〜北の国のヒゲ親父〜
雪深い北陸の地もやっと解放の時を迎えた。
さてさて、もはや生き証人も居らぬ遥か昔より、ここ加賀国に君臨した一向一揆の糞坊主共を取りこぼし無く黄泉へと追い落としてくれよう。
神棚に祭った御影に向かいパン!パン!と、こ気味よく柏手を打つと、推しグッズで満たされた隠し部屋での瞑想を終える。
さてさて、誰にも見つかる前に片付けんとな。
そうして壁に飾った「長島スーパー愛ちゃんランド 催し予定表」をしげしげと眺める。
思えば天使様に心奪わてより、十余年ひた隠しに隠してきた。
こんな有り様を幼女趣味の犬畜生に知られ、もしも仲間認定されたなら恥ずかしゅうて生きておれぬ。
いそいそとお宝グッズを仕舞いつつ天使様との出会いを振り返っていた。
あれは信忠様・・・当時は奇妙様の七五三の祝いの席のこと。
威圧感溢れる重臣のジジイ供(ワシは違うぞ)に囲まれ主賓の緊張感から食も進まず、げっそりと疲れ果てていた時だった。
その様を心配なされた天使様が「これ美味しいよ」と手製の菓子を振る舞われた。
当時は珍しい強烈な甘味と食欲を刺激する香りに奇妙様はにっこり元気を取り戻されたが・・・
「良き香りに、なんぞ見かけぬ品じゃな。どれ一つ・・・!うみゃぁ!」
新し物好きの大殿に見つかれば然もありなん。
「ほほぅ、確かにこれは珍しい・・・うまい!」
ひとりふたりとはじまって気が付けばジジイ供が群がってあっという間に食い尽くす・・・奇妙様は再び涙目じゃぁ。
「しんじらんない!?、勝手に許しもなく食べ尽くすとか礼儀も道徳もないの!!!」
まぁ幼い奇妙様の為の物がこの顛末、さすがの天使様も我慢ならず大爆発、大殿への罵詈雑言は尽き無かった。
幼い我が子より奪い取った形となっている事に気がついた大殿は黙して語らず、重臣のジジイ供が庇おうとしても一緒に食い散らかした故同罪とこき下ろす。
見かねた犬が止めようと「いい加減にせよ、殿に無礼じゃ」と拳骨を落とそうとしたところ・・・舞の如き華麗な身のこなしにてカウンター1発!犬は沈んだ。
ひとりが先陣を切れば、場を鎮める為と勝三郎も吾郎左も続くが続々と地にふせる。
再び意識を取り戻したワシが見上げた光景は地に伏した屍の中で心の底から大殿が奇妙様へ謝罪する姿であったのだ。
そこから大人気ない真似をしてしまったワシらは、詫びとして天使様のお願いをひとり一つかなえる事となった。
幼女の事、綺麗なベベにカンザシでも揃えるかな?っと思っていたワシらの予想は的外れ。
「美味しい物を安くいっぱい食べたいの!」
そうしてある者は、笹の葉を幾重にも重ねた櫓へ海水をかけて乾かす塩作りを頼まれ、ある者はクヌギ林できのこの栽培を頼まれと。
当初はえらい面倒を頼まれたぁ、と苦い顔を晒す者が多かったが翌年に領地からの上がりが倍増すると誰も頭が上がらん存在となっておったのだ。
成長なされた今は、女神か菩薩の如き美しさであるが、ワシはあの日の御姿こそ目に焼き付いておる。
そうして昔を懐かしく思い出しておるとドタドタと騒がしい足音が大きゅうなる。
「オヤジ殿!何処じゃ!一大事じゃ!」
これは犬じゃな、誠に騒がしいが近習が止めるであろう、急ぎ片付けるか。
「前田様!お待ちくだされぇ・・・」
「ここかぁ!」
ばぁん!とばかりに近習の制止を振り切って扉を蹴破る犬畜生は、神棚の御影をいちべつするとワシと目を合わせて良い笑顔のサムズアップ・・・仲間認定しやがったな(怒
「死ぃぃぃぃねぇぇぇ!」
〜fin〜