ここは、本来はいるはずのないウマ娘しか居ない異界。
そこには、“究極の時の王者”オーマジオウのかつての姿―――仮面ライダージオウの愛車――ライドストライカーの名を冠したウマ娘が居た。
そして、この物語は、そのウマ娘が“王者”から“覇王”へと上り詰めた時の記録である。

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時を駆けるウマ娘

―――昔から、夢を見るのが好きだった。

 一番好きな夢は、王女様になる夢。だって、私は王女様にはなれないから。

 けど、そんな夢を現実に変えてくれる出来事があるなんて、その時は想像もつかなかった。

 そう、あの日までは―――……

 

 ピピピッ!ピピピッ!

 そんな軽快な電子音で目が覚める。待ちわびたこの日が来たのを確認して。

「おはよう!今日もいい朝だね!」

 誰も居ないのにそう言ってしまうのは、やはり浮かれているからなのだろうか?

 窓の外を見てみると、日は地面を明るく照らし、鳥はさえずり、花は咲き誇る。

 何故私のテンションがここまで高いのかと言うと、それは今日ある出来事に関係ある。

 それは……

「そう!皐月賞!」

 私は、この前めでたく皐月賞出場ウマ娘に決まったのだ。

「いや〜しかし、どんな人達がいるのかな〜楽しみだなぁ(某ハンバーガーショップのピエロ)。いや、ネット見ればわかるかな?」

 けど、こうしちゃいられない。今日はトレーナーさんと一緒に会場に行くので、遅れられないのだ。

 急いで着替えて、寮を出る。トレセン学園の中では珍しく、私の部屋は、私以外に住人は誰も居ない。

「それじゃ行ってくるね」

 誰に言うわけでもなく、そう言って、私は寮を出た。

………

「よう!早いな。あと数分余裕はあったぞ?」

「はい!けど、この日が楽しみすぎて、早く起きてしまったんです!トレーナーさんも早いですね」

「まあな、ワシも、もうそんな長くねえからな、早く起きて、一秒でも人生を楽しみたいわけよ。ハッハッハッハッハ!」

 今話しているのが私のトレーナーさんの月坂武寿(ツキノザカ ウズ)さん。今年で御年八十三になる。

「トレーナーさんにはまだまだ長生きしてほしいですよ!」

「まあ、優しいもんだね。しかし、今日の皐月賞、そして、その後にある日本ダービーと秋の天皇賞までは死ねねえな。そこでのお前さんの活躍を見れば、ワシに未練はねえ」

 一応、私は日本ダービーと秋の天皇賞にも出ることとなっている。

「さて、行くか会場。あそこ行ったら気ぃ抜くなよ」

「はい!」

 そうして、私達は、中山競馬場へと、向かったのであった。

………

「ほえ〜たくさん人がいるなあ。これがG1かあ」

 周りを見ると、他のウマ娘たちが、着々と準備運動などをしている。

『今回の注目ウマ娘はなんですか?』

『やはり一番人気のライドストライカーでしょう。彼女は“時を駆ける者”、“時の王者”、“相対性理論を無視する者”などの数々の異名がありますからね。そして、二番人気のシーザムーンも外せませんね。彼女はドイツ出身で、日本の芝には最初は慣れていない様子でしたが、その後グングンと成績を伸ばし今ではライドストライカー同様“戦乙女(ワルキューレ)”、“魔王”、“ドイツよりの皇女”など数多の異名を持つウマ娘です』

 実況・解説さんの声が聞こえる。

 そして、その中で登場したライドストライカーというのが、私の名前だ。

 他のウマ娘たちが並ぶので、私も遅れまいと並び…

 バン!

 扉が開く音で一瞬にして全員がスタートした。

『始まりました、皐月賞。今年の皐月賞はどんな戦いになるのでしょうか?』

『ええ、今回はやはりライドストライカーとドイツ出身のシーザムーンの戦いですね。どちらも速く、先ほど紹介しましたが、ライドストライカーとシーザムーンはどちらも数多の異名を持つウマ娘。その異名に恥じぬプライドで見事なレースを見せてくれることでしょう』

 うっるさいんだよ!と内心愚痴を吐く。私は、今の自分の異名に満足していない。なにせ、“王者”で止まっているのだ。何なら“覇王”にでもなりたい。

 そして、私がついたのは列の最後尾―――要は最下位である。

『ここでウマ娘並びました。……最後尾はライドストライカーです』

『ライドストライカーはどのレースでもここから勝ち上がってきていますからね。期待しましょう』

 まだだ……まだアレを使うときではない。

 私の今までのレース結果はこの戦法で勝っている。それは―――『オールテュエンティタイムブレーク』と『アポカリプス・オブ・キングダム』である。

『オールテュエンティタイムブレーク』は最初は遅く走り出し、温存した体力を使い、スピードを上げていく方式。

『アポカリプス・オブ・キングダム』は最初は本当に遅く走り、中盤らへんから最高速度で行く戦法である。この走り方は、“逢魔時王必殺撃”という走り方で足に負担がかかるので、連発はできない。

 ちなみに、この名前は、全てトレーナーさんがつけた。なんでも「技にはかっこいい名前がないと華がない」だからだそうだ。

 しかし、レースも中盤。となると…勝ちを狙いに行くならこれしかない!

 足に貯めたすべての力を込めて……“逢魔時王必殺撃”!

『おーっと!ここでライドストライカー仕掛ける!これは、あの走り方だーー!』

『そうですね。『アポカリプス・オブ・キングダム』という戦法だそうです。ちなみに、この名前をつけたのはライドストライカーのトレーナーさんらしいですね』

『ライドストライカー、抜く抜く抜くぅー!あっという間に先頭です!』

 よし!このまま行けば……!

『しかし!それを許さないのがシーザムーン!ここで仕掛ける!』

『この走り方は『ニーベルンゲンの指環』ですね。足の動きが早すぎて円に見えることからそう名付けられました。そして、“戦乙女(ワルキューレ)”の異名からこの姿は“ワルキューレの騎行”とも呼ばれるらしいですね』

『ここで二人の王者が並んだ!最後の直線、勝つのはどっちだ!』

 チッ!ドイツの皇女か!

 私は、スピードを上げていく。

 負けられない。ここで負ければ、トレーナーさんのやる気を削ぐ原因にもなる……なにせ

 “王者”のままじゃ、いられない!私は、“覇王”になる!

「はああああああ!」

 その雄叫びに呼応したのか、シーザムーンも

「ニヒト・フェアローレン!(負けない!)」

 とドイツ語で叫ぶ。なんと言っているのかはわからないが。

 そして、先にゴールしたのは……

『一着、ライドストライカー。二着、シーザムーン……』

 

 私だった。

 

 この日、私は、異名ではなく史実として“王者”となり、その後、地方ウマ娘全国協会設立以来の最高記録―――59連勝を達成し、“究極の時の覇王”と呼ばれることとなるのだが、それはまた別のお話である。




短編小説です。オリです。

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