「はいしんってどう思う?」
「知らん、だが食える」
「食べられないわよ。でも、資金にはなりそうなのよね」
ケンがダンジョンへ出払っている時、キメラとダンジョンボスは暇つぶしがてら端末で様々な動画を見ていた。
元々は教育番組系しか見れないように設定してあったのだが、通販を使えるようになるほど端末の扱い方が上達した今では設定変更は容易いのだ。
そして今、二匹が見ているのはダンジョン攻略動画である。
「へえ、他の所もこんな感じで攻略してるのね」
「つまらん、すぐ殺せる」
「私達ならそうね、この程度の雑魚と戯れているのは可愛いくらいね」
必死でモンスターを狩っていく姿、あまりにも隙だらけであくびが出る。
ダンジョン深層のモンスターはこの3倍の速度で動くし、破壊力だって動画に映るモンスターの10倍はある。
あまりにも遅すぎて逆にイラついてしまうくらいであった。
「あんまり戦闘とかは面白くないわ」
「俺もそう思う」
「ふーむ、でも人気の配信ってこんなもんよねぇ」
特に目立つのは『強敵討伐!』だったり『レアモンスター発見!学会震えててワロタwww』などダンジョン関連のものばかり。
戦闘を本業としているモンスターにとって、あまりにも刺激が薄すぎた。
派手なものはない。ドラゴンのブレスを防ぐとか土石流を堰き止めるくらいしなければ大きいダンジョンのモンスターを倒すにも至らない。
そういえば、姿を隠す道具を使いかろうじて採掘だけしていた人間が居たなとダンジョンボスは思い出す。
ものすごくつまらないことをするなと流し見でみていた気がする。
記憶が曖昧なのはダンジョンポイントを使って複製した地上のゲームをしながら見ていたからである。
200年という時は、必ずしも成長のためになる訳ではないのだ。
「む、ゲームをやるだけのものがあるのか」
「なにこれ」
「娯楽の一つよ。悪くないんだよねぇ」
200年も引きこもってゲームしていたダンジョンボスは娯楽に対して偏りはあるものの造詣が深くなっていた。
だが、割と淡々とこなしていくのが鉄則で喋ることのないダンジョンボスには不向きだった。
ついでにキメラにゲームをさせようとしたらゲーム機を壊しそうなのでやらせるつもりはない。
ダンジョンポイントという基準は曖昧であるが多少贅沢して収入を得られるシステムではあるのだが、壊れたら壊れたでポイントがかかるのでやらせるつもりもない。
なお、ケンが寸分の狂いがないどころか超高性能のゲーム機を作れたりする。
「うーん、何故かしっくりくるものはないわね」
「うー…………ん?」
ポンポンと動画を飛ばしながら見ていたキメラは見つけてしまった。
自分達が一番無難に動画を作れて成果を簡単に稼げるジャンル。
「ほう?なるほど、確かに元手は無しで簡単に始められそうね」
「やり方を覚えたらいつでも」
「音楽は…………たしか動画編集のやり方の動画とかあったわね。それを見ましょう」
「アプリ、入れられる?」
「何とかなるでしょ。ささ、急いで準備しないと」
ある程度の計画を立てた二匹は早速行動に映る。
端末を立て、一つの動画を流し始める。
己の欲望に忠実な二匹は多少のプライドは容易く捨てることが出来る。
それに、自分達の存在が外に知られたところで何の問題はない、筈。
何故なら人類が200年かけてほぼ未踏の地とされているダンジョン深層に住んでいるから。
そして、二匹がダンジョンのモンスターとして最上位に位置する強者だから。
それなりの試行錯誤を重ね、二匹は自分達の作る動画を作成し始める。
いったいどんな動画になるのか…………
『みんなー!歌のお姉さんと、『ないないドッカン』をうたおー!』
「はーい」
「がーう」
「何やってんだお前ら」
ケンが帰ってくると、そこには教育番組を見ながら踊る二匹が居た。
二匹と言っても人型のままであるが、歌のお姉さんのダンスに合わせて同じ動きをしており、動きも完璧にコピーしている。
「踊ってるのよ。まさか、踊るのも禁止なの!?」
「いや、床は壊すなよって話だ」
「誰の物を言っている!」
「お前だよ、体重8t」
盗み食い、家具破壊の前科があるキメラを名指しするが、どこ浮く風と言わんばかりに無視してくる。
あれは自分は悪くなくて壊れやすい奴が悪かったんだと思っているらしい。
どこまでも自分本位で呆れてしまうが、今更つついたところで何の問題はない。
どうせ性格を矯正するつもりはないのだ、ただただ欲しがって欲しがって行動するだけ。
「ドタバタしなきゃいいのね。ほら下っ端、綺麗に華麗に踊るわよ」
「誰に物、行ってる?」
なんだか若干文字は怪しくとも、言葉はするすると出てくるようになっていた。
後だしだがキメラの台詞は断じて誤字ではない、ちょっと誤っただけだ
「ま、ほどほどにしておけよ」
物を壊されない限り多少のことは許容していたケンは、ひとまず戦利品をかたづけることにした。
変なことに付き合いきれないのは確かだが、それ以上に何が起こるか楽しみにしている節があったのだ。
モンスターはモンスター、それが知性を持ったところで変わらない。
本当にそうなのか?
現に、キメラという成長し続けている存在が居る。
未知こそ生きがい、かつて旧世界の科学を一人で塗り替えた男はそのような甘い認識でいた。
後でものすごく面倒な鬼電が来るとは思わずに。
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