Fate/deep diver ~天月の逆杯~   作:マルペレ

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二次創作ということで、目をつむって頂けると幸いです。


DIFFICULT or EASY

 祈りの弓とは、イチイの木によって作られる短弓である。イチイの木は北欧やケルトでは聖なる樹木の一種とされているので、これを素材とすることで「森と一体である」という儀式を意味していたという。

 アンリは本に書かれた知識を覗いて、森と一体、奇襲、毒、アーチャーという単語を頭の中でまとめ上げた。次にシャーウッドと出てくれば、もう特定は可能だ。死ぬ直前、丁度現世でも映画になっていたあの英雄の名前しか浮き上がってこないのだから。

 

(“ロビンフッド”か。そりゃ高潔なダン爺と気があわねぇワケだ)

 

 心の大部分が納得を占める中、なぜそのような従者(サーヴァント)が選ばれたのかという疑問もある。月にダイヴするよりも事前に召喚する事も可能かもしれないが、どちらかと言うとアレは自分と同じで月で初めて召喚したのだろうと言う事が分かる。触媒を以って召喚を行う前に、ダン・ブラックモアと言う人物は騎士であり、魔術師(ウィザード)としては、そう特筆すべき技能を持っていると言う訳でもなかったからだ。

 冬木市で開かれている聖杯戦争であったなら、触媒無しで召喚する場合は相性によってサーヴァントが選別されて召喚されるのだが、この月の聖杯は様々な事象を「記録」する風変わりな聖杯。ありとあらゆる新たな「可能性(パターン)」を常に欲しているが故の、組み合わせの様な気がしなくもない。最終的にはあの慎二でさえも一応は従えていたのだから、絶対的に仲の悪い風な主従はいないようだが。

 

 話はそれたが、ここで相手の真名を看破してしまったアンリは端末にデータ化して保存してある遺物について、ラニにどう話したものかと後頭部を掻いた。正体が分かった以上、単なる裏付けに過ぎないようにも思えるが……。

 

「明日か。……まぁ、あっちの都合に合わせるか。どうせする事もねぇしなぁ」

 

 このアンリ・マユの名を冠した男は、とことん「人間」には甘い。ラニの様な多少特殊な出征を抱えていたとしても、彼の殺害権限が働くような相手のお願いは大体は快く引き受けてしまうのである。

 そんな彼のひとりごとを聞いていたキャスターが自身のマスターの危機感のなさに肩を落としていたものの、部屋に戻った瞬間にはそれこそが美徳だと褒め称えていたのだとか。

 キャスターよ、あんたは一体どんな従者を目指しているんだ。

 

 

 

 そして時刻は午後。

 ひと悶着が在ったせいで昼食を取るのが遅れていた彼らは、半刻ほど遅れた昼食が出来上がるのを待っていた。正確に言うと、あまりメシウマではないキャスターが待機要員というだけであるが。

 そんなこんなで、焼きキャベツの甘さを口いっぱいに噛みしめる昼食が始まった。他にもメニューを追加する事が出来たのだが、所詮この場所は電脳世界。腹を満たす行動も習慣的な事を忘れないために摂取しているだけで、別に飲まず食わずでも十分やっていける。それに時間が少し遅れている事もあって、目ぼしいおかずはキャベツと一緒に焼いたウィンナーを包んだ物だけだった。

 

「シンプルなこれでも美味しいって……。これじゃ私の立場が在りませんよ」

「ならまずはアレンジで砂糖入れようとするのを止めろっつの。……前にもしたよな? この会話」

「いやぁ、レシピ通りにしなきゃならないって分かってても、どうしてか加えちゃうんですよね~」

「朗らかに言う台詞じゃねぇって。いい加減にメシマズ要員卒業しろ」

「はーい、ご主人様がそう仰るならば!」

 

 などと調子のいい会話を交わす二人。内、片方は相手の気楽さに望み薄であるなどと思ってはいるのだが。

 

「お?」

「来ましたか」

 

 ほのぼのとした時間を過ごす二人に、この世の無常を告げる電子音が鳴り響いた。出現した端末に記されていたメッセージは「::第二暗号鍵(セカンダトリガー)を生成。第二層にて取得されたし」というもの。

 一回戦ごとの折り返し地点である四日目が今日。重い腰を持ち上げたアンリは、キャスターを連れて部屋を出る支度を整え始めた。

 

 

 

 新しいアリーナには、スタート地点から見えるコロッセオが特徴的だった。アリーナの姿は、戦う二組のより意志の強い側の心境や在り方を表現する固有結界のような役割を果たしていると、何処かで聞いた事が在る。となれば、この景色は数えるのも億劫なほどの意識や魂を共有しているアンリと違い、たった一つの魂と意志を貫くダンの心境が現れていると言う事なのだろう。慎二と戦った時は、サーヴァントの方が色濃く反映されていたようだが。

 

「あのおっきな建物が二回戦の大鳥になるんでしょうねー。相変わらず真正面からの戦いで不利には違いありませんが、西洋の独壇場がどれだけのモノか、今から楽しみです」

 

 見るからに日本の和に通じた時代を生きていた事が分かるキャスターにとって、西洋に近しい景色と言うのは物珍しいところが在るのだろう。興味心身に目を輝かせているキャスターに、生前同じく外国の建造物の現物を見た事が無いアンリは、同意するようにそうだな、と頷いた。

 

「しっかし、オレの意志ってそこまで弱いのかね? どうにも第二アリーナで心情風景が反映された事が無いけどよ」

「それだけ相手が掛ける意志が強いという事でしょう。ご主人様の意志が弱いと言うつもりは毛頭ございませんが、私たちの目の前で令呪を消費する程、この聖杯戦争に願いをかけていると言う事でしょうし」

「高潔な戦いって奴か。…そうかもなぁ」

 

 とはいえ、スタート地点から駄弁っていても仕方がない。アリーナ探索の為に、彼らは足を進める始めるのだった。

 

 

 

 第二回戦の五日目、アンリは初めてダンと出会った噴水前に聳える、教会の中に来ていた。言峰が言っていたイレギュラーな二人を見に行くという目的もあったのだが、その場所には普段なら見慣れないもう一人―――ダン・ブラックモアが神の偶像に向かって祈りをささげている姿が在った。

 

 この教会はサーヴァントの改竄が出来ると言う事もあってにぎわっていると思われたが、存外に静かなものだ。というのも、改竄を請け負った女性が依頼者のサーヴァントをロストさせたというのが噂になった事もあり、それを恐れて教会には再び人が来なくなったのだ。

 だからこそ、キャスターも実体化させてあるのだが、まさか人がいるとは思わなかった。これが顔の割れた対戦相手だったからよかったが、別の人物であれば、一回戦の慎二の事を周囲にばらした遠坂嬢のような事になっていたかもしれないのだから。

 

「…む、君か。……昨日はすまなかったな。正々堂々と戦うと誓い合ったと言うのに、私のアーチャーの独断で水を差してしまった。あの傷が君の命を奪わなかった事は、不幸中の幸い、とは思うが――いや、これから戦う相手に、随分滑稽な事をいってしまったな」

 

 ダンは笑うと、同時に謝罪を込めて目じりの下がった顔になった。別段、アンリはその事に対して悪い感情も持ってはいないので軽い言葉で大丈夫だと返したのだが、会話が打ち切られそうになった時、おずおずとダンに尋ねる人物がいた。

 

「えーとぉ、あのあの、人助けはいいとは思いますけど……」

 

 アンリの後ろから、昨日の令呪を使ったことに対してキャスターが問いかけたのである。

 影ではずばずばと言っているくせに、いざ対面すると気後れした物言い。こんな面もあるのだとアンリが内心で驚いている間に、ダンは苦笑を浮かべていた。

 

「そうだな。自分でも、どうかしていたと思っていたところだ。あろうことか、二回戦で、しかも敵を利するために使ってしまうとは。だが、自分にとってはあれが自然なことに思えたのだよ」

「自然、ですか?」

 

 敵である筈の者に駅を与える事が自然である。そう言い切った彼に、キャスターは知らずの内に新たな問いを投げかけていた。少し昔語りになるが、と断りを入れたダンに肯定の頷きを返した二人を見て、彼は恥ずかしげに話し始める。

 

「私は女王陛下たっての願いで参戦したのだが、この場合はわしにとっても初めてである私的(プライベート)な戦いになるのだよ。軍務であれば、……君たちには悪いが、先日のアーチャーを良しとしていただろう。だが、先ほど私的な戦いと言った様に、生憎と今は騎士として振舞っていてな」

 

 視線を外し、教会の奥に聳える十字架へと目を向ける。

 

「……そう思った時、騎士であった頃に先立った妻の面影がよぎったのだよ。わしの妻なら、そんな勝ち方で喜ぶのだろうか? とな。いや、老人の昔話だがね。今では顔も声も忘れてしまった。思い返す事が出来るのは、彼女がどんな人間だったか。その程度だ。

 まぁ、当然の話だ。先立たれた後は軍人として生き、軍規に徹した。その数十年には己としての幸福など、どこにも存在しない。国の一部として生き続ける己に、私情が立ちいる隙など無かったのだから」

 

 その言葉は、長く生きた者の一つの答えなのだろう。

 彼が手にした答えは、こうして今の彼を形作っている。だからこそ、この考え方は彼のようなものでしか理解は出来ないだろう。それを踏まえた上で、彼は生き方の一つだという啓示を踏まえて言ったのだ。

 二人を交互に見据えると、若さは大切にした方が良い、と笑った。

 

「君達には言わずとも分かっているかもしれない。だが、あえて言わせてほしい。結果は全て過程の産物に過ぎない。極東には“後悔先に立たず”と言う言葉もある様に、今を恥じることなく生き抜くことこそが、自身を憂いから解放する鍵なのだよ。

 ……さて、らしくない自分語りはここまでだ。長話に付き合わせてしまったな」

「……ダンさん、アンタは―――」

「それは君だけの答えかもしれない。早々に口にすることは止めておきなさい」

「……そっか。行くぞ」

「……はい」

 

 再び祈り始めたダンに、これ以上語り合う事など出来ない。教会の奥に座る赤と青を視界の端に収めながら、アンリは教会の扉から抜け、それを閉ざした。

 教会から振り返ると、用務員として整えていた色とりどりの花壇が待ち受けていた。かの老人とは比較的な、命の躍動を感じさせる……どこまでもデータでしかない虚構な存在。この世界の心理と、ダン自身を重ねてしまうようで、アンリは深いため息を吐いたのだった。

 

「うぅ……教会でこっそりと奥さんを想ってるって。あのおじいちゃんの気概も相当な物のようです……。そんな人と戦うなんて……」

「思うところでもあるのか?」

 

 嗚呼、こんなサーヴァントにもこう言う慈悲の心があったのか。

 そう思ったアンリの問いかけに、首を振って答えた。

 

「たまんないほどゾクゾクするんです。ぐすっ」

「前言撤回だ。オレの感動を返せ駄狐」

 

 手刀を頭に当てると、アンリは二度目の溜息を吐いた。

 

「で、ですがこの身はサーヴァント。あのおじいちゃんが立ちはだかろうと、ご主人様の未来を拓くために尽力させていただきます」

「そりゃよかったよ。……にしても、オレらって自身の確認ばっかりじゃねぇか?」

 

 その言葉にきょとんと固まると、彼女は笑って言った。

 ―――そうかも知れません、と。

 

 

 

 その後、三階にやって来たアンリと相対しているのは、遺物の痕跡を読み取ってくれると言ったラニと言う少女。受け取った遺物である矢の部品を見つめながら、これならば詠み取れそうですね、と彼女は言った。

 

「まぁ、オレ達にとっちゃ最終確認みたいなもんだ。任せる」

「私は、道標である師の言葉に従うまで。…ですが、この場は貴方の期待に応える事も悪くないのかもしれません」

 

 では、とラニが一言二言つぶやくと、遺物は彼女の顔の高さまで浮遊した。品の一つ一つを柔らかな手つきで撫でると、目を閉じて空を仰ぐ。静かな魔力の高まりが、これから行う術が魔術であると証明していた。

 

「ブラックモアのサーヴァント、彼を律した星もまた、今日の空に輝いています」

≪この感じは、宿曜道ですかね。多少なら私も出来ますが、このマスター、なかなかの技量の様です≫

 

 キャスターの言葉がなくとも、精密に魔力を流す様子を、彼はその目で見ていた。

 すると、ラニの身体が小さく震えだす。閉じた瞼の裏で、なんらかの景色が流れ始めたと言う事か。

 

「これは…森? 深く、暗い……。

 とても…とても暗い色。時に汚名も負い、暗い闇に沈んだ人生……。

 賞賛の影には、自らの歩んだ道に対する苦渋の色が混じった、そんな色。

 緑の衣服で森に溶け込み、影から敵を射続けた姿……」

 

 

彼女が見るサーヴァントの姿。

それは今の……軍人ではなく、騎士としてこの戦いに臨む彼とは、正反対の姿。

 

「……そう、だからこそ、憧憬が常にあるのかもしれませんね。陽光に照らされた、偽りのない人生に」

 

 純英霊に憧れた反英霊と言う表現が当てはまるのだろうか。この聖杯戦争は、穢れていなかった頃の冬木の聖杯と違って、まさに見境なしに古今東西から英霊を呼び寄せる代物らしい。

 そんな敵サーヴァントの情報に、キャスターも通じるところが在るのか、昔を思い出すような感傷がパスを通じて流れてきた。

 ラニの方も、それで全ての景色を、見終わったのかだろう、少し残念そうな声で結果を伝え始めた。

 

「これは、私の探している物ではないようです。今回は、憧憬、それゆえの亀裂。師から教えられた人間の在り方の一つでした。……どうやら、貴方の星もまだ彼とは交わっていないようですので、第二層に向かってはどうでしょう? 彼の星をそこに感じてみました。直接問うのもいいかもしれません」

「探し物は残念だったが、こっちは助かった。サンキュな」

「いえ、早々に見つかる物とも思ってはいませんので。それではごきげんよう」

 

 これ以上はこの場にいても自分たちの利益は無いだろうし、彼女の邪魔にしかならない。

 そう思い、彼はラニの言葉に従ってアーチャーと戦おうとアリーナへ足へ向けた。

 

「しかし……やっぱなぁ?」

 

 アンリと言う存在が、この場所ではどこまでも歪に見えてしまうのは、気のせいではないのかもしれない。

 

 

 

 アリーナに来たが、変わらない人口の景色はどこまで「再現」されていたとしても、飽きが来やすいように思える。

 アンリが腕を回しながら相手探すか、とキャスターに問いかけようと横を見ると、すでにキャスターは鼻をすんすんと鳴らして居場所を特定していた。

 

「……言うまでもないか。んじゃ行くぞ、キャスター」

「はい。仰せのままに!」

 

 どうせ戦う事になるのだから、とアンリが戦闘衣装のままにキャスターの指示で進んで行くと、ダンとアーチャーが同じようにアリーナを歩いている姿が見えた。声をかける前に向こうのアーチャーが彼らに気付かれていたようだが。

 

「さ~て、旦那、どうします? 目の前に出てきましたけど」

 

 アーチャーは弓を弄びながらそう言うと、キャスターはそんな彼を鼻で笑い飛ばしていた。

 

「出てきた? 出てきたのはそっちでしょう、いつも隠れてコソコソして」

「よく言うぜ、鼠みたいに逃げ回ってたのはどっちだっての」

「生前も、隠れ続けて英雄と呼ばれ、今も結局、お日様の下では、まともに戦うことも出来ない。あ、でもそのお爺ちゃんが羨ましくなっちゃったんですか? ガラにもなく姿を現しちゃって」

「っ…!」

 

 キャスターが先ほどのラニの言った事を復唱すると、何故それを。というあからさまな怒りが感じて取れた。先程の涼しい顔は一転、紅潮していく。

 

「どうしたんですか? 早く隠れないと、すぐに燃やしちゃいますよ!」

 

 なおも続くキャスターの挑発。

 ついに琴線に触れたのか、彼は羽織った外套に手をかける。

 

「上等だ! “シャーウッドの森”の殺戮技巧、とくと味わっていきな……!」

「冷静になれアーチャー、お前らしくもない」

 

 思わず出身を漏らしたアーチャーを抑え、ダンは言う。だが、アーチャーはそれでも収まるところを知らないようで、外套に手をかけたままだった。

 

「あいあい、わかってますけどねぇ。……サーの旦那、こいつはちょいと七面倒くさい注文ですよ? 正攻法だけで戦えとか、冗談言うにも程がありますって!」

 

 無理やりに疎められてもまだ怒りは収まらないのか、粗暴な様子で彼はダンに吐き散らしたが、言われた方は仕方がないと首を振るばかりである。

 

「俺から奇襲を取って何になるって? この甘いハンサム顔だけですよ! 効果が在るのはそこらの町娘だけだっつーのに、ホント訳わかんねぇ!」

「不服か? 伝え聞く狩人の力は“顔のない王”だけに頼ったものだったと?」

 

 目の前で行われるやり取りで判明した、シャーウッドの森、顔のない王という二つの単語は、アンリの中で完全に正体の裏付けを取った。かの義賊ロビンフッドが存外にガサツだった事に驚いたが、所詮英雄なんて元は人間だったのだからと心のどこかで納得もしていた。

 

「成程、ロビンフッド様は守る村しか益を与えない、つぅことか?」

「ッ、テメェ!?」

「…ほう、見破っていたか」

 

 ここで初めてアンリが口を開くと、案の定というか、アーチャーは極端な反応を見せていた。対するダンの方は見破られたとしても余裕が存在しているようだが。

 

「つか、サーヴァントから情報漏らし過ぎだっつうの。爺さんは当たり障りのない隠語使って立って言うのにな」

「そう言う君は情報秘匿が得意の様だ。…彼を見習ってもよいのではないか? アーチャー」

「はぁ? 英霊がただのマスターを見習えって…つか、そっちは情報なさすぎなんだよ! 外見とキャスターぐらいしか情報しか手に入らないって、マスターが蛮族みてえな見た目に反して慎重すぎだろ」

「蛮族って…! そこの弓兵、マスターを侮辱した事を思い知らせ―――」

 

 毒づいたアーチャーがアンリを叱咤すると、蛮族と言う言葉に反応したキャスターが良い返そうと前に出る。そんな彼女を手で制すと、彼は面白そうに笑った。

 

「そりゃ悪かった。だがこちとらサーヴァントの正体知らないから、漏らしようもないんだよ」

「ハ、ハァッ!?」

「取り乱すな。……それにしても驚かせてもらった。知らないと言う事は、宝具さえも正体不明のまま。つまり一回戦は実力で勝ち抜いたと言う事か。私たちとは大違いだな、アーチャー」

 

 笑いを隠しきれていないダンがそう言うと、アーチャーはキャスターに挑発させた時よりも顔を紅潮させていた。

 

「おやおや、誠実と言う言葉も知らなそうな教養のない自称英雄さんには、少しばかり会話が高尚過ぎた様ですねぇ。見バレした気分はどうですか?」

「このクソ狐。あぁそういや俺、動物とか特に狐狩りとか大の得意だったわ。追い詰めて皮剥いでやるよ…!」

「いや~ん! ご主人様、あいつが今トンでも発現かましましたよ。言質もとれましたし、これでブタ箱に放り込む準備は整いました!」

 

 アンリも加わったとはいえ、サーヴァント同士の頭の悪い挑発が続き、いつの間にか戦闘ムードが漂い始めていた。どちらも闘気を隠そうともせずに撒き散らしていることから、これは一度ぶつかり合わないと今後の両陣営の仲に関わってくるだろう。

 両マスターともその考えは一致していたらしく、視線を交わせば同情の視線が互いにぶつかった。

 

「此処までくると、流石に後には引けんか。アーチャー、存分に見せてくれ」

「キャスター、存分にやってこい。今回は手出ししねーよ」

「「了解です()!」」

 

 両者啖呵を切って走り始めた。

 アンリの方は、自他共に肉弾戦が苦手というキャスターが真正面から向かうのを見て苦笑していたのだが。

 

「爺さん、どう思う?」

「さてな、この戦いで君のサーヴァントの名を知れれば僥倖だが……ロビンフッドの実力、この目で確かめない事には君達に勝てるかどうか分からんな」

「またご謙遜を。ま、オレもゆっくり見させてもらうさ」

 

 マスターは向かい合ってはいる物の、まったく手出しをする気は無く静観を決め込むことにしたようだ。このデスマッチで始まった、常識外れのただの試合(・・・・・)

 主の二人は、どこか諦観した様子が見て取れたのだとか。

 




次回は戦闘描写からです。
決して後回しにしてしまえと思ったからではありません。
私達はここが丁度いい区切りだと思っただけです!(言い訳乙
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