「んぅ……あれ……? パーティー終わってる……」
大好きな家族や大切な友達と一緒に楽しく過ごしていた、お泊まり会終了前日開催の弾幕ごっこイベントと、その後のパーティー。
途中、レミリアから勧められた赤ワインを試し飲みしてからも、大丈夫そうと確認した上で何杯か飲んだためか僕は酔っぱらい、いつの間にか眠っていたらしい。
部屋のベッドで目を覚ましたら時計が朝の4時を指していて、僕の両隣には寝間着に着替えていたサニーとスターが、すやすやと幸せそうな寝顔をしながら眠っている。
お酒を飲み、酔って眠った次の日は体調が悪くなったり、酔ってからあったことの記憶が朧気になるか、綺麗さっぱりなくなることがあると、サニーや霊夢から聞いていた。
だけど、僕の場合は大泣きした途中からの記憶はないものの、パーティーであったことの記憶は大体残っていたし、体調も多少疲れが残ってるかなという程度で、ほぼいつも通りと言ってもいい。
(えへへ。サニー、スター、ルナ。大好きだよ)
赤ワインの力、正確にはお酒全般にある力のお陰か、酔ってからは無性にサニーたちや魔理沙に甘えたくなっていた。
沸き上がる衝動の赴くままに行動していた僕を、サニーたちや魔理沙は快く受け入れて思う存分甘えさせてくれたし、逆に甘やかしてくれもしたのである。
しかも、チルノ一行や霊夢たちも、そんな僕のことを思ってか色々と話しかけてくれたり、沢山甘やかしてくれたのだ。
酔いも覚め、気分も落ち着いた今でも思い出せば、心がポカポカ暖かくなる感覚を味わえる程に幸せだったと、断言しても過言ではない。もう1度、赤ワインを飲んでみようかなと考えてしまうくらいには。
とはいえ、赤ワインを含めたお酒を日常生活でも飲み、酔おうとまでは思わないし、例え飲んだとしても酔った感覚を覚えたら、それ以上は飲もうとは考えていない。
お酒を飲んでいる時にした、サニーたちと交わした固い約束があるのだから、当然のことであろう。
(……寝れない。起きようかな)
時間がかなり早かったのもあり、もっと寝ていようかと思ったけど、僕は思いの外沢山の時間眠っていたらしい。目を瞑っても一向に寝れる感じがしなかった。
こんな時間だし、起きてても吸血鬼さんであるレミリアとかフラン以外は基本的に殆んど寝ているから、会話する相手もいない。
レミリアとフランだって僕を含め、誰にも邪魔をされない自分の一時も欲しいだろうし、1人で紅魔館の散歩をするのは平気だけどむなしいだけだから、この部屋でのんびりサニーたちが起きるまで待とう。
「ふぁぁ……あっ。メノ、おはよう。起きてたのね」
そう考えながら布団から出て、寝癖が爆発していた髪の毛を整えたり、綺麗な普段着に着替えたりなど身だしなみを整えていた時、いつの間にか起きていたらしい寝ぼけ眼のサニーに、声をかけられた。
できるだけ早く、それでいて静かに済ませようとはしていたけど、身だしなみを整えるために部屋の明かりをつけ、物音をたてていたせいで起こしてしまったのかもしれない。
「サニー、起こしちゃった? ごめんね」
「ううん、大丈夫よ。今日はたまたま目を覚ましただけだもの。その程度なら問題ないわ」
「そう? 良かった……ねえ、昨日の弾幕ごっことパーティー、楽しかった?」
「昨日の? そりゃもう、凄く楽しかったわ! それに、お酒で酔って私たちに積極的に甘えてくるメノ、とっても可愛かったしね!」
「か、可愛いって……もうっ!」
「ふふっ、嬉しくて照れてるメノも可愛い! だから、もっと言ってあげる!」
ただ、僕の行動が微塵も関係していた訳ではなかった上に、昨日の楽しく幸せな気分が未だに残っていたようで、サニーは寝起きながら非常にご機嫌で活気に溢れていた。
(良い夢、見れたからかな)
勿論、僕も昨日の楽しく幸せな気分が残っていたし、それどころかサニーが僕のことを可愛いと言って褒めてくれたりもしたから、もう心どころか身体が本当にポカポカしてきたような気がしている。
「ふぁぁ……サニー、ちょっとうるさい。メノも声、もう少しだけ小さくして欲しかった」
「んぅぅ……まあ、昨日が楽しかったもんねー。理解はするけど、ルナと同じで抑えては欲しかったわ」
「「あっ」」
なんてやり取りをしていたからだろう。結構うるさかったのか、目を覚ましたルナとスターが、ちょっぴり不満げな表情をしながら話しかけてきた。
そりゃまあ、誰だって気持ち良く眠っていたところにうるさくされれば不満に思うのも当たり前だし、ルナもスターも僕には優しいけど、何をしても許される訳では当然ない。
「ルナ、スター……ごめんね。せっかく気持ち良く寝てたのに……」
「2人とも、悪いのは大半が私よ! メノは半ば巻き込まれたようなものだし、そんなに言わないであげて!」
「まあ、ちょっとしたお願いみたいなものだし、謝ってもらえたからもう気にしてない」
「右に同じくだよー。そもそも、大して怒っちゃいないしねー」
「ほっ……それなら安心ね!」
「うん。それよりも、メノ。お酒初めてだったけど、体調はどう?」
「ちょっと疲れが残ってる気がするくらい。殆んどいつも通りだよ、ルナ」
「そっか、それならひと安心。飲み方とかもあるだろうけど、お酒耐性高めだったみたい」
「だねー。今度、特別な時にメノも一緒に安心して飲めるわ」
でも、不満に思っていてもやっぱりルナもスターも優しいから、こうやってしっかり心から謝れば笑って許してくれたし、二言目には僕の体調までこうして心配してくれる。
サニーだって、確かに自分も声は大きかったかもだけど、それを止めなかったどころか一緒になって喜んでた僕も同じくらい悪いのに、殆んどが自分のせいだと庇ってくれたりもした。
だからこそ僕は、サニーたちのために無理なく自発的に、家事でも何でもやってあげたくなる。
3人の性格上あり得ない話にはなるけれど、1人お出かけや家でのお留守番をお願いされたり、人里へのお出かけに付き合ってと頼まれたりしても、緊張と恐怖感を押し殺していくらでも聞き入れたりもできる。
何故ならば、サニーたちは僕が望んでいた幸せを無償でくれた、大好きな家族なのだから。
「でさ。もう皆、何だかんだで目も覚めちゃったことだし、朝のお庭散歩でもしない?」
寝間着から普段着に着替えたり、寝癖整えや歯磨きなど身だしなみを整えながら他愛もない会話を楽しんでいる最中、ルナがおもむろにクローゼットから自分の防寒着を取り出すと、こんな提案を投げ掛けてきた。
ようやく、春の訪れも感じられるようになってはきたとはいえ、今の時刻は朝の4時半。外はまだ暗くて寒いし、季節の変わり目だから雪だって降ってもおかしくない時期でもある。
僕1人であれば、決して外に出ようとすら考えない時間帯だと言えよう。
「お庭散歩? まあ、今日がお泊まり会最後……帰る日な訳だし、良いんじゃないかしら? 寒いのは嫌だけどね! スターとメノはどう?」
「確かに、気分転換には良さそうだし、私も行くわ」
「皆が行くなら僕も行くよ。えへへ、大好きな家族とお散歩だぁ……!」
しかし、サニーたちがお庭散歩に行くと決めて、なおかつ僕も一緒にと誘っているのであれば、行かない選択肢などない。体調がほぼいつも通りなら尚更だ。
紅魔館の整備された綺麗なお庭を歩き回って見ながら、大好きなサニーたちと他愛もない話をしたり、楽しくはしゃいだり、他にも色々とやって過ごす。
外が多少暗くて寒い程度、行こうかどうか迷う原因の1つにすら僕にとってはなり得ない。
「よし! そうと決まれば、早速準備して出発よ! どうせなら日の出も見たいし!」
ということで、満場一致で行くと決まった後、全員寝起きとは思えないくらいの高いテンションの中素早く準備を済ませ、僕たちは部屋を出発していく。
(相変わらず、紅魔館の妖精さんたちは朝早いなぁ)
普通朝の4時半といったら、それこそ僕がまだ行ったことのない人里でさえ、寝静まっている時間帯のはず。
しかし、紅魔館に関しては流石に昼間の方が賑やかさに軍配が上がるものの、それでも多くのメイド妖精さんが夜も忙しなく駆け回り、仕事をこなしたり談笑したりしながら過ごしている。
現に今も、廊下を思うがままに飛び回ったり駆け回ったりしながら、楽しく遊んでいるメイド妖精さんを何人も見かけているのだ。
仕事をこなした後なのか、サボって遊んでいるのかの判断はつかないけども。
「あら、サニーたちじゃないの。こんな朝早くに4人で外出するなんて珍しい、というか初めてよね。どうかしたのかしら?」
「うーん……4人の格好はともかく、荷物も全くなく手ぶらなので、もしかしたら庭に出て散歩でもするつもりだったのかもしれませんよ」
綺麗さっぱり片付いているエントランスを抜け、正面玄関口の扉を開けて出ようとしたその瞬間に勝手に開くと、目の前にモコモコの服を着たレミリアと美鈴が居た。
どうやら、ついさっきまで2人で庭に居て、楽しい一時を過ごしていたらしい。
美鈴に肩車をされているレミリアや、レミリアを肩車している美鈴の表情がとても柔らかいのを見れば、すぐに分かることである。
「その通り! 何か目覚めちゃったし、気分転換にルナの提案で4人でお散歩しようとしてたのよ!」
「なるほどね……せっかくだし、私と美鈴も一緒して良いかしら?」
「レミリアお嬢様。サニーちゃんたちは4人水入らずの一時を過ごしたいのかと思いますし、ここは――」
「気分転換にさえなれば、別に構わないわ! 3人も、それで良いでしょ?」
「うん、私もそれで構わない」
「私も同じかなー。賑やかになりそうだしね」
「大好きな家族に大切な友達とのお散歩、僕は大歓迎だよ」
「決まりね! じゃあ、早速行きましょう! 美鈴、時間は取れる?」
「はい。皆さんが良ければ、私は大丈夫です」
すると、視線が合うなりすぐに始まったサニーとレミリアの話し合いにより、お庭散歩を僕たち4人にレミリアと美鈴の2人を加えた6人で行うと決まった。
予想外の時間に見かけた僕たちの姿を見て、気分が変わったのだろう。
何にせよ、サニーとスターとルナも乗り気だし、お庭散歩に加わるのが大切な友達の2人であれば、僕としても大歓迎である。
「メノウちゃん。昨日のパーティーの時、レミリアお嬢様に聞かれたことを覚えていますか?」
「しっかり覚えてるよ、美鈴。僕が、いつから雇われメイドとして働いてくれるのかって話だよね」
「はい。その、本当に大丈夫ですか……? お泊まり会が終わった次の日からでも良いって」
「うん! だって、
そうして始まったお庭散歩だったのだけど、噴水広場の掃除をしているメイド妖精さんの側を通り過ぎた時、ふと美鈴からこんなことを、心配そうに聞かれた。
確かに、昨日のパーティーでは僕もレミリアもお互いに酔っていて、判断力も理性も低下していた。普段なら踏みとどまるようなことでも、あの時なら迷いなく踏み越える可能性も高くなる。
(えへへ……美鈴、僕は大丈夫。ありがと)
しかし、完全に酔いも覚めて正常な判断力が戻った今でも、僕はその時に下した判断は間違いないと、レミリアの気が変わりでもしない限り、僕の方から変えるつもりは一切ないと断言しよう。
どちらかといえば、一緒に働くことになっているスターの方が僕は心配だ。
スターに相談もせず、レミリアに聞かれて即決したくせに何様かと言われそうだし、実際自分でもそう思う。
「僕のことよりも、スターは大丈夫なの? もしあれなら自分で言ったことだし、しばらく1人で頑張れるよ。何せ、紅魔館だから」
「問題ないわ。1人お出かけをさせて何かあるくらいなら明日から働く程度、なんてことないもんねー」
「……そっか。ごめんね、スター。そして、ありがと」
「いつになっても大丈夫な心構えをしてたから、気にしなくて良いのに。相変わらずの心配性だね、メノは」
「私としても、2人が良いなら何もいうことはないわ!」
「右に同じく。当事者が良ければ問題なし」
ただまあ、相変わらずのスターの底無しともいえるレベルの優しさと、元から持っていた心構えのお陰で、僕の心配は数秒で杞憂に終わった訳だけど。
(……レミリア、任せて)
そして、僕にお願いを持ちかけてきた当のレミリアも、何か申し訳なさそうに「酔った勢いでお願いしてごめんなさい」と言い、しおらしくなっていたけど、全くそうなる必要などない。
美鈴にも言ったけど、大切な友達から頼りにされることに対して、僕はかなりの嬉しさと幸せを感じている。
任される仕事だって、いつも家でやってる家事を超大規模にしたみたいなものだし、そもそも僕1人でやるのではない。スターは勿論のこと、二大妖精長や咲夜を含めた館のメイドさんたちとも協力し、行うのだ。
あくまでも、負担の大きい二大妖精長や咲夜の助けになり、負担を減らして休日を増やしても館が回るようになるための役割を、僕やスターは求められているのだから。
「ところで、レミリア。もし、僕とかスターが体調悪くなって行けないってなったら、どう伝えたら良いの?」
「明日来てくれた時に、伝書鳩ならぬ伝書
「蝙蝠……餌って、もしかして血?」
「いいえ、少しばかりの
「そうなんだ。結構簡単で良かった」
で、その後は万が一体調が悪くなって行けない時の対処法とか、働く上で絶対に守らなければならない、もしくは守って欲しい決まり事など、質問を色々と投げ掛けておく。
とはいったけど、お互いに身体か精神かを問わず酷く傷つけ合うような喧嘩、もしくはイタズラをしないこと。
仕事途中で体調が悪くなった時は我慢せず、すぐに申し出ること。
体調不良を防止するため、仕事は適度な休憩を取りながら行うこと。
この3つを守ってくれさえすれば、後はレミリアが柔軟に対応していくらしい。
(僕、信頼されてるんだ……えへへっ、嬉しいなぁ……!)
仕事の出来不出来には全く言及していないのを見るに、僕やスターは任せた仕事を完璧にこなしてくれるだろうと、全幅の信頼をレミリアから寄せられているということだ。
その分、期待に答えられるよう頑張らなきゃとの、強めのプレッシャーは感じているけれど、友達のためならむしろ望むところである。
「メノウ、スター。紅魔館のために、本当にありがとう」
「えへへ、どういたしまして! レミリアの役に立てるなら、僕も嬉しい!」
「頼りにされるって良いものだねー。まあ、私なりに頑張るよー」
「ふふっ、メノもスターも頑張ってね! 私もルナも応援してるわ!」
「レミリア。スターにもそうだけど、メノには特に気を配ってあげて」
「ええ、勿論よルナ。少なくとも、人里へのお使いとか友達じゃない来客への対応は、やらせるつもりは全くないわよ」
「なら、まあ安心かな」
心の中でそんな決意を固めながら、僕とスターは目の前に差し出されたレミリアの手を握り、明日から頑張るとの意思を伝えた。
きっと、長く働くにつれて何かトラブルに巻き込まれたりとかは、するだろう。
しかし、優しい友達ばかりが居る紅魔館で、大好きな家族であるスターと一緒に働くのであれば、確実に乗り越えることはできる。
だから、その辺の心配は全然していないし、これからもする必要が出てくることはなさそうだ。
「メノ! 何ぼーっとしてるの? 早く行きましょ!」
「あ、うん! サニー、今行くよ!」
そんなことを思いながら、今はとにかくお庭散歩を楽しもうと、これ以上余計なことを考えるのは止めることにした。
今話をもちまして、この小説は完結とさせていただきます。ここまで見てくれたり、評価・感想をくださった全ての読者の方々、本当にありがとうございました。
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