トレセン学園であった怖い話   作:塩化プラス

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【第三話】エアシャカール/L3~NEXT

ン~……まア、そうかア。

ほぼノーヒントでぶん投げたオレも悪ィしな。

 

じゃあ、オレがこれから言うものを脳内で整理して考えてみてくれ。

まず、だ。

このレース見学部って部活の異質さについて。

少しばかり考えてみてくれ。

 

そもそもよォ、この部の成り立ちからしておかしいとは思わねェか?

オーバーワークとか死ぬほど気にされて管理されてるオレらに、そンな自分の身体を痛めつける口実みてェな部活、やらせて貰えるもンかね?

オレは否ッて言いたいね。

選抜勝ち抜いてデビューに至るだけでも結構な上澄みなンだぜ?

デビューした時点で少なくともチームには加入してるしよ。

そこでやりゃいいじゃねェか。誰も咎めねェどころか逆に協力してくれそうなモンだぜ。

レース見学部なンてモノにどうして入る必要がある?

 

……オレはその辺に不可思議さを感じたンだ。

それでかつてを知る者がいないか調べてみた。パルカイを使ってのデータ集計等に加えて、探偵紛いじゃあるが脚で稼ぐことだってしたぜ。

結果として分かったのは、前述した変哲もない活動内容と、あの部活の創設者が誰かッてことぐらいだ。

 

創設者は……トキノキロク。

オレらが産まれる遥か前の桜花賞バ。

創設当時の部名、今とはだいぶ違ッててな。

記録保持部。

その名の通り、勝った負けただけではなく、このレースがどう勝敗に結びついたのかを記録し文面に認める。学園における外部記憶装置のような役割を果たしていたらしいぜ。

部活自体は彼女が一線を退いてから。教師として学園へと舞い戻ったときに作られたンだとさ。

名は体を表すッて言うが、その彼女、相当な記録魔だったらしい。しかも情報収集癖もあったみたいだぜ。

 

勝った負けただけの無味乾燥な記録群じゃ満足出来なくなって、自分に負担のない範囲で記録を収集することが出来るエリアを求めたンだとさ。

顧問と副顧問には変わり者の同僚と、部員は彼女と同じように『知る』ことを楽しむ数人のウマ娘で構成されていた。

平たくいやァデジタルみてェなヤツらが集まってたッてことさ。

要するにギークの集団だな。

 

ここで注目してェのが、当時の記録保持部に特別な決まり事なんて一つもなかッたトコだ。

ソイツがG1を勝ってようが、未勝利だろうが関係なく。レースを蒐集してェヤツが集まってワイワイやりながら記録をまとめる。

そりゃ調べるうちに学べる理念とかはあると思うぜ?

ただそンなのは二の次なンだ。

 

しかしそれもずっと続くワケじゃない。

トキノキロクが結婚して学園を去ったところから話は始まる。

ここはあやふやな推察じゃなく、九割がた間違いない推論だぜ。

変わり者の同僚だけになってから、今の名前に変わったからな。

そして……今に至る。

 

で、よォ。

この部活。今は存在しねェって最初に言ったよな?

理由としちゃテンプレだぜ、厄ネタがあったから取り潰された。

ただそンだけの話だ。

 

 

なンでもデータの集計中、部の全員が突然消えちまったンだとよ。

身も蓋もねェよな。だからコイツは緘口令ッてヤツなンだろうな。

 

伝わってる話としては……例の顧問と部員数人がある日突然行方不明になッたンだと。記録、とだけ書かれた無地の冊子だけを残してな。

警察や家族は懸命に探したが、痕跡一つ残さずに。

その日までソイツらが居たという歴史だけを残して、翌日を汚さぬままどこかへと……

 

まア、なんだ。

なにぶん昔の話だし、当時の騒ぎっぷりなンか知りやしねェよ。

前日にソイツらが妙なことを宣ッてたのもあッたから、噂に尾鰭が付いたンだろうさ。

 

ソイツらの最後のセリフはな。

無限にやり直せる世界に進む。

そのための準備は整ってる、だとさ。

 

ハハ。あり得ねェよな、そンな夢物語。

キツネやタヌキだってもう少し上手く人を誑すぜ。

もしこのオカルトな言説が本当に起きたモノだッたンなら。

無限にやり直せる世界とやらに、己が身を置いたと言うンなら。

オレらの居る現実世界と、オレらの居ない空想世界を分ける明確なモノって一体全体なンだろうな?

認識が世界を作るンなら、人間の数だけ真と偽があるってことか?

並行世界が仮に存在したとして、無限にやり直せるような世界なんて存在すンのか?

……いやさ、そンなもン考えるだけムダだわな。

だって考えたって答えなんかでねェし。

 

だからよ。オレは別に理由があると踏ンでる。

まア、もっと率直に言うなら。

この部活は負荷の行き着く先を知るための虚……

……おっと、仮定に基づいた推論を口にすンのは良くねェな。

 

オレだってレースから生じる無限の可能性と、整然とした理論にて辿り着く勝利の終端を探してる一人で、自分の視点を信じてこの世界にケツ落ち着けてンだ。

ソイツに見えたもんはソイツの真実であって、オレらにとっての真実じゃあない。

ま、ムキになってもしょうがねェよな。

だってオレはこの話によって消えた見学部員じゃねェから、ハハハ……

 

まア……想定とはだいぶ違ェ形だが、十二分に怖い話はしてるンじゃねェかな。

ロジカルじゃねェから、納得は出来かねるけどよ。

 

あア……?

何がオレをそこまで駆り立てたのかッて?

さアな……そン時は気が触れてたンだよ、多分な。

 

さあて、どうだ。

少しぐらいは見えてきたか?

考えても分からないときは、提出された情報を元に理解を再構築する必要がある。

オレが導いた結論が正解とは限らない。不正解かもわからない。

だからあとは、スズカ。

お前が考えて、答えを出すンだな。

 

……さ、次を頼むぜ。

 

 

 




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