「星野アイ。私の好きなアイドルです」 作:ネオマフティー
むかしむかしある所に、天童寺さりなという一人の少女がいました。
彼女は重い病気が見つかったことで、母の愛が向けられなくなり、その生涯を狭い部屋の中で生きる事になりました。
それでも、彼女は苦しみに耐える日々を送り、健気に愛されていると信じて最期まで母親を待ち続けました。
そんな彼女には、苦しい日々を支えていた光がありました。
一つは、一番星の生まれ変わりのような一人のアイドルの少女との出会いでした。彼女は少女の輝きに焦がれる程に憧れました。
そして、もう一つの光。それは、大好きな青年との出会いでした。彼女にとって、雨宮吾郎という名前のその青年と過ごした時間は、どれだけ救いだったかは計り知れません。青年の存在こそが、彼女が孤独に過ごす病室という狭い世界で生きるための希望の光でした。
「まあ、彼女はその光をどちらも失う事になるはずだったんだけどね…」
ある日、宇宙から星がやって来ました。それは妖しい光を放つ黒い凶星と、銀色に輝く光の星でした。
宇宙から来た彼らには、地球の理も、地球の神様の敷いた運命も関係ありません。散々好き勝手にやりやがった結果、星と海に還るはずだった魂は繋ぎ止められ、魂を選ばれた双子星の運命もめちゃくちゃに狂ってしまいました。
こうして、少女は光を失わず幸せに暮らして、やがて一度は失ったと思った光とも再び出会えたのでした。
「めでたしめでたし……じゃないわよね。もう何もかもめちゃくちゃよ……」
今日もまた、烏を引き連れた不思議な少女は、忌々しそうに宇宙を見上げました。
そして、元凶の存在は、今日も元気にサイリウムを振っています。
宮崎でのMV撮影から時が流れ、B小町は勢いに乗っていた。きっかけはやはりMVだ。完成したMVは通常のアイドルMVと比較しても頭が一つや二つ抜けた完成度を誇っていた。
そして、その中心に居たのは星野ルビー。
両目の瞳に星を宿し、まるで引力のように人々を惹きつけたルビーは、最早全盛期のアイを彷彿とさせる域にまで達していた。
再生回数は脅威の2000万再生をマーク。さらに、この機を逃す筈がない社長の斉藤壱護はコラボ打診を掛けまくり、加えてアクアとセットでルビーをバラエティ番組に売り込んだ事で、B小町はその知名度を飛躍的に上昇させていた。
しかし、苺プロが活気付いている一方で、アクアだけは少し思い悩んでいた。
原因は、もちろんルビーのことである。
sideアクア
ルビーの前世を知った事で、俺は恋愛面において非常にマズい事になっている。そのせいで精神が揺らいでいたのだろう。
最近は、夢の中でかつて復讐を囁いて来ていた過去の自身の幻影達とも再び顔を合わせるようになった。ただし、彼らと話す話題はもう復讐の話ではなくなった。
「……まさか、さりなちゃんがあの約束をずっと覚えていたなんてなぁ……。あの時は、さりなちゃんが少しでも長生きしてくれるならと思って言った言葉だった。生きていてくれるなら俺は責任だって取ったかもしれないが、元気になって、病室の外に出てたくさんの人に出会えたら、その時は俺なんかよりずっと、さりなちゃんが好きになる人ができると思ったんだ……」
そう言ったのは前世の俺、雨宮吾郎の姿をした幻影だった。もう見ることはないだろうと思っていたのに、まさかこんな形でまた会うことになるなんてな。
「結果は、ご覧の通りですけどね」
すると今度は、今世の幼い頃の姿をした僕の幻影がどこか呆れたような物言いをする。
「どうするんですか?ただでさえ前世でロリコン疑惑賭けられていたのに、今度は疑惑どころか、このままだと確実に民法違反ですよ。それに、あの感じだと
「くっ!」
くっ!じゃねえよ……幻影の二人の会話を聞いてつい突っ込んでしまった。
さりなちゃんがルビーとして今世で元気に生きて、アイドルになる夢を叶えてくれているのはとても嬉しい。しかし、まさか、生まれ変わってもずっと俺に想いを寄せていたとは夢にも思わなかった。どうすんだ。今世では実の妹だぞ!
……何より、結局俺はさりなちゃんを救えず、一度は何も出来ずアイを失いかけたようなやつだ。きっと相応しくないだろう。
なお、そんなことを思っているアクアだが、その後はシスコンフィルターに加えて”さりなちゃんフィルター”を追加で導入したため、アクアがルビーに相応しいと納得する存在が現れる可能性は、はっきり言って絶無だった。
「大体ビジネスカップルとはいえ、あかねちゃんという彼女がいるのに最低ですね!その点幼かった僕は……」
「でもお前、有馬から好意向けられてたの知ってて好感度稼いでいただろう」
「そ、それは〜……ほら、彼女とは何の打算も無く無駄な会話とか出来たのが居心地良くて……」
尚も続く幻影達の会話を聞いてアクアは一つの結論に達した。
全員マジでダメじゃねぇか。
アクアは、これまでの恋愛面での振る舞いに深く後悔した。
このままだとこの問題は解決しそうにない。もういっそ、今度頼りになりそうな人に相談してみるか……
とりあえず、アクアは問題を先送りにすることにした。
「とにかく、複雑な関係は一旦忘れよう。まずは役者として大成すること!だって僕達はまだアイの望みを何一つ叶えていないんだから」
「あと、気をつけろよ。俺達の寝床は既に侵略されているぞ。早く目を覚ませ」
おい、それってどういう……
そこでアクアは目を覚ました。
すると、アクアは違和感に苛まれる。
おかしい。一人で寝た筈なのに、隣から人の気配を感じる。
「まさか……」
「ふあ〜……おはよう!お兄ちゃん!」
「なんでいるんだ…ルビー……!?」
「なんで?妹の私がお兄ちゃんとずっと一緒に過ごすのは自然の摂理なんですけど。与えられた当然の権利なんですけど」
真顔でそう言うと、ルビーは、その後もなかなかアクアから離れようとしなかった。
マズイマズイマズイ……アイに見られてたら色々勘違いされて終わってしまう……!
結局、幸いなことにルビーがまだ純情?だったおかげで、アクアはかろうじて
星野ルビーには、ずっと側にいてくれた大切な人がいる。
その人物の名前は、雨宮吾郎。今は生まれ変わって星野アクアという名前になった実の兄にあたる人物だ。
前世の天童寺さりなにとって、雨宮吾郎と過ごした時間は辛い人生の中で数少ない幸せな時間だった。
雨宮吾郎という存在は、さりなにとって生きていく上での大きな支えだった。
そんな彼女は、二つの光を手にした。
それが、星野アイと星野アクアだ。
今世では、生きる希望だったアイドルのアイと、生きる支えだったアクアが家族になって愛してくれた。彼女にとって、幸せの全てと言える二人と家族になれたことは、この上ない幸せだった。
後は運命の相手と結ばれることで全てを手に入れられる。ルビーはそう思っていた。
しかし、彼女の前には、法律の壁と、恋のライバル達が立ち塞がる。
仕事上の関係と言い張っているとはいえ、星野アクアの隣に立ち、徐々にアクアの心を溶かしつつある天才女優、黒川あかね。彼女とルビーの仲は良好だが、恋の上では互いに最大の脅威として認識しあっている。
また、同じB小町に所属している有馬かなも侮れない。明確にアクアに好意を向けている彼女は、アクアと気軽に話せる幼馴染ポジションと言える地位を確立しているからだ。
それでも、ルビーは負ける気はさらさらなかった。
「もし結婚するならどんな人?かぁ……う〜ん……今までそういう事考えたことなかったけど、少なくともお兄ちゃんよりカッコいい人が良いですね☆」
星野ルビーは超絶ブラコンである。
ルビーは番組で異性に対する話題を振られる度に、恋愛にあまり興味がない事を匂わせつつ、兄妹仲の良さを積極的にアピールしていた。
幸い、ルビーの雰囲気が変わったことで少し疑いを持ってしまっていたルビーのファン達も、この発言によってホッとして胸を撫で下ろした。
(私が
実際は、これ以上ない不安材料であることを、ファンは未だ知らずにいた。
星野ルビーには才能がある。
その本心を隠して嘘と本当を織り交ぜて、ルビーは次々と人々を虜にしていく。
愛を手に入れた事で初めて自覚して覚醒したその才能は、あっという間にルビーを高みへと導いて行った。
そんなルビーの姿を見て、最初は、他人にも自分にも嘘を吐かず綺麗にまっすぐアイドルを目指すのを辞めたルビーにアクアも少し思うところがあった。
「
「だからねお兄ちゃん、約束通り私を推してくれるよね☆」
「……当たり前だ。ルビーは誰よりも可愛いアイドルだからな」
アクアはあっさり陥落した。
結局アクアは、純粋なままでいてほしいと心の中では思いつつも、ルビーのアイドルに対する覚悟と思いを尊重することに決めたのだ。
その後は……
「うおーっ!!!ルビー!!かな!!MEM!!」
アクアは仕事の合間、出来る限りライブに通い詰めるようになった。
「そんなこと言われたら推すしかないだろぉ!!」
かくして、仲違いフラグは完全に消滅してしまいましたとさ。
「かなちゃん!かなちゃん!かなちゃん!」
そして、最近は都合が合えばあかねも一緒に着いて来るようになった。
MEMちょとは番組で共演し、星野ルビーと有馬かなとはちょっと複雑な関係の彼女だが、今では立派なB小町のファンである。今日もまた、あかねは有馬かなのグッズフル装備を纏って来ていた。
しかし、最後の意地なのか、何故か両手のサイリウムだけはMEMちょとルビーの色のもので、最後までかなの色のサイリウムだけは握らなかった。
黒川あかねは、ちょっとだけ、アイドル有馬かなに対してだけは色々めんどくさいファンだった。
「なんで有馬の色のサイリウムは振らないんだ?」
「アクアくん……それだけは駄目だよ。それをやったら、私はどうしようもないかなちゃんのファンになってしまうから」
「……そうか」
もう手遅れだと思うけどな。という言葉をアクアは何とか飲み込んだ。
「今日も来てますねあのカップル。爆発して欲しいと思う事もありますけど、結構ガチで推してるの見るとどこか憎めないですよね」
「彼氏の方からはアイドルファンとしての相当な年季を感じる。まるで生まれながらにしてアイドルファンだったかのようだ。ふむ、特にルビちゃん推しか……対して彼女の方は最近ファンになった娘のようだ。そしてかなちゃん推しか……しかし、かなちゃんに対する思いにはどこか長年の……」
「店長ェ……」
「アクアみ〜つけた☆今日はあかねちゃんと一緒だねー」
そして、そんなアクア達の様子を密かに見守っている?存在が他にもいた。
「やるじゃないか。星野アクア」
「あかねちゃん良い子だね〜。アクアはもっと押していかないと!」
「……こういうのは、少年のプライベートを尊重する為にもあまり良くないことなんじゃないか?」
「……リピアくん。母親として、息子が健全な恋愛をしているか確かめることはとーっても重要なことなんだよ!」
「……そういうものなのか」
また一つ、リピアは人類について学びを得た。
だが、もちろんアイが言ったことは嘘である。ただ、息子の恋愛模様が気になっただけだった。
リピアがそれに気づくのは、まだ先の話だった。
おまけ
その日、メフィラスは一人の男を訪ねていた。
「脚本はできましたか?五反田監督」
「おお、来たか宇宙人。バッチリだ。間違いなく、この映画は世界に名を残すものになる!」
メフィラスが訪ねたのは
「後は資金やら配給やらをどうするかだが……」
「そちらは、Mr.鏑木にお願いしています。もっとも、私の計画の最大のスポンサーはこの国の政府、そして、出資者は私です。何も問題はないでしょう」
「準備万端だな!流石は宇宙人様だ!」
「この星で初めて撮られる本物の宇宙人の映画か……。かのス◯ルバーグだって撮れなかったものを俺が撮れると考えると、込み上げてくるものがあるなぁ」
夢を追い続けた男は、しみじみと語った。この男、映画のためにあっさりとメフィラスと契約してしまったのだ。もっとも、
(キャスティングの時だけ、やたらと口を出してきたからなこの宇宙人。絶対に崇高な目的だけじゃねえな。まあ、別に文句のないキャスティングだから問題はないが)
「そういや、いつも一緒にいる宇宙人二号はどうしたんだ?」
「少し意見の相違で喧嘩をしました。まあ、喧嘩するほど仲が良いと言う言葉があるぐらいです。問題はないでしょう」
「私の
そう言って嗤った男の顔は、紛れもない宇宙から来た侵略者の顔だった。
「あら!今日も来てたのねメフィラスさん!今晩もご飯食べていくわよねぇ!」
「もちろんです。”家庭の味”。私の好きな言葉です」
次回、いよいよ最終章!『シン・メフィラス』編
もしもアクアが恋愛相談するとしたら、誰が一番ベストだと思いますか?
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姫川(異母兄)
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メルトくん(ある意味先輩)
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不知火フリル(妹の友達)
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???(頭外星人枠)
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???(頭日本神話枠)
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その他