原作未履修の主人公が憑依転生して、知らない間に原作崩壊を引き起こすだけの話 作:原憑崩
森に少し入ったところにある、近くに小川の流れる広場。そこは小さい頃から僕達の遊び場兼訓練場だった。
入試前までは僕が海浜公園、かっちゃんがここを使って特訓していたんだけど、僕もここ最近は毎日のように使っていた。
樹々の上に隠れ、猿か猫のように音も無く移動する。すると、かっちゃんが樹に背を付けて周囲を警戒しているのが分かった。
僕は足に力を溜め、音が出ないように呼吸をする。そして飛び出し、解き放たれた矢じりのようにかっちゃんへと真っすぐ向かった。
攻撃する直前、落ち葉が偶然僕の身体に掠った。かっちゃんが僕へと気づいてぎゅるんと顔を向け、即座に対応。僕の蹴りを丈夫な腕で受け止め、衝撃が周囲に広がり、木々をざわめかせる。
「おはよう、かっちゃん!」
「うるせえ、死ねボケ!」
かっちゃん語で『うるせえ、死ねボケ!』は『良い朝ですね、ごきげんよう』と同意である。
地面に着地した僕は、かっちゃん相手に近接攻撃の応酬を繰り返す。
「もう明日だね、かっちゃん! 雄英の入学日!」
「ああ!? けっ、そういやそうだったな! 明日からは数千倍テメエをぶっ殺してやるから覚悟しとけ!」
「またまた、そんな事言って! 嬉しそうな爆発顔してるくせに!」
「嬉しそうな爆発顔ってなんじゃ! オラァ!」
「はあ!」
かっちゃんの蹴りを身体を反転させて避けて、カウンターの裏拳。かっちゃんは顔の真ん前でそれを受け止め、僕を背負い投げの要領でぶん投げ、広場へと投げ入れた。
鋭く加速したかっちゃんの追い打ちのぶん殴りを受け流し、足払いして地面へと叩きつけて顔に拳を突き付けた。
「――――今日も僕の勝ち!」
「がああああああ! クソがああああああ!」
春休みに入り、襲撃27回、執念による18回目の勝ちを拾い、今日も今日とて気分のいいスタートを切れた僕、緑谷出久であった。
その後、かっちゃんと何度か勝負をして、いい汗をかいた後はお互い特訓する為、かっちゃんは山に残って僕は海浜公園に行っていた。
かっちゃんと特訓? そんな気持ち悪い事出来ないよ。彼とは勝負する時くらいしか一緒に遊ばない。
「やあ、緑谷少年!」
「八木さん!」
八木さんモードのオールマイトが僕を待っていたようで、手を上げて挨拶してくれた。僕もすぐに挨拶を返す。
「どうしてここに? 今忙しいんじゃ……」
「HAHAHA! なに、朝散歩するくらいの時間はあるのだよ。それよりも、緑谷少年! ついに明日から始まるな!」
「はい! 今からもうワクワクしてます!」
オールマイトは深くうなずく。
「明日からは、私は教師として、そして君はヒーローの卵として、本格的にスタートを切る。だが、だからといってのんびりできる訳ではないぞ、緑谷少年! 後継者として、君は様々なチャンスを使い『君が来た!』ってことを世間に伝えなければならない……君ならやってくれるという信頼があるが、困ったことがあったら何でも私を頼ってくれよ! 教師として……師として、出来る限り協力しよう!」
「ありがとうございます、オールマイト! でも大丈夫ですよ。課題も少しずつ前に進んでますし、僕は必ずトップヒーローになりますから!」
「ああ。君が後継者で良かったよ、緑谷少年! ――――だが、私はオールマイトではないぞ! さあ一緒に、人違いでした!」
「人違いでしたー!」
遠くから「え!? オールマイト!? どこ!?」 という声が聞こえ、僕は慌てて声を出して誤魔化したのだった。
◇
「超かっこいいよ、出久!」
「ありがとう!それじゃあ、行ってきます!」
入学式当日。僕は雄英の服に袖を通し、通学路を小走りで走っていた。
制服の上から目立たないデザインの重しを取り付けて、軽いトレーニングだ。時間は有効活用しなければ。
雄英に辿り着き、すぐに教室へと向かう。途中で寝袋を見つけたので声をかけて話を聞いて拾い上げた。
時間的にまだクラスメートは少ないかな? ワクワクしながら教室を開ける。
「君、机の上に足を置くのを辞めないか! 雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないのか!?」
「思わねえが、テメエはどこ中の誰だ、ああ!?」
「ぼっ……俺は私立聡明中学出身の飯田天哉だ」
「聡明だぁ!? クソエリートだなおい! ぶっ殺し甲斐があるじゃねえか!」
「口悪いな!? 君本当にヒーロー志望か!?」
僕はすぐに彼らの方へと歩き出して、手を上げた。
「おはよう! かっちゃん、飯田君!」
「む! おはよう、緑谷君!」
「うるせえ! 死ねボケ!」
お互い挨拶を交わして、飯田君に笑顔を向けた。
「かれは爆豪勝己! 僕とは同じ中学出身で幼馴染なんだ。『ぶっ殺し甲斐がある』は『競い甲斐がある』と訳せるよ! かっちゃん語は初見の人には難しいよね、あはは!」
「かっちゃん語ってなんだコラクソデク!」
「そうだったのか! すまない、表面上の言葉だけを受け取って、裏にある気持ちをないがしろにしてしまっていたんだな! 共に切磋琢磨し合おう、爆豪君!」
「お前も順応すんなや! デクに対する異様な信頼度はなんだコラァ!」
飯田君は次に僕に笑顔を向けた。
「緑谷君も、同じクラスだったんだな! 嬉しいよ!」
「僕もだよ、飯田君! 今日からよろしくね!」
「ああ、よろしく頼む!」
握手する。
「それにしても、爆豪君と君は幼馴染同士なんだな! 倍率の高い雄英に2人そろって入るとは、爆豪君も君と負けないくらい優秀なのだろうか。だとしたら負けていられないな!」
「あはは、入試はかっちゃんが一位だったんだよ」
「なに!? 俺はてっきり君が一位だと思っていたが……だとすれば、爆豪君は凄まじい能力を持っていそうだな!」
「けっ」
「ううん、個人的な勝負は僕が勝ちこしてるから、その程度だよ」
「ぶっ殺すぞクソデクテメエ!」
いきり立つかっちゃんにすかさず「机に足かけてると素行不良ってことで内申点下がるよかっちゃん」といえば、すぐさま足を机から退かして舌打ちした。
「あー! そのもさもさ頭は!」
後ろから声をかけられ、振り返る。
「っていうか、知ってる顔三人そろっとる! 改めまして、麗日お茶子です! よろしくね!」
「飯田天哉だ、よろしく、麗日さん!」
「けっ、爆豪だ」
麗日さんが僕に顔を向けてきた。期待に満ちた顔。
「僕は緑谷出久って言います。よろしく、麗日さん」
「……うんっ」
自己紹介し終わった後、タイミングを見計らっていたのかかっちゃんが声をかけた。
「というかデク。お前、肩に何背負ってやがる。そろそろ吐けやコラ……!」
「ああ、そう言えばもう始業時間だね。ほら、皆! 席について!」
僕はクラス中に声をかけ、そして肩に背負っていた寝袋を教壇へと持っていきそっと置く。
「それじゃあ、よろしくお願いします、先生!」
「ああ、すまんな緑谷。――――という訳で君たちの担任の相澤消太です。よろしくね」
「「「「担任だった!?」」」」
騒然とするクラスの中、僕は席について背筋を伸ばした。
ここから始まるのか……高校生活が! 二度目とはいえ、前世のそれはもうずっと昔の事。この胸躍る感じは完全に忘れていた。
刻み込もう。この初心を……今度は忘れないように、真っすぐ生きよう。
「やべえ喧嘩に笑顔で突っ込んで行くやべえ奴がクラスメートかと思えば、そいつに背負われてやってくる教師もまたやべえだろ!」
「ヤバいの3乗ね」
ざわつく教室を睥睨し、圧力で黙らせる相澤先生。静かになるとやっと口を開いた。
「はい、静かになるまで10秒かかりました。時間は有限……君たちは合理性に欠けるね。……まあいい。早速だが、お前らこれ着てグラウンド集合しろ」
取り出したのは体操服。
「個性把握テスト。まずは君たちがどこまでやるのか、見せてもらおう」
「「「個性把握テストぉ!?」」」
「えっ、先生! 入学式は!? ガイダンスは!?」
「ヒーローになるならそんな悠長にやってる時間無いよ」
麗日さんが手を上げて聞くと、相澤先生はそれを一蹴した。
その後、僕たちは急いで体操服に着替えることになった。
「急がねえとなんかヤバそうだぞ、あの先生」
「男子更衣室探すのに手間取ったな! 急げ急げ!」
「かっちゃん、どっちがグランドに先に着くか競争しようか!」
「けっ! ぶっ殺してやるわ!」
先に辿り着いて先に着替え終わっていた僕とかっちゃんを見て、赤髪の人が目を丸くする。
「もう着替え終わってんのかよ! 速いなおい!」
「マップ見て地形把握はヒーローの必須科目かなと思ってあらかじめ特訓しておいたんだ!」
「なんだそりゃあ!」
「これが最高峰ヒーロー科のトップ二人か! 見習わなければ……!」
そんなこんなでグラウンドに集まった生徒を見て、相澤先生は淡々と言う。
「雄英は自由な校風が売りだが、それは教師にも言えること。お前達には今日これから、個性有りの体力テストをしてもらう……爆豪」
「あ?」
「中学の時のソフトボール投げ何mだった?」
「89m」
「なら、個性使ってここでやってみろ。円出なきゃ何してもいい」
「けっ……」
かっちゃんは専用のボールを受け取ると、飛び跳ねて準備運動をした。
「んじゃまあ……!」
そして、独特の呼吸音を口から流して全身に力を入れた。かっちゃんの腕が若干膨らみ、血管が浮き出る。
「死ねェ!」
――――爆破を絞り、威力を一点に集中させる。
爆音が響き渡り、ボールはあっという間に消えてしまった。
流石かっちゃん。僕が使ってる『呼吸』を参考に、見よう見まねで生み出した独自の呼吸法で身体を強化して、勢いに上乗せしたんだな。
負けてられねえな、これは。
「――――1302m。まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段だ」
「一キロ超えた!?」
歓声が響き渡る。
「すげえ、なにこれ面白そう!」
「個性思いっきり使えるんだっ。流石ヒーロー科!」
「面白そう、ね……ヒーローになるための3年間、そんな腹積もりで過ごすつもりなのかい?」
「えっ……」
一気に静まり返った。
「よし、トータル成績最下位の者は見込み無しとし、除籍処分としよう」
こうして僕たちの雄英初日は、やっと始まったのだった。
前話にて、緑谷出久がAFO継承者になってしまったことを深く謝罪いたします。今作において緑谷出久はOFA継承者ではなくAFO継承者で間違いありません。緑谷出久がOFOじゃなくてAFA継承者になってしまうなど大どんでん返しどころではないミスをやらかしてしまったことが悔しくて仕方ありません。
今後は緑谷出久がOFA継承者で無くAFO継承者にならないよう細心の注意を払い、投稿する前によく読みなおす(何度も読み直した結果間違えたのですが)ことをここに誓います。大変申し訳ございませんでした。
感想欄開いた時の絶望と恥をどうにかして皆さんにおすそ分けしてあげたいです。
( ・O・)ノ⌒恥ポイッ。
アンケート協力ありがとうございました。読みやすさ重視で一人称統一させてもらいました。イベントとか用意してたけど、重要なものでもなかったしポイします。
一人称は統一した方が
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読みやすい
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読みにくい
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どっちでもいいにゃん