トレセン学園であった怖い話   作:塩化プラス

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【第三話】エアシャカール/K3~NEXT

オイオイオイ……スズカ、いくらなんでもそりゃねェだろ。

そこまで世の中優しくはねェよ。報われない努力なンて幾らでもあるワケだしな。

まア単純に部員が異様に少なかった時とかはあッたらしいけどな。

……んじゃあまア、どうせだしその話でもするか。

部活の消滅にも繋がってる話ではあるワケだしな……

 

現実問題よォ、生徒の自主性に任せるだけじゃ上手く行かねェこともあるだろ?

いくら礼節を守ったってな、オレたちは所詮未完成のヒトガタでしかねェワケだ。他人の気持ちの全てを慮ってやれるわけでもない。ふとしたところで地雷を踏んで、諍いが起きるなんてのは日常茶飯事さ。

 

そんなとき。

珍しく顧問が割り込んできたのさ。

付かず離れずをキープしてた顧問がな。

 

「手伝わせてくれないか?」

 

ッてな。

その顧問は今年初めてレース見学部の顧問になッた男でな。控えめに言っても教師として冴えた人物じゃあなかッた。

ただな、かつては名うてのトレーナーとして辣腕を揮っていたンだッてよ。

そのときゃもう歳食ってトレーナーからは身を引いちゃいたがな。

 

「君たちのトレーニングに口出しする気はない。だが、これまでの経験を元に情報を共有してやることはできる。どうせ暇だからな」

 

顧問はそうやってしたたかに笑った。

見返りなしにコーチングしてもらえるンだぜ。部員たちは当然食いついたさ。

トレーナーの視点から情報を貰えるんだ。何人もの部員がメキメキと上達していって、やがて部を卒業していった。掛け値なしにいいコトだよな、ホントによ。

 

それでも勝てないヤツってのは当然いる。居なかったら最初にオレがスズカの答えを否定したのすら嘘になっちまうからな。

どうにかできないかと頭を悩ませて、顧問が行き着いたのは、SF染みた結論だッた。

顧問はVRマシンを借りてきて、眼をらんらんと輝かせて言い放ったンだよ。

 

「かつてウマ娘と俺たちを決定的に変えたのが何かを知ってるか? それはチーム制の導入に他ならない。しかし俺たちはチーム等の関係ではない。だがこのVRマシンを使えば……肉体的な負荷をそこまでかけずにチームとしての活動が疑似的に行える。つまり、みんなが勝ちに近づける、明確にだ!」

 

この部活に限って、古参ってのは威張れる肩書にはなンねェ。

だからこそ、VRマシンを使って全員の肉体へ平等に利益を分配する。

感覚的技術を平均化する行為ッてのは塩梅が大事なモンだ。

 

けれども。それが裏目に出ちまッた。

顧問である元トレーナーはな。平均値をどこに置くのかを考えて、かつて自分が担当していたウマ娘のレースを参考に数値を設定したンだ。

 

……しちまッた結果、まア善悪半々ッてとこかね。

功罪相半ばってヤツ。

善意で動いた顧問も悪ィし、鵜呑みにして付いていったウマ娘たちも浅はかだった。

そりゃ勝ちはすンだよ。VRで学んだ一流の知識をフル活用してンだからな。

ただレースに勝った後、トレースしたその負荷に耐え切れず脚を痛めてしまうヤツらが続出した。で、理由を聞けば全員が全員口を閉ざすンだぜ?

そン中には有望なヤツらもいて、ケガしたヤツらの共通点を探したら……レース見学部に行き着くのは納得だろ?

 

そうなりゃ顧問は問い詰められるワケだ。誰が決めたかも分からねェ、部の暗黙のルールを破ってどう責任を取るんですか、そんなところかね。自分らのコーチング技術の甘さを棚に上げてそんな都合のいいセリフ、良く吐けたモンだよなとは思ッちまうが。

で、自分の善意が有望な選手を殺したことに顧問は気付いちまう。

一人だけ悪いわけじゃねェのにな。

 

「俺が……悪かったんだ……」

 

後悔に苛まれた顧問は、VRマシンに己の身を放り込んだ。

体感時間をノーリミットに設定してな……

 

確かにこの学園は元トレーナーの教師とかは多いぜ。

でもよ、なンでこの中立地帯よろしくの部活に、やる気十分な元トレーナーの教師が配置されちまったンだろうな?

しかもこの年だけ。これまでは特に何も無かったのによ。

 

聞きゃその元トレーナーの顧問。トレーナーを辞めた理由に些か疑問符が付くところがあってな。

顧問になる少し前にトレーナーを辞めて、教師専任になったらしいンだ。

で。トレーナーを辞める結構前から、当時の理事長と反目しあってたらしい。当時の理事長はかなりの拝金主義者だったらしくてな、その反理事長陣営の急先鋒に居たのが件の顧問だったらしいンだよ。

 

想像するに、権力を使って何とか失脚等させたが……かつての成果とこれまでに築いた人脈と思慕の念やら。まア十分すぎるほどの実績があったせいで、放逐することも出来なかったとかなンじゃね。その結果の悲劇ッてワケ。体のいいお払い箱的なスペースにしようと思ッてたのかもな。レース見学部って言うポジションをよ。

 

語れば語るほど今のオレたちは結構恵まれてンだろうなッて実感するぜ。

あの理事長やたらウマ娘第一プラスで超前のめりだしよ。

 

とりあえず、だ。

その一件があってからこの部活は解体されちまッたらしい。

だから今では伝聞だけが残ッてる状態だ。

 

……でもまア、数年後にはまた復活してンだろ。レース見学部。

オレたちウマ娘が存在する限り、必要に駆られりゃ技術や情報を求め始めるはずさ。集団の成り立ちってのはそういうモンだ。チャチな大人の妨害程度じゃ止められねェ、濁流みてェなチカラがいつかどこかで働くはずだしな。

 

……その顧問がどうなったかッて?

百年だぜ、詳しく聞かなくたって分かるだろ。

一応、生きてはいるがな。死んじまッたようなもんさ。

 

怖い話ッぽくねェ?

まア、そうかもな。

だがよ、VRマシンに入ってる時、感じたことねェか?

全員が全員とは言わねェけどよ、オレたちのトレーナーって新人寄りなメンツが多いじゃねェか。圧倒的な実地の経験不足ってのはいつだって付きまとう。

なのによ?

VRに入ってるときのトレーナー、やたらと達観してねェか?

アレってよ、例の顧問が宿ってんじゃねェかなって、話聞いた後だと感じねェ?

……ま、考えすぎか。

ロジカルさの欠片もねェ思考だしな。

 

……据わりが悪ィムードだが、オレの話はこれで終いだ。

次は誰が話す番なンだ?

 

 




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