この破綻者に憐れみを   作:熾烈

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ACT.7

Side Hinata

 

 昔から彼は私と一緒だった。ある時は私から好意を向け、ある時は私が拒絶した。それでも彼と離れることはなかった。できなかった。

 依存か愛か、どうでもいい。彼と一緒ならそれで良い。

 でも、期待している自分が未だにいる。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そっと唇を触る。言永智誓と合わさった部分だ。すでにその熱は失せていてるが、忘れまいと指先は同じところを擦った。

 

 私1人で出発したが、部下が一緒に付いてきた。心底どうでもよかった。

 道中で食べた元の世界の食事の再現、ラーメン。懐かしい味は記憶にすら残らなかった。

 

 何を考えても、私は彼が好きなのであるという結論しか出ない。

 彼に帰ってきたら返事をすると言ってしまった手前、帰らぬ覚悟が無用になり、生きて帰らなければならなくなった。

 そう、生きて、帰る。

 智誓の元へ。

 愛しい人。私のすべてを受け入れてくれる人。私の、、、

 

 「…タ…ま、……様! ヒナタ様!」

 「……何?」

 「何って、声をかけても反応がなかったので」

 

 周りを見れば、皆心配そうな表情で見ていた。

 「少し考えていただけ。なんでもないわ」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 現実は非情だ。

 

 

 

 何故、彼らは戦っているのだろう。すでに戦いの火蓋が切って落とされた。

 これでは穏便に済まそうにもいかなくなってしまった。

 

 「なあ、ヒナタ。言うまでもなくここは俺の領土だ。軍事行動をとった時点で、お前たちに害意ありと判断できる。先制攻撃を許すほど俺は甘くないんだよ」

 

 魔王リムル。この時ほど、彼が絶望に感じたことはない。魔王に対する恐怖ではなく、別の事に対してだ。

 

 憤りを滲ませるリムルにゆっくり目を向ける。

 

 「……………私は、生きて帰る」

 

 初めから食い違っている2人は更に拗らせ、ヒナタに限ってはもはや、目的が変わってしまっていた。

 

 

 「だから、消えて」

 

 冷たく言い放った。

 

 

 ヒナタにとってこれは、生きるか死ぬかの問題であり、様子見をする余裕はなく、初めから全力で挑んだ。

 

 

 『私カラ何モ奪ワセナイ』

 

 聖霊力を具現化した聖霊武装を身にまとい、リムルに斬り込む。

 

 「くそ」

 リムルは悪態をつくしかなかった。それ程までに後手にまわっているからだ。攻撃しようにも隙が無く、相手の攻撃を防ぐか受け流すことしか出来ていない。むしろ、攻撃地点に誘い込まれている。

 

 「崩魔霊子斬撃(メルトスラッシュ)!!!」

 「しまっ!?!?」

 

 ヒナタが放った対魔必殺の一撃はリムルに吸い込まれていった。

 

 「リムル様!!」

 

 近くで見守っていた側近の鬼が叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦場は静まり返っていた。武器の交わる金属音、呪文を唱える声、唸り声、全てが無かった。

 

 

 ヒナタの剣は、リムルに刺さっていた。

 

 「.........」

 「.........これで、私は....」

 

 剣を引き抜くと、リムルは膝から崩れ落ち、人の形を保てなくなり元のスライム状に戻った。しかし消滅はせず、なんとか生き残ったようだ。

 

 

 「止めよ。私と彼の為に、死んで」

 

 

 ヒナタの声は静かな戦場によくとおった。

 剣を両手で握り、足元の敵に突き刺そうと振りかぶる。

 

 

 

 「待ってて、直ぐ帰るわ......うっ!?」

 

 

 

 力が抜けて手から柄が滑り落ちた。

 

 浮遊感があり、次に空を見ていた。

 

 胸元が焼けるように熱く、寒かった。

 

 すーすーする。

 

 鼓動を感じない。脈の拍動が聞こえない。

 

 息が出来ない。もがこうとしても、体は動かない。だんだんと沈んでゆく。

 私の父もこんな感じだったのだろうか。

 

 

 暗く、冷たく、何も無い。

 

 


 

 

 

 「智誓....」

 吐き出せた息は、彼の名を呼んでいた。

 

 

 

 

 




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