迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

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決断の刻


70:Hora decisionis

「最終日、答えは出た?」

 

練習終わり、睦から投げかけられた問い。

 

「...まだ。悪い」

「ううん。今日までだったら、いつでも聞くから」

 

そう言って、睦はスタジオを出て行った。

 

「なになに?むーことなんか相談?」

「や...まぁ、うん。そんなとこ」

 

歯切れ悪く回答した俺を見て、ふーんと言ってから、「みんな分かってるからね」と静かに言った。

 

「え?」

「何必死に隠してんの。あおことむーこがくっついてるって知ってるよ」

「いや...まだそうと決まったわけじゃ...」

「若葉さん、報告してましたよ。『碧と付き合った』と」

「いや、だから...」

 

なんとなくバレるのが気まずくて隠していたけれど、睦が話しているならきっと問題はないだろう。

そう思って、あらましを話した。

 

「つまり、あおこは今、むーことの距離感を確かめてて」

「今日が最終日、いまだに回答欄が埋まらない、ということですね」

「碧くんは、睦ちゃんのこと好きなの?」

 

初華にそう聞かれ、即座に好きと言えなかった。

 

「...分からない。何もかも」

「碧、分からないでは睦も悲しみます。決断を」

 

そう言われたとき、何かが切れた音がした。

 

「...だよ」

「え?」

「分かってんだよそんなことはな!!早く決めなきゃ睦が可哀想だってさぁ!!」

 

突然の大声にメンバーは少し弾いているが、もう関係はない。

 

「睦が可哀想だって知ってるよ!でも俺が好きでもないのに付き合ってるのは不誠実だろうが!向き合うならちゃんと向き合う、そうじゃないならすっぱり諦める、それができないから困ってんだ俺は!!」

「あ、碧くん...」

 

粗方息を整えて、頭に上った血を少しずつ流していく。

 

「...悪い」

「ちょっと、碧...!」

 

祥子の制止も振り切って、脇目もふらずに外に出た。

 

 

全力ダッシュして10分ほど、疲れ果てて河川敷に寝転がった。

いくら大都会東京と言えど、自然に囲まれたここは空気がおいしく感じる。

 

「気まじぃ~...」

 

滅茶苦茶にキレて出てきちゃったもんだから滅茶苦茶に気まずい。

どんな顔して戻ってったらいいんだろう。

 

「はぁ...スマホも置いてきちゃったし...」

 

ポケットに手を突っ込んでも四角い相棒はいない。

もう片方のポケットにも分厚い経理はいない。

 

「...まぁ、いいか。俺に誰かを幸せにできる技量なんてなかったんだな」

 

太陽光を遮るように手を顔にかざす。

が、それより前に俺の顔が陰った。

 

「やっと見つけた...スマホも置いてっちゃうし...」

「初華...」

「みんな心配してるよ?帰ろう?」

 

手を伸ばしてくる初華、その手は取らずに立ち上がった。

 

「...先戻っててくれ」

「...祥ちゃんから絶対に連れ戻せって言われてるから行かない」

「...祥子、ね...初音は祥子のこと好きなんだっけ」

「えっ、あっ...えっと...うん」

 

こいつの好意ももろバレだろうけど、一旦置いとく。

 

「...祥子のことを考えた時、どういう気持ちになる?」

「え、っと...なんていうか、ふわふわする、っていうか」

「ふわふわ...?」

「その...一緒にいて、幸せな気持ちになる...みたいな...?」

 

幸せ、か。

 

「...睦は幸せだったのかな」

「睦ちゃんが碧くんの話をするとき、いつも笑ってたよ。幸せじゃなきゃ、話すときに笑わないと思うな」

「そっか...うん、そっか」

 

逃げてたのかもしれない、ずっと。

心を伝えることに、ずっと怯えてたのかもしれない。

 

「...よし。戻るか、初音」

「うん。覚悟は決まったみたいだね」

「...本人を前にして言えるかどうかは別だけどね」

「碧くんの意気地なし」

「うるせえな」

 

 

 




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