MAGES.と5pb.、親戚の集まりでのお話

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ヤマもオチもありません


エフォート・トゥ・ライク

 「MAGES.、何やってるの?」

 

 親戚の集まりだというのに、部屋の隅でスマホを横持ちしている従妹に話しかける。

 

 「ゲームだが……それがどうかしたのか?」

 

 あっけらかんと彼女は答え、こちらに向いていた瞳を再び液晶画面に戻した。

 

 「……楽しい?」

 

 「ああ」

 

 ボクとMAGES.は、お互いがまだ言葉も話せない時から一緒に遊んでいたらしく、それなりに長い付き合いだ。そして、彼女がこういった雰囲気の場があまり好きではないことも知っている。それはボクの方もなんだけど。

 

 「お腹すいてない?」

 

 「大丈夫だ」

 

 「何か飲む?」

 

 「……ドュクプェは?」

 

 「……無いよ、MAGES.以外に飲む人いないでしょ?」

 

 「なら要らない」

 

 こんな調子の会話をしつつも、MAGES.は左右の親指をせわしなく動かし、それに連動して画面のロボット?のようなキャラクターも同様にせわしなく動き、ミサイルやビームで敵と思わしきキャラクターを倒してゆく。

 

 「MAGES.、上手いね」

 

 「上には上がいるさ」

 

 「ふぅん……」

 

    ◇   ◇   ◇ 

 

 「ふぅ……」

 

 眉間を抑えて、一つ深い息を漏らす。私の左肩にかかっていた重みもいつの間にか消えており、未だ騒がしいテーブルからぽつんと隔絶されたような感じでいる。

 5pb.を探して部屋を見渡すが、両手足の指を使っても数えきれないほどの人数がひしめき、親戚の子供達は私の目の前でプロレスもどきの取っ組み合いを始めた。仕方なく捜索を打ち切り、1時間ほど腰を預けた場所を立ち去る。

 まだしばらくお開きにはならないだろう……私は外の空気を吸おうと、物音を立てずにこっそりと玄関から抜け出した。

 

 

 

 リーンボックスは中心地こそテクノロジーを前面に押し出した街のつくりだが、少し南に進めば山間ののどかな農村が広がっている。私達の祖父の家も、周囲を山に囲まれた、一言で言ってしまえば田舎の古民家だ。だが星はよく見える。街のギラギラしたネオンライトという商売敵が居なくなった星たちは、己を主張しようと胸を張っているように見えた。

 最高のロケーションといってもよいのだろうが、ここがプラネテューヌのラボなら、今すぐにでも冷蔵庫からドュクプェを取り出すのに……自販機は歩いて1分ほどの距離にあったが、ドュクプェはラインナップされていなかったはずだ。諦めて室内に戻ろうと玄関のドアを開ける。

 

 「うわっ!?」

 

 「どうしたんだ、そんなに驚いて」

 

 そこには5pb.がいた。

 

 「急にドアが開いたから……というかMAGES.、やっぱり外にいたんだね」

 

 「ああ………………っ!?」

 

 その時の私は、まるで獲物を見つけたライオンやチーターのような目つきをしていたと思う。それもそのはず、5pb.が両手で大事そうに抱えていたのは、私にとっての獲物(ドュクプェ)だったからだ。

 

 「5pb.、それは?」

 

 「ん?ドュクプェだよ?」

 

 そう言う事じゃなくて

 

 「無いって言っていただろう?」

 

 「ああ、叔父さんが買ってたんだって、飲むよね?」

 

 そこからは一言も発さずに、私は首を小刻みに上下させながら5pb.が差し出した350ml缶を受け取る。一体どういう風の吹き回しかは知らないが、後で父には感謝しておかなければなるまい。

 

 

 

 

 

 プシュッという心地よい音が、月に照らされた木に、石に、土に染みわたってゆく。私たちは縁側に腰かけ、私はドュクプェを飲むため、5pb.は星空を見上げるために上を向く。

 

 「綺麗……」

 

 「そうだな……」

 

 「去年は曇ってたから、なんだか久しぶり、こんなにきれいな星見るの」

 

 なんだかやけに嬉しそうだな。そう言いかけて、やめた。早々と空になったアルミ缶を傍らに置き、自由になった両手で1つ大きな伸びをする。

 

 「うわ、MAGES.もう飲んじゃったの?」

 

 「ああ、1缶では足りないな」

 

 なぜか得意げに答える。

 

 「じゃあ、ボクの飲む?」

 

 そういって、5pb.は2口ほど、それもチビチビとしか口をつけていないドュクプェをこちらに差し出す。

 

 「なんだ、そのくらいしか飲まないんなら、初めから私に渡せばよかったのに」

 

 「うん、まあそうなんだけどね……」

 

 5pb.が俯く。

 

 「そんな顔をするな、私はドュクプェが大好きだが、お前はあまり好みでない、それだけだろう。誰だって多少の好き嫌いはあるのだから、気にする必要はない」

 

 「うん、だけど……」

 

 地中に埋まっていた植物の種が、光に導かれ土の中から芽を出すように俯いた顔を星空に向け、呟くように5pb.は切り出す。

 

 「MAGES.の好きなものだから、ボクも好きになれたら、2人で一緒に楽しめるかなって……」

 

  体温が一気に上がった、ような気がした。5pb.は何食わぬ顔で、はいどうぞと再びドュクプェを差し出してくる。

 

 「どうしたの?飲まないの?」

 

 私の帽子を避けるように、彼女が上目遣いでこちらをのぞき込んでいるのが、月明かりだけでもはっきりと分かった。

 

 「の、飲む!」

 

 やや強引に彼女の手からドュクプェを取り、少し炭酸の抜けたそれを胃に流し込む。ぬるくなりかけてすらいたが、1本目よりも体のいたる所に染みわたり、冷やしてくれるような気がした。


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