裏社会の帝王を目指す転生者の物語。

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1話 

 

 転生とは、人が死んだ先に幸福を求めて想像した世界。

 普通であれば訪れない人生の第2部(To Be Continued)

 

 

 

 

 

 

 

 人の呻き声や叫び声、誰かを恨む声の絶えない日々。檻の隙間から見える景色はいつも暗く想像を超えた絶望を映し出す。

 

 ソレが()のオレの日常。

 

 

 

 

 前までは、普通の大学生でバイトをしてた。

 毎日、夜を遅くまでゲームやアニメ、漫画の娯楽に溺れ眠る。時には、バイトに行き1日を過ごす。成績は、中の下。平均的だけど、どこか少し足りない。そんな普通の大学生。

 

 普通が変わったのは少し前。

 バイトの帰りにバイクで事故を起こし意識がプツンと途切れた。そして、気が付いたら体は縮み赤ん坊に。

 

 最初は、自分の見慣れた小説のような展開に喜んだけど、ソレも一瞬に消えた。

 

 目が開き周りを観察すると、自身を抱いている存在と今いる場所が独房のような構造になっていることに気付く。その異様な光景に驚きながら自分を抱いている存在を確認すると涙を流しながら謝っている姿が目に入る。

 

 「ごめんなさい。ごめんなさい」

 

 まだ生まれたばかりの子どもにかけるには、あまりにも重い言葉。

 目に入った情報に圧倒されたことで上手く呑み込めていなかったが、涙ながらの懺悔を聴いたことで自分が生まれ生きていくには困難な場所であることを悟った。

 

 そんな怒涛の転生劇は、日が経つごとに状況を悪くさせた。

 

 

 母は、奴隷だった。

 ソレも世界貴族・天竜人の奴隷だった。

 

 天竜人と言えば、大人気「ONEPICE」における最も誇り高く気高い血族の末裔。世界の頂点に君臨する絶対の存在。その名に恥じない権力を持ち、彼らには誰も逆らうことが出来ない。

 

 

 ある時、ただ横切ったという理由で子どもたちが殺された。

 そのあまりにも理不尽な理由に、世間の人々は怒った。普通であれば、殺人を起こした存在は法の下に正しく罰せられ、償う機会を設けられるべき…だが、ソレは為されなかった。

 

 なぜなら、悪いことなど一切していないから。

 

 逆に言うのであれば、悪かったのは殺された子どもたちだった。この世界において天竜人の前を横切ろうなど言語道断。もし、正しく罰せと誰かが言うのであれば、それは子たちたちの家族のほうだと誰もが口を揃えて言うだろう。

 

 だが、誰も問いただしはしなかった。

 世界がソレを良しと許しても世間は許さない。だから、誰もが事を穏便に収めようと、次なる犠牲者を生まないようにと起きた以上のことを語りはしない。悲劇はいつだって起こる。誰だっていつか死ぬ。そう言い聞かせながら口を閉ざす。

 

 そうして、事件は風化していった。

 周りは事を大きくすることもなく受け入れ当たり前だと、ソレが普通であると心に嘘をつき目を閉ざす。次が自分にならないよう祈りながら。

 

 ソレが世界貴族。天竜人である。

 

 

 そのことを知った俺は絶望した。

 世界貴族の奴隷から生まれたということは、これから生涯奴隷だということを決定づけるからだ。

 

 毎日が死の恐怖におびえる日々だった。

 赤ん坊の体は言うことを聞かず、泣くしか出来ない。ただ、泣くことも天竜人の耳に少しでも入れば殺されるかもしれないと怯え抑えた。少しでも印象に残れば、認知されればどうなるか分からないという恐怖。

 

 3年ほど経った頃、母が死んだ。目の前で嬲られながら殺された。

 

 ある日、天竜人が来てこう言った

 

 「自分の子どもを殺さないと殺すえ」

 

 ソレを母は出来なかった。だから死んだ。

 あの時、天竜人は嗤っていた。自分の子どもを殺せば生きていけるのに、なぜ殺さないのか。まるで、算数の問題が解けなかった子どもに笑いながら教えるように、撃ち殺された。

 

 

 母が死んだオレは、その日の内に他の子どもたちがいる檻に入れられた。そこでは毎日、いろいろな人種の子どもたちが入れ替わり立ち代わりで人の出入りの絶えない檻だった。

 

 檻の中は、死が広がっていた。

 誰もここから出られる、生きて帰れるという希望はなく、明日は生きているか死ぬのかの心配をして生きていた。目は死に絶望に打ちひしがれながら、生きるだけの人形たち。

 

 ただ、そんな人形たちの集まりだからこそ、ソコには人種の垣根を超えた一体感があった。

 

 前世で読んだONEPICEには魚人差別が世界問題だったが、この檻にいるのはまだ思想に染まっていない子どもたち。奇しくもオトヒメが目指していた世界の一端がこの地獄の中にあることに失笑を隠せなかった。

 

 

 

 

 奴隷人生も気づけば7年目。

 少しずつ身体が思い通りに動かせるようになって来た。いろいろな天竜人にレンタルされ、使い回される日々の中で身体の頑丈さを感じていた。ここまで生き残れたのはそのおかげと言っても過言ではないソレを最近はより強く感じていた。

 

 ただそのか細い身体に秘められた壊れにくさは、悪い方向へと転じていた。

 

 『どれだけ殴っても壊れにくい』

 

 そんな売り文句は、天竜人の中でも女性からの人気を高めていた。小柄で持ち運びがしやすく壊れにくい。たとえ壊れても少し時間をおけば治るという性能は、サンドバックに持って来いだった。

 

 

 そうして過ごしていくうちに賢い天竜人が現れた。

 

 「その身体能力は後々危ないえ。反逆できないよう悪魔の実を食わせ海楼石で拘束するえ」

 

 その一言が、オレの人生を大きく変えた。

 

 

 

 ある日から、オレの生活圏は少しこじんまりとした檻に変わった。

 檻の中には、3人の少女が身を寄せ合いながら座っていた。自分と同じような子どもだが年上。身体は、ボロボロに傷つきながら怯えた目で此方を見る。そして、その両手には真っ白な手枷が付いている。

 

 ―――3人の少女。

 その見た目は、美しく。幼さを残しながらもわずかな妖艶さを身に纏っている。やせ細りボロボロになっていても隠せないその美貌は、これから年を重ねていくごとに磨きが掛かっていくことを容易く想像させる。

 

 ソレを見て自分が何処に入れられたのかを知る。

 

 つまり、次期アマゾン・リリーの皇帝と同室になったということ。

 さしずめこの檻は、見世物小屋と言ったところ。奇々怪々に身体を変える化物たちを飼い殺すための牢屋だった。

 

 

 

 檻に入り海楼石の手枷を着けられる。

 そして、目の前に3つの悪魔の実が置かれ一言。

 

 「この3つの中から一つ選ぶえ」

 

 どの実にも既視感はなく初めて見る形。

 ジグザグ模様のパイナップル。丸みを帯びた斑点模様のリンゴ。針の尖ったようなバナナ。

 

 どれを食べるのか楽しみにしているのか天竜人の顔が愉悦に浸った表情を浮かべる。そんな気持ち悪い視線にさらされながら、直感的にバナナを取り齧り付く。味は、腐った牛乳が染み込んだ雑巾。一口目で吐き出しそうになる嘔吐感を必死に抑え込み、勢いそのままに1本飲み込む。

 

 その瞬間、身体から力が抜け地面に這いつくばる。

 自分の身体の内からパワーが溢れる感覚とソレ以上に抜けていく身体の感覚に脳みそが狂う。そんな間抜けな姿のオレを見て嗤いながら天竜人は言う。

 

 「手枷を取ってやるえ。その代わり何か面白いことをしてみるえ」

 

 そう言うと天竜人の隣にいた筋骨隆々な奴隷がオレの手枷を取る。

 手足に感覚が戻り始め頭が冴えていく。先程までの感覚が嘘のように、自由に身体が動かせる。足を動かし、しっかり立つとお腹に力を籠める。

 

 ここで強い能力を手に入れたい。

 出来るなら自分の身体能力を生かせるような動物系の悪魔の実を。そうすれば、奴隷暮らしの中でも見た目の派手さやタフさから重宝されるはず。サンダーソニアやマリーゴールドのような立ち位置に行けると願いを込める。

 

 一か八か。当たりか外れか。

 自分のつかんだ宝くじは、果たして何等なのか。緊張する中、お腹に力を籠める―――。

 

 

 

 

 ―――が、何も起こらない。

 何度も力を籠めるが、一向に身体に変化は訪れない。今度は、全身に―――。と、試行錯誤している中そんな姿に痺れを切らした天竜人が奴隷へ命令する。

 

 「こいつを痛めつけるんだえ」

 

 その瞬間。顔面に拳が飛んでくる。そこからは、いつも以上にキツイ暴力の悪意に晒される。顔を殴られ踏まれお腹を蹴られる。そんな終わりの見えない連続する暴力の中で、いつもと違うイメージが流れ込んでくる。

 

 ―――首を掴まれ締められる。

 

 ―――意識を失いそうになったところで、手を放し床に這いつくばる自分。

 

 イメージの中は、これから起こる未来を映しているようで、数十秒後にデジャヴのように同じことが繰り返される。いきなり起きたジェットコースター的体験に身体の許容範囲を超えて気絶する。今まで感じたことのない奇妙な出来事(・・・・・・)に心を震わせながら意識が途切れる。

 

 

 

 

 どれくらい殴られたのか気が付けば辺りは暗く天竜人も居なくなっていた。周りを見ると、三姉妹が檻の隅で固まって眠っている。

 

 ソレを傍目に先程自分に起きた奇妙な出来事を振り返る。

 殴られながら見えたあの光景。確かに数十秒後に自分に起きる未来が見えていた。アレは絶対に未来だったと自分の中にある何かが囁いている。

 

 ここで考えられる可能性は、2つ。

 

 1つ目は、見聞色の覇気の覚醒。

 ソレも通常では考えられない深くまで覚醒した可能性。見聞色を極めた先の到達点「未来予知」。それを後天的かつ覚醒初速で目覚める可能性。ハッキリ言ってゼロに近い。というか、有り得ないと思っている。未来予知には、集中力が必要とされており、注意が散漫になった状態は発動が難しいという特徴がある。

 

 そこを考慮すると、全身を痛めつけられている状態では、発動が難しいという結論になる。だからこそ、有り得ないと断言できる。

 

 そして、2つ目の可能性は、悪魔の実の能力。

 正直これ以外ありえない。ただ、この説を基に考えていくと信じられない可能性にたどり着く。それは、「トキトキの実」を食べている可能性があるということ。

 

 

 ―――トキトキの実とは。

 超人系の悪魔の実の一つ。その能力は、自分や他者を未来へ飛ばすことの出来る能力。飛ばしている間は、年を取らない。射程範囲は、最大800年程など強力な能力である。ただ、デメリットとして過去へは戻れないという特性がある。

 

 つまり、一方通行の片道切符券。それが原作内で知れる(・・・・・・・)トキトキの実の全容。

 

 

 自身の実に起きた未来予知。

 ソレは、時間に関係する悪魔の実でないと起こりえない現象。そして、トキトキの実は未来との関係が深い悪魔の実であるということ。

 

 これだけの状況が揃えばいやでも理解する。

 自分は、トキトキの実を食べた時間人間であると。

 

 次の日から誰にもトキトキの実の能力者だとバレない様に細心の注意を払った。

 悪魔の実の能力を聞かれた際には、カタカタの実と答え自分の耐久力を隠れ葦にした。悪魔の実の能力は、固くなるだけというシンプルなもの。本当に存在するのかも怪しい。普通であればバレるような間抜けな嘘も天竜人は信じた。周りも薄々嘘だと気付きながらも黙ってくれていた。

 

 その代わりに残虐な行為が増えていった。

 その度に身体はボロボロになったが、丁度良かった。幸い固くなるだけという嘘を信じた天竜人が海楼石をあまりつけなくなったからだ。どうやら、悪魔の実を食べたうえでボコボコにされるオレを見て警戒心をある程度解いたらしい。そこまで、窮屈な生活にはならなかった。

 

 そうして、毎日を過ごしていく中で三姉妹とも少しずつ会話が増えた。

 どこ出身なのか、この檻に来る前はどうだったか、他の奴隷はどうだったかなど少しずつだったか、仲間意識が芽生えていた。身の上話を話した時には、同情して優しい声を掛けてくれるなど原作とは違った一面も見ることが出来た。

 

 気が付けば、友達と言っても良いくらいには仲良くしてくれた。

 日々、奴隷として苦しい思いをしながらも会話をして少しでも気を紛らわせる。そんな少し暖かい感情に触れていく中で、気が付けばオレも色々と話をしてしまった。

 

 そして、一つだけ原作知識(マリージョア襲撃事件)を話してしまった。

 

 ソレを聴いた三姉妹は、最初嘘をつくなと憤慨していたが、時間をかけて少しずつ証明していった。自分の食べた悪魔の実のこと。未来予知が出来るということ。偶々遠いが近い未来の出来事を垣間見たと嘘を混ぜながら。

 

 時間が経てば三姉妹も信用してくれるようになった。

 マリージョア襲撃事件が起きること。トキトキの実を食べたこと。未来予知が出来ること。そんな普通であれば隠すようなことを話した見返りとして、三姉妹は知識をオレにくれた。

 

 この世界の常識やある技術(覇気)のことを。

 彼女らの与えてくれる情報はオレの喉から手が出るほど欲しかった情報ばかり。

 

 ―――運命が、流れが向いているとそう思った。

 ここから全てが上手くいくんじゃないかとそう思わせる程に流れが此方に向いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トキトキの実の研究も同時に進んでいた。

 現状使える予知能力に関しては、だいぶ研究が進んだ。

 

 予知能力は、自分の身に起きる出来事を数十秒後を前借して視る能力だった。予知能力で認識した未来は、必ず起こる。どんなに未来を変えようとしてもソレは絶対に起こる。

 

 その法則を覆すことはどんな存在にも出来ない。

 

 例えば、ジャンケンで勝ちたいと思い予知能力でチョキで勝つ未来が視えれば、どんなに覆そうとしてもチョキを出して勝つことができる。

 

 この能力の厄介なところは、じゃあ負けた場合を視た時はどうなるのかという点である。

 

 ―――どうなるのか。先に言うのであれば絶対に負ける。

 

 予知能力で視たものは、絶対に起こる。なぜ、絶対に起こるのか。それは、予知能力で見た未来は“予知能力を見たうえでの自身の行動”が映し出されるからである。つまりどういうことかというと、パーで負けたからと言ってパーを出さないということは起こらない。絶対にパーを出す未来に到達する。

 

 なぜなら、予知能力を使い対策したうえでパーを出しているからである。だから、ソレを覆すことは出来ない。パーを出さないようにしても、何かしらの要因によって必ずパーを出す。それが、この能力。

 

 戦闘において自分の死ぬ未来を視たら死ぬ。そんな能力だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悪魔の実を食べて2年くらい経ったある日、遂にソレは起こった。

 

 ―――聖地マリージョア襲撃事件。

 魚人族の冒険家であるフィッシャー・タイガーの起こした奴隷解放事件。フィッシャー・タイガーがその身一つで赤い土の大陸(レッドライン)をよじ登り、数多くの奴隷たちをその人種に関係なく開放し救って見せた世紀の大事件である。

 

 その日の夜は、いつも以上に騒がしかった。

 檻に付いている小窓から聞こえる声はいつもより多く、何処となく急いでいるようなそんな雰囲気を感じた。少し気になって見聞色の覇気であたりを探れば叫び声や雄叫び、助けを求める声が数千にも聴こえてくる。あまりの異常事態に、隅で眠っていた三姉妹を起こし伝える。

 

 ―――あの日が来たのだと。

 

 三姉妹が起きてすぐ、檻の外が騒めく。

 再度、見聞色で辺りを探ると一際大きな覇気を纏った男が近づいてくるのを感じる。その男は、ゆっくりと周りの気配を消しながら進んでいき目の前で止まる。近くで見た男は、前世に漫画で見た姿そのままだった。

 

 檻の前まで来たフィッシャー・タイガーは、そのまま檻を引きちぎり一言声を掛ける。

 

 「あとは自由だ。好きにしろ」

 

 そう言うと踵を返し、他の檻を破壊していく。

 

 

 あまりの気迫に少し放心していたが、すぐに意識を切り替える。ここから先は時間との闘い。1分1秒の遅れが命取りになる世界。すぐに檻の外で意識を失っている警備の懐から鍵を取り三姉妹を開放する。

 

 そこからは、4人で警備を倒しながらレッドポートを目指す。

 今まで、苦しめられてきた地下やマリージョアの町々をこんなにも容易く走り抜けることが出来ることに感動を覚えるとともにこんな簡単に走り抜けられる場所に何年も縛り付けられていたという事実に胸の内からどす黒い悪意が芽生える。

 

 ―――奪われた数年。いつか数万倍にして取り立ててやる。

 

 そんな感情の波にぐちゃぐちゃになりながらも足を動かしているとレッドポートが見えてくる。途中から一緒に走っていた他奴隷たちも見えてきた港に目を輝かせ雄たけびを上げる。

 

 やっと本当の自由が手に入ると思った瞬間。光が横切る。

 

 目の前で、爆発が起こる。

 あまりの衝撃に倒れそうになる身体を抑え、爆心地付近に目を凝らすと原作で見たときよりも若い男の姿が目に入る。

 

 次期海軍大将黄猿「ボルサリーノ」

 自然系悪魔の実の一つである「ピカピカの実」を食べた光人間。身体を光に変化させ、光速での移動を可能とさせる最強の能力者。説明する必要がない程の原作屈指の最強格。

 

 そんな存在が目に映る。

 今の時代、彼の格がどの位置にあるのかは些細な問題。たとえ今の黄猿が覇気を纏えていなくとも関係ない。それほどまでにピカピカの実とは悪魔の実においても格が違う。

 

 状況的に言えば、絶望以外の何物でもないがそんなことは関係無い。もし、この場で迷えば誰かが死ぬと直感的に悟っていた。だからこそ、スッと言葉は出てきた。

 

 「アンタたちは、先に行ってくれ。ここはオレが戦う」

 

 覚悟はすでに出来ている。

 前から次期大将格が出てくる可能性は予想出来ていた。そのうえで残るならオレ一択だということも理解していた。一緒に行動する三姉妹は、原作においてルフィを導く役割を担っている主要人物(キーパーソン)。絶対にこの混乱の中を生きて脱出しないといけない存在。

 

 絶対に生きて脱出させる。三姉妹は、こんな世界貴族・天竜人の時代を終わらせる存在を導く役割を持ってる。ソレをこんな所で途絶えさせたりしない。オレの命に代えても生かす。生まれてから心にあった世界に対する憎悪。こんな世界間違っているという心の叫びが、その思いがオレの原動力になっていた。

 

 そんなオレの覚悟を感じ取ったのか無言で走り抜ける三姉妹。それを見てレーザーを構える黄猿に武装色の覇気を纏った拳で襲い掛かる。

 

 ―――カウンターで顔に拳が飛んでくる。

 

 「最近の若者は威勢が良すぎるよ」

 

 オレの渾身の拳は空を切り、逆に黄猿のカウンターパンチが飛んでくるがギリギリのところで躱す。攻撃は失敗したが、結果は大成功。黄猿の意識が此方に向く。

 

 「武装色の覇気を纏う奴隷なんて、天竜人は怖いねえ」

 

 ―――手から数重にもなる光の弾丸を放つ。

 

 予知能力によって、得た情報を基に飛んでくる位置の把握。手を構えた瞬間に逃げる場所の確保。そして、事前に動きが察知できるよう見聞色の覇気に意識を傾ける。自分が出せる最大限の逃亡術を構えた―――瞬間。

 

 黄猿が此方へ手を向けて数重にもなる光の弾丸を放つ。

 ソレを死に物狂いで避けること数秒。光が収まる。辺り一面が抉れ地形が変わっているなか、全身から血を流しながらもなんとか一命をとりとめていることが出来たオレは再度予知能力を使う。

 

 ―――■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 

 

 黄猿は、気絶した少年を前に驚きを隠せなかった。

 まるで、未来が視えているかのような動き。身体はまだ未発達の少年。それでも覇気を纏い八尺瓊勾玉を避ける姿は、まるで修業中の先生を彷彿とさせる動きだった。見聞色の覇気の究極「未来予知」。ソレをこの少年は死線を潜り抜けながらやってのけた。

 

 あまりにも恐ろしすぎる才能。

 

 「正直、先生の言っていた能力に頼りすぎるなってのは、こういう化物じみたヤツがポッと出てくるからなんだろうねえ。どう思うよォ~フィッシャー・タイガー?」

 

 そう言うと岩陰から大男が現れる。

 

 「そんなのはどうでも良い。ここから引け海兵。もうお前らは負けてんだ」

 

 「だからと言って大人しく引くバカはおらんでしょう、フィッシャー・タイガー」

 

 その言葉を皮切りに聖地マリージョア襲撃事件最大の戦闘が幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





※見聞色による未来予知は、一切出来ません。黄猿さんの勘違いです。

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