白露…夜中の冷気が草木に朝露をつける季節を指す言葉
その言葉が指す言葉の通り、と言うべきだろうか
部屋のあちこちに転がっている人形に志摩涼の血液が雨のように降り注ぎ朝霜のように表面を彩る。
七夜朔「終わり…」
志摩涼の背を軽く蹴り出して距離をとる
七夜朔「…交代、疲れた」
膝をつき自身の喉に手を当て、止まることのない流血を眺めて硬直する志摩涼を一瞥する。
黒姫零「…」
赤く染った手を見つめる。
紅い刀身が輝いてそして本へと戻る。
黒姫零「鬼灯…仇討ち…終わったよ」
ふらりと身体を揺らしそのまま意識を手放す。
不知火「おい黒姫…?七夜……?あぁめんどくせぇ!黒姫ぃ!大丈夫かぁ!」
朱鈴「れいさん?大丈夫?」
向日葵「君は行かないのかい?」
五十嵐〔行きたい気持ちはあるけど彼から目を離すのは危険ではないかと思ったんだ〕
志摩涼「ま…シ…ョ…は…ケヒ…」
ケヒヒヒヒヒ、ギャハハハハハと血に溺れる様な笑い声と共にどこからか這いずってきた少女のゾンビが捕食を始める。
ブチっ グチっ ズチュ グチャッ
断末魔の叫びは消え、肉が裂け、臓物が蹂躙される音をただただ見ていることしか出来なかった。
【SAN値チェック】1d3/1d6
不知火紫 44→12 2減少
五十嵐レイノルド33→18 2減少
ミケル・ゴエディア45→59 3減少
ミケルは顔を顰めた。
ミケル「Wow…ステーキハ暫ク遠慮シタイナ」
ガタガタと屋敷が揺れ始める。
不知火「ん?」
屋敷の壁や天井からパラパラと砂埃が落ち始めた。
ミケル「コレハ…マサカ…」
五十嵐〔相棒!起きろ!〕
ゆさゆさと黒姫零を揺さぶりうつらうつらとしながら目を覚ます。
黒姫零「…?どういう状況?」
向日葵「あまり多くを語れそうにないが一言言うのであれば」
「パニックホラー物特有の最後の脱出劇さ」
その言葉と同時に全員が軽くふらつきながら1回の玄関へと走り始める。
黒姫零はその最中で膝をつく。
黒姫零(血を流しすぎた…それに凄く疲れた…)
立とうとしても上手く立てない、先の戦闘等で色々とガタが来たのだろう。
建物が今にも崩れそうになっているのを横目に近くに少女のゾンビが近づいてきていたことに気づく。
黒姫零「…悪いけど色々限界だから後でじゃだめかな?」
その少女のゾンビは襲うことなくただ一言「ありがとう」…とそっと手を振った。
夢か幻か、はたまた幻聴かそれでも確かに聞こえた気がした。
不意に誰かに抱き抱えられた。
朱鈴だった。
朱鈴「大丈夫!?また怪我してない!?」
心配そうに声をかけられながら屋敷を脱出した。
幸いにも屋敷の主が命を失った時点で鍵は空いていたようだ。
轟音を背に振り返れば建物は全壊していた。
不知火「…はぁ…はぁ…派手にいったなぁ」
向日葵「まるで映画みたいだね」
ミケル「全クダ!コンナノハ望ンデナインダケドナ!」
ミケルが息を切らしながら崩壊した建物に不満をぶつけている。
黒姫零は血に染った手を見る。
何度見ても変わらない自分の手で命を奪った感触は確かにそこにある。
五十嵐〔相棒〕
黒姫零「……」
五十嵐〔初めてか?〕
黒姫零「…うん」
慎重に言葉を選んでいるようで上手く言葉が出ない。
五十嵐〔お前は悪くない…とは言わない〕
黒姫零「……」
五十嵐〔でも相棒じゃなくとも彼がゾンビに食われるのは変わらなかっただろう〕
五十嵐〔僕が誰より先に仕留めれば良かったんだ〕
黒姫零「…いや、僕があの人を倒す必要があったんだ」
五十嵐〔それなら前を向け、自分の選択が間違いだったなんて思うな、相棒の罪は僕が一緒に背負ってやる 1人になんてさせないさ〕
黒姫零「……ありがとう」
(* • ω • )bとサムズアップをした顔文字が仮面に浮かぶ。
ふと気づくと朱鈴が裾を掴んでいたようだ。
気がつけば空は明るく朝日が登っている。
朱鈴に目を向ける。
朝日を受けた朱鈴の髪は星の様にキラキラと輝き思わず息を飲んだ。
顔を見ると浮かない顔をしていることに気づいた。
朱鈴「零…わたし、零ともっと一緒にいたい…」
そう言って腕を抱きしめられた。
向日葵「…辞めといた方が良い 人間と、吸血鬼じゃあまりにも寿命が違いすぎる。後悔することになるよ?」
朱鈴「後悔なんて!」
向日葵「君はしなくても彼は?」
黒姫零「……僕は…」
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あれから1週間経った。
本来吸血鬼というのは日に当たると死ぬらしい。
というのをサイトから聞いた。
最近は外出が許されるようになってきた。
運動不足気味だったから助かる…
サイトには記憶が戻ったことを伝えると平謝りされた。
てっきり黒姫零(僕)の方は邪魔だと思われてそうだったから以外だった。
今でも七夜朔(ぼく)は偶に目が覚めては頭の中でぼんやりと一言二言言ってはまた眠りにつく。
二重人格というのは統合されると片方の人格は消えてしまうらしいがそういう心配はいらないらしい…?
黒姫零(僕)は七夜朔(ぼく)だから、どちらが消えてしまうのは正直嫌だと思っていたから良かった。
あれから時折、紅い本に触れると鬼灯と通話みたいな感じで話をすることがある。
仇討ちをしたと報告をしたらすごく怒られた。
どうせまた無茶しただろうからとの事だけど…否定できないのがなんとも言えない……
ひとまず今日の散歩はおしまい。
ベレッタの家の扉に手を掛ける。
黒姫零「ただいま」
ベレッタは本の能力について研究するらしく最近奥に引っ込んでいる。
サイトは前から昼間は寝てる事の方が多い。
リビングの方からパタパタとエプロン姿で銀の髪、ルビーのような紅い目の少女がまるで新妻の様に現れる。
朱鈴「おかえりなさい♪」
朱鈴はどうやらあの日飲んだ薬?のおかげで日光を克服できているらしい。
サイトがすごく羨ましがっていた。
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黒姫零「……僕は…」
黒姫零「朱鈴も含めて一緒に生きたい」
向日葵「まっ、君はそういうよね」
知ってた、と言った感じに呆れた表情を浮かべながら草薙向日葵はため息を着く。
向日葵「…後悔は?」
黒姫零「するつもりないよ」
向日葵「女たらしだね」
黒姫零「…そんなことはないと思うんだけどなー…」
黒姫零の身体がキラキラと輝き始めた。
向日葵「おっと…そろそろ時間か、」
不知火「黒姫!お前大丈夫か!」
向日葵「心配いらないよ彼を元いた場所に戻そうとしてるだけだから」
五十嵐〔?それはどう言うことだ〕
向日葵「一種の転移みたいなものさ」
黒姫零「…君は…」
向日葵「色々細かいことは後ほど、あー?いいのかい?そろそろ行ってしまうよ?」
五十嵐〔相棒!これを渡しておく!僕のプライベート連絡先だ!〕
黒姫零「あっはは…ありがとう」
ミケル「少年、君ミタイナ人間ハ始メテ見ルヨ、困ッタ時ハ連絡シテクレ」
黒姫零「ありがとう?」
ミケルは満足そうに頷く
ミケル「君ガ狂気ト正気ノ間デ揺レ動ク様ヲ是非ミタイカラナ」
ボソッと何かを言ったのは聞かないふりをした。
朱鈴「零さん、私のね」
朱鈴は黒姫零を抱き寄せ耳元で小さく言葉を紡いだ。
朱鈴「私の本当の名前は、Paris・L・Rose…っていうの零さんだけ特別…」
黒姫零「ぱりす…るーな…」
たどたどしく朱鈴の本当の名前を言おうとする黒姫零の口を優しく塞ぐ。
朱鈴「ありがとう、大好き」
光が段々と強くなっていく。
黒姫零「……はっ、向日葵ちゃん!」
向日葵「…?なんだい?心配せずともまた君とは会えるよ」
余裕綽々といった表情で優しい笑みを浮かべる。
黒姫零「君は…誰?」
向日葵「…ハッハッハッ…」
草薙向日葵は朱鈴と黒姫零の手を繋がせた後に黒姫零の額に指を当てる。
向日葵「私は数いる私の中でも数少ない君の味方、できればこの名前で覚えて欲しいのだけれど………」
向日葵?「私(俺)(僕)を冠する名前のひとつは…ニャルラトホテプ。君は覚えなくていい事の一つだよ」
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あの日聞いた言葉を深く知ろうとは思わなかった。
あれから向日葵と色々と手続きをして朱鈴の戸籍とか色々用意してもらった。
黒姫零「zz…っうぐ…朱鈴…」
朱鈴「……れい…」
深夜、強めの衝撃で目が覚める。
目の前にはあの日出会った頃の小さい姿の朱鈴が居た。
朱鈴は血を飲まなかったり力を使いすぎると小さくなる様になった。
朱鈴とあった時のことを考えるとこっちが本来の姿だろうか?
黒姫零「どうしたの?朱鈴」
朱鈴「…トイレ…怖いから着いてきて?」
トイレに夜一人で行くのが怖いからという理由で夜中に無理やり起こすのはそろそろ勘弁して欲しいと思った。