傑にはインチキ霊能者の師匠がいた。

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お師匠様は/愛弟子は 0能力者

 理子ちゃんを守れなかった喪失感に悩まされていた私は、迷いに迷って旧友と会うことにした。

 その子は非術師だ。……そして、自称インチキ霊能力者だ。

 連絡をして、喫茶店に向かうと、怪しげな格好をしたその女の子はビシッと私を指さした。

 

 

「あんた、相変わらず憑かれているね!! それも大量に!」

「あはは」

「ほんと、そんだけ憑かれてなんで生きてるのか不思議だね。これだから0能力者は強いね!」

「そうだね」

 

 0能者は君なんだけどね。いや。見えなくても感じてはいるんだから違うか。

 

「そんなあんたに、霊能グッズを特別価格で売ってやるよ」

「うん。一番高いのが欲しい」

「え、ええ……? あんた、値段相場知ってるのかい?」

「一応、貯金持ってきたよ」

 

 鞄から、降ろしてきた札束を出す。

 

「ひゃっ ……本気なのかい? なにか困っているのかい?」

「実は、そうなんだ。実は、祓い屋の組織に入ってね」

「無謀! その引き寄せまくる体質でそれは無謀じゃないかい!?」

「力不足で困っているんだ」

「それは……やめたら?」

「そういうわけにはいかないんだよ」

「うーん……。消耗品が多いからね。ちょっと一回の報酬の値段と頻度、内容を教えなさい。その予算内で考えるから」

「ありがとう、師匠」

「懐かしいね。仕方ない、一度弟子入りを許したんだ、とことん付き合ってやるよ」

 

 両親に預けて封印していた霊能グッズも送ってもらった。

 力がないなら、ないなりに頑張ろう。

  

 

 

 

 

 そうして、家から荷物が届いた。

 

「なんですか? その荷物。持ちますよ!」

 

 灰原が声をかけてくる。

 

「ありがとう。ちょうどいい。灰原と七海は弱いから、これあげるよ」

「なんですか、これ?」

「私が弱い時に使っていた気休めのおまじない。これで丸を書いてその中にいると、呪霊に見つかりにくくなる、かもしれない」

「なんですか、それ」

「私の師匠、インチキ霊能者でさ。非術師だけどこういうお呪いよく教えてくれたんだよ。その時々で効いたり効かなかったりだけど、効果が全くないわけじゃなくてね。呪霊操術があるからって封印してたけど、やっぱり使えるものはなんでも使おうって。ただ、私だけこういうの使うのってなんか恥ずかしくてさ。巻き込ませてよ」

「ありがとうございます!」

「民間療法というものですか」

「そうそう。気休めのお守り程度に貰ってよ。あっ 悟には笑われちゃうから内緒ね。本来四級を相手にどうこうしているような非術師の使うものだからさ」

「3人だけの秘密ですね!」

「そういうこと」

 

それから、しばらくして七海と灰原が興奮して話しかけてきた。

 

「凄いですね、民間療法!」

「効果にドン引きしてます」

「そうかな」

「夏油さんは感覚マヒしてるんですよ、私たちが戦う低級相手なら十分です」

「効かない時もあるから、過信はしないようにね?」

「わかりました。しかし、これもはやインチキ霊能者ではないですよ」

「でも非術師なんだよね。見えないし、私のことも能力なしの0能力者あつかいなんだよ」

「お互い様ですね。夏油さんも非術師扱いしてますし」

「……それもそうだね。いや。尊敬はしているんだよ」

「ぜひ紹介していただきたいものですね」

「いいよ」

 

 

 ということで、七海と灰原に紹介をした。

 

「この子が私の師匠だよ。御影師匠、灰原と七海と言って、祓い屋の組織で知り合った後輩」

「よろしくね。祓い屋の組織に入ったって事だけど、足を引っ張って困らせてないかい?」

「いえ、そんな!」

「むしろ助けていただいてばかりですよ!」

「で、あんた達も私に弟子入りしたいって?」

「ええ、お願いします」

「よろしくお願いします!」

「七海、灰原?」

「基礎訓練も大事ですが、搦め手を覚えるのも非常に有効かと」

「うんうん。後進を育成するのも大事な仕事だからね」

 

 そうして、休日には御影師匠と訓練をする事になったのだが。

 私達の勤務体系を知って、師匠は激怒した。

 

「ちっとは休みな! 私はあんたらを使い潰させるために教えてるんじゃないんだよ! なんて学校だい! 生徒を守らないなんて!」

 

 心配した師匠は、灰原達の任務に同行。

 そんな時に、よりにもよって、いや、師匠がいて良かったというべきか。1級クラスの呪霊任務が来て、師匠はブチ切れた。

 

 学校に殴り込みに来る勢いだったので、私達は休みを申請せざるを得なかった。

 

 そうして、師匠の事が学校に露見したのだった。

 師匠は学校に呼び出され、師匠もまた文句を言ってやると荒ぶっていた。

 私は悟達を呼ぶように言われ、心配だったが急いで悟を連れてきた。

 

「それでは、御影さん。貴方の技を見せていただきたい」

「私は子供らに休みを取らせろ、危険なことはさせるなと言ってるんだよ! それがなんだい!? 霊能勝負をしようだぁ!? 見下げ果てた奴らだね! 弱い者の言うことは聞く必要がないとでも言うつもりかい!? そういう問題じゃないんだよ!」

「しかし、この仕事は人手不足で、そこは貴方もお分かりでしょう」

「だからこそ、死なせないよう努力するのが賢い人間ってもんなんだよ! 傑! あんたもなんか言ってやんな! ……隣の子達はお友達かい?」

「悟。こちら、御影師匠。御影師匠。こちら、私の友人でクラスメイトの悟と硝子」

 

 紹介をすると、悟は師匠に視線を送った。

 その途端、師匠の持っていた数珠が弾け飛んだ。沈黙があたりを覆った。

 

 その数珠をあるいは防ぎ、あるいは私の所に飛んだのを悟は受け止める。

 そして、悟は数珠をじっと見た。数珠は割れて砂になった。ああ……。師匠の大事にしていたとっておきの数珠が……。

 

「すげーな。呪力が見えない。なのに、ちゃんとなんらかの機能はあるみたいだな。……おねーさん。『見ても』いい?」

「……数珠みたいに爆散しないかい? ちょっと待ちな。持ってる道具を傍に避けるから、それは見ないようにしておくれ」

「見てみたいけど、まあわかった。俺は五条悟。六眼って、よく見える目を持ってる」

「よく破壊できる目の間違いじゃないかね……」

「見るだけで壊れたのはこの数珠が初めてだけど?」

 

 そして、悟の診断は。

 

「俺の目は、普通の人だと言ってる。この場合、六眼をすり抜ける特殊能力者って事な」

「なんだと」

「道具は見ないようにするから、効果を教えてよ。実験したい! 傑は知ってるんだろ? ずるい」

「まあ、子供に罪はないね。それはいいけど、傑達に休暇を与える話はどうなったんだい」

「等級違いはよくなかったけど、仕事が多いのは仕方ねーよ。人いねーもん。おねーさんが手伝ってくれたら嬉しいなって」

「焼け石に水さ。何でもかんでも依頼をとってくるんじゃなく、制限しなと言ってるんだ。金より命だろう?」

「ここ、公立学校なの。つまり、国からの依頼ってこと。断れねーんだよ」

「国からの依頼窓口があったなんてねぇ。なるほど……傑。学校やめな」

「なんでそうなるんですか!??」

「使い潰される嫌な予感ビンビンだからだよ! 傑は間違いなく真面目に使い潰されるタイプだ、あんたに器用さはないよ」

「そうかな?」

「そうだよ!」

「じゃあ、大人なおねーさんが手助けしてくれればいーじゃん」

 

 悟はニコニコと笑った。

 私と師匠はため息をついた。

 

「さ、実験しよ! 傑が師匠って呼ぶやつの腕、俺、見てみたい!」

「腰抜かすんじゃないよ」

 

 

 その後、悟はバカにするかと思っていたが、興味深そうにすごいすごいの連発だった。

 呪力とは違うがなんかあると言うことで、師匠達は暫定的に本人が名乗る通り、霊能者と呼ぶ事となった。

 

 師匠は顔が広いので、師匠をゲットした国は霊能者ネットワークも手に入れたのだった。

 

 

 

 

 

 

「カァーッ! 離反する未来が見えます! 多くの血が見えます。この依頼、大凶!! 仮病を使って三日間眠れば幸運を引き寄せます」

「うわぁ、最悪の占い」

 

 私は、たまたま任務前に師匠の友人に占ってもらったのだが、その占いが最悪だった。疲れているのもあり、本当げんなりとする。

 

「休むか、傑」

「いえ、行きます」

 

 そして学校を出る前に、悟に捕まった。

 

「お前、大凶任務に出るなよばーか! 俺が代わりに行くから!」

 

 どうやら、静かだと思っていたら硝子が悟にチクってたらしい。

 

「占いを信じるのかい? 当たるも八卦当たらぬも八卦だよ」

「だって奴らの占い本物じゃん。本当に離反したらやだし。絶対後悔するし。魘されるし。お前は三日間寝とけよ」

 

 そうして、悟は私を抱き上げて保健室へ。

 あろう事か、注射を私にブッ刺した。睡眠薬か!?

 

 そうして起きたら3日後だった。

 

「おはよ」

「無茶するな、悟!!! 占いかぶれもいい加減にしろよ!」

「……怒んなよ」

「……君、落ち込んでる? 何かあったの?」

「依頼者殴って謹慎食らった」

「悟……。大丈夫かい?」

「御影さんがサポートしてくれて良かったよ、マジで。幼児が虐待されててさぁ。五条家で保護する事になった」

「大変だったね……」

「傑が行かなくて良かった。……俺、傑が離反してたら泣いちゃう」

「別に、私がいなくても君はやってけるでしょ」

「ゼッテー無理」

 

 萎れたような様子の悟に、これは本当に弱っているなと悟る。

 

「悟。今度、硝子と一緒に遊びに行かないかい?」

「行く」

「行く」

「いたのか、硝子……君も疲れてそうだね?」

「急患多すぎるんだよ。本当に休暇ほしい」

「じゃあ、3人で師匠に休暇をおねだりに行こうか」

「そっちの方が早いしな。怒涛の勢いで抗議してくれるし」

「頼りになる師匠を持つと誇らしい」

 

 いつの間にか、硝子も弟子になっていたらしい。

 悟も占いかぶれになってたり、師匠からもらった友情の縁結びのお守りをめちゃくちゃ大事にしてたりしてる。君のそれは行き過ぎだと思うけどね?

 まあ、霊能者さん達って多少凄いのは確かだけど……。

 ただ戦闘力はないので、そこは私の呪霊を護衛においてカバーである。

 

 何体か減ってるから補充しとかないと。

 

 霊能者ってなんだか襲われる事が多いんだよね。私が守るけど。

 

 こういうのができるのが、私が悟に勝てる数少ない長所である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夏油傑は知らない。持っているのが当たり前だから。

 五条悟は知っている。手にしたのが特別だと気づいているから。

 

 そうして、世界は救われて、守られて、でもその功労者達は呪専でヒィヒィ言いながらお守りを作っていた。

 

 世界を危機から救う英雄は評価されても、危機に陥らせない影の功労者は評価されないものなのだ。その、当人達にすら気づかれず終わる。

 

 それでも、助けられた事を知ってて信じて恩に切る。割と素直な所のある五条悟は、今日も占いをお願いして無意識に陰謀を退けるのだった。


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