ザイフリートの葬送歌   作:仮面ライダーっぽくする予定だった


原作:鬼滅の刃
タグ:R-15 オリ主 アンチ・ヘイト
冒頭部分だけ。
大正時代ならこういう人もあり得ただろうと

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ザイフリートの葬送歌

牀前明月光 

疑是地上霜

挙頭望明月 

低頭思故郷

 

歌うような言葉だな、といつも思う。ベッドに半身を起こし月光に照らされる清艶な姿を、自分はあとどれだけ眺めて居られるのだろうか。

 

そう憂えた秋も今は昔。

 

家が近所だった。自分は教会の牧師の息子、彼女は役人の娘。信仰も民族も違う、けれど窓越しの密かな会話。叶う筈の無い淡い想いは、けれど数多の血と怨嗟悲苦を背景に機会を得た。打ち壊される家も襲われる親たちも捨て置き、走れない彼女を背負ってこの国へと渡る船に滑り込んだ。浅ましい我欲と妄執。それでも、自分にとっても彼女にとっても異国のこの地で、慎ましく生きていこうと思っていた。

 

震える手、諦めの微笑み。思い出す彼女に手を上げた彼女の父親の姿——遠からず変じて無くなる彼女の人格。死。

 

どうして、と自分は嘆いた。別れよう、と彼女は告げる。自分は彼女の言を拒む。死が二人を分つまで、例え彼女が病んでも自分は彼女の側にいると誓う。

 

ああ、でも。

地上の栄華は儚く、神の御国は永遠とうたわれる。けれど、譬え地獄に堕ちても、永遠の魂を失ってでも——地上の彼女を喪いたく無いと想い。思ってしまった。その報いだろうか。

 

——病んだのは自分の方。

 

家路を急ぐ夜。いつもと変わらず、ただ皆既月食の紅きを共に見ようと約束していた。この国の人間より頭一つ抜けた体格を恃みに歩く。誰もいない(みぎわ)に差し掛かる。そこに道中立ち塞がった者。血啜るVampire、いや万化し肉喰む姿はGhulか。弄ばれ息絶え絶えになったところに”夜”が来た。魔王(Erlkönig)サタン(Satan)あるいは、我が故国の伝説に謳われる悪竜の如き男。戯れに自分に己の血を与えて去っていき。残された自分は俄然痛みと飢えと渇きとに苛まれ朦朧とした。とうにそんな資格も無かろうに、動けぬままただひたすら一晩中幼い頃覚えた聖句を唱える以外何も考えられず蹲る。

 

目が覚めた。空が白んでいる。

日に当たるのが不味いと本能で理解し……罪深き身に自らを灼くことを考え……彼女の姿が瞼に浮かび……自分は海に飛び込んだ。

 

深く、深く。

未だ飢えはおさまらず、睡気まで襲ってくる。

眠ってはいけない、彼女に会う迄は。

帰らなくては、彼女の所に。

還らなくては、彼女の元に。

——かえってはいけない、彼女を食べてしまうから。

 

 

「鬼を襲う怪人?」

 

「そ、夜な夜な現れては鬼を食いちぎっていくってやつ」

 

「そいつと勝負したいぜ!」

 

終わらぬ夜、深淵の底。目の前の海(Bucht von Tokio)がここまで異界じみているとは知らなかった。

 

ぐるる……と漏れる唸り声。言語能力自体を喪うことは無かったが、この国の言葉を発話するにはやや不安が残る。嗚呼、自分はどうすれば良いのだろう。


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