クソデカ激重感情に気が付かない一般TS最強ロリ   作:れもんぷりん

8 / 8
 受験期で更新できなくてすみません。
 息抜きで読んだ原神TSロリの神作に触発されて、一話だけ投稿します。


鬼ごっこって鬼ガン不利だよね

 

 あたしは担任になる先生に連れられて教室の前まで来ていた。

 裏から手を回してもらって、“蜃気楼”が戦闘を行ったであろうクラスに編入出来る様になっている。

 

「ふぅ……」

 

 柄にもなく緊張してしまう。

 実は潜入捜査というのはこれが初めてなのだ。

 中でも特殊な事例である中学校への潜入。故にマニュアルというものが存在しない。

 

 あたしに上手く出来るだろうか、と不安になる。

 いいや、出来ると胸を叩いた。

 

「じゃあ、入ってくれ〜」

 

 呼ばれた。

 メイドのウララが言っていた。

 こういうのは第一印象が大切らしい。

 

 あたしは真面目で優等生な感じを意識することにした。

 誰にも話しかけられない方が捜査をしやすいし、誰も寄せ付けない雰囲気も付け足して……。

 

 よし、完成。

 私の思い描く高飛車な優等生が確立された。

 後はこれを演じるだけ。

 あたしの得意分野だ。

 

 自分の中に作り上げた人物像を落とし込んでいく。

 ひたり、ひたり、と。足先まで浸透していく様に。

 

 扉を開け、足を踏み出す。

 どこまでも優雅に美しく、手の届かない高嶺の花を演じきる。

 幸い、あたしの容姿は整っている方だし、やりやすい。

 

「軽い自己紹介をしてもらえるかな?」

「分かりました」

 

 ここで初めて前を向く。

 ゆっくりと辺りを見渡した後、鋭い目線を意識して正面を睨め付けた。

 これでかなり“キツい”お嬢様な感じになっただろう。

 

 その証拠に教室の誰もがぼーっと私を見ている。

 圧倒されているのだろう。私の作り上げた偶像に。

 

 ん?

 なんか凄い視線を感じるんだけど……。

 穴が開くんじゃ無いかと思える程あたしを強く見つめる視線を嗅ぎ取った。

 

 そして視線を少しずつ落としていって……。

 

 

 いた。

 

 

 夜をそのまま落とし込んだかの様な、艶やかに佇む美しい黒髪。

 透明感のある白い肌に人形の様に整った、それでいて冷たさを感じさせない顔立ち。

 

 そしてあたしを映す金色の瞳。

 

 ゾクっっっっとした。

 こんな生物が居て良いのかと思わされた。

 一つの芸術品として“完成”されている。

 

 この子だ、と思った。

 名前が分からずとも感じられる、この存在感。

 

 “違う”。

 あたし達とは生きている“ベクトル”がまるで異なっている。

 

 じゃあこの子が“名前の無い死神”?

 いや、情報によると“名前の無い死神”は男であるらしい。

 ならばこの少女は何の関係も無い一般人だろう。

 

 いや驚いた。

 こんな子もいるんだね。いつかアイドルにスカウトされるんじゃないかな。

 

 そんな子が微動だにせずあたしを凝視してくるのだ。

 思わず身を震わせてしまってもおかしくないだろう。

 

 でもこんな子がいるなら安心かな。

 きっとクラスの男子はこの子に夢中だ。

 あたしの捜査の邪魔をすることは無いだろう。

 

 ま、じゃあ自己紹介も抑えめで行こうかしら。

 ちょっとキツさを抑えて、クラスで孤立しない程度で……。

 

「ニーニャ・アレクサンドラ。好きなものは無し。嫌いなものも無し。用がある時だけ話しかけなさい」

 

 こんなもんでしょう。

 元々考えていた自己紹介よりかなりマシだ。

 何があっても話しかけるなと言うつもりだったのだから。

 

 しーんとする教室内。

 まあ当然だろう。それを狙っていたのだから問題無い。

 そもそもあたしは友達と仲良しこよしする為にこの学校に来たのではないのだから。

 

 一ヶ月もあれば捜査を終えてみせる。

 そしたらまた転校という形で花園中学校から抜ける事になる。

 その時、未練になるような無駄な繋がりは作りたくない。

 

 

「ねー! ニーニャちゃんって呼んでも良い!?」

 

 

 作りたくな……

 

 

「へぇ〜、ニーニャちゃんって字ちょー綺麗! すごい!」

 

 

 作り……

 

 

「ねえニーニャちゃん! 鬼ごっこしよ!」

 

 

 何なのよあんたはぁぁぁぁぁあ!!!!

 まさかの伏兵だった。

 確かにクラスの男子も女子も、自己紹介での牽制が効いたのかあたしに話しかけてはこなかった。

 

 だが、まさか……。

 こんな人形みたいな子が少年みたいな活発さであたしに話しかけてくるなんて……!

 

 この、ツナナという名前の少女は一時間目の休み時間から昼休みの今まで、休み時間になる度にあたしの席まで嬉しそうな顔で走ってきて、話しかけて来る。

 これじゃあ全く捜査が進まないじゃない……!

 

「ツナちゃん、ニーニャさんは何か用事がありそうだよ?」

 

 唯一の救いはツナナの側にずっといるこの少女だろう。

 何故かは分からないが、毎回ツナナをあたしから離そうとしてくれる。

 

「え……。おにごっこ、しないの……?」

 

 そんなに悲しそうな顔をしないで!

 なんかあたしが悪者みたいじゃない!

  どうしろって言うのよ!

 

「い、いいけど。少し用を片付けてからね」

 

 こう言うしか無いじゃない!

 捨てられた赤子みたいな雰囲気を纏わせながら目に涙を溜めるツナナを見ていると、何だか心が痛くなる。

 これは仕方が無い。まさか中学生女子にこんな子がいるなんて思わなかった。

殆ど園児ね。

 

 鬼ごっこ?

 そういう遊びは小学生までなんじゃないの!?

 とツッコミたい気持ちはあれど、とても本人に言う気にはなれない。

 

「ほ、ほんとか!?」

 

 ぱぁぁっっ! っと聞こえてきそうな程満面の笑みを浮かべるツナナを見ていると、文句さえ浮かんでこなかった。

 どうしよう……と心の中で考える。

 

 正直、凄く邪魔である。

 ツナナが休み時間の度に話しかけて来るせいで、全く隙が無い。

 

 だが、会話をしなかったら『うぅ、死んじゃう』みたいな顔であたしを見つめて来るツナナ。

 放ってはおけない。

 

「ほら、泣かない泣かない。すぐ行くから待ってなさい」

 

 そう返してしまうのもまた、仕方のない事だろう。

 

 

 

 

 

 

 気に入らない。

 

 気に入らない気に入らない。

 

 気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない!!!!!!

 

 

 転校初日から、何の理由も無くツナちゃんと仲良さげに話すこの女が気に入らない。

 

 話しかけられておきながら、心の中では邪魔だと考えているこの女が何よりも気に入らない。

 

 法律が無ければ今すぐにでも殺してやるのに。

 お前みたいな奴がツナちゃんに気に入られていることが気に入らない。

 

 クソクソクソクソクソクソ!

 腹黒い癖に良い顔しやがって。

 

 お前なんかにツナちゃんを渡すもんか。

 

 ツナちゃんがこのいけすかない女に話しかける理由は分かっている。

 至極美しく、尊重すべき理由だ。

 

 この女に一人になって欲しくない。

 友達が欲しい。

 

 どちらも素晴らしい、ツナちゃんらしい理由だ。

 正直惚れた。いやもうとっくに惚れてたけど。

 

 惚れ直したって感じだ。

 

 私に話しかけてくれた時と同じ理由。

 何だか、私だけが持っていた特別が薄れていくようで……。

 

 胸のムカムカが収まらない。

 

 これが凄く理不尽な感情だって云うのは分かってる。

 ニーニャさんにだって、事情がある。

 きっと話しかけられたくない理由があるんだろう。

 

 けど、理性を食いちぎる程暴れ回る感情論がある。

 私を差し置いて、ツナちゃんに話しかけられているお前がその“事情”とやらでツナちゃんの想いを無碍にするのが許せない。

 

 いつか絶対引き離してやる。

 お前なんかに渡すか。

 

 ツナちゃんは私のだ。

 私だけの人なんだ。

 

 私がツナちゃんにとって、絶対の一番なんだ。

 

 例え何を言われたって、何があったって。

 

 この席は譲らない!!!!

 

 

 

 

 軽めの調査を終えた。

 現場に残っていた異能痕跡は既に消えかかっているが、人の記憶というものはそう簡単に薄れるものではない。

 

 なのでまずは噂の調査から始めることにした。

 あたしはあくまで何も知らない転校生。直接嗅ぎ回るのは好ましくない。

 不自然にならない程度、転校生が学校を見回っている体で校内を歩き回る。

 

 そこで出てくる話はやはり他愛もないものばかりだった。

 ハズレか……、そう思った時。

 

 

「やっぱり木洩日さんって、ちょっとおかしいよな」

 

 

 そんな話し声が聞こえてきた。

 正直、気になる。捜査には関係しないが、あの少女について何か知ることが出来るかもしれない。

 

「あぁ、分かる。なんか全体的にこう、奇妙だよな」

 

 それはあたしも感じていた事だ。

 けど今知りたいのはそんな抽象的な事じゃない。具体的に述べなさいよ!

 

「そうそう。話しかけるだけでどこかから射抜く様な視線を感じるっていうかさ」

「あぁ〜! それだわ! なんかすっげえ重い視線を感じるよな」

 

 

 ……それはあの子のじゃないわよ!

 ずっとツナナの隣にいるリカって女の子の視線よ!

 

 あれ?

 もしかして今ツナナに友達が少ないのって、リカって子のせいなのかしら?

 だとするとちょっと可哀想かも……、いや、本人が嫌じゃなさそうだから良いか。

 

 そもそもあたしにそんなことは関係ないわ。

 捜査が終わればツナナともお別れだしね。

 

 何故だか胸がズキッ、と痛んだ気がした。

 

 

 

「じゃあ、俺が鬼だな!」

「うん!」

 

 あたしはツナナの元気な声に頷く。

 リカも元気な返事を返して、やる気満々だ。

 

「範囲は学校全体! 制限時間は10分で、最後に鬼だった人が負け!」

「はーい!」

 

 ふーん、こういうのって運動場だけでやるものじゃないのね。

 学校全体か、ちょっと面白くなってきたじゃない。

 あたしはフラグメンツで幼少期から鍛錬を積んできたのよ。

 

 まあちょっと大人気ないかな、って思うけど……

 勝負はいつでも本気でっていうのは常識だし。

 

 容赦無く千切るわ。

 

「じゅー! きゅー! はぁーち!」

 

 ツナナがカウントを始める。

 リカはさっさと校舎の方へ走って行った。

 あたしは運動場で良いわね。出来るだけ距離を取っておこうかしら。

 

 大体70メートル程距離を取った。

 初めから離れすぎたら可哀想だし、これくらいが良いでしょう。

 

「さーん、にぃー、いーち!」

 

 そろそろ始まるわね。

 鬼ごっこなんて初めてだし、ちょっとワクワクするわ。

 

 なんて、思っていた。

 ふとツナナの方を向いて……

 

 吸い込まれる様な金色の瞳と、目が合った。

 

 

 

「ゼロ」

 

 

 

 一歩目を踏み出した瞬間、つまり初速。

 ツナナの速度はその時点で頂点に達していた。

 

 同時に二歩目で体全体をバネの様に伸縮、踏み込みで体に返された衝撃を身体中に巡らせる。

 暴れ回る力を一方向に向け、まっすぐ解放。

 ニーニャの視界から消えた。

 

「え?」

 

 思わず声を漏らすニーニャの右側から孤を描くように接近。

 何度もステップを入れ、速度を調整。

 その場で一回転し、力を回す。

 

 それを右腕に流し、鞭の様に先端をしならせた。

 ボッ! っと空気が擦れる音がして。

 

「クッ!」

 

 呆然とするニーニャが動けたのは、ひとえに彼女も天才だったからだろう。

 生まれてから今まで、努力をし続けた天才であるニーニャだからこそツナナの右手に反応できた。

 

 上半身を逸らし、勢いそのままにバック転を二回。

 ツナナからの追撃を何とか躱し、距離を取る。

 

「ほっ!? 流石ニーニャちゃん! やるなぁ!」

 

 確かに速度は緩めた。

 あのまま右手を振り抜いていたら、中学生女子の体くらいならそのまま引き千切る程度の威力はあったから。

 擬似的な寸止めになるように手加減した。

 

 それでも、それがツナナの一撃であったことは確か。

 この時点でツナナはニーニャがかなりの鬼ごっこ達人だと判断した。

 アホだ。

 

 対してニーニャは体の奥底から流れ出てくる冷や汗が止まらなかった。

 開いていた70メートルという距離を詰め、右手で触れられそうになるまで、僅か1秒。

 本当に人なのか? と疑いたくなる速度だ。

 

 つまり、ツナナはニーニャと同じ異能者である可能性がある。

 だが本人にその様子は無いので、自覚していない異能者である可能性も高い。

 

 見極めなければならない。

 この鬼ごっこで。

 

 クマは戯れているつもりでも人を殺してしまう。

 

 ニーニャ、この年にして命懸けの捜査任務である。

 その概要が鬼ごっこだと言うのだから、人生とは分からないものだろう。




 リカちゃんの出番はちゃんとありますよ〜
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