転生したらフォルテだった件   作:雷影

155 / 157
協定の後編となります。
今回はいつもより短いですが続きをどうぞ。


151話 ルベリオスとの協定(後編)

ヒナタ達との協定の最中でルミナスの鏡像であるヘテロが登場した事に皆が大いに驚いた後、朱菜達が持ってきた軽食であるおやつが全員の元に行き渡った。

 

「本日のおやつはスコーンとポテトフライです。ごゆっくり。」

 

その言って朱菜達は頭を下げるとアルノー達も軽く頭を下げた。

その後、ヘテロとオルタはフォルテのいる壁際に立ち朱菜達は会議室から退出すると、皆おやつを食べ始めた。

 

「これは…!」

 

「美味しい!」

 

「本当に美味いっすねこれ!」

 

アルノー達はスコーンを食べるとその美味さに驚いた。

 

「またこんな美味しい物を作って…。」

 

「いいじゃねぇか美味しいなら…。」

 

ヒナタはスコーンを美味しそうに食べながらリムルに文句を言ってはいるのが、その頬は嬉しさでほんのり赤く染まっていてリムルは苦笑いを浮かべていた。

 

「じゃが確かに美味いのうこのスコーンは。」

 

ルミナスもスコーンの美味しさに感心していた。

 

「うん。このスコーンも良い出来だな。また腕を上げたなオルタ。」

 

「ありがとうございます。」

 

フォルテに褒められオルタが一礼すると、話を聞いていたルミナスが反応した。

 

「ほう。このスコーンは其奴が作ったのか?」

 

「ああ。オルタにはクレイマンの技術も受け継がれているからな。」

 

「とすると、クレイマンはお菓子を作るだけの腕があったという事かね?」

 

「その通りだ。特にスコーンを作るのが得意だった。」

 

「まさかあのクレイマンに菓子作りの趣味があろうとはのう。」

 

「意外でしたね。」

 

「本当ね…。」

 

オルタがスコーンを作ったと知り、その流れでクレイマンにはお菓子を作る趣味があった事を知ったルミナスとルイ。

ヒナタ達も少し意外だったと驚いていた。

 

そうして皆がある程度スコーンを食べた後、会議を再開する為にリムルが口を開いた。

 

「それでは、今後の両国の関係についてだが…。」

 

「その前に、ハッキリさせておきたい点があるの。今回の件、私達の謝罪は受け入れもらえたのよね?」

 

「ああ。我が国としては今後は良好な関係を築きたいと思っている。」

 

「だから、これ以上問題にするつもりはないよ。」

 

ヒナタの問いに対しフォルテとリムルはそう言ったのだが…。

 

「駄目じゃ。」

 

ルミナスが待ったの声を掛けた。

 

「妾は借りを作るのが嫌いなんじゃ。今回は明らかに此方に責がある。よって何らかの形で賠償を行う。手打ちはその後じゃ。」

 

そう言いながら凄まじい圧を放ちながらヴェルドラを睨むルミナス。

 

(要するに、どんな形であれヴェルドラに負い目を作りたくはないんだな。)

 

フォルテは心の中でルミナスの気持ちを理解した。

 

「ルミナス様もこう仰っているし、私としても迷惑を掛けたままというのは心苦しい。出来る限りの誠意を見せたいわね。」

 

「賠償か…。」

 

「うーん。だったら…俺達の国を正式に承認して国交を結んでくれないか?」

 

賠償にリムルは国交を結ぶ事をルミナスに提案した。

 

「構わぬ。馴れ合うつもりはないしいずれはそこのトカゲは成敗するつもりじゃがな。」

 

「うっ!」

 

ルミナスに睨まれた瞬間、読んでいた漫画に障壁を展開し盾にするヴェルドラだったのだが、いつの間に背後に回っていたヘテロに漫画を没収された。

 

「あっ!」

 

「食事中に行儀が悪い。食べ終えるまで妾が預かろう。」

 

ヘテロの冷たい眼差しで睨まれたヴェルドラは、言い返す事が出来ず縮こまるしかなかった。

そう様子を見ていたルミナスはいい気味だと言わんばかりの良い笑みを浮かべていた。

 

(……もし両国の関係性が悪化しそうになったら、ルミナスにヴェルドラを差し出すのが一番だな。)

 

(まぁ最悪、ヴェルドラを差し出すのも悪くないか…。)

 

その様子を見ていたフォルテとリムルは同じ考えに至り、悪党の様な邪悪な笑みを浮かべていた。

 

「ちょっとまてリムル、フォルテよ!お前達今かなり酷い事を考えておらぬか⁉︎」

 

「ハハハ〜、気のせいだよヴェルドラく〜ん。君がお利口さんにしていたら何も心配する事はないのだからね。」

 

「そうだぞヴェルドラ。お前が問題を起こさなければいいだけだ。」

 

二人の邪悪な笑みに気付いたヴェルドラが声を上げると、リムルとフォルテはとても澄んだ笑顔をヴェルドラに見せた。

 

「待て待て!お前が“君”とか付ける時は“大慨”悪辣な事を考えておるではないか!フォルテもその澄んだ笑みが逆に怪しいぞ⁉︎」

 

二人の澄んだ笑みに怪しさを感じたヴェルドラが席を立って二人に詰め寄る。

 

「…暴風竜が納得していないのなら決裂だろうな。」

 

「うむ…。」

 

「あ。」

 

「静かになった…。」

 

その様子を見ていたアルノー達はヴェルドラが納得していないから駄目だと思っていたが、突然ヴェルドラが動きを止めた。

 

「うむ!両国の関係の為に善処しようではないか!」

 

((((買収されてる‼︎))))

 

振り返ったヴェルドラの両腕には溢れんばかりの大量のスコーンが抱えられていた。

 

「なぁに、我が本気を出せば以前と違うとルミナスに認めさせるなど簡単な話よ!クァーハッハッハ!」

 

「調子に乗るでないわ!」

 

「兄者よ…。」

 

「それが駄目なのだ。」

 

賄賂(オカシ)を貰って上機嫌なヴェルドラの態度を見ていたアゲンストとヴェルキオンは、今のままでは絶対にルミナスが許す事はないと溜息を吐くのだった。

 

「じゃが暫しの間は休戦と洒落こもう。今後三百年国交を結ぶ。それを妾からの詫びの証とするが良い。」

 

「えっ良いの?」

 

「俺達としてはありがたいが…。」

 

「相互不干渉をならばともかく、国交樹立を認めるのですか?」

 

「国交ですか…それはしかし…。」

 

「くどい!これは妾の決定である。」

 

「いいんじゃないの?リムル殿とフォルテ殿が真の邪悪な者だったのなら、俺達は既にこの世にはいない訳だし。」

 

「「「うん。」」」

 

フリッツの言葉にリティス、バッカス、ギャルドは納得して頷く。

 

「そうだな。リムル殿とフォルテ殿達は信用できる。魔物という偏見は捨てるべきだ。」

 

「私も賛成です。蒼影様はとても紳士的でした。」

 

「「ん〜…。」」

 

頬を染めて言うリティスの姿を見た紅丸とリグルドは左右から蒼影を見るが、蒼影は何食わぬ顔で紅茶を飲んでいる。

 

「リムル殿とフォルテ殿達が信用できるというのには私も同意します。ですが…我等の教義をどう扱うのか。それ次第で西方聖教会への信頼を揺るがす事になります。」

 

(…確かに。今までその教義を守ってきた者達からしたら問題だな。)

 

レナードの言葉に一理あるとフォルテも心の中で考えるのだが、次にルミナスが口にした内容はヒナタ達すら驚愕する事実だった。

 

「くだらぬ。教義が守られていなかろうが妾への裏切りだとも感じぬわ。そもそも、その教義は妾が定めたものではない。当時の指導者達が考えた規則でしかないのじゃ。」

 

「「「「「「えっ⁉︎」」」」」」

 

「え?初耳なんですけど。」

 

「そうか。知らなかったのも無理はない。教義の大本となった原稿はかなり昔に紛失してしまったからね。」

 

そこからルイが皆に説明してくれた。

教義とはルミナスを信仰する民を守る為のものなのだそうだ。

ルミナスやルイの様な上位者は兎も角、下位の吸血鬼族(ヴァンパイア)は人の生き血を糧としている。

それも、幸福感溢れる人間の血の方が格段に味が良いらしい。

当時の…つまりルミナス教の創始前。

魔物の猛威が荒れ狂う世界の中で人々は生きるのに必死だった。

必然的に吸血鬼族(ヴァンパイア)も質の悪い生き血しか得られずそれが死活問題となっていたそうだ。

 

(確かに、吸血鬼族(ヴァンパイア)達にとっては死活問題だな。)

 

因みに、フォルテが生み出したヘテロは当然上位者である超克者なので血を必要としない。

ヘテロの能力で生み出したり変異させた吸血妖鬼族(ドラクル)達も全て超克者となり、血を必要とせず太陽の陽光などあらゆる弱点を克服している。

そしてルミナスの鏡像生物(オブジェクト)であるヘテロは、向こうの世界の自身の奇食性を引き継いでおり幸福感溢れた人間の血は勿論、絶望の淵に立つ悪党の血も好んでいる。

 

「そこで新たな方針。つまり宗教を用い信者には安寧な生活を約束する事にした。住む地を移し替え…色々あったのを機にね。」

 

「引越したのか?なんでまた。」

 

「どこぞの邪竜のせいで都が滅びた故な。」

 

リムルの問いにルミナスは真顔で圧の込めた声で答えた。

 

「……ヴェルドラと手合わせする際一緒にどうだ?」

 

「フォルテ⁉︎」

 

「うむ。良かろう。」

 

ルミナスの気持ちを考えたフォルテは、共にヴェルドラとの模擬戦で仕置きをする誘いをすると、ルミナスは快く引き受けた。

 

「ゴボ!民の幸福を保つ為、聖典には魔物から被害を出さぬ為の文言が次々と書き加えられた。我々が無辜(むこ)なる民を守る事で彼らは幸福に生きていける。…スパイスとして魔王の脅威を演出し、それから守られる事で安堵し自身の幸福を噛み締めるのだ。」

 

「なるほど…。」

 

(つまり教義とは人心掌握の為の方便だった訳だな。)

 

ルイの話を聞いたリムルとフォルテは教義の事実を知って納得する一方、教義の事実を知ったアルノー達は絶句していた。

 

「妾にとって重要なのは、教義ではなく信仰心そのもの。それこそが契約であり絶対的法則となる。お主達は妾を信じることで、神聖魔法を行使しておるじゃろう?」

 

「「「「「うん。」」」」」

 

ルミナスの言葉にアルノー達は頷く。

 

「し、しかし…。成り立ちがどうあれ現実問題、我らはその教義に従って生きてきたのです。信者や関連組織からの反発を大きいでしょう。」

 

「それでもやるしかないのよ。」

 

「ヒナタ様…。」

 

「サーレ達三武仙の敗北もファルムスで記者達に目撃されたのでしょう?それに二百騎以上の聖騎士がここまで遠征して来たのよ。各国に筒抜けだと思うわ。」

 

(っ!そうか、私のせいで…。)

 

レナードは自分の行動が既に取り返しのつかない事態を招いてしまった事を理解した。

 

「ヒナタと聖騎士団(クルセイダーズ)まで負けたと知られれば混乱も生じかねないからね。」

 

(ルイの言う通り。魔物に負けて仕方なく国交を強いられたと考える者達が出てきてもおかしくないな。)

 

「あ、そうだ。」

 

フォルテの真剣に考えている中、リムルがある事を思いつき口を開いた。

 

「それならさ、俺とヒナタが相打ちだったことにしたらいいんじゃん。んで戦いの最中に七曜の悪巧みに気付いて休戦協定を結んだと。俺が粘性体(スライム)ってのは知られてるけど異世界人の転生者って情報も追加で広めれば納得してもらい易いんじゃないか?」

 

リムルからの提案にヒナタはもちろんアルノー達も唖然となっていた。

 

「ああ、相打ちより俺が負けた事にした方が受け入れられ易いかな。」

 

「貴方はそれでいいの?」

 

「ああ、別に良いよ。」

 

「あなたねぇ…今まで人間に倒された魔王なんて本当に数少ない事例しか確認されていないのよ?」

 

「そ…その通りですよ!貴方はまだ魔王になりたてなんです。今舐められたらそれこそこの地にいらぬ介入を許す羽目になりますよ!」

 

「そうです!リムル様が舐められるなんて許せません!」

 

「落ち着け紫苑。なんでお前がそっち側にいる。」

 

「ですが…‼︎」

 

リムルの自分が負けた事にする提案にヒナタとレナードだけでなく紫苑も声を上げるのだった。

 

「一国で俺達と事を構えるだけの戦力を有するのはイングラシア王国くらいだ。それも三百年の猶予を頂いた今、西側諸国で敵対してくる勢力は皆無と言っていいだろう。まぁ仮にそんな愚か者何いたならば俺が捻り潰して見せますがね。」

 

「そういう訳だ。紫苑も安心しろ。手を出して来る者なんてそうそういなしいたとしても問題ない。」

 

「はい…。」

 

紅丸とリムルの説得を聞いた紫苑はしょんぼりしながら納得した。

 

「そう落ち込むな紫苑。リムルが勝った事はお前も知っているだろう。行為状況ではそれが一番最適だとリムルは判断したんだ。」

 

「フォルテ様…。」

 

「クレイマンや他の者達を欺く為に偽情報を流した時と同じだ。それでリムルを舐めて来る者が現れたなら、返り討ちにして分からせてやればいい。お前の得意なやり方だろう?」

 

「はい!」

 

フォルテの説得聞いた紫苑は納得し元気に返事した。

 

「さて、その話の流れだと俺が七曜を取り押さえヒナタ達に引き渡した流れにするか?」

 

「おっいいじゃんか。じゃあそれで決定。」

 

「凄い自信ね…。それならば私としては異論はないわよ。その申し出を有り難く利用させてもらいます。」

 

「うんうん。」

 

「まぁ実際、ヒナタの強さは本物だ。覚醒したリムルとあそこまで戦い最後あの一撃で追い込んだからな。」

 

「ふっ。ありがとうフォルテ。」

 

フォルテの賛頌に対し、ヒナタは笑みを浮かべた。

 

「後、この際だから七曜に毒された者達の粛清も行うとしましょう。」

 

そう言いながら黒い笑みを浮かべるヒナタだった。

 

「じゃあこの際だし、この国の住人が悪しき者ではないと発表しちまいましょう!」

 

「そうだな。実際気のいいヤツらだしな。」

 

「それは俺も保証する。ファルムスの襲撃後も、俺が聖騎士(ホーリーナイト)だと知っていながらも此処の者達は俺を受け入れ接してくれたからな。」

 

「亜人が魔物か否かそれは今までも議論に上がっていましたわ。ですがそれは偏見からくる差別であると…。私はそう思います…。」

 

フリッツの言葉にアルノーとギャルドが賛同し、リティスが続く様に口を開きながら再び蒼影を見た後に頬を染めていた。

 

「人と敵対する亜人の存在が厄介だが、地人族(ドワーフ)などは紛れもなく人類の一員だろう。」

 

「だったら、ガゼル王も巻き込んで三百年の友誼を結べばいいんじゃないか?」

 

「俺達が人間を襲わないと保証があれば少しは信用出来るだろう。」

 

「そうね。信用さえあれば少しは説得し易いわね。」

 

「今後の交流としてアルノーとバッカスとギャルドを魔国連邦(テンペスト)に滞在させましょう。」

 

「「「うん。」」」

 

ルイの言葉に指名された三人は頷いた。

 

「じゃあこっちはルミナス教の教会を建設しておく。」

 

「その司祭はレイヒム大司教に任せるか。まだ七曜に毒された手の者に狙われる可能性があるからな。」

 

 

こうしてルミナス達との協定は終わり三百年という限られた期間だが国交を結べた。今後はその三百年を最大限に活用して相互理解を深めたいとリムルとフォルテは考えていた。

出来るなら、それ以降も良い関係を築ける様にとも。

 

 

 

そして、この後にルミナスとヒナタにだけフォルテはDr.リーガルなどに関する重要な話し合いをする事も決めていた。




これにて協定は無事に終わりルベリオスと国交を結ぶ事が出来たリムルとフォルテ。

次回は、フォルテはルミナスとヒナタに自分の世界と暗躍するDr.リーガルについてを極秘に報せます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。