トレセン学園であった怖い話   作:塩化プラス

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【第三話】エアシャカール/C4~NEXT

所詮、私たちは好奇心には勝てない学生でしかなく。

やめるべきだと諫めるなどできないまま、あっさりとボタンは押されてしまった。

押すとかちり、固い感触と小気味の良い音が鳴って。

棚が、どうしてか。大きな音を立てて横にスライドし始めた。

 

「な、何……?!」

 

驚く間にも音は響き続けている。

少しずつ見えてくる、奥にあるもの。

開ききったその場所に存在していたのは、SF映画にでも出てきそうな大きな円筒一つ。

その内部に詰められているのは薄青く発光する水のような液体と、水中にふわりと浮かぶ幼い少女だった。

 

「ンだよ、コレ……」

「フラスコの中の小人、とかいうヤツ……?」

「そ、そんなもの実在するのかな……」

「生きたフラスコってまさか……」

 

みんな、この異質すぎる光景に怯えている。

私は円筒内に浮かぶ少女に対して、妙な既視感を覚えていた。

この子どこかで……見たことがあるような。誰かの面影を感じるような。

気になって注視すると、円筒の片隅にラベルが貼りついていることに気付いた。

 

「アルファベット……大文字のUと小文字のb……?」

 

意味も分からないまま文字列を口にし、更なる理解を深めるためにもう一歩近づこうとしたそのとき。

 

「おや、君たち。どうしてここに来たんだい?」

 

淡い光の及ばないところ、闇夜の片隅から誰とも知れない声が響いた。

 

「比較的簡単な仕掛けとは言え、恐怖心に負けず好奇心のみでよく突き進んだものだねぇ」

 

どこから響いているのかは分からない。

部屋全体から耳に直接染みてくるような不思議な声。

その声は私たちの困惑など一切慮ることなく続ける。

 

「とはいえ、だ。流石にこの研究について知られるのは実によろしくない。実験の立証に支障が出かねないからね。さあ、私の声に耳を澄ませて。三つ数えたら君たちはこのことを忘れるんだよ」

 

謎の声に対してシャカールが食って掛かる。

 

「誰なンだテメェは?!」

「誰とはまた含蓄のある言葉だねぇ。誰でもいいじゃないか、どうせ忘れてしまうんだから。どうせ私の顔なんて見れやしないのだし。身体、もう動かないだろう?」

 

どうしてだろう、足は地面に縫い付けられたようで。顔はまるで金縛りにでもあったかのように微動だにすら出来ず。確かに、動けない。

どうして、と声に出すよりも早く。

 

「さあ。さん、にい、いち……」

 

お別れだよ。

その言葉だけが頭に響いて……

……はっとした瞬間、私たちは理科室の外にぼうっと立っていた。

 

「ホワイ、どうしてワタシたち外に……?」

「知らないわよ、本当になんで……?」

 

模型が動いたところまでは覚えている、けれど。

そのあとの記憶がどうにも曖昧模糊としている。

 

「模型が動いた後、何かあったような気がするのだけど……」

 

問いかけてもみんながみんな、不思議な顔をするばかりだ。

何かモヤモヤする、何か重要なことを忘れている。

けれど、考えても仕方ないことなのかしら。

忘れてしまっているということは、思い出さない方が幸せという裏返しかも知れないし。

 

「……とりあえず、戻りましょうか?」

「……あア。釈然としねェが、そうしよう……」

 

そう割り切って、私は多目的室の方へ向かって歩き出した。

一度だけ後ろを振り返ってみたけれど、背後には吸い込まれそうな闇だけが広がっていた。

 

 




休憩しますか?

1・はい

2・いいえ

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