ちゅーちゅータコかいな?   作:烏の烏帽子

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 蜂谷彪雅の熟してきた修行の一つに、特殊な組手がある。

 

「ウィィィイイイイイイイイ!!!」

 

「相ッ変わらず、ウルセェ!」

 

「ウルセェのはテメーだぜ、バカヤローコノヤロー♪」

 

 どこまでも広がる様な薄暗い水面の上で、片や雷光を纏い、片や七本の漆黒の刀を扱う。

 

 内在闘争。禅を組み、意識を内側へと埋没させて牛鬼や彼の創り出した墨分身達との永遠組手を置こうなう修行。

 利点は、戦えば闘う程に肉体へのフィードバックが行われ、オマケに周りを気にする必要が無い。

 欠点は、疲れる。それはもう、トライアスロンを超える疲労度を一戦毎に蓄積してしまうのだ。

 

『良いぞ、雷遁モードも馴染んできてるな。オマエは飲み込みが速い』

 

「上げていくぜェ!」

 

「ッ、雷虐水平千代舞っ!」

 

 型など一切ない七本の舞い踊る刀を前に、彪雅が振るうのは強烈な雷光を放つ手刀。

 荒繰鷺伐刀(アクロバット)。七つの刀を両手のみならず、脇や肘、膝で操り変幻自在の斬撃と体術を可能とした技術だ。

 そして、彪雅の使(・)え(・)な(・)い(・)技(・)術(・)の一つでもあった。

 この技に必要なのは、天性の剣の腕。勿論努力も必要だが、両手以外で刀を保持しその上で斬撃として成立させるとなれば並大抵の技量では自分の体を傷つけるだけ。

 一応、彪雅も五本程度ならばそれっぽいことが出来る。しかし、どちらかといえば忍体術の方が性に合っている為に習得には消極的。

 振るわれる刀。彪雅はこれらを目で追うような事はしない。

 

 “観の目つよく 見の目よはく”という言葉がある。

 元は、宮本武蔵の記したとされる兵法書“五輪書”に載っている言葉であり、観の目とは焦点をぼかした目。見の目とは常の目で追う状態。

 

 彪雅はこの前者を、独学で体得していた。というか、体得していないと挽肉にされてしまうのだから所謂ところの、必然の偶然という奴である。

 タコ墨分身を見ているようで見ていない彪雅。

 そもそも、荒繰鷺伐刀は目で追ってどうにかなる様なものではないのだ。

 何せ、動体視力に優れた写輪眼であろうとも追いきれない程。

 

(ここだ!)

 

「ぬおっ!?」

 

 刀の一振りを蹴り上げる様にして振り上げた右足。それに追随するように、彪雅の体は宙を舞う。

 

「義雷沈怒雷斧(ギロチンドロップ)!!!」

 

 振り上げた右足が、そのまま断頭台へと早変わり。

 分身はこれを躱したが、盛大な水しぶきがそのまま目晦ましとなって先が――――

 

「雷犂熱刀(ラリアット)ッ!!」

 

 水しぶきを突き抜けて現れる彪雅。

 その一撃を、分身は躱せなかった。上半身を抉る様にして胸元より上がタコ墨の飛沫となって大きく弾け飛んでいった。

 

『良し。素のビーには勝てる様になってきたな』

 

「はぁー……!はぁー……!荒繰鷺伐刀は、やっぱりキツイ……」

 

『そりゃあ、そうだろう。写輪眼でも早々に見切れねぇもんだ。寧ろ、今までは雷遁モード無しによく捌けてたもんだ』

 

「アレは、牛鬼の力借りてたしちょっと斬られた程度じゃ傷もつかなかったからねぇ……はあ、疲れた」

 

『なら、次はオレの力を使った状態のビーとやり合ってもらうか』

 

「えぇぇぇーーーーー……」

 

 ブーブーと不満を垂れる彪雅だが、牛鬼はそんな彼の駄々を一蹴する。

 何だかんだと彪雅は課された課題は確りと熟して、己の血肉にすることが出来る事を牛鬼は良く知っているからだ。という訳で、次の課題もまた一切の手心無く行う事になる。

 

 余談だが、その後しばらく内在闘争において彪雅は何度となく牛の頭骨に撥ねられる事になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 機は熟す。

 姉妹校交流会の今年度の会場は、東京校。なのだが、

 

「なんで皆手ぶらな訳!?」

 

「寧ろ、何で釘崎はそんな大荷物な訳?」

 

 驚く釘崎に、彪雅の問いが飛ぶ。

 集合場所にて集まった東京校の面々。その中で、何故だか釘崎野薔薇だけはスーツケースを引きずった大荷物でその場に現れたのだ。

 

「なあなあ野薔薇。今日は何があるか分かってるか?」

 

「え?京都で、姉妹校交流会……」

 

「京都“の”姉妹校“と”交流会、な。東京で」

 

「ええ!?」

 

「話が噛み合わない訳だな」

 

「ですね」

 

 項垂れる釘崎だが、勘違いした彼女にも問題がある。

 ついでに、

 

「アッハッハッハ!釘崎面白いなー?」

 

「笑ってんじゃないわよ!!つーか、気付いてたなら訂正しなさいよね!?」

 

「いや、だって…ブフッ!京都って聞いて早とちりした釘崎にも問題あるんじゃな~い?」

 

「ちったぁ笑い堪える位しなさいよ!?」

 

 地団駄を踏む釘崎だが、その動きは彪雅の笑いのツボをしてくするばかり。より一層の大爆笑が辺りに木霊する事になる。

 気の抜ける様な光景だが、それもここまでだ。

 

「おい、来たぞ」

 

 真希の言葉に一同の目が向けられる先。

 現れた一団は東京校の面々に負けず劣らずの色物っぷり。

 

「あら、お出迎え?気色悪い」

 

「よお、蜂谷。体調は万全か?腹痛で全力出せないなんざ、面白くないからな?」

 

「ハッハー、ボッコボコにされても文句は無しだよ、東堂センパイ?」

 

 速攻毒を吐いてくる真依を尻目に、バッチバチに呪力を昂らせる東堂と彪雅の二人。

 驚くのは、この二人のかかわりを知らない面々だ。

 

「彼は……」

 

「うちの一年。マジでやったら、そっちの東堂よりもつえーかもな」

 

 戦慄しながら問う京都校三年の加茂憲紀に答えるのは、パンダ。

 今すぐにでも始めてしまいそうな二人。だが、そこに一つの柏手が響く。

 

「はい、そこまで!交流会が始まる前からやる気なのは結構だけど、時と場所は選びなさい」

 

 現れたのは緋袴姿の顔の大きな傷のある女性。

 

「誰?」

 

「庵歌姫先生よ。今回の私たちの引率ね」

 

 首を傾げた彪雅に対して、真依が補足し彼は口の中でその名前を転がした。

 一方で、庵は庵で急いでこの場に割り込んでいたりする。

 

(去年の乙骨並みの呪力が溢れたかと思えば……アレが、五条の隠し玉って事?)

 

 見るのは、今はロボットの見た目をしたメカ丸へと絡んでいる彪雅だ。

 今年の交流会も大いに荒れるのかもしれない。庵はそう考え、ほんの少しだけ胃が痛む思い。

 

 だがしかし、特大の爆弾はまだお披露目されていないのを彼女は知る由も無かった。

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