ダンジョン配信でアイドル売りしてたポーション中毒者、我慢できなくてラリってるところを配信したら、なぜかバズってしまう   作:ポーション中毒

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―10― ユメカ、また謝罪配信する!

「ふぁあああー」

 

 あくびをしながら、よく寝たなーと伸びをする。あれ? いつもと周りの景色が違う。あ、そうだった、わたしダンジョンで野宿したんだ。

 ……ん? なんか違和感が。

 そう思いながら寝袋からでてその正体に気がつく。

 おねしょした形跡があった。

 

「はっ、まさか昨日ポーションを飲んじゃった!?」

 

 あちゃー、と頭を抱える。

 ポーションで宴をした後、朝起きたらおねしょしていたこと稀にあったんだよなー。

 念のため、着替えを〈アイテムボックス〉に入れておいてよかった。

 てか、昨日のわたしどんだけポーションを飲んだんだろ。思い出そうとしても思い出せない。

 ポーション乱用したことが視聴者にバレたらまずいなー。まぁ、黙っとけばバレないよね。

 というか、わたし大事なことを忘れているような……。

 

「はっ!? 朝の九時から配信を始める予定だったんだ……!!」

 

 今何時!? 慌ててスマホの画面で時刻を確認する。

 

「もう13時過ぎてるじゃん!?」

 

 ヤバい、どうしよう……!?

 昨日のうちに枠をとっておいたので、すでに配信が始まってから四時間も経ってる!?

 わたしはこの通りなにもしてないので、ずっと黒いが画面が流れているに違いない。

 あぁ、どうしよう!? なんか通知が一杯きてるし!? きっと視聴者が怒っているんだろな。なんで昨日のわたし目覚ましかけなかったんだ!

 とにかく早く準備しないと!

 

「まぁ、今更慌てても仕方がないか……」

 

 急に落ち着きを取り戻すわたし。

 だって、今更急いでも遅刻した事実は変わらないし、ここまで大遅刻したら、五分ぐらいゆっくりしても誤差だよね。

 そんなわけで、わたしはゆっくり準備をした。

 

「よしっ、完璧!」

 

 アイドル配信者を目指す者として、やっぱりかわいくないね。髪もちゃんとセットしたし、これでばっちりだ。

 あとは、慌てて配信始めました感を出せば、視聴者もきっと許してくれるはず。

 

 そんなわけで、小型ドローンを起動して配信開始!

 

「ご、ごめんなさいっ! ユメカ、寝坊しちゃいました! 今、起きたばかりで、慌てて準備したところで、えっと、とにかくごめんなさいっ!!」

 

 息切れをわざとして慌てた感を出しつつ、視聴者に平謝りする。視聴者の反応はどうだ?

 

【待ってた!】

【やっと、配信始まった!】

【全裸待機したのであと少し遅ければ風邪引くところだった】

【遅刻してツイッターにトレンドにのる女】

【五時間遅刻は草生えますよ】

【ひとまず無事だったようでなにより】

 

 ん? 昨日よりコメントの数がやたら多いな? なんでだ?

 とはいえ、視聴者もそんな怒っている感じではなさそうなので、ひとまず安心かな。

 

「本当にごめんなさい! えっと、それじゃあ予定通り昨日の続きをしますね。題して、スライム狩ってレベル2になるまで帰れません!! うぉおおおおおお! 今日もがんばるぞぉぉおおお!!」

 

【は?】

【は?】

【は?】

【は?】

【は?】

【は?】

 

 あれ? 視聴者の反応がめちゃくちゃ悪いぞ。もしかして、謝罪が足りなかったとか?

 

「ご、ごめんなさい。えっと、その遅刻した原因ですけど、目覚ましかけるの忘れていて、その、寝袋で寝るの初めてだったんでけど、けっこう寝心地いいんですね。ユメカ、ぐっすり寝ちゃいました」

 

 挽回しようと言い訳してみるも、視聴者の反応は相変わらず芳しくない。

 

【ん?】

【どういうことだ?】

【わざとか?】

【もしくは覚えてないとか?】

 

 えっと、視聴者がなにを言っているのかわからないな。

 それにしても相変わらずコメントの流れが速い。今、視聴者どれだけいるんだろ。

 

「えっ、同時視聴者数8万人!? しかも、チャンネル登録者が50万人突破してる……。えっ、なんで?」

 

 おかしい。昨日までわたしはチャンネル登録者3万人という弱小ダンチューバーだったはず。それが50万って、どういうこと? 見間違えじゃないよね?

 

【これ、マジで覚えないのでは】

【てっきり昨日に関することを話すんだと思ってたけど】

【なんかおもしろいことになってきたなwwwww】

【この動画を見て】

 

「こ、この動画を見ればいいんですか?」

 

 送られてきたURLを開く。いったいなんの動画なんだろう。

 

 そして、わたしは見てしまったのだ。

 動画の内容は、ポーションでラリったわたしがモンスター相手にひたすら暴れるというもの。しかも、憧れのリアンちゃんの前で。

 え……っ、なにこれ? わたしこんなことしたの?

 まず、しゃべり方がおかしいし。

 リアンちゃんのことママと呼んで迷惑かけてる!

 あぁ、しかもリアンちゃんの前でお漏らし。リアンちゃんの前で吐いているし……。 

 

「え、えっと……」

 

 ど、どうしよう……。

 めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど……っ!!

 あ、死にたい。このまま呼吸を続けていたら生き恥をさらし続けることになる。その前に、生命を絶ったほうがいいんじゃないかな。

 

【顔が真っ赤になってて草】

【照れててかわいい】

【ようやく自覚したようですね】

【昨日の人とは同一人物とは思えない反応で草】

 

 ど、どうしよう。なにを話せばいいのか、わかんない!

 えっと、わたしはどうしたらいいんだ……!?

 

「あ、あの……か、華月リアンさん、こ、この度はた、たた大変申しわけございませんでした……っ」

 

 なんか涙がでてきた。

 このまま配信をやめたい。でも、最低限謝罪はしないと思って、噛み噛みになってしまったけど、なんとか言葉をしぼる。

 きっと、リアンちゃんに嫌われちゃっただろうな……。

 

【謝罪会見始まったかな】

【昨日、なにがあったか説明してほしい】

【どうしてあんなことが起きたの?】

 

 説明してほしい、というコメントがたくさん流れる。

 そう言われても、昨晩の記憶まったくないんだけど。

 

「えっと、昨晩の記憶がなくて、恐らく酔っ払ってしまったのかな、と思います。それで、非常に失礼な言動をとってしまったのかな、と」

 

【お酒でなくポーションで酔っ払ったんですよね?】

 

「はい、ポーション飲んで酔っ払いました」

 

【ポーションで酔っ払った女爆誕で草】

【ポーションで酔っ払うって初めて聞きましたwwww】

【ポーションどれだけ飲んだら、あぁなるんだよwwww】

 

 あぁああああっ! なんだこれ! さっきから恥ずかしくて死にそう。こういうときこそポーションを飲んで現実を忘れたい。

 

【ユメカはポーション中毒なんだよね?】

 

 ポーション中毒!? なんで、そのことを!? ポーション中毒だってことは絶対隠さないといけないのに。

 

「ポ……、ポポポポーション中毒なんじゃないでひゅよ!」

 

 噛んじゃった。

 

【あ……察し】

【これはポーション中毒ですね】

【この反応はポーション中毒確定】

 

 ダメだ! 視聴者が全然わたしのこと信じてくれない!!

 

【ポーション密造で捕まってますよね?】

 

 ポーション密造って、なんでそのことを!? どうしよう、なんとか誤魔化さないと。

 

「ポーション密造なんてすすすするわけないじゃないですか……」

 

【これはやっている顔だな】

【ポーション密造乙】

【ポーションどんだけ好きなんだwwwww】

【ポーション密造の件、記事に書いてあったよ】

 

 えっ、記事ってなんのこと? と思いながら、視聴者が貼ったURLを開く。

 すると、虹天ユメカという人物がポーション密造で捕まったという記事がでてきた。

 うそ!? まさか記事になっていたなんて……! こんなことなら本名とは違う名前で活動すればよかった。

 

【これって本人ですよね?】

 

 とどめとばかりにそのコメントがわたしのことを突き刺す。

 

「はい……わたし虹天ユメカはポーションを密造した過去があるポーション中毒者です。あと、本当の年齢は22歳です。みなさんを騙してすみませんでした」

 

 記事にはわたしの年齢も書いてあったため、この件に関しても誤魔化すことができなくなってしまった。

 終わった……。

 わたしのダンチューバー活動は完全終わりを迎えた。

 

【やっと認めたwwwww】

【やっぱりポーション中毒者やんけ!!】

【ファッ! その見た目で二十歳超えてるんか】

【ポーション密造で笑った】

 

 コメントが流れてくる。

 涙が目にたまっているせいで、じっくりと読むことができない。

 

「それと、ダンチューバー活動、今日で引退しようと思います。短い間でしたけど、みなさんありがとうございました」

 

 わたしはそう告げる。

 ポーション中毒者のわたしを応援してくれる人なんているはずがなかった。だったら、いっそうのこと活動をやめてしまおう。

 あぁ、せっかくダンチューバーとして生きていけそうだったんだけどな……。

 

「ダメッッ!!」

 

 え? ふと、後ろを振り向くと、そこには人影が立っていた。

 

「華月リアンちゃん?」

 

 そこにはわたしの憧れの人物が立っていた。急いで来たようで、彼女は肩で息をしていた。

 華月リアンちゃんがどうしてここに?

 

「えっと……勢いで出てきちゃったけど、まず、ユメカちゃん、昨日はありがとう!!」

 

 突然彼女は頭をさげた。

 なんで、彼女がわたしに頭をさげるんだろう。

 

「その、昨日はちゃんとお礼が言えなかったから、それでユメカちゃんにお礼が言いたくてずっと探していたの。本当は今の配信が終わってから言おうと思ってたけど、いてもたってもいられなくて……、配信の邪魔してごめんなさい」

「えっと、なんでリアンちゃんがお礼を言うの? その、わたしこそたくさん迷惑かけて謝らなきゃいけない立場なのに」

「え?」

 

 と、リアンちゃんはわたしの言葉が意外だったようで困惑していた。

 

「だって、ユメカちゃんが助けてくれなかったらわたしは今頃死んでいたんだよ。ユメカちゃんはわたしにとって命の恩人。だから、どれだけユメカちゃんに感謝してもしたりないと思う」

「そ、そうなんだ……」

 

 頷くも心の底で納得できなかった。確かに、動画でわたしはモンスターを倒していたけど、戦っていたモンスターがただ弱かっただけな気がする。

 

「でも、リアンちゃんにたくさん迷惑かけたから、ユメカのこと嫌いになったよね……?」

「そんなことないよ!」

 

 食い気味でリアンちゃんは否定した。

 

「その、確かに昨日のユメカちゃんはめちゃくちゃだったし、驚かされっぱなしだったけど、でも、わたしは好きだよ。ラリっているユメカちゃん」

 

 そう言って、彼女は満面の笑顔を浮かべる。

 その表情にクラっときてしまった。

 惚れちゃいそうだ。女のわたしでこれだから、わたしが男だったら、完全に惚れていたと思う。

 でも、きっとお世辞で言っているだけなんだ。ラリっているわたしを好きな人なんているわけがない。

 

「あ、ありがとう……。けど、ダンチューバーはもう辞めようと思う。ポーション中毒者がダンチューバーを始めようと思ったのがそもそもおこがましかったんだよね」

「ダメ! ユメカちゃんはダンチューバーを続けるべきだよ!! だって、これだけの視聴者がユメカちゃんのことを応援しているんだよ! なのに、辞めるなんてもったいないよ!!」

「え……?」

 

 わたしは顔をあげる。

 どうせ批判コメントばかりだと思って、さっきからコメントを見ることができなかった。

 

【リアンちゃんのことを助けてくれてありがとう!】

【昨日の配信、めちゃくちゃおもしろかった】

【もっとポーション飲んでラリってる配信が見たい!】

【ポーション中毒者のユメカちゃんを応援したい!】

【もともとファンだったけど、昨日のユメカちゃんをもっと好きになりました】

【昨日の配信めちゃくちゃ笑いました。もっと見たいです】

【ポーション飲んでもっと暴れて欲しい】

【せっかくファンになったのにやめるなんて言わないで!】

【ポーション中毒者がなってもいいと思う!】

 

「うそ……」

 

 コメントのどれを見てもわたしのことを応援する内容ばかりだった。それに、応援するコメントと共に投げ銭を送る視聴者もたくさんいた。

 

「ユメカちゃん、ダンチューバーって、強いモンスターと戦えるだけじゃなれないの。ううん、むしろ弱くたっていい。むしろ、重要なのはおもしろい配信ができて、誰よりも輝くことができることがダンチューバーに求められる資質なの。昨日、ユメカちゃんは世界で一番輝いていたんだよ。それもとびっきり眩しい一番星だった。だから、ダンチューバーを辞めるなんてもったいないよ。わたしはユメカちゃんがもっと輝く姿が見たいな」

 

 どうしよう……。さっきから涙がとまらないや。

 憧れのリアンちゃんがわたしにこんなことを言ってくれるなんて、なんだか胸が熱くなる。

 もうわたしの中でダンチューバーをやめるという選択肢はなくなっていた。

 

「リアンちゃんありがとう。こんなユメカだけど、みんな応援してくれますか?」

 

【応援する!】

【がんばれぇえええ!!】

【続けてくれてよかった】

【応援する!】

【一生ついていきます!】

【ファイトー!】

 

 たくさんの視聴者が応援するってコメントをうってくれる。

 えへへっ、ユメカとっても幸せものだな。

 

「ユメカちゃんがダンチューバーをやめるっていうから慌てて飛び出してきたんだよ。でも、続けてくれるみたいでよかった。そうだ、せっかくだし、これからダンチューバーとして、どんなふうになりたいかここで抱負を語ってみるのはどうかな」

 

 リアンちゃんの提案にわたしは頷く。

 確かに、わたしがこれからどんなダンチューバーになろうとしているのか、みんな気にしているはずだ。

 とはいえ、わたしの目標はずっと前から決まっているんだけどね。

 

「わたしの夢は、華月リアンちゃんみたいにキラキラ輝くアイドル配信者になることです! だから、みんなユメカのこと応援してね」

 

【あ……うん】

【もう無理では】

【どうみてもお笑い枠では】

【お笑い配信者の間違いかな】

【アイドルとはいったい?(哲学)】

【え? ここってお笑い配信じゃないんですか?】

【アイドル配信者? ポーション中毒者の言い間違いかな?】

【ユメカはもっともアイドルからかけ離れてる存在だよ】

 

 あれぇええええ? おかしいなー。

 さっきまでみんな応援してくれる流れだったよね? なんで急に反応が渋くなったのかな?

 

「えっと、リアンちゃん、わたしもがんばればリアンちゃんみたいになれますよね?」

 

 きっとリアンちゃんなら肯定してくれるよね? そう思って、わたしは彼女に尋ねた。

 

「う、うん……が、がんばれば、なれるのかな……いや、でも……。ユメカちゃん、ファイト! 可能性は無限大だよ」

「え? リアンちゃん、なんで目を合わせてくれないの?」

 

【リアンちゃん困っていて草】

【ユメカは現実を見ろ】

【お笑い配信者の才能ならあるよ!】

【ポーション中毒者の対義語がアイドル配信者なんだよなー】

【ユメカをかわいい女の子だと思っている視聴者はもう1人もいないぞ】

 

 やめろぉおおおお!! わたしをそれ以上、ポーション中毒者って言うなぁあああああ!!

 お前らがなんと言おうとわたしはアイドル配信者になるんだよぉぉおおおお!!

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