一杯の御運びで御礼申し上げます。
これより始まる若い二人の道行きに、どうかどうか祝福を。
幸せな日々はここから始まり、終わることは多分ない。
だってその方が、幸福ですもの。

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ある意味初心に返った感じです。


ここから始まるアオい軌跡

 普段は時間をずらして通る帰り道を、今日は二人並んで歩く。

 黙ったまま、でも手は繋ぎあって。

 掌から伝わる熱と鼓動は、きっと向こうも同じように感じている。

 このまま固く握りあっていたいけど、さすがにずっとしてはいられない。

 名残惜しさを覚えながら指をほどいて玄関に入り、何事も無かったかのようにただいまを言う私と大喜くん。

 出迎えてくれた由紀子さんは、まだ知らない。私たちの関係がついさっき、大きく変わったことを。

 ――今日から先輩後輩ではなく、恋人同士になりました。

 

 顔はまだ熱いまま、どこかフワフワとした気分。数時間前に交わしたやり取りの余韻は、まだまだ冷める気配も見られない。

 部活の終わり時間が一緒になって、せっかくだしちょっと寄り道でもしようかなと公園まで足を伸ばした放課後の一時(ひととき)

 周りに同居の事を隠さないといけないし、こうやって外で話す機会はそうそう無い。この後だって一旦別れてそれぞれに帰らないといけない、それがちょっとだけ寂しい。ほんの僅かな時間なのに、一緒にいられないのが辛い。

 一度そう思ってしまったのが、楔になってしまったんだろう。

 気が付けば大喜くんの手を取り、その顔を見詰めていた。大喜くんも大喜くんで、私をじっと見詰めてくる。 

 その視線は絡み合い、そして沈黙だけが流れていく。

 永遠にも思える数分間の末、私たちは同時に口を開き――

好きです(好きです)

 全く同じ言葉を、全く同じタイミングで放っていた。

 まさかあんなにも被るとは思ってもみず、まるで自分の言ったことが跳ね返って来たかとさえ思ったくらいだ。

 一世一代の大仕事に全力で大ポカをやらかしたバカ二人は、夕暮れの公園で声を張り上げて一頻り笑いまくってそして。

 もう一度、告白を交わしあった。

 

 いつも通りに過ごす団欒の時間を経て、私たちは大喜くんの部屋へと上がっていた。

 特に理由は無くてもお互いの部屋を行き来してた間柄なのに、どうにも気まずいな。

 まあ、それはそうか。私たちは、今まで通りではないんだから。

「……千夏、先輩。あの、……えっと」

 大喜くんも気まずそうにモジモジして、私と同じような事を考えているんだろうな。私は一応歳上なんだし、リードしてあげないといけないか。でもなあ、別に経験値が高い訳じゃないんだよね。て言うかゼロだよ、完全に。

 まあその辺はね、これからだよね。 

 ……はて、これから?

 今更ながら、ふと思う。お付き合いを開始したのは良いけど、何をすれば良いんだろう、と。

 そもそもの時点で同居してるんだし、スタート地点の段階でよそ様より進んでいるわけだ。

 何だかんだ言ってもちょいちょい二人で遊びに行ったり、アクシデントとは言えお泊まりも経験済み。

 考えてみれば、今までだって付き合ってるようなもんだったんだな。

 これ以上するとしたら、それこそ()()()だろうな。あの例の、……キスとか。それ以上の事とか。そういう「恋人同士でしかしちゃいけない事」を、大喜くんと。

 うわ、うわわわ。うわわわわわ。耳から湯気が吹き出してるんじゃないかってくらいに顔が熱い、いや顔だけじゃなく全身ほこほこに茹で上がってる。

 そりゃ私だって高等教育の徒だ、知識はある。具体的にどういう行為をするかも知ってるけど、だけどでもまさか自分で経験するなんて思ったことがない。

 うーん、どうしよう。どうしたもんだろうな、実際。合意があれば良いのかな、でも状況にもよるか。したいかしたくないかで言えば、あー……いやまあまだ考えない方がいいな。そういうのはオトナになってから、だ。

 私たちは私たちのペースで、ゆっくり歩んでいこう。

 焦ることなんか無いんだ、明日も明後日も明明後日もずっと一緒なんだから。

「ねえ、大喜くん。今度の日曜日、また出掛けませんか」

「ぇあ、は、はいっ」

 上擦った声で即答してくれた大喜くんの頭を撫でながら、私は週末へと想いを馳せてみる。特に行き先も決めず、足の向くまま二人でブラブラしようかな。何も起きなくて良い、同じ時間を過ごせれば。

 そんな日々が、ずっとずっと続きますように。

「不束者ですが、これから末永く宜しくお願いします」

 微笑みと共に、私はそう告げた。

 

 

 

 

 


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