やさぐれ四天王   作:先バレプレミア当たらない

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スマスロかぐやにやられ一文無しになったので初投稿です。


アッセンブル

「はい、今日もお疲れー」

「乙」

 

 ライブを終えて控え室のソファにもたれかかる。

 今日は新宿FOLTにゲストとして呼ばれた。主役はSICK HACK、我々Force Kindはその前座だ。勿論、そこで終わる気は毛頭なく爪痕を残すつもりでベストのパフォーマンスを披露出来たと思う。

 

「今田中がいないから言うけどさー」

「ん?」

「いるけどー? まだ全然いるけどー?」

「あいつのMCあんましおもんなくね?」

「それ」

「根性焼きされたいか? ん?」

 

 佐藤の意見に鈴木も同意する。田中は最近あったことを話すことが多く、そのほとんどがタンスに小指をぶつけただの、トイレットペーパーを買いに行ったら売り切れだっただのという取り留めのない話題ばかりだ。

 

「じゃあお前らやるか?」

「いやいや、目立つのはボーカル二人の役目でしょ。俺はパス」

「僕もいいかな。女ウケすることしか話せないし」

「ほらぁ! 結局俺しかいないんじゃねーかよ!」

 

 田中が地団駄を踏みながら叫ぶ。そして俺はハナから選択肢にも入っていないらしい。

 

「おい、しれっと俺を除外するな」

「お前はキリッとしとけばいいの」

「そうだよ、お前は顔ぐらいしか取り柄ないんだから」

「精々客寄せパンダになってくれ」

「顔も性格も家柄も全てが完璧だろーがァ!」

 

 何故俺のようなイケメンがこんな扱いを受けなければならないのか。胃がキリキリと痛み出す。胃潰瘍かな? 最近ストレスも凄い。

 ここ一週間まともに勝てていない日々が続いている。永遠に恋愛頭脳戦させられたり、永遠に武器をセットし続けたりと散々だ。

 何か……何か癒しが欲しい。ハラキリの目覚まし時計でも買おうかな。

 いや、今はそれより飲み物が欲しいな。水じゃなくて、炭酸が飲みたい。控え室を出て自販機の方に向かうと、見覚えのある女性が二人立っていた。

 

「あっ、山田君じゃーん! お疲れ〜」

「えっ!?」

「……ども」

 

 今日のメイン、SICK HACKのベースボーカルである廣井きくり。ライブ前にアルコールを摂取して泥酔しながらライブをするアル中だ。そしてリョウはこの人達のファンである。同じベーシストというのもあるが、リョウの心を射止めたという点で俺は彼女をライバル視している。

 そしてもう一人は、俺達と同じく前座を務めたSIDEROSのギターボーカルである大槻ヨヨコ。あまり親しくないのでよく分からないが、真面目そうな子だ。

 

「最近結構出てくれるよね。嬉しいよ〜」

「それはどうも」

 

 彼女の言う通り、ここ最近俺達は新宿でのライブが多くなっている。別に拠点を移すというわけではない。ただ単にSICK HACKを負かしたいという俺の我儘だ。

 チャリンと小銭を入れてコーラのボタンを押す。……10円足りなかった。あったかな……うん、無い。

 

「……10円あります?」

「ん? 無い!」

「……どうぞ」

「ありがとう」

 

 大槻ちゃんが10円玉をくれる。……ふむ、この子は良い子かもしれないな。歌も良かったし、今後も応援しておこう。まぁ結束バンドよりは優先度下がるが。

 

「廣井ー、店長が呼んでるぞー」

「えー銀ちゃんがー? しょーがないなぁ、じゃまたね山田君! 今度飲み奢ってね!」

 

 バンドの人に呼ばれ、彼女は去っていった。……いや、なんで奢らなきゃアカンの? 脈絡どこ置いてきた? でもあの人しつこそうだな……うっ、また胃が……。

 

「……あの、大丈夫ですか?」

「え?」

「気分悪そうですけど……」

「あぁ、最近ちょっと胃が痛くて……」

「……私が使ってるので良ければ、どうぞ」

 

 そう言って大槻ちゃんが胃薬の入った袋を取り出す。……前言撤回、この子はただの良い子じゃない。天使だ。

 

「さっきからごめん。今度何か返すね」

「いえ、お気になさらず」

 

 この場に水は無いため、これは控え室に戻ったら飲もう。お返しは何が良いだろう。普通にお菓子か? 

 

「……山田さん!」

「ん?」

「今日のライブ、凄くカッコよかったです! 二曲目での山田さんのベースソロ、最高でした!」

 

 なんだこの子、さっきから俺が喜ぶことばかりして。何か狙いでもあるのか? いや、あるはずないか。だってこの子は天使だもん。

 

「大槻さん達も良かったよ。あの歌声、好きだ」

「えっ!? あっ……あ、ありがとうございます!」

「これからも頑張って。俺、応援してる」

「はい!」

 

 そう言って、俺はその場を後にした。あ〜、先輩風吹かすのたまんね。さーてと、早く支度して残りの1万でまど〇ギ打とっと! 

 

 

 

 

「……褒められた、山田さんに」

「あれ? ヨヨコ先輩なにしてんすか?」

「きゃっ!? な、何っ!?」

「いや、一人で突っ立ってたんで。……ニヤニヤして、なんかあったんすか?」

「なっ、何でもない!」

 

 

 ◇

 

 

 

「奇跡も魔法も……な゙かった……!!!」

 

 パチ屋を後にした俺は、自宅までの道中にある公園で地団駄を踏んでいた。空っぽの財布を地面に叩きつける。

 55%通して65%継続を当てた内の50%からの更に55%を通したら87%継続? 勝てるわけねェだろうがァァ!!! なんで隣の奴一撃で通してんだよォォォ!!! 

 

「……あー、完全なる虚無だ。これがこの世の果てなのか……?」

 

 風がブランコを揺らす音だけが聞こえる。この音もいつか止み、この世界は終焉を迎えるのだ。その間に人がどれだけ足掻こうが、結末は変わらない。全ては滅びの前に見ている一時の夢。消えさる運命であるこの命に価値などあるのか。

 

「この真理に辿り着いた俺は、人の総意の器にふさわしいのか?」

 

 ……なんて、馬鹿な事考えるのも疲れた。駄目だ、もう今日は早く帰って寝よう。明日になればこの虚無感も消えているはずだ。

 

「おっ、いたいた」

「ん? 星歌さん、どうしたんです?」

 

 帰ろうとしていた俺を引き留める星歌さん。何だか見るのは久しぶりな気がする。

 

「明日は休みだろ? ちょっと飲み行くから、付き合え」

「えー、お金無いんですけど」

「奢りだぞ」

「はよはよ~」

 

 奢りというワードに釣られ、星歌さんの誘いに乗る。美味すぎる話だ、という考えは頭の隅に追いやる。奢りは何よりも優先される事柄だからだ。

 連れられてきた先には一軒の居酒屋が。先に入っている人がいるのか、星歌さんは中へと入って行く。俺も後に続く。

 

「あら、やっと来ましたね」

「あっ、また会った~!」

「帰ります」

「待て待て」

 

 先に座っていたのはPAさん、そして廣井きくり。ニコニコしていたはずの顔から一瞬で笑みが引いていくのを感じた。

 というかなんだこのメンツ。俺なんか悪いことした? 

 

「まぁ座れって。ようやく全員登場出来たんだからよ」

「えっ、何の話です?」

「やさぐれ四天王、アッセンブルですね」

「えー、何その不名誉なチーム名」

 

 星歌さんがPAさんの隣に座り、メニュー表を眺め始める。いや勝手に席決めんなし。

 

「ほらほらこっち座りなよ~」

「チッ……」

「えっ、何で舌打ちされたの?」

 

 仕方なしに座る。俺はジンジャーハイにしよう。星歌さんにその旨を伝え、先に置いてあったポテトをつまむ。

 しかし、俺は何故呼ばれたのだろう。何となく見当はつき始めているが。

 

「で、なんで俺を誘ったんです?」

 

 星歌さんはメニュー表から目をそらさずに答える。

 

「現役バンドマンが一人だけだとアレだろ?」

「囮ですよね」

「まっさかぁ」

 

 冷や汗を垂らす星歌さん。誤魔化せてないぞー。

 まぁいい、いざとなったら逃げるとしよう。アル中の相手なんてしたくない。

 

「よ〜し! 今日は飲むぞー!」

「お前は年がら年中飲んでるだろ」

 

 注文した料理と飲み物が運ばれてくる。廣井さんの乾杯の音頭にツッコミを入れつつ飲み会が始まった。

 

「そういや星歌さん、もうすぐ三十路ですね。新たなスタート、頑張ってくださいね」

「殺すぞ?」

「効いてて草。今日は腹いせに星歌さんの弱い部分いっぱい突いてやりますから」

「卑猥ですね~」

「あっ、ちょっと欲情しないでくださいよ~。こちとらまだピチピチの二十歳なんで~」

「あははっ、なんかテンション高い山田君って新鮮かも~」

「今に下がってくるから安心しろ」

 

 

 

 

「毎日家帰っても誰もいなくて……うぅ、誰か貰ってください……」

「ごめんPAさん……俺と一緒になったらきっとあなたは不幸になってしまう……俺みたいなゴミは一生独身がお似合いなんだ……」

「少なくとも酔ってるお前を見てる私は幸福だぞ。ずっとその状態でも良いくらいだ」

「その状態でベース持ってみてよ~! 山田君も酔っ払イブやろうぜ~!」

「うるせ~! 妹が最近お前んとこの話ばっかりしてんだぞ! あ~っ、このままじゃ誰もライブに来なくなっちゃうじゃないか~!」

 

 

 

 

 目が覚めた時、俺は伊地知家にお持ち帰りされていた。

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