ダンジョン配信でアイドル売りしてたポーション中毒者、我慢できなくてラリってるところを配信したら、なぜかバズってしまう   作:ポーション中毒

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―29― ピンチ!?

 あのときはヌルちゃんが助けてくれて事無きことを得たけど、まさかこんな強硬手段にでてくるなんて。

 以前襲われたとき五人だけだったが、今回は20人以上の探索者たちが周囲を取り囲んでいた。以前やられたときの反省を活かして、4倍以上に人数を動員したのだろ。

 

「ふんっ、小癪な連中だな。いくら人数が増えようと我の闇魔術にかかれば、一網打尽だというのに。ほら、逝け。シャドウグリップ」

 

 ヌルちゃんの十八番の闇魔術によね見えざる手が襲いかかろうとする。

 

「オレたちもバカにされたもんだなー!! 同じ手にひっかかるかよ! ブリリアントサンシャイン!!」

 

 どうやら向こうにも魔術師がいたようで、光の粒のようなものを天井へと打ち上げられた。

 眩しい、と一瞬思うが、しかし、それだけだ。

 決してまぶしさのあまり周囲が見えなくなるほどではなく、なんのためにこんな魔術を使ったのか疑問がわく。

 

「これほどの明かりがあれば、貴様の闇魔術が無効化されることはリサーチ済みなんだよ!」

 

 なんだって!?

 こっちには闇魔術しかないのに、それを失ってしまえばなんにもできないんだけど!

 

「く、くっはははははははははははっ!!」

 

 突然、ヌルちゃんが肩を震わせながら笑い始めた。

 

「な、なにがおかしい!?」

 

 闇ギルトの人たちが絶叫する。

 そうだよね。こんなふうに笑うってことはヌルちゃんには次なる一手があるはずだ。

 

「ふっ、まさかそんな手があったとはな。どうやら我の完敗のようだ!」

 

「ヌルちゃん、かっこつけている場合じゃないよ!?」

 

 そして、わたしもこんなふうに突っ込んでいる場合ではない。

 

「ねぇ、他にすごい魔術はないの!?」

 

「ないな。我は闇魔術の伝道師であるゆえに、他の属性の魔術はからっきしなのだ」

 

「そんなぁ!? こんな方法で無効されるとか欠陥魔術じゃん!」

 

「おい、今、闇魔術のことバカにしたな! 闇魔術はな、世界で一番かっこいい魔術なんだぞ!」

 

 って、ヌルちゃん今喧嘩している場合じゃないんだよ!

 

「わかりました。SSS級ポーションを渡しますので、わたしたちのことは許してください」

 

 両手をあげて降参のポーズをしつつ、闇ギルドのリーダーらしき人にそう話しかけた。

 

「おい、渡す必要なんてないだろ。貴様がポーションを飲めば、あんなやつ簡単にボコせるだろ」

 

 絶対に嫌です。

 わたしはアイドルとしてポーションでラリる真似はしないんだから。

 

「手間をかけさせるな。早くオレたちに渡せ」

 

 闇ギルドのリーダーはそう言うのでアイテムボックスから大量のSSS級ポーションを取り出して手渡す。

 

「これで持ってるやつ全部か?」

 

「はい、全部です」

 

 ホントはアイテムボックスの中にまだ少しだけポーションが残っているけど。全部を渡すもんか。

 

「まぁ、いい。早速、どんな効果があるか試してみるか」

 

「リーダー、オレたちにも飲ませてくださいよ!」

 

「オレも飲みてー!」

 

「わかった、わかった。ほら、こんだけあるんだから焦るな」

 

 リーダーは他のメンバーたちにポーションを手渡していく。それをわたしたちはただ黙って見ているしかない。

 あぁ、いいなぁ。

 わたしもポーション飲みたいなー。

 

「ヌルちゃんなにしてるの?」

 

「ん? あぁ、ドローンを直せないか見ていたのだ。流石に、これだけボロボロだと難しそうだな」

 

 そう言ってヌルちゃんは壊されたドローンを見ていじっていた。

 こんな状況でも配信のことを考えるなんてヌルちゃんは偉いなー。わたしはポーションをとられたショックでまだ立ち直ることができないよ。

 

「「かんぱーい!」」

 

 闇ギルドの人たちがポーションを片手に乾杯の音頭をとっていた。あぁ、いいなぁ。一滴だけでも恵んで欲しいなぁ。

 

「おい、すげぇぞ! 力がわきあがってくる……!!」

 

「こ、これがSSS級ポーションの力か!」

 

 ポーションを飲んだ人たちが口々そう言い始める。

 どうやらわたしのSSS級ポーションは一般的なものと違うようだ。

 

「ゲコォゲコォ」

 

 どこから鳴き声が聞こえると思ったら、地面の穴から白い頭のヘビが出現した。しかも、体が虹色に光っている。

 あれって――

 

「ゲーミングツチノコ!?」

 

 まさか幻のゲーミングツチノコに会えるなんて――!?

 

「あっははははははっ、SSS級ポーションだけじゃなくてゲーミングツチノコまで現れるとはな! オレたちとんでもなく幸運だな! よし、お前ら、あいつらを捕まえ――」

 

 闇ギルドのリーダーの言葉は最後まで言い終えることはなかった。

 なぜなら――。

 

「ゴボォ!」

 

「グボォ!」

 

 ポーションを飲んだ人たちが次々と泡を噴きながら倒れ始めたのだ。

 

「おい、お前らどうしたんだよ! うっ、うぅ……なんだ、これは!? ゴバァッ!!」

 

 果てにはリーダーまで呻き声をあげて倒れ始めた。

 いつの間にか闇ギルドの人たちが全滅してしまった。いったいなにが起きたのやら?

 

「急性ポーション中毒だな。常人がSSS級ポーションなんていう劇毒を飲めるはずがないのは少し考えればわかることだろ」

 

 ヌルちゃんが冷静に解説してくれる。

 そんな!? わたしのポーションって劇毒だったの!?

 ともかく、闇ギルドの人たちはいなくなったし、これでゲーミングツチノコを捕まえられる。あぁ、でもその前にこの様子を配信しないとダメだった。えっと、でもドローン壊されちゃったしな。

 考えなきゃいけないことがいっぱいあって、テンパってしまう。

 あぁ、ポーションが床に散らばっている。

 闇ギルドの人たちが倒れちゃったせいで、ポーションが容器の瓶ごと地面に落ちて割れていた。

 もったいない。

 あ、運よく瓶が割れずに無事なのもある。ラッキー。

 とか思いながら、地面に視線をおろすとあることに気がついた。

 チュルチュルとゲーミングツチノコが舌を前後に動かして地面に広がっているポーションを舐めていたのだ。

 あ、いいなぁ。

 わたしも同じように舐めようかなー。

 はっ、いかん。その前に配信をどうするか考えないと――!

 

「キシェエエエエエエエエエエッッ!!」

 

 ふと、ゲーミングツチノコが金切り声のような鳴き声を発した。

 え!? と、思っていると、みるみるうちにゲーミングツチノコの体が膨張していくではないか。

 

「で、でかっ!?」

 

 突然のことに絶叫する。

 えっ、なにが起きたの? ゲーミングツチノコがポーションを飲んで大きくなるってどういうこと!?

 

「おい、逃げるぞ」

 

 ふと、ヌルちゃんがわたしの体を背中のほうへひっぱる。

 すると、さっきまでわたしの体があった場所にゲーミングツチノコがしっぽを叩きつけて攻撃した。

 ゾッとする。

 もし、わたしの体をヌルちゃんがひっぱってくれなかったらわたしは今頃死んでいたに違いない。

 

「ヌルちゃん、闇魔術はまだ使えないの?」

 

 ヌルちゃんの闇魔術なら倒せるんじゃないかと淡い期待を持つ。

 

「ダメだ。あいつらの光が邪魔して、まだ使えない。使うには光源がないところまで逃げる必要がある」

 

 そうか。闇魔術のつかった光の粒は本人が気絶しても宙を浮かんだままだった。

 くそっ、あいつらどこまでわたしたちの邪魔をするんだ。

 

「ちっ、どうやら先回りされたらしい」

 

 ヌルちゃんがそう言って立ち止まる。

 それと同時に目の前にゲーミングツチノコが現れた。さっきまで真後ろにいたはずなのに、どうやら地面の中を掘ってここまでやってきたらしい。

 反対側に逃げようとするが、今度はゲーミングツチノコの尻尾が行方をはばんだ。地面の中を通って、どちら側にも姿を現わしているみたいだ。

 どうやらゲーミングツチノコに完全に囲まれてしまったらしい。

 これじゃあ逃げられない。

 

「ヌルちゃん、どうしよう!? わたしたちこのままだと殺されちゃう!?」

 

 わたしはヌルちゃんに抱きついて泣きわめく。

 わたしのほうが年上のはずなんだけど、どうにもパニックになってしまった。

 

「貴様で解決しろ」

 

 え? と、思っている間に、口の中になにかを押し込まれる。

 ふと、ヌルちゃんがさっき拾って手に持ったポーションを奪ってわたしの口の中に押し込んだのだった。

 ゴクゴク、とポーションを飲み続ける。すべてを飲み終わったわたしは一言。

 

「うますぎなんだけどぉおおおおおおおおお!」

 

 そうだ、これがポーションの味だった。

 わたしはこんなおいしいものを今までよく我慢できたな、と思う。

 よしっ、今日はポーションパーティーだ!!

 

 すでに、わたしの中でなにかが覚醒していた。

 

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