忠誠を誓った美少女(神)がいつの間にか子供を産んでいて脳が破壊された挙句その子を預けられた男女(眷属) 作:最条真
JCとJKとDKの共同生活書きてぇんだ俺ッ!!
「君は神のいない星の下に生まれたらしいね」
彼女は少年の前に現れた
死の感触を首に味わうところだった。
その直前に彼女は現れて、何でもない様子で化け物を処理した。
死の窮地を逃れたことに、まだ実感が伴わない。
その背中を、呆然と見ていた。
彼女が少年の方に振り向く。
長い髪が嫋やかに揺れる。
神がかった造形がこちらに微笑を浮かべている。
ドクンと心臓が鼓動する。
「立てるかな?」
こちらに慮るような、優しい声が耳に届いて。
尻もちをついている少年に手が差し出された。
一瞬、その手を取っていいか迷って。
手をまじまじと見つめた後に、見上げてしまった。
「もう大丈夫だよ」
こちらを安心させるために浮かべたであろう、とびっきりの笑顔。
それを見てしまったから。
――ドクンドクンと、心臓が音を立てる。
世界の雑音は取り払われて、もはや自分の心音しか少年の耳には届いていなかった。
普段は静かな自分の鼓動が、やたらめったらと主張をする。
心臓が告げていた。これは恋だ。
鼓動が聞こえる。
本当にうるさい自分の鼓動が、気持ちを素直に伝えていた。
高校生にして、思えば初恋もまだだった。
だから、まるで劇薬みたいなこの衝動に、少年は縁がなかった。
鼓動が内臓を圧迫しているみたいだった。
銃声みたいな音を心臓が出す。実際に銃で撃たれたみたいな苦しさがあった。
その衝動が、バカみたいな音を上げた。
「好きです付き合ってください」
「ごめん。私、――“神様”なんだ」
とっさに出たその告白に後悔する間もなく、少年の心臓の訴えは、実にあっけなく棄却された。
「君と付き合うことは出来ないけど、君の“神様”になってあげることはできるよ」
彼女は訴えを退けたのちに、あまりにも魅力的な提案をした。
「私の“眷属”になってみる? 人手不足なんだ」
「なりますゥ!!」
勢いよく返事をして、その神の手を取った。
「じゃあ、“契約”成立だ」
彼女の笑みには打算があったけれど、その笑みすら魅力的だった。
初恋。
それから、眷属になって。
彼女の下で化け物を倒し、親の許可を無理やり奪い取って神の屋敷に住み込み、手足となって働いて彼女の好みの男性像を調べてそれを目指したり彼女を唸らせる料理を作ったり時には諦めず求愛したり
激動と呼べる1年を乗り越えて、それが続いていくと思っていた。
――消えた。
忽然と、何も言わずに、彼女は消えた。
自分の部屋に書置きと、
『君たちが成長したらまた会いに来ます。眷属2人で仲良くやること!』
書置きの内容。
「……どうする?」
「どうするって」
書置きを片手に持って、ため息をついたシノはもう1人の眷属――、
「俺は普通に住み続けるが? 将来的に神の恋人になる男だからな」
「私も当然住み続けるけど。 将来的に神の伴侶になる女だから」
彼女に惹かれ、恋焦がれ、陶酔し、将来の神のパートナーを語る二人の
恋敵として日々競っている二人だからこそ、相手が向ける感情の熱を信頼していた。
お互いに気心知れた仲、という訳ではない。だが彼女の眷属として日々を過ごしてきた。
思春期だが、二人は恋を知っていて比較的(周囲の中高生)に比べて大人びており、あれこれと騒ぎ立てるほど幼くないし、自分の境遇も、相手の境遇も理解していた。
妥協でもなく、当然と言った様子で自分の芯を貫き通す様子に、お互いに「(当たり前か)」という信頼と、安堵が及ぶ。
「はぁ。……じゃあメシ作るけど」
喪失感はある。しかし日々は続く。
いつものように朝に送り出してくれた彼女は居なくなってしまって「(あの会話が最後だったのか)」と惜しむ気持ちはあれど、腹は減る。
気が滅入る前に飯を食え、とは
「……オムライス食べたい」
「分かったよ」
リビングの机に書置きを置き、シノは頭を掻きながら冷蔵庫に向かう。
彼女が居なくなっても日々は続く。
やっぱり諦めきれず探そうとした。
何故自分たちを置いていったのか、理由を聞きたかった。
神の所在を、眷属だろうが、一個人が握れるはずがなかった。
諦めきれなかったけれど、二人は諦めないことしかできなかった。
つまらない日々が続く。
激動の1年を超えて、それは3年間も続いた。
彼女がいつか帰ってくる家を決して壊すことなく、彼女にいつか割り込んでほしい日々を丁寧に続けて。
綻びは生じなかった。
お互いにお互いを信頼して、尊重して、線引きをしていたから。
何年たっても色あせない想いを大事に抱えて日々を過ごす。
気づけばシノは大学生になって、飴玉は高校生になっていた。
何も変わらない安穏とした日々は亀のような速度で、終わりへと向かってくれない。
忘れられないあの恋が、いつか自分を迎えに来ると信じて待ち続けた。
そんな矢先だった。
『久しぶりだね。久々に会えない?』
そんな一通のメールが、二人に届いたのは。
会いに行く。当たり前だ。二人がそのメールにほとんど同じタイミング――、0.3秒で応じて――。
『当たり前です早く会いましょう場所の指定はどこですか(要約)』という旨のメールを相手に送れば、こう返ってくる。
『子連れだけど大丈夫?』
――二人は自身の脳が破壊される音を聞いた。
想像するほど優しい音ではない。
心がグシャッと握りつぶされるようだった。
「噓だろエレナああ”あぁあああ”ァ!?」
「発狂すんな飴玉ァ!! 俺もほとんど同じ気持ちだがなあ”あァァ!?」
「一番最初におぎゃるのは私に決まってるのに!!」
「俺もエレナの子供に産まれてぇええ! 今自殺したらうまいこと憑依してその子供の精神乗っ取れねぇかなァ!?」
自分たちの神は、どこぞで子宝を拵えていったらしい。
2人はそう解釈して、頭がおかしくなりそうだった。
「……とりあえず会おう。話はそれからだ」
「まぁそうか。私たちがここで騒いでも何も変わらない」
落ち着きを取り戻すのが早い二人は、会合の日に向けて準備することにした。
「――とりあえず服買いに行ってくる」
「私も同伴する」
成長した姿を少しでも飾り立てたい二人の眷属は、ユニクロに走った。
◆
この日のために気合を入れた。
成長を見せるための格好ということで、飴玉はユニクロに行った甲斐もなく制服姿。
シノは貴公子とでも言わんばかりの白コートで、お互いに準備万端で目的地に向かった。
集合場所の喫茶店。そのテラス席。そこにはやはりというべきか、彼女が居た。
肩にかかる茶色い神々しい髪に、エメラルドみたいな新緑の瞳。
神がかった顔立ち。その曲線美に魅せられた二人だから、一瞬で理解できた。
「「エレナァ!!」」
「おっと」
走り寄ってきた二人を正面から抱きしめて、聖母のような微笑みをエレナは浮かべる。
「久しぶり、二人とも」
そう微笑む彼女に、思わず見とれてしまうのだが、彼女の背後の存在を失念してはいけなかった。
「あっ、……あの」
そのか細い声を聴いて、エレナは眉を上げて二人を離す。
二人はまだ満足のいってない顔をしていたが、その存在を認識して「(忘れてたァ!?)」と言わんばかりに目を瞬かせる。
「エ、エレナ。そっちの子は……」
飴玉が盛大に同様の孕んだ声で尋ねる。
エレナはそれに対して、笑みを返して白髪の少女をちょんと前にやった。
「――ということで、私の子です」
「ぐふッォえッァア!!!!」
「飴玉ァ!!!!!!」
盛大に吐血してのけぞった飴玉を、どうにか倒れる寸前でシンが支える。
「まだ何も始まってねぇぞ!? 耐えろ!!」
「いや、私はここまでだ。エレナに子供がいるなんて……いやそれはそれで捗るか」
「新たな門を開いてんじゃねぇ!?」
「――まぁ冗談なんだけど」
エレナのその一言を聞いた瞬間、飴玉の傷は一瞬で回復した。
「よし。私は死の淵から舞い戻った」
「飴玉ちゃんは変わらないね」
「飴玉で遊ばないでやってくれ。そのうち死にかねん」
「ふふ、面白いでしょ、るいちゃん。自慢の二人だよ」
何処か誇らしげな表情を浮かべコーヒを飲むエレナと、騒がしい二人の様子とを見比べて、少女はおずおずと聞いた。
「あの、エレナさんと二人の関係って―ー」
「エレナは私の伴侶になってくれるかもしれない女性だ」
「はぇ?」
「違うよ?」
「そうだ。俺の恋人になる女性だ」
「違うからね? 私は誰のものでもないから」
そう圧をかけられれば、二人も黙って引き下がるしかない。
少女はその様子を見て『えぇ……』という感じになっているが、そんなことは構わず、エレナはその肩を叩く。
「ほら、るいちゃん。自己紹介してあげて」
「あ、えっと……
思春期ごろに見える、エレナと同様神がかった造形を持つ少女。
その少女の紫紺の瞳が、どこか不安げに揺れているのを二人は見逃さなかった。
「どうも。芥子野シンだ。よろしく頼む」
「私は膝詩飴玉。よろしくね、瑠衣ちゃん」
「よ、よろしくお願いします……」
突然に正気を取り戻し、流暢に自己紹介を始めた二人に瑠衣は動揺を隠しきれなかった。
エレナはそんな瑠衣を元気づけるように白い頭を撫で、微笑みを浮かべながら続ける。
「さて、本題なんだけど。――二人にはるいちゃんを預かってもらいたいの」
「……本気か、エレナ?」
「まず瑠衣ちゃんのことを説明して。……そもそも、エレナは私たちを放ってどこに行ってたの」
二人の声は硬くなり、核心へと迫る言葉へと変わる。
そもそもの話、説明不足にもほどがある。
三年ぶりにあった想い人とはいえ、説明も無しに『子供を預かってほしい』なんて承諾できるはずもない。
「んー。私が行方をくらませてたのは、瑠衣ちゃんに関する話になるんだけど―ー、訳あって世界に狙われる瑠衣ちゃんと、波乱万丈な物語を繰り広げてたんだよね」
「エレナさん、多分それ、説明になってないと思います」
「詳しい事情話したいところなんだけど、本当に説明できなくて。でも、預かってほしいの。お願い」
頼み込むように顔の前に手を合わせるエレナっだが、二人の表情は未だ暗い。
「エレナは。……エレナは戻ってくるんじゃないのか?」
飴玉は不安げに声を揺らしながら聞く。
隣に立つシンも同じ気持ちのようで、問うようにエレナに視線を向ける。
「まだ帰れない。ごめんね」
「なんで――」
更に問いただそうとする飴玉を、エレナア申し訳なさそうに手で制する。
「本当に、理由は言えないの。二人には、るいちゃんを預かってほしい」
「……期間は?」
飴玉に比べ、比較的冷静なシンが尋ねる。
飴玉が『問い詰めなくていいのか?』と目で言うが、シンだけではなく飴玉も、二人とも分かっているはずなのだ。
彼女は神なのだから、眷属に言えないことの方が多い。
「とりあえず、2年かな。時折、間を見て様子を見に来るよ」
「私はまだ納得いってないぞ」
「……飴玉」
分かっていても、割り切れないことがある。
シンだって、全てを割り切っているわけではない、
エレナとまた一緒に暮らしたい気持ちを必死に抑えている。
問いただしたいこともある。でも、どうしようもないことがあるから。
諦めの早い大人に一歩足を踏み入れているシンだが、引き下がらなかった結果、得られる言質があることを知らなかった。
「うーん、じゃあるいちゃんをしっかり預かってくれたら“私が何でも言う事を聞いてあげる”」
「「!?」」
その発言は二人にとってとんでもない衝撃だった。
「な、なんでもって。例えばセッ――」
「なんでもだよ、シンくん」
「マ、マジなのか、エレナ……?」
覚悟を決めたような潤んだ瞳の頷きが 二人の欲情を搔き立てた!!
「言質取ったりィ!! はい縛り!!」
「俺たち相手に後から無しは通用しないからなぁエレナ!!」
「泣き真似とは言え、人の心がないねぇ君たち」
口元を隠しながら、愉快そうに笑うエレナ。
やけに盛り上がったフロアを尻目に、少女は一言呟く。
「大丈夫かなこの人たち……」
「大丈夫だよ。なんだかんだ、信用できる子たちだから」
「……そう、ですか」
「ほんとは、一緒に居てあげたいんだけどね」
未だに不安に揺れる声に、エレナは頭を撫でることでしか慰めてやることが出来なかった。
「とりあえず今日はオムライスにしよーぜ」
「任せて瑠衣ちゃん。最高に美味しいの作るから」
「……あっ、はい」
エレナと涙ながらの(飴玉はガチで号泣していた)別れを済ませ、三人で道を歩く。
とりあえず、食材を買い足すためのスーパーマーケットだ。それと、食器もいくらか買い足さなければならないか。
(……大丈夫、かな?)
瑠衣のちょっぴり不安な心境など、意に介せず空は快晴で。
この日から、ちょっと奇妙な三人の共同生活が幕を開けることになる。
プロローグ的なね? 一回投稿したんだけど書き直し。
新世代のスパイファミリー目指すぞ!!!!
明日も投稿する気ではいる。
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