【水星の魔女×結界師】タイムスリップしたら宇宙企業の次期CEOに内定した件 作:駒由李
原作:機動戦士ガンダム 水星の魔女
タグ:クロスオーバー 墨村利守 クロスオーバー 年齢操作 未来パラレル コラボ 二次創作 サリウス・ゼネリ
▼水星の魔女の世界に利守を送り込むとしたら養子コースだろうな→おっシャディク養子らしいじゃん、ここにしよ→20話→「あれ? これこの設定だと利守にお鉢回って来るじゃん」 計算外でした
pixivより転載
御三家のうちのひとつのグラスレーでお家騒動があったようだった。当事者のひとりなのだから「ようだった」というのはおかしいかも知れない。けれど、僕は内紛を起こした義兄のシャディクに、本当のところは何も伝えられていなかった。義父を拉致したときも、その動機も。僕は義父の居場所は知っていたけれど、でもどうすることもできなかった。
結果として、そのことが僕に奇貨を齎すことになる。
――僕が、学園がテロに見舞われたので結界を張りまくり陰ながら人命救助をしていた間に、グエルとドミニコス隊が事態を収拾していた。偶々行き会った地球寮の面々と協力して瓦礫を手作業で撤去していた中、僕は呼び出された。救出された義父からだった。
「は?」
「聞こえなかったか」
なんだか久しぶりに来る気がするグラスレー社CEOの執務室。そこで義父から言われた言葉に思わず呆けた。サリウスは重ねて告げる。
「もう1度言う。次のCEOはお前だ。お前になった、トシモリ」
「どういうことです、義兄さんは――」
「……わかっているだろう。あいつにはもう継がせられない。残念だが……トシモリ。お前にはシャディクのサポートをしてもらうつもりだったが、こうなったらお前に継いでもらうしかない。私も年だ。これ以上アカデミーで後継を見繕うのは無理だろう」
「義父さん」
「これは命令だ、トシモリ」
老齢と思えぬ眼光が、僕を貫いた。
「次期CEOとして学園で学んで来い。そして卒業次第、私の跡を継げ」
僕は拒むことができなかった。
……学園で学ぼうにも、校舎は半壊している。僕は復旧の音を聞きながら、丘に腰を下ろしている。
あぁ、いつだったか、ここにいたらシャディクに声をかけられたこともある。彼は既にいない。テロの教唆、そして実行犯として尋問を受けている頃だろう。アカデミー時代から共に過ごしたシャディク隊の面々もいない。本来なら僕はここで呆けている場合ではないのだ、シャディクの跡を継ぎグラスレー寮の寮長となったのだから。僕は休息を取りたい、と言ってここに来ていた。
瓦礫となった学園。恐らく僕が助けられなかった生徒や教職員がまだ埋まっているだろう。僕はひとり、墓場となってしまった学園を見渡す。
――シャディクは、いずれ時間遡航技術を開発させると言っていた。そして、僕を帰してやるとも。何年かかる話だろうと笑っていた。笑っていられたあのときが懐かしい。
僕はもう帰れない。次期CEOと言う立場を任されてしまった。双肩に重責がかかる。この肩にしがみついてくるものは、グラスレーに任された命。僕は、それを、放り出すことができない。
嘗て墨村を継がねばならなかった立場の良守も、こういう気持ちだったのだろうか。
母がいる覇久魔の地で裏会の幹部を担わねばならない立場の正守も、こういう気持ちだったのだろうか。
妻を失って、それでも墨村家の婿であろうとした父も、こういう気持ちだったのだろうか。
(ごめんね。僕はもう帰れない)
僕は膝を抱え、顔を埋める。あれ程帰りたいと願っていたのに、その希望を放棄せざるを得ない現状に、僕は耳を塞ぎたい気持ちだった。
天候装置は正常に起動しているらしい。人工的な風が僕の髪を揺らした。
嘗て、シャディクの長い金髪も揺らした風だった。
End.