作家がペンで殴らず拳で殴ってどうする、馬鹿め! 作:はちみー
安直だと?
俺は童話作家だぞ、小さな少年少女がメインターゲットなのに小難しいタイトルにするかバカめ!
爆豪が目を開けると、そこそこの広さの公園だった。
公園には複数の少年達が、倒れ伏している少年を前にキャッキャと騒いでいる。
何処か見覚えがある様な光景だと爆豪は思っていると、隣にアンデルセンがやって来て語り始めた。
「少年は生まれながら強い才能を持っていた、才能が発覚してからというものの周りは少年をもてはやしました」
「世は才能がものを言う時代、持たざる者は周りになど興味も向けられません。だからその少年には期待と無意識な欲に囲まれ、育っていきます」
リーダーであろう子供は普通の子供であったのに、周りが褒める事にどんどんと肥大化していく。
その事実に気づかないままリーダー格の子供は、取り巻きと共に日々を過ごしていく。
親も心境の変化に気づかず甘やかし、祭り上げられた子供を窘める事もせずに日常を送る。
「ある日勘違いしたままの子供は、遊びに来た公園で一人の子供に怪我をおわせてしまいます。その子供はリーダー格の子供にとっての幼馴染でもあり、かつて夢を語った相手でもありました」
「流石に焦ったものの、周りは批難の声所か嘲笑うばかり。凄くないから怪我をして、君は凄いからそいつが怪我をしたのは君のせいじゃあないと言います」
そうかそうだったのか、凄いおれは凄くないやつをいじめてもいいんだ!だって何の才能もない凄くないお前が悪いんだから!
かつて一緒に出掛けたり、夢を語り合ったりした二人の関係は歪んだ物になっていきます。
時が経ち成長するにつれて、身も心も大きくなっていきました。
見た目こそ健全な男の子ですが、内面は酷いものでブクブクと肥え太っていくのです。
しかも恐ろしいことに間違えに気づく事もなく、幼い心情のまま大人に近づいていく醜い心。
ある日、醜い心の少年は持ち前の暴言で同級生を泣かせました。
そして庇うように少年の幼馴染は、目の前に立ち塞がりましたがあっさりと負けてしまいました。
「道端の小石の癖に楯突いてんじゃねぇよ木偶の坊!」
「うっ……」
「わかったらとっとと道開けろ!」
自然と人を見下して、自分が成す事は正しいと思い込み他者を踏みにじる少年へと育ってしまいました。
彼の事をよく思わない人々は口を揃えて言うのです。
「あぁ、なんて醜い!アレがヒーローになったとしても、救われたとしても嫌な気分になるに違いない!」
それに比べボロボロの少年は成長しても才能は開花されずにいましたが、それを見ていた人々は賞賛の声が。
なぜ負けて情けない姿を晒したとしても、彼がその評価を受けるのか。
それは弱者に手を差し伸べたのが強者ではなく、力を持っていなくとも立ち塞がる正しくヒーローの様な振る舞いだったからなのです。
かつて二人は同じモノに憧れたものですが、いまでは二人は深い溝と共にかけ離れた存在になっていたのです。
かくして少年達は青年となり、同じ様で違ったヒーローになりました。
ですが二人の差はどんどん離れていき、弱かった彼の方が上になり強かった彼は名声すらも雲泥の差に。
何故こんなにも差が開いてしまったのか、彼には理解ができません。それもそのはず、彼は勝つ為だけで戦ってきたのですから。
ヒーローの本質にも目を向けず、真に人を救う事も出来ないのはただのニセモノでしかないのだから。
さて、ここまで彼の行く末を語っていきましたが……
全てが彼の自業自得なのでしょうか、疑いすら持たなかったから?自分だけを見ていたから?
それもあるでしょうが、彼を作り上げてしまったのは環境なのです。
蝶よ花よとおだてられ祭り上げ、純粋な心を変質させたのは紛れもなく周りの人間。
ただ一つ、たった一つの過ちを彼はしてしまったのです。
彼の行動を真っ向から受け止め、そして隣を歩もうとした友の存在を自分から遠ざけてしまった。
自分の過ちに気づかせてくれた筈の、友人だった彼の事を。
このままでは彼は一生救われないまま死ぬのでしょう、彼が掴むのは張りぼての栄光かそれとも……
ほらそこに貴方が嫌悪し邪険にしてきた彼が、差し伸べています。まるで春の日差しのようであり暖かさ、背後には反対側は寒く凍える冬の訪れが手招きしていたとさ。
アンデルセン程の文才がある筈ねぇだろ!バカバカしい!なんだよそれ!!(ティーダ並感)
それっぽくしたつもりなんです!通してくれ!
そんなこんなで爆豪君の心をそこそこ折ったつもりです。
彼はね……折れなきゃいけないんだ、愛故のというやつだ
泣いている爆豪を見るのは気分がいい、これほど美味と感じる酒ならば是非また飲んでみたいものだ……