最強の後輩   作:ハナホジン

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アニメ化決定おめでとう!!!

ありがとう!!!(誰だよ)








表出ようぜ、久し振りに切れちまったよ

あれから数日、フローターの仕事をバックレるように辞めた彼は現在JCCにて普通の学生生活を送っている。

 

バイト期間中は夏休みだったこともあり、彼は久し振りの勉学というものに苦しんでいた。

 

「な〜んで暗殺科で獣の解体授業なんてものがあるんだよ、ガチでいらねぇやろ、こんなクソ授業」

逸ノ治は教科書、ペンケース、参考書を持って長い廊下を歩いていた。

 

(次の授業は…スニーキング演習か、やったぜ、まともな暗殺科らしい授業を受けれる)

脳内時間割を思い出して、沈んでいた気分が好調になっていったその時。

 

「うげぇぇ…、不味いよぉ」

と逸ノ治にとって聞き馴染みのある声が聞こえた。

その声の発生場所は食堂からであり、導かれるように中に入っていくとそこには青髪の女がJCC名物のクソマズJCC丼を泣きながら、そして鳴きながら口の中に詰め込んでいた。

 

「晶?」

「え? は、はじめさん!?」

その時、彼らはお互いの目を見つめた。

そして…、

 

「わぁ!! はじめさん!! すごい久しぶりですね!!」

「さしぶり晶、お前背だいぶ大きくなったな」

晶という少女は逸ノ治の傍まで近寄り握手を求める。

彼自身もそれに応えるように手を差し出し握り込んだ。

 

「それにしてもなんで晶がここにいるんだ? もしかして…」

「はい!!そのもしかしてです!! 実は私もJCCの生徒になりました!!」

晶は笑顔満開で顔を見上げる。

 

逸ノ治と晶は昔に一度会ったことがある。

会ったもなにも二人は元はご近所さんだった。

 

彼がまだ歳が二桁にも達していない頃に隣にいた自分よりも3年ほど下の少女と友達であった。

二人は男女の間としては比較的仲が良く、常日頃ほどではないが良くともに遊んでいた。

だが彼の年齢が11頃になると彼女は引っ越さなければならないことになった。

彼自身はお互いの家の住所は知っていたため、いざとなればまた会えるだろうと考えていたが彼女にとっては号泣し地面に縋り付くほどのことだった。

彼女の両親はそれを引っ剥がし、無理やり連れて行こうして、彼は車のガラス越しに遠くへ行く彼女の泣き顔を眺めるしかなかった。

 

そしてなんの因果か、二人はこの特殊な世界で再び相まみえることになる。

 

「JCC丼かぁ〜、確かにあの味は社会の縮図をイメージしているとしか言えない感触だわな」

「はじめさんも食べてたんですね」

「勿論よ、1年前期の頃はほぼJCC丼で。そこからは死ぬほど射撃の練習をして今じゃあの距離くらいなら百発百中さ」

「うわぁ〜すごいなぁ、私にもできますかね?」

「晶は要領が良いからな、きっと俺よりも速く好きなメニューを選べれるようになるさ」

逸ノ治は道がわからない晶のために道案内と一緒に雑談を語っていた。

懐かしの再会、二人の表情は朗らかで優しい笑顔をともにしている。

 

「は? 逸ノ治の野郎、あいつあんな可愛い後輩とイチャついてやがる」

「拙者にとっては、あのような行動、万死に値すると、判断いたしま、す!!」

「なんでアイツにできて俺にはできないんだよぉ!!!」

すれ違った彼の友人からは称賛とは真反対の鬼畜な言葉しか吐かれなかった。

JCCでは男8、女2のほぼ男子高と言ってもいい。

そのため、彼女を作るということは800人近い男の怒りを買うに値する。

だが、相手の彼女だとしても目の前で殺す等はしない。

これでもし殺したら、相手の彼女から辛辣な言葉と恨みの目しか向けられない。

 

女の情報網と共感性というものは凄まじく、一瞬で広がる情報を恐れ男共は行動に移さないのである。

俺は付き合うんだと心に決めている男共の暗黙の了解である。

 

 

「あ、ここだよ。 暗殺実践演習授業の場所は」

「ここですね、ありがとうございますはじめさん!!!」

「お安い御用よ、そんじゃ授業頑張ってな」

「はい!!!」

大きな声で挨拶をした晶は深くお辞儀をして教室の中へと入っていった。

 

「ふぅ、じゃあ俺も頑張るとするかな」

その瞬間、逸ノ治の辺りから殺気と一緒に人が湧き出てくる。

そして即座に周りを囲むようにして逸ノ治に襲いかかる。

 

そう先程言った通り彼女の前では殺したりはしないのだ、では逆に彼女が今いなかったら?

このような感じで襲いかかってくるのである、拗らせ童貞の定めなのだろうか。

そして女にも強く言えるほど立場的に上ではない童は自身と同じ性別を攻めることしかできない、なんとも女々しい。

 

襲いかかってくる者共に対し、逸ノ治は流れるようにそれらを受け流す。

そして一人に一撃を入れるとよろめいた相手を踏みつけて、軍勢の上を飛ぶ。

そのまま人の頭を踏みつけて逸ノ治は壁となる人のいない空間に着地して、逃げた。

 

「まておらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

童貞故の怒りが今逸ノ治に向けられる。

逸ノ治は廊下を走っている最中に見つけた毒殺科の女の子の劇薬を盗むように取っていった。

 

「ごめん!! 後で実験台になるから許して!!」

「全然良いよぉ〜、がんばってねぇ〜」

目が前髪で隠れて胸が前に強調されている女の子の前を通る軍勢共は目線を隠す気が無く、しっかりと見つめてから息を大きく吸って、

 

「ノベル主人公野郎がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

そう叫ぶと軍勢共の走るスピードは更に加速する。

童貞のチカラは天才にも及ぶのだろうか。

 

走る逸ノ治は貰った毒薬を地面にばら撒く、すると毒薬が付着した地面はどんどんと溶けていく、それを知らずに軍勢はその溶けた場所の上を通ると地面が砕けた。

 

「のわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

40人ほどが下に落ちて、それをいち早く感づいた者はそれを飛び越え、振り返ること無く逸ノ治にしか眼中がなかった。

 

 

 

残り760人

 

 

 

ずっと走っているだけで解決するほどヤワなことではないのは丸わかりだろう。

逸ノ治の眼の前に先回りしてきた奴らが襲ってくる。

逸ノ治は体を縮こませ、前方に全力タックルをかまし無かった道を無理やり作り出した。

 

「眠っとけ」

そして群衆の中心に飛び込んだ彼に周りは袋叩きするかと思いきや、周りの者達はいきなり一人でに倒れ込んだ。

地面に転がる生体達を見下ろすように佇んでいる彼はまるで死神のようだったと後の暴動者は語る。

 

しかしそれでも襲いかかる童貞達相手に逸ノ治は体で受け応える。

殴り、頭突き、蹴り、投げ飛ばし、合気、技術を使い彼は不殺のままで反撃していた。

 

「隙あり!!!」

しかし彼も疲労を感じる人間だ、一瞬の気の緩みに付け込まれて、彼に大口径がぶち込まれた。

その衝撃で後ろに飛ぶと壁にぶつかる。

 

「チャンスだ!!叩き込め!!!」

逸ノ治に再び襲う群衆達、彼は地面に尻餅をついてうつむいたままだ。

そのまま殺意に溢れる童貞らに殺されるとなった時、彼は一瞬、ほんの一瞬だけだが…

 

殺意が溢れ出た。

 

その瞬間、彼らはあの時のように白目を剥いて地面に倒れ込む。

近くで直接刺そうとした者、遠くで狙っている者、壁越しでスタンバっていた者も彼に対する殺意を持っていた者は全員なんの接触もなしに負けたのだ。

 

「ああぁ〜…、最悪…、最近自制できていたと思っていたのに…」

小さく愚痴を吐きながら彼は足に力を入れ、立ち上がった。

そしてまるで死体のような者たちを踏み越えて、彼はどこかへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

その同時期、金髪の少年(21)のシンはとある目的でJCCにあるとされているデータパンクを探していた。

そこで偶然会った勢羽夏生と編入試験でともに戦った赤尾晶とともにデータパンクを知っている佐藤田にどこかを聞くために戦うことになり、どう勝負を挑もうかと試行錯誤していた。

 

「とりあえず、セバとアキラで隙を作って、俺がこの増強グローブで一撃をかませばいいんだな?」

「そうだ、佐藤田先生は見かけの通り、タフさはないからそれでもかなりの痛手になるだろ」

シンとセバは話し合っているとふと、アキラが口を開く。

 

「はじめさんも一緒にいてくれないかなぁ…」

「ん? アンタもハジメ先輩知ってんの?」

ふと呟いた言葉にセバは反応し、深堀りして聞く。

 

「知っているというか…、幼馴染というか…」

「へぇ〜先輩、今頃殺されかけてる最中かもな」

「え!?」

セバがそう言うとアキラは目を丸くして大きな一声を放った。

 

「ここじゃあ、女子と少しでも関わったら裁きを受けさせるっていう男の儀式みたいなのがあってな。 先輩結構モテるし何回も天罰が下ってんだ」

「は、はじめさんモテるんだ…、もぉ…」

アキラが頬をフグのように膨らませた表情を見て、二人はふと可愛いと思ってしまう。

なお遠くから眺めていた非モテ童貞達は血反吐を吐いて幸せそうに倒れていた。

 

「まぁ、確かに最強先輩が手伝ってくれれば余裕だと思うが、多分やってくれないんだよなぁ」

「さ、最強?」

「ああ、先輩は今この学校の中で最強なんだよ。 百戦百勝ではねぇけど、先輩は自分にとって不利益になることだったり、利益になることになったらマジで最強になる」

(へっ、最強だったら坂本さん一択だろ!! どこかのバージンボーイが最強を名乗ってんじゃねぇ!!)

シンは心の中でそう呟き、逸ノ治のことをバカにする。

しかし、数時間後にシンはその評価を大きく覆すことになる。

 

 

 

 

 

 

「クソがっ!!! 結局今回も逸ノ治の一人勝ちかよ!!」

「拙者の刀がぁ…」

「うえっ…、吐きそう…」

教室廊下広場にて生徒たちはゾンビのように唸るか、負け犬の遠吠えのように叫び散らかしていた。

生徒800対逸ノ治の戦いは圧倒的な力で逸ノ治に軍配が上がった。

 

「一応言うけど別に付き合っているとかじゃないからな」

「黙れ、女子と話すこと自体死罪なんだよ」

「う〜ん、極刑すぎるな」

先程までの殺し合いから心機一転、いつもの青春を謳歌する学生生活に戻っていった。

しかしそれはすぐに別のトラブルへと見舞われる。

 

ビーッビーッビーッビーッビーッ

〈コード37564 コード37564〉

〈セキュリティシステムが緊急停止されました〉

〈復旧には10秒ほどかかります〉

突如として響く警報音、この学校へ来て3年の逸ノ治にとっても初めての出来事だった。

 

『コョチリベロトスキーケ キックータバーイデンヤキ』

 

ぱんっ

 

そして鳴り始める放送から放送委員ではない声が学校全体に響く。

そのまま続いて流れた拍手の音。

この瞬間逸ノ城はフラッと眠りそうになる。

瞼が落ちる前に逸ノ治は自身で自分の頬を全力で殴った。

 

「いっっっってぇぇぇぇぇ!!!」

全く加減しなかった全力は逸ノ治の頬を赤く腫らすほどだった。

 

(今のは…いったい?)

「デーたぱンく、こワス。 でーだぱんぐ、コワす」

彼は周りを見渡すと先程まで喋っていた友が、周りの人々が目が虚ろになり意味深な言葉を吐きながら足を引きずるような足取りで広がっていった。

その時、逸ノ治の脳内ではすぐに緊急事態という結論に至り、彼は学校中を走り回った。

目的の場所は放送室、先程の放送から流れた拍手の音で全員が催眠状態のようになった、故にその元凶である奴が放送室にまだおり、奴をどうにかすればこの催眠も解けるだろうと考えたのだ。

 

その考えも見事的中、見たことのない服装と捻れた髪をたなびかせている男が廊下の真ん中で自身に背を向ける形で歩いていた。

「おいてめぇ」

一言だけ声を掛けた逸ノ治、その男はこちらへと振り返る。

しかし走っている逸ノ治は速度を遅めるどころか更に加速し、目の前の男の顔面に膝蹴りを喰らわした。

鼻血を吹き出しながら後ろへ飛ぶ男に遠慮なく、更に上から足で顔を踏みつける。

地面にヒビが入るが逸ノ治は何度も足を上げては下げて上げては下げてを繰り返し、最後に地面に倒れた相手の胸に足を置いた。

 

「要求は一つだ、そのふざけた催眠を解け」

逸ノ治は淡々と告げる、その目や声色には慈悲というものなぞ微塵もなかった。

それを感じた男は顔から血を垂らしながら、突如恍惚に目を輝かせて頬を赤らめた。

 

「アハハハッ!!! 君、イイね。 お兄ちゃんみたいに遠慮がない暴力、サイコウだよ!!!」

笑い始めた男に逸ノ城はドン引きしながら再度踏みつけようとすると、背後から別の何かが逸ノ治に襲いかかる。

逸ノ治はすぐに後ろへ振り向き、襲ってきた二体の首を掴んで壁に押し付けた。

襲いかかってきたそれは、逸ノ治と同じクラスの生徒であり、目が虚ろなままこちらへと手を出してきたのだ。

逸ノ治はキュッと掴んだ首を絞めるように力を入れて、脳に酸素を送らせないようにした。

人間は10〜15秒ほど呼吸ができなければ脳の働きが停止し気絶する。

だがやり過ぎると簡単に人を殺めてしまう。

しかし逸ノ治の類まれなるセンスによりそんなミスは起こらない。

熟練の医師が患者にメスを入れるように、冷静だった。

 

脱力仕切った二人を優しく地面へと寝かせて振り返るとそこには既に侵入者はおらず、右へと向くと背を向けて逃げているのが見えた。

 

(遊ぶのはデータパンクを壊してから、じゃないとお兄ちゃんにイジメられないからね)

虐待願望を持っているドM侵入者はそう考えながら走っていると後ろから風切り音を耳が拾った。

 

体を横にそらすと先程までいた場所に鋭い何かが通過していった。

後ろへ振り返るとそこには投擲完了のポーズをした逸ノ治がいた。

そして逸ノ治は体をもとに戻すと腕を壁に突き刺し、腕を引くとそこから粉塵が巻き起こり、鉄筋が空気中へと露わになる。

 

「体貫かれないと反省できないか、お前」

そういうと鉄筋を棒術のように振り回し、侵入者へと体を傾けて飛び出した。

侵入者はそれを喜びに溢れた表情になり、両手を前に出して、音を出して重ねた。

 

すると侵入者の背後からワラワラと石を退かしたように催眠に掛けられた生徒達が現れ、逸ノ治に牙を向く。

 

「じゃーね、後でまた僕をイジメてね」

「てめぇは今ここで殺してやるよ!!」

逸ノ治の怒号とともに逸ノ治は波のように迫ってくるクラスメート達を超えるために鉄筋を地面に突き刺した。

そうまるで棒高跳びと同じ要領で波を飛び越えたのだ。

無事、地面に着地しすぐに侵入者の元へと駆け出した。

 

「だ、誰かぁ〜、助けて〜」

すると女の声が聞こえ逸ノ治はその声がした方向へ向くとそこに、ゾンビのように襲う男生徒と腰を抜かして地面に座っているあの毒殺科の黒髪の女生徒がいた。

一瞬、逸ノ治は思考を巡らせたがすぐに行動に移した。

 

「オォぉオオ、オンな、おンな…」

意識が無くとも童貞の未練を開放しようとしているゾンビに逸ノ治はドロップキックを横腹に食らわす。

摩擦がかかりながら地面を滑っていくゾンビを尻目に逸ノ治はすぐに尻をついている女生徒に手を差し出し、

 

「立てる?」

と優しく声を掛けた。

 

「ごめん、腰が抜けちゃって…」

「おけ、じゃあ緊急事態だから少し失礼するね」

「え? …きゃあ!!」

そして逸ノ治はお姫様抱きでその場を立ち、安全な場所を探しに飛び出た。

 

「おおオォぉぉぉおおオォぉオオおおオォお!!!!!」

すると気怠げそうなゾンビ達がいきなり躍起になり、逸ノ治達に距離を詰めようとする。

 

「ちょ!! いきなり動き変わったって!! ほんとは起きてんだろお前ら!!!」

否、実際にはまだ催眠にかかったままだ。

だが、脳は操られても魂までは操ることができない。

彼らの強靭なる精神に乾杯をしたい。

 

「くっそがぁ!! 毒麗(どくうら)ちゃん!! 一瞬だけ怖い思いさせちゃうわ!!」

「良いけど、離さないでぇ!!」

「ガッテン!!」

「ヌガァァァァああァァああああああぁああコロスkorosu古ロス夷す殺す小ロスコロスコろス!!!!!!!」

二人の体が一つになったような密着を見て、さらなる雄叫びを上げるゾンビら。

恐らくだが、彼らのNTRを見せたら脳味噌が爆発して死ぬだろう。

そう思うほど彼らの童貞の力というものは素晴らしかった。

 

「飛ぶぞぉ!!」

そう言って逸ノ治は踊り場から中央が大きく空いている螺旋階段を飛び降りた。

ゾンビ達は勢いを止めることができず雪崩のように下へと落ちていく。

逸ノ治達は3つ下の階に着地して勢いを殺すために体を丸めて転がった。

 

「うげっ!!」

背中に壁がぶつかるとカエルを潰したような声を上げた。

 

「だ、大丈夫?」

「大丈夫大丈夫、これくらいお茶の子さいさいよ」

軽口を吐けるほど心配はないと伝え、ずっと抱いていた女生徒に自由を与える。

 

「公務員室なら安全だと思うし、さっさと行こうか」

そう言って逸ノ治は立ち上がって、女生徒の手を掴み小走りで目的地へと向かっていった。

この時女生徒の表情は、目は前髪で隠れて見えないが、唇に少し力が入り頬を少し赤らめていたのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

「うし、無事についたな。 事務員さん〜いるか〜? てっ…」

事務室へついた二人は中へ入るとそこには金髪の少年(21)シンと黒髪の童顔な少年(あまね)と白髭を生やした年老いた事務員がいた。

 

「…なんか大事な所だった?」

「…いや、大丈夫じゃよ。 毒麗ちゃんを連れてきたのかい?」

「おう、事務員さんの所なら安心だろうなと思ってね」

二人はこの緊急事態の状況の中、いつもの会話を弾ませるように会話する。

 

「てか周じゃん、お前も避難してきたんか」

「はい、一先輩もですか?」

「俺は避難というよりも連れてきたっていう感じだな、また外に出て元凶を潰してくるよ」

(…!! こいつがセバの言っていた逸ノ治一ていうやつか、あんまり強そうじゃねぇな)

周と逸ノ治が会話している最中にシンは心の中で期待外れだと少し肩を落としたがそこにそれは違うと横槍を入れてくる者がいた。

 

「弱そうと思っていそうな顔をしておるな」

「うわっ!!」

視界に入っているはずだった公務員がいきなりシンの背後から現れ、シンは驚いたという表情を出す。

 

「先程言ったろ? 見かけで判断するやつはこの世界では長く生きれないと、逸ノ治くんはワシが見てきた3万8千7百64人の生徒の中で、一人を除いて最強なんじゃからの」

「…」

「いや、もしかしたら5人を除いてかも…、いやいや14人除いてかも…」

「考えたらあんまり上じゃねーのかよ!!!」

一瞬のシンの頭の中に浮かんだ最強を体現する男、彼の師匠でもあり目指すべき指標である男に最も近い実力を持っているのが逸ノ治なのかと思ったが、そんなことはないと言われ、ついツッコミを口に出してしまった。

 

「まぁとりあえずじゃな、毒麗ちゃんはここで大人しくしていなさい」

「は、はい」

「逸ノ治くんとシンくんと周はワシと一緒に行動しよう、犯人を探して拘束するまでな」

三人は頷き、早速扉から出ていった。

 

「毒麗ちゃん、すぐに終わるからゆっくりしていてね」

逸ノ治は彼女にフォローを忘れずにしてから出ていく。

この何気ない気遣いが彼がモテる原因の一つなのだろう。

 

 

 

 

「てっ!! なんでまたこんな追われる形になるんだよぉ!!!」

「なんかお前さんのことについて言ってないか?」

「はじめコロス始め小ロスハジメ殺す一頃す始め小ロスはじメ゙コろスㇵじメコロす!!!!!!!」

「先輩…」

「なんもやってねぇよ!!! 周!!そんな目で俺見るな!!」

再び追われる御一行、ゾンビの目的もデータパンクから逸ノ城へと変わっていっている。

 

「なら計画は変更じゃな、逸ノ治くん」

「まさか、一人行動しろとか言わないよな?」

「そのまさかじゃ、お前さんは別の所で探してくれ」

公務員は笑顔で逸ノ治を見限った。

 

「ちきしょうが!!! こいや童貞クソ野郎共!! こうなったら全員張り倒してやるよ!!!!」

そして逸ノ治は悪態をつきながらも急ブレーキをかけて、後方に振り返り、腕を前に出して構えた。

迫ってきた敵の一人の腕を掴むと逸ノ治は道具として人を振り回した。

道具として扱っている人の足が、体が、頭が敵に当たり、迫ってくるスピードを減速させる。

道具がボロボロになり、これ以上やったら壊れると思った時にはすぐにそれを空中に放り投げて、再び敵を掴み人間ヌンチャクで反撃する。

 

 

 

それを何度も繰り返していると無限だと勘違いしそうなほどの量を一人残らず処理しきったのだ。

逸ノ治の足元には死体のようになっている者だったり、足が拉げていたりする道具の姿もあった。

壊さないようにと言ったが、持ち手などが壊れてもまた直せるだろ精神でいたためろくに反省もしていないのだった。

 

「でも、流石に疲れた…」

肩を上下に動かす逸ノ治はそこに留まることなく、本来の目的であるあの変態侵入者の行方を探し始める。

化学室、廊下、実験室、暗殺室、解剖室、拷問室、処理室などを探しに探すが毛の一本も落ちていない。

(もうあっちで終わってたりしてんのかな)

そう思いながらも逸ノ治は歩を進める。

すると毒殺科の温室の所から人の気配を感じた。

 

逸ノ城は少し警戒しながら音を立てずに温室の中を覗くとそこには、荒らされた悲惨な現場と目の前には青髪の晶の姿と骸のように地面に空を向いて倒れている佐藤田悦子がいた。

逸ノ治が近づけば近づくほどだんだんとこの現状が理解する。

 

目を閉じ寝ているように、血を流している佐藤田は死んだのだと。

 

「はじめさん…、先生が…先生がぁ…」

逸ノ治がいることに気がついたのか、こちらの方へ向き赤く腫れている目の縁から涙を溢れ出す晶。

逸ノ治は佐藤田の所へと膝を折って顔を近づける。

無念と満足の両端を握ったような表情で眠っている。

 

「晶、誰が殺った」

「…映画フィルムを首に巻いた、坊主頭の下まつ毛が長い男です」

晶の声は淡々としており、悲しみだけではない感情が読み取れる。

しかし逸ノ治はわかっていても介入することはせずに静かに立ち上がった。

 

「晶、佐藤田先生を保健室のベットに寝かせてやってくれ。 この硬い地面に放置なんて失礼だからな」

そう言って逸ノ治は狙っていたターゲットを変更し、その目標がいる所へと歩いていった。

 

 

 

2年前から彼は自重していた。

怒りに操られる自分を、異様なまでに極端な殺意の波動を、抑えるために。

彼は平穏を望んでいる、だがこの世界では平穏とは程遠い。

しかし、彼はこの泥沼から抜け出すことができない。

なぜなら、彼自身がこの地獄の体現者と言ってもいいからだ。

この日、彼は鎖で雁字搦めにしていた己の中の悪を開放させる。

 

 

 

彼から圧倒的なほどの殺意が湧き出る。

 

 

 

「殺す」

 

 

 

 

2年前の異名、殺意の原始(マーダーインセント)が再び咲き誇る。

 

 




次回、逸ノ治くんのブチギレ!!

ヒロインいる?

  • 王道ヒロインの晶(あきら)
  • 絶対メンヘラの大佛(おおらぎ)
  • あえての死刑囚ダンプ(ワイは好き)
  • ヒロインとかいらんわ(ガチギレ)
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