胸の奥には灯が点り、赤々と燃えている。
心の裏側に隠した想いは溢れだし、止まらない。
ああ、眠れない。
時計が刻を切り刻む音、それを遥かに上回る爆音で心臓が高鳴って止まらない。いやまあ止まられても困るけど、少しは落ち着いてくれ。そうでないと、寝るに寝られないじゃないか。明日……いやもう今日か、あと12時間でウインターカップ二回戦が始まってしまうのに、このままじゃ身体が持たない。柱に頭を叩きつけてでも寝ておくべきだ、それなのに私と来たら。
「なにやってんの私ー……ナニヤッテンノー……」
蒸気でも出てるんじゃないかってくらいに熱い顔、それに負けないくらいに火照った肌。あれからもう何時間も経つのに、全く落ち着くことが出来ないまま時間だけが過ぎていく。
大喜くんを抱きしめたあの瞬間から、私は故障したままだ。
夢佳がまさか試合を観に来てくれるなんて思わなかった。なにしろ向こうの事情なんか考えもせず、自分の想いをただただぶつけて立ち去った直後なのだから。これでもう二度と会うこともないんだろう、とさえ思ったのに。それなのに夢佳は、私を見捨てずにいてくれた。
そこでようやく、私は気が付く。
私たちはお互いを大切に思いすぎて、自分からはなにも聞かなかった。何かあれば向こうから言ってくれる、そう思い込んでいた。言わないことが伝わるわけがない、そんな簡単な事さえ忘れていた。
離ればなれになりたくなかった、もっと一緒にバスケしたかった。私たちの気持ちはずっと、同じ形をしていたんだ。
子供みたいに泣いて、子供みたいに笑って。私たちはようやく、友達に戻ることができた。遅すぎるかもしれないけど、でもそれはとても喜ばしい。そしてその切っ掛けをくれたのが大喜くんだということも、私の心を軽くしてくれた。
だからそう、私はお礼が言いたくて大喜くんを探してたんだ。
それなのに、それなのに。
「……なによ、ギュッとさせてってぇ……。ううー……」
あの笑顔が、優しさが、私をおかしくさせてしまった。
クリスマス飾りを拾おうと伸ばした手が触れた途端に我慢が効かなくなり、そのまま――
いや、おかしいでしょ。背中ならまだしも、正面からああやって抱き締めるって。その上あんなにも肌の柔らかさやら温もりやらも堪能するなんてやりすぎにも程がある、あれじゃもうただの痴女じゃないか。
ああ、でも。あの瞬間に感じた想いは、ただの衝動なんかじゃない。
いつぞや花恋に言われたように私はきっと、大喜くんを、大喜くんの事が。
「すき……?」
口に出して一瞬の後、目の前がポッと瞬く。まるで血が沸騰したのかと思うくらい、体温が急上昇したのが分かった。たった二文字でこれだ、日本語ってスゴい。いや、そうでなく。
やっぱり私は大喜くんを、
今頃大喜くんは夢の中だろう、私と違って。壁一枚隔ててすぐ隣にいるのに、その存在は感じ取れない。行こうと思えば行けるけど、まさかねぇ。こんな時間に押し掛けたら不味いよねぇ、……うん。
しかし私と来たら、迷惑ばかりかけてるな。勝手な都合で振り回してばかりだ、私の方が歳上なのに。
にしても大喜くんは、私をどう思ってくれているんだろうな。
良い居候か共に頑張る先輩か、それとも――もしかして……。
「いや、それは無いかな」
もしも大喜くんが
ああ、全く良くないな。いい加減にして寝ないと、試合に響いてしまう。寝不足でマトモに動けないとか、それこそ酷い話だ。そんな状態じゃあ大喜くんに嫌われてしまう、……なんてね。
とりあえずは、ウインターカップに集中だ。試合日程が全部終わったらゆっくり考えよう、どうせ冬休みだし時間はたっぷりある。
花を付けたサボテンと壁の向こうにいる大喜くんに、口のなかだけでお休みなさいを呟いて。私は今度こそ目を閉じた。