カナ・アナベラル→エレン読み切り短編。
エレンちゃんの設定である『物覚えが良くない』というものから思いついたネタです。

カナエレンは・・・・・・いいぞ。

※悲恋注意

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【はじめまして】

 

 

 

 その言葉が、貴女の口から紡がれた。

 

 眩しいばかりのブロンド髪を靡かせて、赤と白を基調とした服を纏うその姿。金色の瞳は、真っすぐに私を射抜き、捉えて離さない。

 

 陽気な昼下がり。深い森の奥までも照らす、眩しい太陽。

 

 その陽光にも勝るほどの、輝かしいその笑顔。

 

 こちらを見る目は、文字通り初対面の人に向けるもの。それでいて、相手のことを、私のことを知りたいという好奇心が垣間見える、明るい色。

 

 「あら?もしかして聞こえなかったのかしら?もしも~し?」

 

 私からの返事がないと分かるや、すぐに距離を詰めてきて顔を覗き込んでくる。

 その話し方が、大好き。

 

 その仕草が、大好き。

 

 一見無遠慮に見える距離の詰め方。でも、貴女が行うと、不思議と警戒心が湧いてこないの。

 

 貴女の間延びした喋り方。その一音一音が、私の耳を通って、幸せを運んでくれるの。

 

 

 

 

 ・・・・・・だから、聞きたくなかったんだ。

 

 貴女の口から発せられる、その言葉を。

 

 もう、何度目かも忘れてしまった、リセットの合図を。

 

 

 

 魔法を使い続けることで起こる副作用、後遺症は多岐に渡るって聞いている。

 

 異常なまでに必要となる精神集中。研究のために、避けられない有害物質の長期間使用。

 

 命を落とす人だって珍しくない、無視できない弊害。そんな人達と比較するなら、貴女の副作用はまだ軽い方だって、分かっている。

 

 

 

 『記憶障害』

 

 

 

 身体には一切健康被害のない症状(もの)。

 

 ただ、他の人より物事を忘れやすくなるだけ。貴女の場合は、その対象が人物関連に限定されているだけ。

 

 定期的に貴女と会っても、たくさんお話をしても、数度の出会いごとに私との関係性がリセットされてしまうだけ。

 

 初めて会ったときから、そうだった。

 

 今と何も変わらない、とっても綺麗なその姿で私に話しかけてくれた。 

 

 素敵な出会いの日。その日は一晩中、ドキドキして眠りにつけなかったなあ。

 

 ・・・・・・うん。多分、一目惚れ。私は、エレンをひと目見て好きになっちゃったの。

 

 フラフラと、文字通りアテもなく彷徨いながら生きてきた私にとって、初めて感じた光。

 

 太陽みたいな明るさを持った貴女と、もっと一緒にいたいって心から思ったの。

 

 会う度に、どんどんと貴女の事を知ることが出来て。もっともっと知りたくて。私のことも知ってほしくて。

 

 

 ・・・・・・そして、何度も【はじめまして】を聞くことになった。

 

 

 どれだけ私の存在を刻み込もうとしても、ダメだった。貴女というキャンバスに、私という色をどれだけ塗っても、彩っても、真っ白な新しい白紙に変えられてしまった。

 

 早ければ1ヶ月。遅くても半年。その期間で、私達の関係は強制的にリセットされた。

 

 積み上げても、積み上げても、いつか必ず崩れる日が来る。

 

 常に貴女の記憶にあるのは、それこそずっと一緒に過ごしている猫さんくらいかな。猫さんに嫉妬しちゃう日が来るなんて、思わなかったわ。

 

 今回こそはと、何度も願ったわ。普段は見向きもしない、巫女のいる神社にわざわざ赴いて神頼みをするくらいには、藁にも縋る思いでね。

 

 諦められれば、どんなに良かったかな。

 

 この気持ちを無視できれば、どんなに良かったかな。

 

 

 ・・・・・・でもね、そんなの無理。

 

 だって、この想いにだけは、嘘をつけないから。

 

 

 エレン。

 

 

 私にとっての、大切な人。出会ったその日から、大好きな人。

 

 私は、絶対に諦めない。諦めきれるくらいなら、最初から惹かれない。

 

 どれほど忘れられても、私は貴女に会い続ける。

 

 貴女に会いたいから。貴女と一緒にいたいから。貴女に、私を刻み込みたいから。

 

 

 

 だから私は、今回も顔を上げた。

 

 森の中。瞳に映るのは、貴女の顔。その目に、私の視線を合わせる。

 

 これが、今の私にできる精一杯の笑顔。

 

 『初めて私に会った貴女』へ送る、始まりの言葉。

 

 何度でも、何度でも私は言って見せる。

 

 

 

 

 

 【はじめまして】、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただいまー!

 

 ねえねえソクラテス!聞いて聞いて!!

 

 ・・・・・・あ、な~にそのジト目!また私がくだらないこと言うとでも思ってるんでしょ!

 

 ふふん、今回ばかりは違うんだからね。その耳をまっすぐピーンと立ててお聞きなさい!

 

 

 今日ね、すっっっごく素敵な人に出会うことが出来たの!!

 

 

 お昼すぎかしら?普段どおり、必要な魔法の材料や食料を採りに森の奥深くまで入ったらいたの。私と同じくらいの見た目の女の子がね。

 

 もうね、一目見ただけでビビビッて来ちゃったの。

 

 今思い返しても、幻想的だったなあ。太陽の光に照らされながら、数羽の小鳥を肩に止まらせていてね。本当に綺麗だったなあ。さながら見た目は鳥屋さんね。

 

 それでね、話してみたらもっと惹かれちゃった♪

 

 表情も綺麗で声も綺麗。おまけにね、事前に私のことを全部調べてきたんじゃないかって思うくらい話しやすかったの。

 

 あんなに会話が弾んだのいつ以来かしら?・・・・・・まあ、昔のことはすぐ忘れちゃうんだけどね♪

 

 どうしよう。こんなに良い日の夕食、いつもの作り置きだけじゃ勿体ないわ。

 

 うーん・・・・・・。よし、少し奮発しましょう!採ってきたばかりの山菜も使って、豪勢な一日にするべきね。

 

 勿論、ソクラテスにもご馳走を用意するから待っててね。よーし、なら早速準備に取り掛かりましょう!やるぞー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 ・・・・・・ふふふ。でも、本当に不思議。

 

 

 

 『カナ・アナベラル』かあ。

 

 

 

 おかしいよね、ソクラテス。私ね、彼女の名前を初めて聞いたはずなのにね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・ずっと前から、その名前を知っている気がしたの。

 

 

 

 


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