(司会進行役:東郷美森)
天の神が四国を滅ぼす3時間前、人類滅亡を前に四国中が大パニックになる中、超豪華ゲスト(勇者部部員)を迎えての特別番組が生放送される。……というどこかで聞いたような話。
神世紀301年。天の神が人類を滅ぼすために現実世界に侵攻してきた。
四国では自暴自棄になる人がわんさか居る中で突如生放送が始まる。
司会進行役の東郷美森はこんな状況でも元気いっぱいに御役目を努めるつもりのようだ。
「えー、天の神が侵攻を開始して、四国が滅びるまで残すところ3時間となりました。この時間からは予定を変更して、歌あり笑いありの最終生放送を素敵なゲストを迎えてお送りします」
東郷のアナウンスのもと番組が始まった。
「人類滅亡3時間前とあって四国中が大パニックに陥っておりますが、最後までヤケにならずにいきましょう」
そして東郷は舞台裏でスタンバッているであろうひとり目のゲストを呼ぶ。
「それでは、豪華なゲストをご紹介しましょう。まずは勇者部と言えばこの人! 我らが部長、犬吠埼風さんでーー あぁぁあっと!!?」
ひとりのゲストーー犬吠埼風が入ってきた瞬間、東郷は目を疑った。
「
犬吠埼風自身は何食わぬ顔で両手を広げる。
「犬吠埼風は全裸である」
「なんか意味不明な事を言っています!」
風はゲスト席に座りインタビューが始まった。
「え……え〜と風先輩。とりあえず勇者部の活動についていくつかご質問を……」
「勇者部の活動? ってか、人助けってさー、ぶっちゃけイライラすんのよねー」
「ええええ!!? 風先輩、勇者部の活動本当は嫌だったんですかああ!?」
「う
「汚ッ!! ってか嫌いの度合いがよく分かりません!」
「すっぽんぽんぽこぽんぽこりん♪」
「なんか変な歌、歌い始めました!」
お腹を叩きながら歌っている風をよそに、東郷は次のゲストを呼ぶ。
「え~、風先輩が良くない精神状態に陥ってしまいましたが、他にも豪華なゲストに来ていただいています。それでは呼んでみましょう! 私の親友でもある乃木家の令嬢、そのっちこと乃木園子でーー あぁぁあっと!!?」
登場した乃木園子は死んだ魚のような眼をして現れた。
「いつもの可愛らしい顔は何処へ!? なんだか目が死んでいます! しかも手元にはタバコらしきものが! いつものそのっちではありません!」
園子はタバコを咥えながらこっちを睨んできた。
「
「まさかの罵倒! 一体どうしたと言うの、そのっち! それに一応生放送でもあるのだから未成年の喫煙は……」
「いいんだよ。わたしは乃木家のご令嬢だぞ。何でもかんでも権限使ってオーケーに出来るんだよ」
「そーなの!? また大赦の黒い部分を目の当たりにしてしまったわ! ……それはそうとそのっち、なんだかいつもと喋り方が違うのだけど……」
「喋り方ァ?」
「〇〇なんよ〜。とかおどけた言い方してたじゃない?」
「ああ? あんなのキャラ作りに決まってんだろーが。誰が好きこのんであんなダセェのやってると思ってんだ」
「そーだったの!?」
「そうだよ。その証拠に『結城友奈は勇者である』の一期で登場した時のわたし、あんな喋り方じゃなかっただろ? 急遽取って付けたに決まってんだろ。スタッフが」
「いやあああ、聞きたくなかったわそのっち!」
園子から思いもよらぬ曝露話を聞かされた東郷はふらつきながらも、進行を続ける。
「え、え〜気を取り直して、続いてのゲストは皆の天使! 一年生で風先輩の妹、歌手の卵の犬吠埼樹ちゃんでーー あぁぁあっと!!?」
次に登場したゲストーー犬吠埼樹もまた死んだ魚のような眼でやって来た。
「
「まさかの二度目!? ……い、樹ちゃん、以前のあなたは一体どこへ……」
「いつの話してんだよ。いつまでもガキのままじゃねーだろうが!」
「い、一体、あの天使だった樹ちゃんに何があったのでしょうか!?」
すると、樹の隣で頭を抱えている園子の姿が目に映った。
「あ! そのっちが頭を抱えて絶望しています! まさかファンだったんですか?」
「あああ〜〜! それでもいっつんが好きなんよ〜〜!!!」
「ファンだったようです!」
「あ、それとあたし、クラスで毎日、男共侍らしてました」
「あー! またしても大胆な告白だあああ〜~!」
「「ーーガハアッッ!!!」」
それを聞いた園子と風がショックで血を吐いた。
二人のHPが100減った ▼
「吐血したあ〜〜! さすがにそのっち大ショック~! 姉である風先輩まで深刻なダメージがあ!」
「一時期、声が出なかった時は、毎日憂さ晴らししてました」
「なんて残酷な〜!」
園子と風はショックのあまり嘔吐する。
二人のHPが200減った ▼
「風先輩とそのっち、めちゃくちゃ吐いた~!」
「もう三日もパンツ替えてません」
「もーやめてー!!」
二人のHP、MPが全回復した ▼
「「えへっ、えっへへへ……」」
それを聞いた園子と風はニヤケ顔になった。
「ああー? 二人共、これはむしろ嬉しいようです!」
咳払いをして、東郷は脱線した路線を元に戻そうとする。
「なお、樹ちゃんには、後ほどヒット曲『祈りの歌』を歌っていただきます」
「っんなダッセー歌。誰が歌うか!」
「まさかの拒否!? それにダッセー歌って、樹ちゃんの持ち歌なのに!?」
「そんなー。いっつん歌ってよ〜。あとパンツください」
「そのっちがまた何か言ってます!」
「ふっふっふ。樹のパンツは毎日お姉ちゃんが洗う前にクンカクンカしてるから」
「ふーみん先輩羨ましすぎるんよ〜」
「いや、風先輩は何のマウント取ってるんですか!?」
「糞姉貴! テメェなにしくさってんだ!」
キレた樹が風の右眼に園子から奪ったタバコを押し当てた。
「ギャアアア!!!」
「うひゃー! 実のお姉ちゃんの風先輩に、まさかの根性焼き~! ……まぁ当然の報いなんですけど」
バタッと右眼を焦がした風はその場に倒れた。
「……おいテメェ、そんなに聞きたけりゃいま歌ってやろうか?」
「やった〜、お願いするんよ〜」
風に気にも留めず園子はワクワクして樹の声に耳を傾ける。
スゥ……と樹は息を吸ってーー
「ゥゲェェー」
盛大に歌った……。
「ヒヤァァァ〜、ゲップだ~、汚い〜! これそのっち的にはアリなの!?」
「え、あ、あ〜〜」
少し間を置いて、園子は倒れた。
「ダメだったー!ちょっと考えたけどやっぱりこれはダメだったああ!」
見事に二人を片付けた樹をよそに次のゲストの紹介へ移る。
「えー、気を取り直して、次のゲストは自称『完成型勇者』三好夏凛さんです! ……ってあら? 夏凛ちゃんの精霊が転がってきましたね」
夏凛の精霊が力無く、床に転がってきた。
「なんかキモかったんで、捨てたわよ」
「捨てちゃったの!? 大事な精霊じゃないんですか?」
「こんな状況で精霊も糞も無いでしょ? ハイオワリオワリ〜」
「軽っ! あの夏凛ちゃんが自暴自棄に!」
「あ、ひとつ暴露しとくわー。私の精霊、喋るんだけど、実はアレ……
「ええ!? そうだったの!?」
「そうよ。『完成型勇者』って設定強めるために特別感出したくてね、腹話術をマスターしたのよ」
『諸行無常〜』
いつもは近くにいるから気付かなかったが、確かに今は、床に転がってる精霊ではなく、夏凛の方から声が聞こえた気がする。
「こんな感じにね。……でももうメンドくさくなったからいいわ」
「理由はしょうもないけど、やってる事は凄いわ、夏凛ちゃん。いっそこれでご飯食べたら?」
「えー?ちょっと勘弁してよ。腹話術って喋りにくいのよ」
「いや、だからこそ芸なんですよ?」
「特にパ行が辛くて、ホントパ行考えた人
「
悲壮感に明け暮れている夏凛をよそに、東郷は進行を続ける。
「えー、次々と
そして、東郷ははやる気持ちを抑えて最後のゲストを呼ぶ。
「私の……じゃない、勇者部の星、そしてこの作品の主人公! 結城友奈ちゃんです!」
そして登場した結城友奈本人は、なぜか悲しげな表情を浮かべていた。
「あら? どうしたの友奈ちゃん。顔色が悪いわよ」
「ごめんね、東郷さん……。実は私、今日みんなに告白したいことがあるんだぁ」
「あーはっ♪ やっぱりなにかあるようです!」
東郷がノリノリになっていく中、友奈は神妙な面持ちで話し出す。
「実は私……バーテックスをワンパンで倒す事が出来るんだけど、お話の都合上、わざと手を抜いてたの」
「「「「「えええええ!!!!?」」」」」
友奈の告白に、会場にいる全員(いつのまにか風と園子は復活した)は驚愕した。
「最初の乙女座の時も、封印の儀の段階を踏みたくてわざと軽めに殴ったし……、カウントダウンで冷や冷やさせつつ、次は力一杯殴って御霊を破壊したの」
「そ、そうだったの……」
「合体した時も、双子座の生き残りも、東郷さんが壁壊した時に出てきた獅子座も……全部やろうと思えばワンパンで仕留める事が出来たんだよ……」
「へ、へえ……」
風や園子や樹、果ては東郷までもこのカミングアウトに顔を引き攣る。
「はぁ? 友奈、目立ちたいからってそんな嘘言うんじゃないわよ」
ただひとり、夏凛だけは信じていないようだ。
「本当だよ、夏凛ちゃん」
「じゃあ証拠見せなさいよ」
夏凛の言葉に、友奈は意を決したように口にした。
「じゃあ……思い切って四国を滅ぼそうとしてる
「えー!? ほ、本気で言ってるの!?」
友奈の宣言にあたりがどよめく。
「え? まさか、本当に出来る訳じゃあないのよ……ね」
「まさかとは思いますけど、あまり本気出さなくていいですよ? 友奈さん」
「ゆーゆ。ひとりで思い詰めないで。神樹様の寿命が尽きるまで
「そ、そうよっ。四国は神樹様と共に滅ぶ運命なんだから」
「何か皆が酷く動揺しているわ!」
慌て始める勇者部一同を横目に、友奈は右手に力を込める。
「じゃあ、やります。ん……えぇーい!」
すると、友奈の身体が輝き始め、髪が薄紅色の長髪へと変わり、眼が桃色、緑色のオッドアイに変化した。
そして、右手に備わった手甲を真上目掛けて突き上げた。
「大満開! 勇者パーーーンチッッ!!!」
ドーーーン!!!
「はい……やっつけました」
「「「「「嘘ォォ~〜!!!!?」」」」」
友奈のワンパンにより、四国を滅ぼそうとしていた天の神は倒されたーー。
「いやー、やるじゃない友奈! 私たちの絆のおかげねっ。アンタもそう思うでしょ!」
『諸行無常』
「夏凛ちゃんが精霊と仲良さげに話し始めたっ」
拾い上げた自身の精霊と楽しげに話し出す夏凛。
「私ね〜、ピンクの河童に追いかけられたことがあるんよ〜」
「そのっちが何かキャラを作り始めたわ!?」
おどけた口調で不思議ちゃんキャラを演じ始める園子。
「あれ!? お姉ちゃん怪我してる! 右眼大丈夫なの!?」
「樹ちゃんの記憶はどうなってるのかしら!?」
涙ぐみながら、風の眼を心配し始める樹。
「いやー、こんなもん平気よ! さてっ、明日からも勇者部の活動、精一杯励むわよ!」
「風先輩はもう何を言っても引き返せないような気がします……」
部活動に気合いを入れて臨もうとする全裸の風。
「きゃー!お姉ちゃんなんで裸なの? いやん!」
「ちょ、ちょっと風! アンタ、なんて格好してんのよ!」
「ふーみん先輩。それはちょっとやりすぎなんよ〜」
「見てるこっちが恥ずかしいです、風先輩」
「あなたたちさっきまで気にも留めて無かったじゃない!!!」
「ち……違うのよこれは! ……誤解よっ」
「一体、どういう誤解なんですか!?」
騒然とする中で、東郷は最後まで司会進行役をこなす。
「ゴホン。……えー、最後までヤケになってはいけないという事が分かりましたね。それでは一旦コマーシャルです」
そして東郷はうわべだけの笑顔で番組を締めた。
(あー良かったっ。危うく私の友奈ちゃんへの狂信的な愛を暴露する所だったわ♡)
おしまい。
※これはフィクション作品のフィクションです。『結城友奈は勇者である』に登場する団体、人名、事件とは、関係ありますが、性格的には一切関係はございません。…………多分。