個性【ママ】 作:ゴッドマザー
ゴッドマザーの現在の服装はヒーローコスチュームから発想を得て、様々な機能を搭載したハイテクスーツとなっている。
シスター服を主として、ナノテクで出し入れ可能な複腕や、いつでも授乳出来るように胸部の布をケープに変更出来るようにするなど、彼女の個性を最大限活かせるように作り込まれていた。
「べつに胸は出しっぱなしでいいんだけれど」
「「「ぜっっったいダメ!!!(です!)」」」
「……まぁいいわ。実は寒かったし。でもこのサポートアイテムはいらないんじゃない?」
「だぶだぶ(僕が付きっきりで守れたら一番良かったんだけど、
また本人の戦闘能力がゼロな為、それを補う為に生体デバイスを利用して、様々な個性を再現したサポートアイテムが複腕には搭載されている。
当初は強力な個性を与えようとする案もあったが、ドクターが調整した超再生を含め、ゴッドマザーの肉体は個性【ママ】以外の個性全てに激しい拒絶反応を示すアレルギー体質であることが判明したのだ。
強力な個性を持つ人間に希にみられる症状である。器がその個性に特化し過ぎて他を受け入れる余地がないのだ。
仕方なしとその代案として目を付けたのがサポートアイテムであった。
AFOは絶対にママを失ってなるものかと金に糸目をつけず、資産の大半をつぎ込んだ。
色々と伝を使い、とある島の優秀な科学者を弟として受け入れる羽目となったが、そのかいあって出来上がったサポートアイテムはAFOにして唸らせるものとなっていた。
オールマイトやスターなど規格外のヒーローを相手にするには足りないが、プロヒーロー相手には十分通用するだろう。
「だぷ(名付けて、アーマード・ゴッドマザーと言ったところかな?)」
「くっ!そう簡単には行かないか!」
そしてUSJにて。そのスーツの真価は早速とばかりに発揮されていた。
捕縛布でゴッドマザーの拘束を試みた相澤であったが、鎌鼬なような不可視の斬撃でそれらを切り裂かれた。
(個性抹消は間違いなく働いていた。と言うことはあのロボットアームは個性由来の物ではなく、サポートアイテムのようなものか。……厄介だな。あの女ヴィランがヴィラン達の中核であるのは間違いないが、ガードが固すぎる。一瞬の意表を突いたが、もう二度と本人を狙う隙など見せてくれないだろう)
黒霧により生徒達を散り散りに転移させられ、死柄木弔(絶好調)と脳無(対オールマイト用)、そしてゴッドマザーにAFO(赤ん坊)という、最早虐めとも思える絶対絶命な状況に立たされた彼はそれでも冷静に状況を分析する。
(一番警戒するべきなのはあの赤ん坊、間違いなく見た目は詐偽だ。どういう訳か複数の個性を有し、それを的確に使い分けている。……そして、次はあの浮遊系の個性を持つ男か。発動条件は麗日と同じ、触れたものを自由にコントロールするといったところ。抹消し続けていれば脅威ではないが銃を使うのに抵抗が一切なく格闘技にも心得のある実践向きに鍛えられた油断ならない相手。女ヴィランは洗脳系の個性持ち……背後に異形系ヴィランは恐らく護衛役だ。あの二人は今は無視してもいいだろう)
「おい!先生!その木偶棒今動いてなかったろ!!!母さんが怪我したらどうする!!」
「だぶだぶ(ちゃんとサポートアイテムで防げていただろう?今回はこれの性能テストも兼ねているんだ。大丈夫、本当に危なくなったら動くよ)」
「……遊ばれてるな」
だが、それを嫌に思う余裕はない。
相澤はゴッドマザーについて知らなかったが、緑谷が先ほど叫んだ情報からして判断するに、こいつらの目的はオールマイトや雄英の生徒達を洗脳の支配下に置くことだ。
殺しが目的ではないのというのなら、それを利用して救援がくるまでの時間稼ぎをさせてもらう。
「……ハァ、先ずは二人、だ」
その決死の覚悟を笑うように、ヴィランが一人、A組の生徒を抱き上げてゴッドマザーの横へと立った。
「上鳴!耳郎!」
「ハァ。あと一人、個性で黙らせてきた……血液型は分からん……なるべく早く頼む」
「ええ、分かったわ。ステイン、貴方は頑張りやさんね。ありがとう」
複腕で二人を受け取り、耳郎を両手で抱き上げる。
すると耳郎の体は赤ん坊へと姿を変えた。
「なっ!?マズい!!!!」
まだ第一段階。経口摂取が終了するまでは個性の洗脳は発動しない。そして発動してしまったら最後、抹消ではその効果は解除出来ないことを相澤は彼らとの戦闘から悟っていた。
恐らく異形型と同じ扱いになるのだろう。個性【ママ】は最後まで手順を済ませてしまえば解けない個性なのだ。(スターを除く)
だからその前に相澤は抹消で赤ん坊化を解除しようとするも、死柄木弔が空中から瓦礫の山を飛ばして妨害する。
「くっ!?」
「お前のそれ、視界に全体像を収めていることが条件なんだろ?それに、対象は一回につき一人まで。誰を的にするか予め分かってればこれほど対策が容易な個性もない」
それでも瓦礫の回避を諦め自爆覚悟でゴッドマザーに抹消を働かせようとする相澤であったが、
「だぶっ(【危険察知】×【煙幕】……そしてママの近くには魔王がいることも忘れちゃいけないよ)」
ありふれたカスみたいな個性達だけど、こういう時便利だよね。と最後の抵抗を嘲笑れてしまう。
「ほうら。お飲み」
「だっ(……何だろう、何か美味しそう)」
ゴクリと、喉元を甘美なミルクが満たし耳郎の何かが作り替えられる。
「よしよし……でも、ごめんね。次の子も待ってるから」
沸き上がる幸福感。耳郎はそれに身を委ね微睡んでいると、いつの間にか金色の髪をした赤ん坊が母のおっぱいを飲んでいた。
「だぶぶ(ずるい。そこは私の場所なのに……でも、どうしてだろう。なんか悪い気はしないって言うか……)」
「ほぅら、弟よ。これから仲良くしましょうね」
「だー(弟か……そっか。うん。お母さんがそういうなら仲良くしないと)」
手を握り、仲睦まじく、眠りにつく二人。
「ふふふっ、可愛い、可愛い……私の子供たち。今日はもっと、増えるのよね。こんなに嬉しいことはないわ」
生徒を守れなかった。その絶望に追い討ちをかけるように次なる犠牲者がゴッドマザーの元へと運ばれる。
それからオールマイトが到着し、ヴィラン連合がゴッドマザーの負傷を理由に撤退するまでの約10分間。
雄英は一人の犠牲者も出すことはなかった。けれど、相澤を含めてA組の半数以上をゴッドマザーの子供にされるという敗北を期することになる。
「え?何かされたかですか?……いえ、奴らに何か目的があったことは確かですが、洗脳のような個性を持ったヴィランは確認出来ませんでした」
警察からの事情聴取に応じた相澤は答える。
つまりは真実は、家族だけの秘密というわけだ。
世間は雄英のセキュリティを問題視しつつ、ヒーローの卵達の完全勝利だと称賛の嵐であった。
「痛い……痛いわ……まさか、そんなスター以外にもあんな子がいるなんて」
「おい!医者を早く呼べ!」
「ママ!ママ!お願い死なないで!」
「畜生!なんでママの個性が効かなかったんだ!」
そして青紫色の両腕を抱えるマザーを囲い、ヴィラン連合達は涙していた。
「だぶぅ……(緑谷出久……いや、OFA。どこまで僕の心を掻き乱す!!!)」
あと少しでA組全員を子供に出来るところだったのだ。
だが、緑谷出久を赤ん坊にしようとゴッドマザーが触れた時、彼女の腕の骨は不可思議な力で粉々に砕かれてしまった。
『キャァァァ!!!!』
『(何だ、今の……OFAがあの人の個性を弾き返した?)』
ゴッドマザーの怪我。それは順調に推し進めていたヴィラン連合に大きな混乱を招き、遅れて登場したオールマイトによってものの見事に鎮圧されてしまった。
「…………クソが、クソが!クソが!クソがぁぁぁ!!!!母さんをこんな目に合わせて生きていられると思うなよ!緑谷出久!!!」
結果だけ見れば痛み分けになるのだろう。しかしそれから雄英は圧倒的に不利な状況を強いられることになる。