星野家のエキサイティングで温かな日常 作:ハッピーエンド大好きクラブ
設定ミスしてやらかしたので修正を加えて再投稿しました。皆ごめんっ!!!!
星野ルビーは追い詰められていた。殺人鬼に殺されかけているわけではなく、未曾有の脅威に晒されているわけでもない。
彼女は机に突っ伏し、声にならないか細い声を上げた。
「明日…………期末テスト……………ヤバいぃ」
そう、ルビーは追い詰められている。「期末テスト」に。
「ル、ルビーちゃん、そんな思い詰めんでも……ちゃんと勉強しとるんやろ?」
隣の席に座る寿みなみはルビーがあまりにも落ち込んでいるのが心配になって、少々控えめに話しかけてみた。
「全然……してません」
「えぇ!?もう期末テスト明日やで!?」
「だってアイドル活動で忙しかったんだもん!しょうがないもん!こっちはファンのために歌と踊りを頑張ってたんだから!勉強なんてする暇なかったの!」
ジャパンアイドルフェスで新生「B小町」の名を世に広めるために必死で努力し、見事大成功を収めたが、その代償はあまりにも大きかった。
だって期末テストに向けての勉強を疎かにしていたんだから。
芸能科と言えど学ぶことは一般科と変わらない。みなみは苦笑いを浮かべ、「テスト範囲は分かっとる?」と尋ねる。
「テスト範囲?あー……………うん、分かってる。えっと…………うん、知ってるよ……?」
「その返しは分かってないって言ってるのと同じやでルビーちゃん…………」
そもそも期末テストという存在すら忘れていた可能性すらある。ルビーはこのままだと全教科赤点というアイに顔向けできない悲惨な結末を辿ることを危惧した。
だが、ちゃんとテスト範囲を押さえていれば赤点回避は容易だ。
問題はテスト範囲を全て暗記するだけの時間があるかということ。
期末テストは明日行われる。時間が限られている以上徹夜するのは確定。家だと誘惑に負けてお菓子を食べたり動画を観たりしてしまう。
ならば、ルビーが取るべき選択は一つ。
「みなみちゃん。今日事務所でテスト勉強するから付き合って」
苺プロのレッスン室でテスト勉強をしようと算段を踏んだルビーはみなみを誘うことに成功する。
どうせならと有馬かなにも声をかけると、意外にもオッケーをもらった。
彼女も事務所で勉強する予定だったらしく、都合が合うから仕方なく、だそうだ。
──────────
「もう勉強イヤ!つまんない!お家帰りたい〜!帰ってママにオギャリたい〜!」
勉強会開始十分でルビーは幼児退行を起こしていた。
「る、ルビーちゃんそんなに暴れんでも……まだ始めて十分やで?」
「十分!?え、十分しか経ってないの!?あり得ない!時間進むの遅すぎー!」
ドタバタと駄々っ子のように文句を言うルビー。そんな彼女に対して数式を解き終えたかなが心底呆れた様子で声をかけた。
「うっさいわねー。小学一年生でもないんだから真面目に勉強しなさいよ。赤点とっても知らないんだからね」
「有馬先輩はテスト勉強順調です?」
「上々よ。これなら学年一位を取るのも造作もないわね。フフフ、今回も学年トップ、虎次郎が知ったらなんて言うかしら」
「多分馬鹿馬鹿しいわって言うと思うよ」
みなみは頭の中でもっと酷いことを口にする虎次郎を想像する。彼の授業態度はそこそこ悪い割に小テストとかはいつも満点を取る。
ルビーの兄は中間テストで全教科満点を取るという脅威の頭脳を知らしめた。
アクアの前世は超有能な医者であったため、偏差値40が求められる学校のテストで満点を取るなど赤子の手をひねるようなものだ。
「アクアを見習いなさいよ。アイツはお家でテスト勉強に励んでるはずよ。アンタと違ってね」
「むぅ…………虎も勉強してるのかな」
「あんな馬鹿が勉強なんてするわけないでしょ!今頃あかねと二人で遊んでる最中よ!」
因みに虎次郎の中間テストの結果は全教科0点。本人曰くテストで全教科0点取ったら教員たちはどんな反応をするのか気になったそうだ。
思惑がバレて生徒指導室に呼ばれたらしい。かなはそれを本人から聞いて腹がよじれるほど笑い転げたようだった。
「アンタバカ虎みたいになりたいわけ?」
「やだ。お勉強頑張る」
「それでいいのよ。じゃあここまでやったら休憩にしましょうか」
「ルビーちゃんファイトー!」
「うん!」
一方虎次郎はというと、あかねに誘われてお家デートの真っ最中。
お家デートといっても、あかねのテスト勉強に付き合っているだけで、虎次郎はぼーっと眺めては時折あくびをしている。
「虎次郎君、テスト勉強しなくていいの?」
「やらなくてもそこそこ点数取れるから良いんだよ。赤点回避出来りゃぁそれでいい」
「そっかぁ。でも虎次郎君やろうと思ったら良い点数取れると思うけどな」
「買いかぶり過ぎだ。俺の偏差値60だぜ?」
対して黒川あかねの偏差値は脅威の78。名門中学を卒業していることあってか成績面はトップレベルに高い。
因みに偏差値78は東大や早稲田、慶應義塾を素知らぬ顔で卒業できるレベルの賢さとなっている。
「お前の方こそテスト勉強必要ねぇだろ」
「でもやっておかないと不安だし」
「そういうもんか?」
「そういうもの。あ、虎次郎君、英単語教えてよ。虎次郎君得意でしょ?」
虎次郎の英語力は外国人のそれと変わらない。それに英検一級を所持しているし、参考書よりも彼から教わったほうが役に立つ。
あかねは彼の傍に寄って、気になる部分を指で示す。
本当は分かっているがわざと虎次郎と距離を近くするために知らないフリをする。
肩と肩が触れ合い、柔軟剤の香りがふわりと鼻をくすぐる。
「虎次郎君良い匂いするね。落ち着くな……」
こう言うと虎次郎は恥ずかしそうに頬を赤くした。
「お前柔軟剤変えた?」
「気づいた?一昨日から新しいのにしたんだ。気づいてくれて嬉しいなぁ」
二人の様子を、あかねのお母さんは扉を薄く開けてほんの少しの間だけ見つめていた。
これ以上はいけないと気づかれないように扉を閉めて、階段を降りていく。
「…………………フフ」
初めてを迎えるのも時間の問題だ。
──────────
期末テスト終了。結果発表の期間に入り、学年順で三位から一位までの成績優秀者が掲示板にて発表される。
右から一年、二年、三年。前回の「中間テスト」では一年のトップは星野アクアで、二年は有馬かなだった。
それは今回も同じこと。何よりかなは自分の名前の左隣にアクアの名前があることがとっても嬉しかった。
ルビーもテスト勉強を頑張っていたし、順位に入ってはいなくとも学年上位には食い込んでいるだろうと期待を抱く。
クラスメイトの井上摩耶花と一緒に彼女は掲示板を確認する。
「期末テスト」成績優秀者:二年生
一位 有馬かな
二位 井上摩耶花
三位 〜〜〜〜〜
「今回もかなちゃんが一位だね。悔しいなぁ」
「フフフ、次は私を超えられると良いわね」
かなは一年の順位へ目を向ける。そこには予想通り一位に星野アクアの名前が載っていた。
だったのだが────
一位 星野アクア、立川虎次郎
「────ぁあ"?」
なんと、今回の「期末テスト」ではアクアと虎次郎の二人が全教科満点を取り、同列で一位を取ることができたのだ。
それを今ここで知ったかなは衝撃を受けた直後に虎次郎へ沸騰したお湯のように怒りが湧き上がった。
「お、俺とアクア同列だな」
何も知らない虎次郎はアクアを連れてかなの近くを通りかかる。
「簡単だったしな」
「余裕余裕」
「────ふん"っ!!」
────スパァァァンン!!!!
「ぶへらぁっ!??」
虎次郎は頬を上履きでシバかれた。これぞ正に理不尽な暴力。
ルビーは普通に良い点数を取ってアイに褒めちぎられた。