睡眠欲 近江彼方
爽やかな朝。僕は何か
窮屈さを覚えて目を覚ました。
今だ夢の世界から抜け切れていない頭と寝ぼけ眼を擦りながら起き上がると、隣から寝息が聞こえた。
はて、どういう事だろう。
僕には兄弟姉妹もいないし、近所で仲のいいお姉さんもいない。
この家には僕一人しかいないはずなのだ。
完璧に回転しきれていない頭を一生懸命動かして、僕は普通なら夜に起こるはずの時間帯を間違えた怪奇現象を考える。これからの時代は朝活、朝シャン、朝幽霊なのだろうか。幽霊にも働き方改革の波が訪れたのか。
爽やかな朝の怪奇現象を僕はお届けされるのだろうか。
しかもその幽霊には完全に手と足が実体化されていて、蛇が獲物を捕食するかの如く体に巻き付かれている。
僕は、大きく息を吐く。
オーケー、そろそろ現実を見よう。いくらおかしいからって現実逃避のために起きた瞬間に驚きですぐに目を覚ましたのに嘘をついてはいけない。
「なんで彼方さんが僕の家で寝てるの……」
僕の通っている虹ヶ咲学園の一個上の先輩であり、同じ部活動の先輩でもある近江彼方さん。
僕の家にいるはずのない彼女が僕と同じ布団で、僕がいるはずなのに安心しきった笑みで幸せそうに寝ている。
抜けだそうにも案外力が強くてなかなかに抜けない。
起こそうと餅の様なほっぺをつんつんと突いてみるも、寝言を漏らすばかりで起きそうにもない。
「彼方さーん、すいませーん、起きてください」
だめだから呼びかけてみる。
すると目を擦りながらやっとのことで目を覚ました。
「おはよー」
ぐっと伸びをする彼方さん。
「何で布団に入ってるんですか、何で家に入ってるんですか、どうやって入ったんですか答えて下さい」
「え〜、そんなに彼方ちゃん、答えられないよ〜。言うなればそこに布団があったから、かな?」
「意味分かんないんですけど」
「それじゃ、彼方ちゃんは、まだ寝たいのでもう一度すやぴしまーす」
宣誓をする様に言ってそのまままた寝てしまった。
……僕の布団で。
僕も現実逃避の為もう一度布団で眠りたかったが、彼方さんがいると認識してしまった以上、もう一度眠れる自信がなかった。
だから仕方なく僕は朝ごはんを作るべく台所に行くことにした。
食欲 エマ・ウェルデ
起きるとテーブルには埋め尽くさんばかりに大量の朝ごはんが置かれていた。多分強豪校の野球部の遠征の時くらいの量だろう。よく分からないけれど。
「あ、おはよ~」
緑の色のエプロンをして、器用にフライパンを振りながら僕に話しかけてきたエマさん。
本当になんで急に僕の家に入れてしかも調理器具の場所までわかって料理出来ているのだろうか。
僕が困惑していると、エマさんは急に頬を膨らませた。
「ちゃんと朝ごはんは食べないと行けないんだよ! 一日頑張る源なんだからね!」
テーブルを見るとスーパーの買い物袋があり、10秒チャージできるものやインスタントラーメンなどが軒並み撤去されていた。
冷蔵庫には果物や野菜、肉、魚が所狭しと並んでいた。
「今ちょっと色々ありすぎて食欲が…………」
テーブルの上にある料理の量や今までの出来事の事で既にお腹一杯になってしまった。
なぜ、僕の家に鍵も無いのに入れているのか、僕の食生活が分かっているのか。色々言いたい事がある。
「ちゃんと食べる事! あ、私が食べさせてあげよう〜」
ムスッと頬を膨らませて、エマさんはエプロンを外した。
そして箸を取り、ホカホカのご飯を僕に差し出した。
「僕は子供じゃないんですからひとりで食べれますよ」
「んん、ダメ。私が食べさせてあげるから♪」
「弟達にもやってたから得意だよ〜」と検討違いな事を言い始めたエマさん。何故僕は朝から年上の同じ部活の人にご飯を食べさせられる事になっているのか。訳が分からなかった。
色欲 朝香(・えっち・)果林
ご飯を全部あーんで食べるという奇特な経験をした僕は逃げるように部屋を出た。
自分の部屋は彼方さんがいるし、和室へ逃げ込んだ。
「あら?」
「あ」
勢いよく扉を開けるとそこには着替え途中の果林さんがいた。
見てません、見てません。下着なんて見てません。黒ってちょっとえっちだよね!
「ごめんなさい!」
僕は扉を閉めようとすると果林さんはそれを止めてくる
「私は構わないわよ? 貴方もオトコノコだものね。気になってしまうのは当然だわ」
「ごめんなさい、悪気はないんです。すぐ部屋から出ますから!」
「いいじゃない、別に。折角だしこれも脱いであげましょうか?」
「いいですから早く服を着てください!」
僕は目をつぶっているので、よく分からないけれど果林さんはさっき下着しか来ていなかった。なので録な事では無いはず。
「え!? 果林ちゃんを食べるって〜? うんうん、それもまた食欲だよね」
「それは肉欲って言うんですよ、エマさん」
というか何処から来たのエマさん。
「あら、私は目の前の猛獣に貪り食われてしまうのね、きゃー、とっても怖いわ」
「しませんから! そんなこと!」
言葉は全て棒読みであり、仕草や声からして全く怖がっているようには見えない。
もしかして、僕は男として見られていないのか、それとも間接的にヘタレと言われているのか。
まあ、確かにしないけど。
果林さんは手で自分の足先から胸までなぞるように辿っていく。
まるでストリップショーを見ている様な気持ちだった。
「私とイイコトしない?」
蠱惑的な笑みを僕に向けながら言った。
「本当にこの人達やだ──ー!」
部屋に僕の叫び声が響き渡った。
それこそ頬を千切ろうとする勢いでつねるけど、残念ながら私はアンパンマンじゃないのでただ痛い。
せめて夢であって欲しいと僕はただ願うのだった……
果林さんは年下とのエロ関連の事の時は意外と赤面するかめちゃリードしてくれるかの二択だと思う。
でも私は年下の時は頑張ってリードしようとしてくるんだけど、途中で大事な所で恥ずかしがって結局相手がリードする派です(第三の選択肢)
年上、または同い年は多分顔を真っ赤にしながら必死に色仕掛けしてそう。 皆は何派?