でも、本当の目的は………。
便利屋 phase1
「あ、あー。マイクテストー」
おっ、始まった
聞こえてるよー
今日は何するん?
「今日はこれを買ったからやってみようかなって」
俺はただのしがない配信者。youtubeで配信や動画を投稿している。登録者は大体50万人くらい。”ただの”配信者だ。
え、まじで!?
良い趣味してんねぇ!!
これは心躍る!
「ちょっと高かったけど、買ったよ。ホロライブラバーズ」
このゲームはRTAや初見プレイをするものがyoutube上でよく見かける。まあ、流行に乗ろうというのもあったけど、普通に気になって買ってしまった。
「今回はこれをやっていこうかなって。みんないいかな?」
OK!
あたりまえだよなぁ!!
これを待ち望んでいた!
「ありがとう。じゃあ、始めようか」
このゲームは生配信でやろうと決めていた。まあ、分からない点をすぐに聞けるからという理由もあるが、このゲームは”どれほど”の人間が魅力的に映るのかを確かめたかった。ただそれだけだ。
「えーっと?初めからで…………難易度選択は…………どうしようか」
初見プレイ?
「うん、初見プレイ。でも難易度でいろんなのが変わるっていうことは知ってるんだけど」
普通にノーマルでいいと思う
いや、ハードだろ
ここはあえてのイージで
「そうだなぁ…………オーディションでいくか」
ファ!?
そんな装備で大丈夫か?
もう駄目だぁ!!お終いだぁ!!勝てる訳が無いっ!!
「確か、好感度とか、キャラに追加スキル?がついて……ヒロインランダムピック?だっけ」
まあ、大体そー
これをやる逸脱人がいるらしいですぜ
ドMかな?
「まあ、ゆっくり行こうよ。初見でやるのも醍醐味の一つでしょう?」
じゃあ、
―――――――――――――――――――――――――
ブゥゥン、と夜の廃工場にバイクの音が鳴り響く。バイクの乗り主はヘルメットを脱ぎ、バイクから剣を引き抜き廃工場へと入っていく。
「なるほど…………裏の人間で感じかねぇ」
いきなり始まったね
黒い、黒さを感じる
これーはトラウマやばいやつでは?
入り口にいた番人か監視と思わしき二人組を剣で一閃。首と体が一瞬で離れ、地面に転がる。
「―――――、次」
正面、約30人。その奥にボスと思わしき人物、一人。
「―――――ッ」
「え、チュートリアルっすか」
これはチュートリアル
おかしいなぁ、こんなのあるはずないのに…………
今回は特別仕様ってこと?
「とりあえずポーズっと。戦い方の設定とか、コンボとか教えてもらってもいいすか」
あまりの急な戦闘に口調が変わってしまうくらい焦っている。とりあえずコンボルートを発見、覚えておこう。
「ふーん。格ゲーみたいな戦い方で、戦闘スキルも使える、と」
スキルはどんなのがあるん?
「スキルはこんな感じかね?」
・シフトブレイク
・槍剣連斬
・槍突貫
なーぜノクティスの技があるんですかねぇ?
槍って言ってますけどどっから出すんですか?
とんでもねぇ技の名前してんなー
「まあ、やってみようか」
「シフトブレイク」
バイクのエンジン音の音が鳴り離れている人間の心臓に刺さる。残り29。
「―――――」
虚空から槍を取り出し一閃。残り26。
「――――」
一瞬、怯んだ奴に走りながら近づき槍を刺す。そしてそのまま”スイッチ”を押した。
「ア、ウギャァァァァァァ!!」
槍の先端がチェーンソーのように回転し上半身が二つに分かれる。
「おう…………なかなか残酷なようで」
えぐみを感じる。
こーれはやってます
殺戮の神か何かか?
「一応、弱、強攻撃。下段、中段、上段もあるし。かなり戦闘に関しては作りこまれてるかな」
ダッシュ攻撃、カウンター、投げ、防御不可技。本当に作りこまれている。
「―――――――――」
最後のボスと思わしき人物をシフトブレイクで殺害。これで”依頼”を達成した。
「――――――もしもし?こっちは終わりました」
依頼人に達成の報告をした。今日のうちに報酬を渡したいと言われたのでとあるビルまで来いとのことだ。
「ええ、分かりました。では」
また、依頼だろうか。はたまた、スパイ活動か。それとも暗殺だろうか。
「それは今は考えなくてもいいか――――」
またバイクに剣を差し、ヘルメットを着け、エンジンをつけ目的地に向かう。俺、いや私はこの生活をいつまでも続けるだろう。
「なるほど。この生活をいつまでも続ける…………ね」
なんかストーリー重そう
だいたいホロラバはそう
これが普通
「あ、今ステータス見れるみたいだし見ておこうかな」
ステータス
名前 神薙 神人 (かんなぎ かみと)
年齢 20歳
職業 便利屋
スキル
・武芸完成
武器に関する熟練度が最初から”上限値”で始まる。新たに扱う武器でも熟練度は”上限値”まで上昇する。
・トリックスター
身体能力が限界まで高まる。どんな攻撃も高確率で回避、初めて受ける攻撃は必ず”回避”する。また、怪盗のような動きや、サーカスのような動きも可能。
・裏の人間
暗殺、諜報、改ざん行為など…………”裏の人間”が行うようなことに補正が入る。人間に怪しまれづらい、気づかれづらい、見つかったとしても正体がバレない。
・全て俺一人で良い
すべての行為を一人で行うとプラスの補正が、二人以上ですべての行為を行うとマイナスの補正が入る。人数が増えていくごとにマイナス補正は上昇する。
・ 生きる意味
生きる意味がない。今は求められているから生きているだけ。なくなったら最後、彼は消えてしまうだろう。
「濃いね。これ」
まあ、そうだと思ったよ
うーん、これは黒い
どうやっても救われないです、ありがとうございます
「なんかステータス見てたら裏で、ホロメンがなんか話してたね。多分、ノエフレ?かな」
あーこれはバレましたね
大体警察組として出てくるノエフレ
これはまずいのでは?
「いや、証拠はないから大丈夫だけど現場に来たら悲惨な状況だったって感じじゃないかな?」
なんか、”こういう”のなんだな。このゲームって。
「続き、始まるみたいだよ」
そこはとある都心の高層ビル。様々な企業が複合するビルの最上階。VIPルームのような部屋に通される。
「依頼ありがとう。待っていたよ」
「いえ、お気になさらず。それで、次の依頼ですか?YAGOO様」
依頼人YAGOO。とある大企業の社長であり、手に入れたものは数知れず。彼が手を差し伸べた企業は永遠の利益が約束されるという…………それは表の話。
「今回の標的の確認をお願いしてもいいかな?」
「今回の標的は、あなたの言う通りテロリスト集団でカルト宗教とのつながりもありました。また、警察や国とも多少つながりを持っていたようです」
「……………早めに先手を打っておいて正解だったか。いや、早すぎたか…………?」
思案を巡らせる。おそらくはこれに関する依頼がまた来るであろう。”彼”とはかなり昔からの関係だ。大体やりたいことはわかってきている。
「やっぱり、君に頼むしかないみたいだ」
「ええ、ご用件を。便利屋として何でも引き受けましょう」
そうして言われた言葉が私を―――――”俺”を変えることになるとは思わなかった。
「まさか依頼人がYAGOOとはね…………」
これはだれも予想できない
ワンチャンリアルでもそうかもしれない
まさかの裏の支配者?
「それで次の依頼が、”ホロライブ学園への入学”。内容が”ホロライブ学園の生徒の護衛”及び”生徒に危害を与える組織の情報の収集、壊滅”。報酬が…………”君の求める答え”ねぇ」
答え。おそらくはスキルにある生きる意味のことであるとは思うが、自分は”それ以外”も含まれていると考えている。生きることの答えを得られてもさらなる悩みが待っている、それの答えもなければまた初めに戻ってしまうのではないか?そう思えるような話であったと思う。
「これは長い”旅”になりそうだ――――――」
ただ、そう思う。”昔の思い出のように”。
「ええ、思ったよりも動かしやすいですよ―――――。はい、わざわざオーダーメイドで作ってもらってさらにオプションまでつけていただけるとは」
今は自宅でホロライブ学園の制服を身にまとっている…………その日付、入学式。
「いやー、すまないねぇ…………あれやこれやと私と君が注文していたら思ったよりも時間がかかってしまったようだ」
「いえ、これで仕事をしやすくなったと思えば役得ですよ。それで、何時から式が始まりますか?」
「確か―――――、9時半くらいだったような。君はバイクも持っているし、余裕で間に合うだろう。こちらもすぐに出なければならないからね」
現在時刻8時。あと残り一時間半、ホロライブ学園まではそこそこの距離がある。余裕をもって出ておいて学園で暇をつぶすのもいいだろう―――――
「ええ、では”学園で”」
「ああ、”入学式”にまた会おう」
そう、彼は”ホロライブ学園の学園長”でもある。あの人はどこまで手を伸ばしているんだ?と言いたくなるのも山々だがそれはいつものことなので気にしないでおく。
「依頼もなし。じゃあ、出発するか」
扉の鍵を閉め。CLOSEの看板に変える―――――そう、ここはとある便利屋が営んでいる”事務所”、そしてその所長がこの”俺”であるということだ。
表の顔と裏の顔を持っている―――これは悪いです
これって本当にヒロインを攻略するゲーム?
いや、こんなゲームか(呆然)
「今移動中だからもう一回ステータスを見ておこうかな」
ステータス
名前 神薙 神人 (かんなぎ かみと)
レベル 85
年齢 20歳
職業 便利屋
スキル
・武芸完成
武器に関する熟練度が最初から”上限値”で始まる。新たに扱う武器でも熟練度は”上限値”まで上昇する。
・トリックスター
身体能力が限界まで高まる。どんな攻撃も高確率で回避、初めて受ける攻撃は必ず”回避”する。また、怪盗のような動きや、サーカスのような動きも可能。
・裏の人間
暗殺、諜報、改ざん行為など…………”裏の人間”が行うようなことに補正が入る。人間に怪しまれづらい、気づかれづらい、見つかったとしても正体がバレない。
・全て俺一人で良い
すべての行為を一人で行うとプラスの補正が、二人以上ですべての行為を行うとマイナスの補正が入る。人数が増えていくごとにマイナス補正は上昇する。
・ 生きる意味
生きる意味がない。今は求められているから生きているだけ。なくなったら最後、彼は消えてしまうだろう。
武器スキル
・シフトブレイク
・槍剣連斬
・槍突貫
・???
所持アイテム
・仕事用の服
・ホロライブ学園制服(改造)
・エンジンブレード
・薙槍
「んーーー?なんか増えてないかな?」
これはやってます
やっぱり持ってたか―、エンジンブレード……
それはそれとしてなんか???かなりありますねぇ
「ていうよりも驚きがあるんだけど……”レベル”おかしくない?」
確か、RTAでもみたりしたけどこんな最序盤でこんなレベルであるということは―――――オーディションならではの難易度設定か…………それともイベントによる救済措置か。
「確かこのゲームのレベル上限って、どっかのフロムゲーとおんなじ感じだったよね?」
そーだね。だったらこのレベルはいったい何だ?
もしかして二週目の可能性もあるか?
それかこんだけレベルを上げないと序盤の敵に勝てないじゃない?ホロメン抜きで勝たなきゃいけないボスとかいるんじゃないかな
「一人で戦わないといけないボス、ね」
その場合、スキルでバフが付く。そうして考えると大体操作プレイヤーのレベルは100程度。相手は120位を予想しておいたほうがよいだろうか。
「時間は…………まだ、あるか。せっかくだし、校舎内を見て回りますか」
ホロライブ学園。約3年から4年前にできたばかりの新校舎で体育館だけでも4,5個あるような話を聞いたことがある。確かここには戦闘できる設備や研究できる設備もあるらしく、”まさに”異文化交流を図ろうとしているのが目に見えてわかる。
「ここは行き止まり、ここは角、ここは…………?どうなってんだこれ?」
地図をみながら歩く。わかりやすい教室はわかりやすいのだが、第何教室まであるんだという教室へ向かうには階段を何個上らなければならず、どの廊下に向かえばいいのか、そして教室をまたがねばならないとかいう頓珍漢な移動方法になっている。正直意味が分からない。
「ここで3年すごすのか。きっつ…………」
言ってしまえばこの学園は”高校”に近い。内容はほぼ”大学”と同じようなものであるものの入ってくる生徒は高校生くらいの人たちが多い。”だからこそ”彼は、この子たちを守りたいと言ったのだろう。
「――――――」
いや、余計に考えるのはよそう。多分、今やるべきことは”彼女たち”を守ることだ。
「っし!!集中、集中!!」
ただ、目の前のことを考えればいい。それが俺にできることで契約だ。
「マップ把握はそこそこできたけど、これ何階建てなんだ?」
イベントを進め、入学式が来るのを待つのみなのだがそれよりも学園内の移動に時間がかかっているようだ。
「まじ、RTAやってる人ってすごいんだなぁ」
まあ、変態しかいないから
「確かにそうなんだけどさぁ…………これはちょっと、ね」
そういえば魔法もあったような…………移動には転移魔法とか使うのだろうか。確かにこの世界は科学と魔法が入り混じっている不思議な世界ではあるがそんなこと実現可能なのだろうか。
「ん?またイベント?」
「であるので――――――これからの学園生活を―――――――――」
時間になったのでどこの体育館かわからない場所へ移動し話を聞く。こんなことをするのはいつぶりだっただろうか―――――。懐かしさを感じる。
「これにて入学のあいさつとさせていただきます。入学式終了後は教室にてホームルームを行った後、第一回バトルロワイヤルを開催いたします―――――」
話には聞いていたが本当にあるらしい。バトルロワイヤル、月一で行われ上位者には報酬や学園生活でのサポートが厚くなるという。まあ、あまり興味はないが。
「では各自、自分たちの教室へ移動を開始してください―――――」
自分の教室はどこだったか…………携帯を見て確認する。大体の情報はYAGOOから入ってくる、また学園の機密情報すらこちらに入ってくる。その中のクラス分けのファイルを開き自分の名前を探す。
「1…………2,3。3組か」
自分の名前を探すのにあまり時間はかからない。自分はか行なので初めのほうに名前がなければ次の組へ。と繰り返せばおのずと自分の名前が見えてくる。そうして自分の組の教室はどこだったかと考えながらも教室へとつくことができた。
「……………」
教室へと入るとかなりの人数がいることがわかる。自分の席はどこだろうか?おそらく黒板に貼られている紙に自分の席が書いてあるだろう。教卓の前ではかなりの人数がたむろしていたが何とか自分の席を見ることができた。自分の席は窓側、一番後ろ。かなりあたりの席ではあると思う。
「…………」
席に座り教室を見渡す。教室を見ると男子生徒はあまり見られない。おそらくほかのクラスに多くいるのだろうと推測した。また、クラスには”推薦”生徒がいるらしくその生徒たちはとても優秀な人か身分的に上の人であるという話だ。戦闘力的にはこのクラスは一般的。後何人かはかなり手のかかりそうな人がいそうだ。
「―――――――――」
電話?今日になってからこの学園で連絡先を交換した人間はいないし…………他の人か。
「はい、もしもし――――――」
「あ、もしもし。教室には無事についたかな?」
「ええ、無事」
電話の相手はYAGOOだった。今回のバトルロワイヤルについての説明とシステムについての情報を流してくれた。おそらくこのようなことは担任の先生は言わないだろうからと教えてもらった。
「なるほど。”無理やり”なら、いけると」
「まあ、あんまりやってほしくはないけど。君ならまだ大丈夫だと思ってるから」
「ええ、ではまた。失礼します」
電話を切るともうすぐホームルームが始まりそうな時間。ふと、隣の席を見る。ほとんどの人が席に座っている中、電話をかける前にはいなかったのでいるのだろうかと横を振り向いた。
「あ、やっとこっち向いてくれた」
「―――――、すいませんね。電話がかかってきたのもので」
頭の中で生徒名簿の写真と今、写っている顔を一致させる。確か―――――彼女は、白銀ノエル。騎士団の団長を務めており、家族ともども上流階級。わずかこの年で団長を務めあげ人望もある。そして、フィジカルモンスター、だったか。
「こんまっするー。私、白銀ノエル。よろしく」
「…………神薙神人です。こちらこそよろしく」
うん、何してんだ。初対面の人に数秒のディレイがあったが自然に挨拶できただろうか。心当たりとしては、年が少し離れているせいでちょっとやりづらいということなのだが。
「神人君はボトルロワイヤルに自信はあるの?」
「―――あまり。自分の実力を発揮できるようには頑張ってみます」
「うんうん。いい心がけだと思うよ。団長も頑張らないと…………」
そんな話もしながらもホームルームが開始された。といってもただのルール説明だけだったのだが。そのルールっ説明が終わった後、多少の準備時間が与えられるらしい。
「―――――――、問題、なし」
持ち物は使いやすいハンドガン二丁。とある遺物の剣。そして秘密兵器。そのぐらいだ。
「あとは、ないか…………」
後は体さえあればいい。相手がどのような動きをして雇用とも、対処し順位を上げる。できるなら一位を目指す。
「神人君も準備万端だね!」
「ええ、まあっ…………!!」
普通にビビる。目の前に巨大なメイスを持ちながら軽々歩いてきたら誰でもビビるだろう。軽く見ても100キロ以上はありそうなものを軽々と持っている。こいつ本当に人間か?
「あっ、カウントダウンはじまっちゃったね」
「準備はできているので、問題ないですよ」
カウントダウンが始まる。まあ、目の前にばったり。なんてことが無いように祈っておこう。
「じゃあ、また会おうね。神人君」
その言葉を聞き、転送が開始された。
「――――――、状況確認。敵性存在なし」
あたりを見回すととある空き教室であることがわかる。もうすでに始まっているのか音聞こえ、激しい戦いの音も聞こえる。
「行動、開始」
手に二丁のハンドガンを持ち教室の扉を開け、廊下を走る。300m先に5人。一人に3発、絶命。その横の2人に7発、行動不能。奥の2人に今残っている弾を全弾発射。気絶。
「リロード」
さらに進む。500m先の右の教室、3人。扉から2人をヘッドショット。迷わず扉を開け、残りの1人に接近。足技をかけ転ばせた後1発撃ちこむ。
「リロード」
このような戦闘がかなり続いた…………途中”獣人”のスナイパーに勝負を挑まれたが”ギリギリ”のところで勝利。戦績を確認すると5位、まだまだ上には上がいるようだ。
「とりあえず、音のする方へ行かないと」
気づけば教室棟から体育館や闘技場などが立ち並ぶ運動施設のほうへと足を進めていたようだ。音は体育館のほうからする…………恐ろしく焦げ臭い。
「ん…………?」
体育館へと侵入してみると、2人が戦いを繰り広げているのが分かった。一人は鬼、もう一人は竜人?か。
「あっ…………」
「あっ…………」
「えっ…………」
入った途端気づかれた。
「どうする?三つ巴する?」
「私はどちらでもいい」
「じゃあ、三つ巴でっ!!」
自分の承諾もなく鬼が突撃してきた。彼女が持っている二本の刀は見た限り鋭く、長く、重い。その後にもう一人が攻撃してくる。やはり竜の爪だ。その攻撃は単純に重い。
「っ…………」
とりあえず下がる。銃二丁でブロックはできたものの反動は大きい。撃って攻撃しよう物でも威力に劣る。秘密兵器を出す場面でもない―――。
「
とある聖剣。西ヨーロッパに伝わる伝説の一つに記述されている王の剣。
「――――――ッ!!」
切り裂く。剣は切った後にも光の刃を飛ばす。そして、攻撃を続ければ続けるほど”威力”が上昇する。それを理解しているが為に”受ける攻撃など”無視して斬る。
「ふっ…………」
「よっと!!」
弾かれる。だが、斬る。避けられる。だが、斬り続ける。カウンターされる。だが、無視して斬り続ける。
「ッツ―――――――」
斬り続けた。そしたらいつの間にか”左腕”がない。”左目”も見えない。だが、それはこちらだけではない。二人には傷をつけている。そろそろ”決めた”ほうがいいだろう。
「さすが、人間様だな」
「ここまで傷づけられたのは、いつぶりか。貴様、名を何という?」
「かんなぎ、かみと」
極限の集中をしているので話すのにも一苦労。あまり集中を乱したくはない。今は感覚を鈍くしている。いや、勝手になっているというべきか。
「では、そろそろこの戦いに終止符を打つとしよう」
「本気の一撃、行く余」
「聖光で、遍く全てを照らし出せ」
本気で来る。なら、こちらも本気でいこう。この剣は魔力を一定以上込めると必殺技のようなものを打てる。最近まで知らなかったのだが。
「永続不変の輝き、千変無限の彩り」
ただ、欠点として詠唱しなければならないというものがある。
「万夫不当の騎士たちよ、我が王勇を指し示せ」
もちろん無防備でいるわけにもいかない。だから詠唱しながら攻撃する。防御する。
「
その剣には12本の剣の力が込められている。それを一気に放出し強大な一撃を与える。はっきり言って”学園”を壊しかねないのでこんな場所でしか使うことができない。
「剣よ、敵を打ち払え」
斬る。斬る。斬る。斬る。斬る。まだ、まだまだまだ。相手が倒れるまで、息の根を”止める”まで、斬り続けろ。
「ふっ、はっ…………」
気づけば二人はもういなかった。どっと疲れが来る…………座ろうと思い、腰を下ろそうと思ったが左腕がなかったことを忘れていたので少し体勢を崩してしまった。
「一応、ログは…………ながれている」
大の字になりながら携帯のログを見る。一応、携帯にも確認できるようになっているあたり多少の親切さを感じる。
「―――――――――――ッツ!!」
かすかに”波”の音。本能的に危険だと判断し体育館の二階、観客席のほうへと跳躍。さらに窓を割り、校舎の屋上へと跳んでいく。
「…………たしか、この学園は5階建て」
屋上へと足を運び、あたりを見回すとほぼすべてが”水没”していた。誰かのスキルか、はたまたどこかのギミックか。
「ふ、ね?」
かなり遠くに船が見える。確かに船だ。かなり大きい。
「まさ、かな…………」
「あと一人。どこにいるんですかねぇ?」
「今のやつでほとんどの人が溺死。高いところを重点的に探します?」
「じゃあ、それで。とりあえず学園を目指して」
このバトルロワイヤルはチームを組むことも許可されている。多少の報酬の低下はあるもののほとんどがチームを組んでバトルロワイヤルに参加している。なのにあと一人ということは、あるいは。
「船長。屋上に人影が」
「むっ、こっちでも見えましたよ。キミ達、大砲の用意を。全速力で進んで」
「アイサー、船長。お前ら!玉詰めろ!」
人影、おそらく一人。運よく生き残ったのだろう。まあ、このチームに勝てる人間はそう相違ないだろう。
「船長!準備完了でっせ!」
「では、打ち方はじめ!打ったらすぐに次の弾を詰め込んで間髪入れずに打っちゃってください」
「お前ら打て―!」
かなりの攻撃。人一人確実に殺せるような鉄の雨。さすがに生き残れはしないだろう。一応近づいているが生死は不明だ。
「お前ら次!」
いい音だ。この音が途切れずに聞こえている。私はこのゲームの勝ちを確信している。
「近づいてきている、か。まあ、いっか」
間髪入れずの砲撃。なかなかのセンスをしているような気がしなくもない。確実に倒そうとしている。なら此方も答えなければならない。
「もしかして体当たりしてくる気か?」
あの勢いのまま体当たりされたらここは崩れるだろう。タイミングよく”あの”船に乗るしかない。
「あのスピード的にそろそろ、か」
タイミングよく船に乗る。跳んだときには屋上は跡形もなく壊れ、瓦礫の山となっていた。
「ふ…………」
甲板へ降り立つ。しかし、心身ともにもうボロボロ。”まだ”この状態では。
「あ、神人君だ。やっほー」
「あ、うん。やっほー…………?」
まずい、フィジカルモンスターだ。それに、5人プラスでいる。一応、”許可”はもらっているので行けなくはないが。
「左腕はバイバイ、見た限り左目も見えていないようですし…………。船長としても降伏してくれると助かんですけど」
「降伏、か。まあ、しない。まだ、戦えるさ」
自らを船長と呼ぶ彼女は、下っ端を連れているようだ。そうなると本気を出さねばならない。
「じゃあ、完膚なきまでに叩き潰してあげます!」
「じゃあ、こっちも本気を出そうか」
秘密兵器、ただこっちの負担も大きくなるがまあ気にしない方針でいこう。
「おいで、神威」
それは雷の権化。自分の体質と合わせて作った
「じゃあ、さよなら」
「っ!!」
疾く、斬ってしまえば。誰も対応できない。それに圧倒的な力で押し切ってしまえばいい。ごり押しとまではいかないが耐えうるものがいない力。
「―――――ッツ!!あくたん!?」
「――――――――」
今ので三人。残り三人。まあ、ショットガン二丁持ちの人間を先にやるのは当たり前。しかし、その余波で二人を持って行けたのは思ったよりも力が入ってしまったか?
「赤き雷――――――轟け」
こいつの特性は魔力を注入する、もしくは纏わせるということをすると雷が発生する。しかもその雷は黄でも、白でもない。”赤い”のだ。おそらくは―――古の時代に神が使っているものだと推測されるが、その辺りはどうでもいい。ただ、”使えればいい”。
「――――ッツ!!…………マリン!?フレア!?大丈…………夫?」
「――――――シュッーー。ハァァァッ――ー」
息が獣のようになる。いつも通りの体ではないし、”無理やり”動かしている為消耗が激しい。しかし、どうしたものか。
「―――――二人ともいなくなっちゃった。じゃあ、君と一対一だね」
「―――――――――」
あんなに剣撃を放ち、傷がほぼない。状態を見るにまだバテてもいないといった様子。まあ、化け物はそっちのほうだったか。
「じゃあ、行くよ―――――」
一瞬。巨大な白銀のメイスを軽々と振り回しながら、近づく。
「―――――ッ」
重い。さらに力が乗る。片腕で、しかも刀一本ではかなり厳しい。
「―――――ッァ!!」
魔力を限界まで、流し込む。これはどうにも言ってられない。”できる範囲で”本気で挑まねば。
「よいしょっと!」
弾かれても回して振りかぶってくる。その攻撃を刀で滑るように受け止め、肉薄する。斬りつける。
「―――」
それでも彼女は傷を受ける覚悟で、俺に一本取ろうと振り下ろし続ける。だが――――。
「――――――」
一閃。これで終わりだ。
「――――――」
終わった。長かった―――――ような気がする。”これで”力を示すことはできた。しばらくは戦わなくてもいいだろう。
「第一回バトルロワイヤル、優勝者は――――神薙神人。バトルを終了します」
世界が粒子となって消えていき、気づいたらグラウンドに立っていた。先ほどまで海の上だった場所がここだったのだろう。
「…………?」
左腕を見る。あそこは”仮想”世界なので斬られた腕も、目も治っているが。
「―――痛ッ」
そう、切り傷などの痛みはさほど痛みはないが。斬られたり、失明、もしくは内臓を失う………など。そんなことをすれば痛みが伴う。まあ、”無理やり”やったからだが。
「せめて、保健室に行ったほうがいいか」
しかも、倒れている人がいる。彼女―――白銀ノエル。さすがに放置はまずいだろう。
「よいっしょっと…………」
左腕も使っているが………どう見ても骨折している気がする。目も若干だがぼやけて見える。
「ほんとに行けるかなぁ…………」
そんなことを考えながら保健室を目指す。
「…………疲れた。まじ、指痛い」
乙。
格ゲープレイヤーのそれ。
終始無言だったもんね。
「みんな強いよ…………」
プロゲーマーほどではないが、かなり強かった。最近のコンピュータはこんなにも強いのか。
「しばらくはオートで流すか…………ちょっとお茶飲みながら休憩」
「ん…………」
目が覚める。さっきまで戦ってたような…………
「あれ。わたし…………」
「――――――」
隣に誰かいる。彼だ。
「団長、気絶してたの?」
「――――ん。そう、だな。終わったら倒れてたよ」
おかしいなぁ?普通だったら教室とかに戻されるはずなのに。
「そういえば…………ケガは大丈夫?」
「…………実をいうと、あんまり大丈夫じゃない。今は魔力をもらって治療してるよ」
そう言って左腕を上げる彼。若干ではあるが腕が上がっていないようだ。それに目も左目だけ白く染まっている。
「あれ?ケガってそんなひどくならないんじゃ?」
「まあ、”不具合”があったらしくてさ。なんか自分だけダメージ残っちゃったみたい」
彼は乾いた笑いを受かべる。今気づいたが、彼も疲れているのか話し方がフランクになっている。
「最後に戦ってた武器って何?」
「んー。あれについては何とも言えないしな………どうしたもんか」
彼はどうやって言おうかと迷っているようだ。私にはそんな頭を持ってないからわかりやすく伝えることも考えているのだろう。
「まあ、分かりやすく言えば………自分の魔力を流し込むと力が増幅されて雷が出るよー。みたいな感じかな?」
「へー。そんなのもあるんだねぇ」
この世界には多くの武器がある。ダンジョンだったり、国に保管されていたり。たまに作ったものがそんな風になる、ということも聞いたことがある。
「そっか。団長もそんな武器使えたらいいなぁ」
「多分、使えるよ」
ただの他愛もない話。でも、そんな話をする彼と私がどこか重なった気がして。
「………じゃあ、連絡先。交換しよ?」
「へっ?」
なんだか面白い日常がさらに面白くなりそうで。皆と一緒に過ごした日々に彼も入れたらどうなるんだろうと思うとわくわくが止まらなくなった。
「――――ん。終わりっと」
一応一区切りということで配信を終了した。なんだかいつもよりも疲れたような疲れていないような。
「まだ、終わりは遠そうだな」
もう少し寄り道をしようか。そのまま突き進むか。まだ考える必要がありそうだ。