星野アイ生存ルートです。


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一発ネタ。胸糞注意です。
発案者が書けって言われたので書きました。ちょっと設定違いますけど。

ハッピーエンド系の話を書いていると、こういった話を書きたくなる衝動が溜まってしまいます。なので発散します。


闇堕ち系アイちゃん

 

 

 

 

「社長たちかな?」

 

 

 

聞こえたチャイムにスマホから顔を上げ、星野アイは迎えに出るべく小走りで玄関へ向かった。

 

 

 

今日はアイドルグループ『B小町』にとっての記念すべき初めてのドーム公演の日。

 

不動のセンターにして、今や日本中で知名度を獲得した大人気アイドル『アイ』は、引っ越したばかりの新居で子供たちと一緒に待機していた。

 

 

社長…アイが所属する芸能事務所、苺プロダクションの社長であり、アイにとっては保護者の立場にある男性の『斉藤壱護』がこれから迎えにくるはずだった。

 

 

双子の兄妹…まだ寝起きで寝ぼけている妹の星野瑠美衣(ルビー)と、着替えている兄の星野愛久愛海(アクアマリン)を部屋に置いて、玄関に向かったアイは不用心にもドアチェーンもかけずに扉を開いた。

 

 

 

「―――」

 

 

 

扉を開けてアイの視界に映ったのは、純白のバラを中心とした花束だった。

同時に、花束を持っているフード姿の男が言葉を発した。

 

 

 

 

「ドーム公演おめでとう。双子の子供は元気…?」

 

 

 

 

―――次の瞬間。

 

「っあ…?」

 

アイは強い衝撃を受け、その場に崩れ落ちた。

 

 

「(あれ…?いま…な…にが)」

 

 

花束に気を取られたアイは気づかなかったが、男は片方の手に隠し持っていた鈍器でアイの側頭部を殴っていた。

 

「…ヒ、ヒヒヒ……ご、ごめんね…アイ…俺が助けるから…そこで待ってて…」

 

「(…?………からだ…うごか…ない)」

 

アイは軽度の脳震盪を起こしており、辛うじて意識はあったものの体がまったく動かなかった。

 

「アイ…?」

 

「(アクア……来ちゃだめ…)」

 

異変を感じ取ったのか、奥の扉からアクアが姿を見せている。

 

「アイ!!」

 

「!…見つけたぞ…!このクソガキがっっっ!!」

 

「あがっっっ!?」

 

猛然と走り出した男は、驚きに身を硬直させているアクアの体をサッカーボールのように蹴り飛ばした。

骨が折れるような音と、何か柔らかいものが潰れたような、破裂したような音が聞こえた気がした。

 

「(や…めて…)」

 

薄暗くなっていく意識の中で、アイは男のおぞましい声を聞いた。

 

 

「アイ…お前は殺さないよ……だって俺はアイのファンだから…」

 

…奥の部屋からルビーの声が聞こえる。必死にアクアの名を呼んでいるようだ。

 

「今ならまだ間に合うんだ…ガキは世間にバレてない…」

 

「(やめて…)」

 

「今のうちに始末しちまえば、アイは俺のアイに戻ってくれる…そうだろう?」

 

「(やめて…!)」

 

意識を失う寸前、アイの視界には男の醜悪な笑みが映った。

 

 

「アイ…俺、頑張るから…アイもドーム公演、頑張ってね…」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「(……?…いたっ…)」

 

意識を取り戻したアイは、痛む頭を抑えながらゆっくり目を開けていく。

 

「(私なにして………あっ、そうだ!今日はドームだ!……社長が来たんだっけ…?あれ?)」

 

玄関横の壁にもたれかかっていた体をゆっくりと立ち上がらせながら、アイは強烈な違和感を覚えた。

 

「(この臭いって…)」

 

…むせかえるような臭いがした。それが何の臭いなのかはわかったが、周囲を見てもそれらしきものは見当たらない。

 

「(…なにが…あったっけ…)」

 

アイは震える足を叱咤しながら、寝室を目指して歩いていく。

 

「(部屋で……そうだ、アクアとルビーが待ってる…)」

 

ゆっくり、ゆっくりと。一歩ずつ歩いていく。

早く行かなければいけないのに、なぜか体は言うことを聞いてくれない。

 

「(そろそろ社長が来る…アクアは着替えたかな…ルビーは起きたかな…)」

 

ほんの数メートルしかないのに、部屋にたどり着くまで随分と時間がかかった気がする。

 

「…」

 

震える手でドアノブを掴み、ゆっくりと扉を開ける。

 

「っ」

 

途端に臭いが強くなるが、それでも扉を最後まで開けた。

 

「…アクア…?ルビー…?」

 

アイがベッドに視線を向けると、愛しい子供たちが、赤白模様のベッドの上で横になっているのが見えた。

 

「寝ちゃったの?」

 

子供たちに話しかけるその声はひどく震えていた。

ベッドまでゆっくりと近づきながらアイは声をかけ続ける。

 

「仕方ないなぁ…じゃあ、社長たちが来たらママが起こしてあげるね」

 

アイは子供たちに寄り添うようにベッドに横になり、子供たちの頭を優しく撫で続けた。

 

「(あれ?)」

 

ふと、ベッドから水音がすることに気づいた。

 

「(濡れてる…なんでだろう…?……それに…)」

 

 

―――このベッド、こんなに赤かったっけ

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「(くそっ、ギリギリになっちまった!これじゃアイに何て言われるか…)」

 

斉藤壱護はアイの新居であるマンションのエレベーターに乗りながら、内心で焦りを隠せなかった。

 

今日は今までで一番大事な日だ。苺プロダクション最大の仕事、初のドーム公演。これを機に苺プロは、アイはさらに大きく羽ばたいていくだろう。

だからこそ、時間ギリギリになってしまったので焦っているわけだが。

 

「(そういや、何か下が騒がしかったが…)」

 

エレベーターに乗る前、下の階で数人の人だかりが出来たのが気になったが、結局壱護は時間を優先して

アイたちのいる一室に向かった。

 

「……ん?」

 

呼び鈴を鳴らそうとしたところ、ドアがわずかに開いているのに気づいた。

 

「(開けっ放しかよ!何考えてんだあのクソアイドルは!)」

 

呼び鈴を鳴らした後、ドアを開きながら壱護は中にいるアイたちに声をかけた。

 

「おーい!迎えに来たぞ!ってかドア開いてんぞ!どうなってんだ!」

 

…返事がない。

 

「(なんだ?………!まさか強盗か!?…いやいや、ここのセキュリティは万全のはず…しかし…)」

 

不安を拭いきれなかった壱護は靴を脱いで玄関に上がり、奥の部屋を目指して歩いていく。

 

「俺だー!勝手に入るぞー!(って、なんだこの臭いは!?)」

 

玄関ではわからなかったが、家に上がって部屋に近づくごとに妙な臭いがすることに気が付いた。

 

「おい!いるなら返事しろ!アイ!」

 

壱護は慌てて走り出し、ノックもせずに寝室の扉を開いた。

 

そこには―――

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

その日。日本中に衝撃が走った。

 

とある芸能プロダクションの社長夫妻の子供、当時まだ3歳だった双子の兄妹が殺害されたのだ。

犯人は大学生の青年で、B小町のアイの熱狂的なファンだった。

 

犯行時は双子の子供とアイは同じマンションの一室におり、アイは社長夫妻に代わって双子の面倒をみていたという。

しかし、押し入ってきた犯人の不意打ちによって、アイは頭部を殴られ気を失った。

その後、犯人は双子を殺害し、ベランダから飛び降りて自殺した。

 

 

当然ながらドーム公演は中止となった。

アイは精神的に大きなショックを受けたとされ、事務所からは無期限の活動休止が発表。

 

社長夫妻もショックは大きかったはずだが、それでも事後処理はすべてきっちりとこなしていた。

 

 

世間の声は………混沌としていた。

 

アイを心配する者。

なぜ子供たちを守ってやれなかったのかと罵倒する者。

社長夫妻の防犯対策が甘かったのではないかと責める者。

アイのファンがやったのだからアイに責任があると言うもの。

 

 

割合としては、特にアイを叩く声が大きかったと言えるだろう。

ドアチェーンはもちろん、マンションがオートロックである以上、うかつに犯人を迎え入れなければこのような事件は起きなかった、責任の割合はアイが大きいと。

 

中には、実は犯人とアイは肉体関係にあって、痴情のもつれで犯行に及んだのではないか、愛人か恋人関係だったから迎え入れたのではないかと、下劣な妄想をする輩もいた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

凄惨な事件から数年の月日が流れた。

 

驚くべきことに、あの事件から1年後にアイは芸能活動を再開した。

苺プロダクションは所属タレントの多くが離れており、B小町も在籍しているのは活動休止中のアイだけ。

 

復帰には批判的な声もあったが、1年が経過したことと、苺プロダクションがすでに大きなダメージを受けていたために、これ以上責めるのは…と、世間の声も同情に傾いていたこともあって、アイは何とかソロでの活動をすることが出来た。

 

アイのパフォーマンスレベルはブランクを感じさせず、復帰を喜ぶファンたちの期待に応え続けた。

 

それから約3年間。社長夫妻の全力のサポートもあって、アイは以前と同等、あるいはそれ以上の人気を獲得することに成功した。

凄惨な事件の記憶は、いつしかアイを『悲劇のヒロイン』に祭り上げた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「(お墓参りかぁ)」

 

その日は珍しく仕事が1日休みとなり、アイは社長夫妻の強い勧めでアクアとルビーの墓参りに来ていた。

 

「(レッスンしてた方がよっぽどいいのに…時間がもったいないよ)」

 

 

…事件の後。1年の活動休止中にアイは考えた。

子供たちに『愛してる』を言えなかったアイは、自分は本当は子供たちを愛していなかったのではないか、と思うようになった。

子供を産んだのは、子供を産めば子供を愛せると思ったからだ。つまり、子供は結局『愛する』ことを得るための道具にすぎなかったから…道具を失ったくらいで悲しむなんておかしいと。

 

 

「(ここだっけ…)」

 

星野家の墓の前で、アイはてきとうに線香をあげて手を合わせた。

 

「(当時は二人とも3歳かぁ)」

 

もし生きていたら…なんて、バカげた想像をした。

 

「(今なら小学生かぁ…)」

 

…ランドセルを背負った二人を思い浮かべる。

 

「(ルビーは赤いやつで、アクアは黒いランドセル。二人とも絶対可愛いだろうな…)」

 

…授業参観とかどうだろう。

 

「(ルビーのママ若すぎない?とか言われてみたい…)」

 

…二人の将来を想像してみる。

 

「(ルビーはアイドルだよね…それで私と親子共演とか…いや、私はさすがに引退してるか)」

「(アクアは役者だから…もしかしたら一緒の映画に出れたりするかも…)」

 

 

「二人はどんな大人になるんだろう………?」

 

あれ、私は何を言ってるんだ?

 

二人は死んだのに。将来なんてないのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ……そっか…」

 

 

いつの間にか、アイの両目からは涙が流れていた。

鞄から、いつも持ち歩いている写真を取り出す。

 

「ルビー…」

 

写真には、親子三人が仲良さげに写っていた。

 

「アクア…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛してる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涙が止まらなかった。

地面に膝をつき、胸に写真を抱いたまま、二人の墓の前でアイは泣き続けた。

 

 

「ごめんね…ごめんね…」

 

「…私…バカだから…言えなくて」

 

「今更…もう遅いけど…」

 

 

「愛してるから……ずっと…ずっと…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれくらいそうしていたのだろう。

 

 

立ち上がったアイは、亡き子供たちに優しく語り掛けた。

 

 

 

 

「ごめんね、アクア、ルビー。ママにはまだやることがあるから」

 

「それが終わったら、すぐにそっちに逝くから」

 

「少しだけ、待っててね」

 

 

 

 

―――振り向いたアイの瞳には、すべてを飲み込む漆黒の闇だけがあった。

 

 

 

 

 

 




・星野アイ
 生存した。
休止中~復帰後の数年間は現実逃避状態。『子供たちを愛してなかった』と自分を騙すことで心を守った。
墓参り後は復讐のために全力になる。目に星はない。あえて言うならレイプ目。
カミキと相討ち、天国で子供たちと再会ルート。
カミキ殺害。しかし憎悪が収まらず芸能界で暗躍して殺人鬼と化す怪物ルート。
みたいなのを想像してます。

・斉藤壱護
 もう何も見たくねぇ
アイの復讐に全力で協力する。
再会ルートならどこかで自殺する。
怪物ルートなら地獄までアイに付き合う。

・斉藤ミヤコ
 聖人。
何度か復讐を止めようとする。でも止まらない。
再会ルートなら苺プロを一人で経営し続ける。
怪物ルートならアイを止めようとして死ぬ。

 

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