は防御魔法も遠距離魔法も持っていないので、射程外からの攻撃はかなりしんどい。

 だが

 

「テンペストォ!!」

「「「ぐわああああああ!?」」」

 

 とてつもない竜巻がそれら全てを吹き飛ばす。

 遠距離はムーナが、前は私が。

 役割分担を行う事でお互いの弱点をカバーする作戦だ。

 

「ふんっ!! 貴様らに出遅れるわらわではないわ!!」

「さっすがムーナ!! というか魔法だけで突破できるんじゃない?」

「強力な魔法一つで突破できる程、軍勢というものは甘くない。ほれ、まだ来るぞ」

 

 小話を挟んでる間にも、敵はやって来る。

 減るどころか増える一方。

 そのあまりの数にうへぇと気が滅入ってしまう。

 

「うぉ!?」

「でもやっちゃったものはしょうがないし……ええい!!」

「うわああああ!?」

 

 近づいた魔族を投げては殴って杖先で付いたり。

 数で抑え込まれても私なら大丈夫。力強いし。

 ただ、ラチがあかないんだよねぇ。

 

「ムーナ!! 偉そうなやつから情報聞こう!!」

「そうじゃな!!」

 

 とりあえず魔王の居場所を知っている者を探す作戦。

 私は辺りを見渡し、強そうな魔族を探した。

 

「あっ!! あいつなんかどう!?」

「いいのぉ……わらわが援護するから拘束せい!!」

「了解っ!!」

「え? えっ?」

 

 筋肉質で身体中から魔力を漂わせている大きな魔族が一人。

 私達はターゲットを見定め、確保する準備を進めた。

 

「グランドブリザード!!」

「うわぁ!? 地面から氷が!?」

 

 ターゲットの周りに氷を出現させ、魔族を氷漬けにする。

 氷漬けにされた者は身動きすら取れず、しかも氷が壁となって周りの魔族の行動範囲を狭めた。

 

「伸びろチェーン!!」

「うわ、うわあああああ!?」

 

 すかさず私がチェーンを伸ばし、ターゲットを拘束した。

 そして思いっきり引っ張りあげると私達の方へと一気に距離を縮める事が出来た。

 

「捕まえたぁ!! さーて、魔王様の居場所を教えて貰おうかな?」

「い、言う訳ないだろ!!」

「ほう……今すぐ貴様の目ん玉を燃やし、手足を切り裂き、内蔵を氷漬けにするがよいか?」

「……地下の寝室です」

「正直でよいよい」

 

 怖。結構えぐい事言わなかった?

 ターゲットも身体震わせて涙目だし。

 

「さて、今すぐ向かうぞ!! ヘルフレイムランス!!」

 

 炎の槍がドガアアアン!! という音と共に地面を削り、大きな穴を開ける。

 

「捕まれ!! ショコラ!!」

「うんっ!!」 

 

 ムーナに捕まった後、彼女は翼を広げ地下へと急加速して降りていく。

 うわぁ、かなり派手にやったねぇ。

 周囲には部屋らしき瓦礫がいくつも広がっている。

 

「ついた?」

「ああ……恐らくここで間違いない」

 

 地下にいくと、寝室と書かれた札が掛けられた大きな扉があった。

 さっきの情報だとここに魔王がいるハズ。結構大暴れしちゃったけど結果オーライかな?

 

「さて、いく……んぉ……」

「え!? ムーナ!?」

 

 足を踏み出した瞬間、ムーナが突然うつ伏せで倒れこんだ。

 

「どうしたの!? 大丈夫!?」

「……やらかした、魔力切れじゃ」

「えぇっ!?」

「昔みたくバカスカ魔法を使ってしまった……わらわのミスじゃな」

 

 そういえばムーナちゃんはダンジョンからずっと休みなく魔法を使っていた。

 全盛期の頃ならそれでも問題なかっただろうが、封印で弱体化しているのなら話は別。

 その辺りを考慮しなかった結果、遂に限界を迎えてしまったという事だ。

 

「はぁ……はぁ……」

「待ってて、今魔力を分けるから……」

 

 私は消費魔力が少なく、保有魔力が多いから全然大丈夫だ。

 なのでムーナの元へ駆け寄り、自身の魔力を分け与えようとしたのだが、

 

「見つけたぞぉ!!」

「早!? ていうか全員飛べたの!?」

 

 さっきまで上にいた魔族達が一斉に下へと飛んで降りてきていた。

 飛行ってムーナちゃんの専売特許じゃなかったんだね!!

 てか、そんな事考えている場合じゃない。

 

「覚悟しろよ……侵入者め」

「あばばばばば……」

 

 ムーナはダウン。私は戦えるけど守りながらだと正直キツイ。

 どうしようどうしよう、と焦っていると

 

「そこまでですよ」

「?」

 

 突然寝室の扉が開いた。

 

「この者達とは私が話をします。皆さんは下がってください」

「……スライム?」

 

 扉の先にいたのは、なんと喋るスライムだった。

 黒くてぷるんとしていて小さい。

 何故スライムが魔族の前で偉そうに出来るのか?

 そう疑問に思っていると

 

「は、かしこまりました」

「え!?」

 

 なんと魔族達があっさり従った。

 魔族達は羽をバサバサと動かすと上空へと飛び姿を消した……

 

「あ、あの……もしかしてあなたがステラ?」

「あ、いえ。私は大賢者スライムです」

「大賢者スライム?」

「変異種みたいなものですね。禁書を吸収した結果、こうなったみたいです。まあざっくり言えば頭のいいスライムです」

「はえーそんな事が……」

 

 とりあえずかしこいスライムだというのは分かった。

 

「でもなんで魔族達がスライムの言う事を聞くの?」

「それは私が政治等、ステラ様がやる事を代わりに行っているからですね。私が一番優秀だったのでいつの間にかえらくなってしまいました」

 

 さらっと凄い事言うね。

 魔族達を差し置いて、政治等の重要な役割を与えられているとは……

 

 ん? 待てよ? 

 さっきステラの代わりって言ってたよね。

 

「魔王本人は何をしているの?」

「基本は寝て飲んで遊んでます」

「えぇ……」

「魔族の古株としてなし崩し的に魔王になりましたからね。面倒を抱えていた時に私と出会い、色々と押しつけた後ステラ様は好きな放題しています」

「それでいいのか……」

「口出しも変な政策も言わないので案外大丈夫ですよ。まぁスライムに乗っ取られる時点で終わってるとは思いますが」

「えっぐい事言うねぇ……」

 

 押しつけた魔王が100%悪いけど。

 スライムに支配された魔族の国って言うのも恐ろしい話だ……

 まぁそれで国が回っているのならいいんじゃないかな、とも思ってしまう。

 

「さて、あなた方の目的は大体わかっているので早速会わせたいのですが……」

「げほっ……げほ……」

「ムーナ!?」

「……それどころではありませんね」

 

 そうだ、ムーナは魔力切れで苦しんでいるんだ。

 顔を青くし酷くせき込んでいる。

 魔力を分け与えないと更に重症化してしまうだろう。

 

「ごめんなさい、時間はかかるけど魔力を……」

「あ、手よりも効率的な魔力供給の方法がありますよ」

「そうなの!? すみません、教えてください……!!」

「えと……覚悟は出来ていますか?」

「へ?」

 

 どういう意味?

 もしかしてそこまで危険な方法なのだろうか?

 

 いや、でも手段は選んでいられない。

 一刻を争うんだ、決断は早いに越したことはない!!

 

「大丈夫です!! 教えてください!!」

「……わかりました。ではお互いの唇を重ね合わせて……」

 

 待って待って、頭が追い付かないって。


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