基本的にはクロスオーバーやIfをやっていきます。
作者の息抜きに執筆、投稿するので頻度はまちまちです。
好評なものがあれば連載するつもりです。
・『ヴァルトシュティン・ボール・ラン』
ダンまちのジョジョ七部のクロスオーバー的な奴です。
短編
『皆さん! お待たせいたしました、スタート時刻となります! 史上初めての大陸全てを用いた騎乗レース、『ヴァルトシュタイン・ボール・ラン』が遂に始まります!』
―――これは僕が再び動き出す物語。
『ご覧下さい! ここにいる数多の
―――身体が、という意味ではなく、子供から大人という意味で。
『それでは
―――これは『再生』と『決着』の物語。
―――僕が再び走り始めるための物語だ。
△▼△
うだつの上がらない人生だ。
一体何処で失敗したのかと考えるがやっぱり結論は何時も同じ。
チンケな仕事でチンケな額の金を得て。
吹けば飛ぶような報酬じゃあ生活できないから、すぐさま別の仕事へ。
……一体どれ程の後悔をしたのだろう。
……一体どれ程の後悔をするのだろう。
「おい、何すんだテメェ!」
「何って……。おいおい、俺は何もしてないぜ。酒をおっ被ったのはお前の責任だろう?」
酒場なら何処でも起こるありふれた喧騒。
しかし、僕はどうしてかその喧騒に興味を引かれた僕はボロボロの身体を引きずるようにその喧騒に近づいていく。
身体を動かすたびに激痛が走り、立ち止まりそうになるが何とかその場へ到達する。
「テメェ……! ふざけんなよ……ッ!」
スキンヘッドの大男が腰に佩いている
体には鎧を着こんでおり、テーブルの上にある兜からして恐らく戦士か傭兵なのだろう。
この都市ではありふれた存在だ。
対する男、眼前に迫る大男程ではないが大柄であり、がっしりした体型をしている。
炎を思わせる髪色であり、来ている服は黒を基調とした動きやすさ第一であり何処かちぐはぐさが拭えない。
身体的特徴は見当たらず、恐らくはヒューマン。
大男と同じく戦士か傭兵かと思ったが、そのような雰囲気はない。
商人や職人といった風が近いだろう。
「お、やんのか?」
しかし、それでも男は屈することなく、寧ろ挑発ともとれる発言をする。
その言葉に遂に限界が来た大男は抜いた剣を振りかぶり、目の前の存在を両断せんと迫る。
だが、それでも男は泰然としたまま動かず―――いや、手に何かを持った。
鈍色をした球状のもの―――『鉄球』だ。
しかし、あれだけ鎧を着こんだ大男には通じないだろう。
そう、例えば―――鎧の間を狙い、急所をピンポイントで貫く、なんて達人技を持たない限りは。
「……何だ、外面ほどじゃあなかったな。」
「――――があっ……?」
しかし倒れ伏したのは大男の方だった。
僕は転がっている鉄球で全てを察した。
周りの人間も
あの男は僕が予想した難行を果たして見せたのだ。
「凄いな……。どうやったんだろ……。」
男に話を聞いてみようと更に近づき、こちらへ転がる鉄球を拾おうと手を伸ばす。
その瞬間、ずっと平静だった男の声が変わった。
「―――待てッ! まだ『回転』は終わっていないッ!」
「え?」
しかし、男の言葉も虚しく僕は鉄球に触れた。
―――その瞬間、凄まじい
何だ……、何が起こったんだ?
分からないが何かが起こった。それだけは分かっている。
中腰から真っ直ぐ背を伸ばし、ただただ手を見る。
余りの疑問に呆然としていると、男が近づき鉄球を拾う。
「おい、お前。大丈夫か?」
「……あ、ああ。すみません……大丈夫です。何も、何も……ッ!?」
気が付いた、気が付いてしまった。
僕の全身を襲う痛みが来ない。
常日頃から僕を犯す、忌々しいものが消えている。
「おい、おい。本当に大丈夫かぁ? ―――って何で泣いてるんだッ!?」
「いえ……何でも、ない、です……ッ! 大丈夫、です……ッ!」
「大丈夫じゃあないだろーーーッ!?」
男はボロボロと涙を流す僕を連れて酒場から出ていく。
そして落ち着いた場所に腰を下ろすと僕へ問いかける。
「おい、落ち着いたか?」
「……はい、すみません。迷惑をかけて……。」
「別に気にしてないぜ。しかし、泣くとはな……。一体何があったんだ?」
迷惑をかけてしまったことを謝罪するが男は何も気にしていない様子だ。
余計に申し訳なくなって委縮してしまう。
「……その、とても説明しずらいんですが……。」
「別に構わねえぜ。俺もこの鉄球についてよく知らないからな。」
「そうなんですか……って、今なんて言いました?」
今、凄いことを言わなかった、この人?
「いやな、どこぞの露天商が珍しいものだっていうから衝動買いしたんだよな、これ。簡単な使い方は知ってるけど何を目的としているのか、どんな効果があるのかは分かってないんだよ。」
「……ということはあの場で何か不測の事態が起きる可能性があったということですかッ!?」
「まあ、そうだな。しかし結果的には何も起こらなかったんだ、何も問題はないなッ!!」
「いや、誤魔化せませんよッ!? ……ああもう、なんて無茶苦茶な人だ……ッ!」
不味い、頭痛がしてきた。
それに収まった痛みが再び疼き、余計イライラが募る。
しかしそうしても意味はない。
折角『希望』を見つけたのだ。絶対に離すわけにはいかない。
「その……何か不思議な、奇妙な
「奇妙な
「それはないです。絶対に魔力ではないです。魔力は、なんて言うか……もっとこう、凄くてエゲつないんです。でもこの鉄球から感じた
脳裏に浮かぶのは山吹色の妖精。
魔力と聞いて無意識に思い浮かべたが、直ぐに頭から追い出す。
……何もかも、今更でしかない。
「なんだそりゃあ……? しかし、ますます興味が湧いてきたぜ……! お前、ありがとう。何かピースが一つ嵌った気がするぜ。」
思い出したくないことに気を取られていると男は立ち去ろうとしていた。
不味い……!
どうにかして引き止めないと……!
……ヤバい、何も思いつかない。
何か、何か言わないと。
駄目だ。『逃す』のも『逃げる』のも駄目だ。
何か、何か―――!
「ま、待って下さい! その鉄球の探求に僕を加えて下さい!!」
結局、何も思いつかなかった僕は自分の心をそのままに伝えることしかできなかった。
自分自身のことばかりでまるで意味のない言葉。
何も変われない自分に絶望するが、此処まで来たのなら貫くしかない。
「鉄球に触れたらずっと疼いていた苦痛が癒されたんです……ッ! あのエネルギーが原因だ、きっとそうだッ!! ……やっと『希望』を見出さたんですッ! 再び走り出すための権利を、掴めそうなんですッ! ―――うぐっ……!」
手を伸ばし、男を掴もうとするが足が縺れその場に倒れ伏してしまう。
手を付け、何とか立ち上がろうとするが、苦痛により身体が上手く働かない。
(仕方ないよ。僕はよく頑張った。楽になっても良いんじゃないか?)
喧しい。黙ってくれ、僕の心。
これを逃せば僕に
だからどんな理由があっても、例えアレが泥舟であっても、掴まねばならないのだ。
「お願いです、どうかお願いします……。」
何とか頭を上げると、男は動いておらず、面白いものを見たという顔をしていた。
そして手の平を差し出し、こう言った。
「お前、面白い奴だな。―――いいぜ、旅は頭数が多い方が楽しいしな、それにお前みたいな奴は大歓迎だ。お前、何て言うんだ?」
彼の問いかけに、手を掴みながら答える。
「……
「そうか。じゃあ、アルって呼ばせてもらうぜ。俺はフォボス、よろしくな、アル。」
男、いやフォボスはそう言って僕の手を強く握り返した。
僕も負けじと、決して離すまいと握る手を強めた。
―――この出会いが僕のこれからに大いに影響を与えることは、分かり切ったことだろう。
▼△▼
「見つかったか!?」
「いや、まだだ。あのガキ、大人しくしてればいいのに……! これで何度目だ!?」
「減らず口を叩くな! このまま見つけられなかったら都市長に粛清されるんだぞ!!」
『要塞都市オラリオ』、その執政庁にて大の大人たちが走り回る。
目を血走らせ、焦燥を隠しもせずに走り回るのは何処か滑稽さを感じさせる。
しかしこの異常な光景はその場にいる者達からすればありふれた出来事であり、誰も気に留めることは無い。
下手に関わって飛び火することを恐れているからだ。
男たちが去った後、一人の幼女が現れる。
小柄な体躯に今までの失敗を活かしてこの建物から出る一歩手前まで辿り着いた。
この時間帯は誰も使用しない裏口の扉に手をかける。
このままいけば青い空の下に出れる。
金の少女はそう疑ってもいなかった。
しかし。
「―――何処へ行く。剣王の愛娘。」
何処までも冷たい戦王の声が響く。
恐怖に足が引きつり、動きを止めてしまう。
恐る恐る顔を振り駆れば三つの首を持つ黒妖精が佇んでいるのが目に入る。
黒妖精の片手には三つの首を掴んでいる。
殺してからあまり時間が経っていないのか今でも血を滴らせて、床を赤く染めている。
「……別に……いい加減、外に出たい。」
「駄目だ。汝に太陽の加護は許されない。大いなるものの為に揺り籠に留まるが良い。」
にべもない答え。
分かり切っていたことだが、こうも堂々と否定されれば心に傷がつく。
しかし、落ち込む暇は幼女には無い。
(……待ってて。絶対に、見つけて見れるから―――お母さん。)
金の幼女―――アイズ・ヴァレンシュタインに諦めるという言葉はない。
彼女の執念が実を結び、都市外に出たのは僅か一週間後の話である。
△▼△
これはきっと夢だ。
レフィーヤ・ウィリディスは確信をもってそう思った。
目の前にいる純朴そうな少年。
赤い瞳と白い髪。
誰もが兎と形容するその少年は在りし日と同じように少女へ笑みを向けている。
少女が走り始める。
それを追って少年も走り始める。
思い切り足に力を込め、大地を疾走し、一陣の風と化す。
走り付かれ、足を止めた時、そこに少年の姿はいなかった。
代わりに自分とは真逆の方向を歩む、薄汚れた少年が一人いるだけだった。
「―――待って。」
「レフィーヤ、どうしたの? 悪い夢でも見た?」
「……何でもないです、エルフィ。」
ぶっきらぼうに少女はそう答えた。
額の汗を拭い、再び
柔らかい布は彼女を抱擁し、再び微睡の中に誘う。
「……ベル……。」
思わず零れた言葉。
しかし少女はそれをもみ消すように枕に顔を埋める。
いい夢は見れそうにない。