「最終日、答えは出た?」
練習終わり、睦から投げかけられた問い。
「...まだ。悪い」
「ううん。今日までだったら、いつでも聞くから」
そう言って、睦はスタジオを出て行った。
「なになに?むーことなんか相談?」
「や...まぁ、うん。そんなとこ」
歯切れ悪く回答した俺を見て、ふーんと言ってから、「みんな分かってるからね」と静かに言った。
「え?」
「何必死に隠してんの。あおことむーこがくっついてるって知ってるよ」
「いや...まだそうと決まったわけじゃ...」
「若葉さん、報告してましたよ。『碧と付き合った』と」
「いや、だから...」
なんとなくバレるのが気まずくて隠していたけれど、睦が話しているならきっと問題はないだろう。
そう思って、あらましを話した。
「つまり、あおこは今、むーことの距離感を確かめてて」
「今日が最終日、いまだに回答欄が埋まらない、ということですね」
「碧くんは、睦ちゃんのこと好きなの?」
初華にそう聞かれ、即座に好きと言えなかった。
「...分からない。何もかも」
「碧、分からないでは睦も悲しみます。決断を」
そう言われたとき、何かが切れた音がした。
「...だよ」
「え?」
「分かってんだよそんなことはな!!早く決めなきゃ睦が可哀想だってさぁ!!」
突然の大声にメンバーは少し弾いているが、もう関係はない。
「睦が可哀想だって知ってるよ!でも俺が好きでもないのに付き合ってるのは不誠実だろうが!向き合うならちゃんと向き合う、そうじゃないならすっぱり諦める、それができないから困ってんだ俺は!!」
「あ、碧くん...」
粗方息を整えて、頭に上った血を少しずつ流していく。
「...悪い」
「ちょっと、碧...!」
祥子の制止も振り切って、脇目もふらずに外に出た。
全力ダッシュして10分ほど、疲れ果てて河川敷に寝転がった。
いくら大都会東京と言えど、自然に囲まれたここは空気がおいしく感じる。
「気まじぃ~...」
滅茶苦茶にキレて出てきちゃったもんだから滅茶苦茶に気まずい。
どんな顔して戻ってったらいいんだろう。
「はぁ...スマホも置いてきちゃったし...」
ポケットに手を突っ込んでも四角い相棒はいない。
もう片方のポケットにも分厚い経理はいない。
「...まぁ、いいか。俺に誰かを幸せにできる技量なんてなかったんだな」
太陽光を遮るように手を顔にかざす。
が、それより前に俺の顔が陰った。
「やっと見つけた...スマホも置いてっちゃうし...」
「初華...」
「みんな心配してるよ?帰ろう?」
手を伸ばしてくる初華、その手は取らずに立ち上がった。
「...先戻っててくれ」
「...祥ちゃんから絶対に連れ戻せって言われてるから行かない」
「...祥子、ね...初音は祥子のこと好きなんだっけ」
「えっ、あっ...えっと...うん」
こいつの好意ももろバレだろうけど、一旦置いとく。
「...祥子のことを考えた時、どういう気持ちになる?」
「え、っと...なんていうか、ふわふわする、っていうか」
「ふわふわ...?」
「その...一緒にいて、幸せな気持ちになる...みたいな...?」
幸せ、か。
「...睦は幸せだったのかな」
「睦ちゃんが碧くんの話をするとき、いつも笑ってたよ。幸せじゃなきゃ、話すときに笑わないと思うな」
「そっか...うん、そっか」
逃げてたのかもしれない、ずっと。
心を伝えることに、ずっと怯えてたのかもしれない。
「...よし。戻るか、初音」
「うん。覚悟は決まったみたいだね」
「...本人を前にして言えるかどうかは別だけどね」
「碧くんの意気地なし」
「うるせえな」
カスのアンケートを貼りますのでご回答お願いします()
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