ある夏の日。いつものように学校がある。放課後、スクールアイドル同好会の部室に一番早く来たのは私であった。片手には水色の少し分厚い紙。そこには台本とマッキーペンでデカデカと書いてある。
「まだ…誰も来てない…。少し、練習しようかな」
バッグを床に置き、椅子に腰掛ける。台本をペラっと一枚、また一枚とめくっていく。
あらすじはとある少年に恋する少女の学園恋愛系。主人公の少女、ナツミは同じクラスのイサムに恋をしている。私はヒロイン、ナツミ役である。そこのワンシーンであるイサムがナツミに向かって顎クイをし、そのままキスをする。そこの演技の仕方に、私は困っていた。
「うーん。…ココは一人じゃ無理な気が…」
身振り手振りでやってみるもなかなか自分の納得行く演技ができない。そんなとき、部室のドアがガラガラと開く音がする。私が振り返るとそこには朝香果林が立っていた。
「あら?まだしずくちゃんしかいないの?」
「果林さん!えぇまだ来てないみたいで…」
「そう。しずく…何やってたの?」
果林が私にそう聞く。
「演劇の練習です…。それで…」
私は果林さんに演技のことについて教えてもらうことしました。果林さんはコクリと頷き、相槌を打ちながら聞いていた。
「なるほどねぇ…」
「どうでしょうか…」
「いいわ、私が特別に教えてあげる…!」
果林さんは椅子から立ち上がり、私の顔へと近づいてくる。な、何このドキドキ感…!
「顎クイは、こうやってやるのよ」
か、果林さんの左手が…私の顎に…!?いやいや、これは演技の練習なんです!惑わされない!
「か、かかか果林さんッ!」
「あら?顔、赤いわよ?」
「み、見ないでください…//」
「見なきゃ…キスできないじゃない?」
果林さんの顔はもうすぐそこ。キス…されるのかな?私。
「じゃあ、するわよ」
「…はい…」
これは演技のため!演技のため!そう考えていた時、部室のドアが開く音がした。ま、まさか!?こんなところを誰かに見られたら……!
「エッ!!?」
ドアを開けたのは…紛れもない、かすみさんであった!
「あっ!か、かすみさん!?」
「し、しぃ…ず子?」
「こ、これはぁ……そのぉ……」
どうしよ…変なことやってるって思われたら…!やばいやばい!
「しず子……!」
「?なにか勘違いしているわ?これはしずくちゃんの演技の練習。私が付き合ってあげてただけよ?」
ナイスです!果林さん!
「な、なんだ〜かすみん、ビックリしちゃいましたよぉ〜」
意外とあっさりいけた?…でも良かった〜。これで誤解は解かれた!
「で、しずく。…自分でできそう?」
「え?あ、はい!」
…やばいかも。夢中になってて…頭に入ってない…!
……でも頑張らなきゃな〜!
ーー終わりーー