偽アルトリアinアストレアファミリア   作:ほんわか抹茶オレ

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もう、みんなこの小説のこと忘れてるやろw
と、言うことで人知れず投稿します。


それはそうと、久しぶりなので初投稿ですってあれ、マジでなんなの?


9.主人公の転換点

「はあ……、神というのはどこまでも自分勝手ですね」

 

 アルトリアは溜め息を吐きながらオラリオの町並みを歩いていく。

 神とのエンカウトなど嬉しくもなんともない。基本的に面倒事ばかりやってくるのだから。

 

「とはいえ、ここから先は神の意思など関係はありません。彼に恥辱の限りを与えて自己嫌悪で泣かせるくらいまで追い込み、やる気にさせる一大イベントが私を待っています。

 事故でもなんでもなく私の意思で行う原作介入……ふふっ、胸が躍りますね」

 

 小声で言っているため賑やかな喧騒に掻き消されているが、言っている内容はどうしようもない外道である。よく自分勝手などと(他人)に言えたものだ。

 

「ベート・ローガのあの言葉では、リオンに好意を抱いているベル・クラネルの起爆剤としては些か弱い。より効果的にしなければ彼のこれからの成長を遅らせる要因になってしまう。

 あの純粋無垢な少年の心を的確に抉りつつ、私がそれを言っても不自然ではない形に落とし込まなければならないか……。

 むむっ、生半可に煽っても足りず、ベート・ローガのように口汚く罵ることもできないとなると、少し考えなければなりませんね」

 

 幼気(いたいけ)な少年の心を傷付けることを、嬉々として行う第一級冒険者が居るらしい。『騎士王』などと持て囃している者もこの姿を見れば軽蔑の視線を向けることだろう。

 

「(そう考えると、無意識にベル君の心を抉るベート・ローガはただ者ではありませんね。私でもそのようなことは熟考しなくては一つも思い浮かべないというのに……流石です。

 貴方は尊敬に値する狼人(ウェアウルフ)だ)」

 

 本人が聞けば怒り散らかしそうなことを考えながら、アルトリアは歩みを進める。

 

「やはり、副団長としての立場とオラリオ最強の肩書きを利用して煽るのが一番効果があるでしょう。気を付けるのはあくまでも自然に見えるように振る舞うことです。

 注意事項としては『第一級冒険者として少し厳しい現実を言っているだけですよ』と、聞こえるような言葉を選ぶことに細心の注意を払うことですね」

 

 ベートの滑らない話(トマト野郎騒動)が始まっているかもしれないため、早歩きで『豊穣の女主人』へと足を向けるが、なんと既にもう目の前へと来ていたようだ。

 注意散漫とはまさにこのこと。殺気や敵意があればすぐに気付いたとはいえ、どこか油断していたことに思わず苦笑いを溢す。

 

「(どうやら、主人公の……いえ、世界の行く末を決める岐路に立ったことに緊張していたようです。フッ……私もアルトリアとしてまだまだ未熟ですね)」

 

 最早、アルトリア云々だとかは余り関係の無い気もするが、どうやら彼女の中では明確な違いがあるらしく、今の自分自身はアルトリア検定不合格のようである。

 アルトリアは気合いを入れ直し、記憶に残るアルトリアの姿を思い浮かべながら扉の取っ手に手を添えて、アルトリアらしい言葉を紡いだ。

 

 

「──さあ、始めましょう。私の冒険を」

 

 

 ギィ……!と、木が軋む音を鳴らしながら、彼女(アルトリア)は扉を開けて舞台(世界)の中心へと単身で躍り出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、唐突に始まった。

 

「そうだ、アイズ!あの話を聞かせてやれよ!」

 

 シルさんに訪れるように誘われた『豊穣の女主人』で晩御飯を食べていると、団体客が遅れてやって来た。どんちゃん騒ぎで貸しきりのように『豊穣の女主人』で飲み食いしているのはオラリオ二大派閥の一角。

 他でもない、僕がミノタウロスに追われる原因となったファミリア、ロキ・ファミリアだった。

 

「あの話……?」

 

「帰る途中で何匹か逃したミノタウロス!最後の一匹、お前が5階層で始末しただろ!?そこに居た、あん時いたトマト野郎のッ!」

 

「……ッ」

 

 それが、一体誰のことなのかはわざわざ考えるまでもない。ミノタウロスによって殺されそうになっていた僕のことだ。僕だと気付かない青年は意気揚々と話し出す。

 

「ミノタウロスって、17階層で襲いかかってきて返り討ちにしたら、すぐ集団で逃げ出したやつ?」

 

「それだそれ!奇跡みてぇにどんどん上層に上がっていきやがってよっ、俺達が泡食って追いかけていった奴だ!こっちは帰りの途中で疲れていたってのによォ」

 

「そんでよ、居たんだよ。いかにも駆け出しっていうようなひょろくせえガキが!

 抱腹もんだったぜ!兎みたいに壁際に追い込まれちまってよォ!しかも、アイズがミノを細切れにしたからそいつ全身にクッセー牛の血浴びて……真っ赤なトマトになっちまったんだよッ!」

 

 そう言うと、その狼人(ウェアウルフ)は腹を押さえて爆笑していた。

 

「それにだぜ?そのトマト野郎、叫びながらどっかいっちまってよ。……クククッ!ウチのお姫様、助けた相手に逃げられてやんのッ!」

 

 青年がそう言うと、赤髪の糸目な彼らの主神が大きく口を開けて、『豊穣の女主人』の隅から隅まで届く笑い声を上げた。

 

「アハハハハハハハッ!そりゃ傑作やぁー!冒険者怖がらせてまうアイズたんマジ萌えー!!」

 

「ふ、ふふっ……ご、ごめんなさい、アイズっ。流石に我慢できない……!」

 

 彼のファミリアの眷属もその話に釣られたように笑い出す。こんな針の筵は生まれて初めてだった。酒の肴にされて笑い者にされている。そんな今まで感じたことのなかった恥辱を浴びせられて、この場から今すぐにでも消えてしまいたかった。

 だけど、これは僕が笑われて終わるだけの話じゃなかったんだ。

 

「……違う。助けたのは私じゃない。『疾風』だった」

 

「!」

 

 『疾風』。このオラリオにおいて数少ない一級冒険者。他でもない、僕を助けてくれた恩人にして恋心を抱いた憧れの人だ。その人の二つ名が耳に届くと反射的に肩が上下に揺れた。

 

「『疾風』ってアストレア・ファミリアの?なんであのエルフがダンジョンに居るのよ?ガネーシャ・ファミリアと同じ様にオラリオの治安維持の方に力を入れているところでしょ?」

 

「……さあ?私もそこまでは聞いてない」

 

 アマゾネスの発育の良い女の人が、金髪の女性に向けて問い掛ける。聞き耳を今まで以上に向けてしまうのはその人の情報を少しでも知りたかったからだと思う。

 初めて恋をした女の人。僕の憧れを具現化したような物語に出てくるような綺麗なエルフ。僕の運命の人だと感じたあの人のことを知りたい。それこそ、今まで感じていた屈辱感や劣等感といった負の感情を忘れてしまうほどに、僕はあの人に夢中だった。

 けれど、そんな浮わついた気持ちは一瞬で冷水を掛けられたように冷え込んだ。

 

「ハンッ、要するに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。女に助けられて本当に情けねぇ奴だった。勘弁してほしいぜ」

 

「ッッ!」

 

 その言葉を聞いて情けなさで死にたくなる。そうだ、あの人はこの都市でも有数の有名人だ。容姿だけではなくその実績も称えられる程の、遥か高みに居る超人の一人。

 なんの実績も持たず、ミノタウロスから尻尾を巻いて逃げる程度の新米が近付いていい人じゃない。人じゃなかったんだ……ッ!

 その事実に今になってようやく気が付き唇を強く噛みしめる。隣に居るシルさんが心配するように声を掛けてくれるけど、それに返事をする余裕なんてなかった。

 

「いい加減そのうるさい口を閉じろベート。ミノタウロスを逃がしたのは我々の不手際だ。巻き込んでしまったその少年に謝罪することはあれ、酒の肴にする権利などない。恥を知れ」

 

「おーおー、流石エルフ様、誇り高いこって。でもよォ、そんな救えねェヤツを擁護してなんになるってんだ?それはテメェの失敗をテメェで誤魔化すためのただの自己満足だろ?」

 

「これやめえ、ベートもリヴェリアも。酒が不味くなるわ」

 

「アイズはどう思うよ?自分の目の前で震え上がるだけの情けねェ野郎を」

 

「……あの状況じゃあ、しょうがなかったと思います」

 

「ハッ!いい子ちゃんぶっちまって。じゃあ質問を変えるぜ?あのガキと俺、ツガイにするならどっちがいい?」

 

「……私はそんなことを言うベートさんとだけはごめんです」

 

「無様だな」

 

「黙れババア。……じゃあ何か、お前はあのガキに好きだの愛してるだの目の前で抜かされたら、受け入れるってのか?」

 

「……っ」

 

「そんなはずねえよなぁ?自分より弱くて軟弱な雑魚野郎に、他ならないお前がそれを認めねェ」

 

 そして、彼が発するその次の言葉を聞いた僕の耳には、異なる人の名前に聞こえた。それは、類似点が多くあったからかもしれない。

 長い金髪。

 年上の女性。

 『Lv.5』 の第一級冒険者。

 

 だから、思わず連想してしまったのだその人の名前を。

 

 

 

「───雑魚じゃあ、リュー・リオン(アイズ・ヴァレンシュタイン)には釣り合わねェ」

 

 

 

 そして、気が付けば僕は『豊穣の女主人』から飛び出していた。出る途中で女性と擦れ違った気もするけど、衝動のままに飛び出した僕にはそれが誰だったのかは分からなかったし、それに気付く余裕なんて一つもなかった。

 だから、僕とあの『英雄』との出会いはもう少しあとになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え……????」

 

 『豊穣の女主人』から飛び出して行く白髪の少年の後ろ姿を眺めながら、私は思わず口から困惑の声を溢してしまった。

 頭の中には疑問符ばかり浮かんでいたが、【直感】のスキルが待ちわびた原作の名シーンが終わったことを悟らせてくる。

 ヒュー……ッと風が吹き、賑やかなオラリオの町が数秒だけ無音になってしまったかのように感じながら、私は呆然としたままその場に立ち尽くす。

 

 こうして、私の待ち望んだ名シーンは舞台に躍り出た瞬間に幕を閉じたのだった。




最後のベル君と擦れ違うシーンはアニメだと、アルトリアの目元が影になって表情が見えない感じになります。
個人的に主人公が別のことに夢中で、最強の一角と町中で擦れ違う展開とか結構好き
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