ビジュがめっちゃ好みの三角さんで書きました
ホラー映画を見せることでしか夏要素がないものですが
私、
こっちは魔女の...あれ?違うな。
まぁいいか。
「という訳で!」
「来たぜカラオケ!!」
高校生の夏休みと言えば、海だのプールだのと思い浮かぶと思うが。
行動力の権化たる陽キャ共がキラキラしたSNSにあげるためのネタでしかない、そんな場所には行きたくない。
というか、なんで外で遊んでんだろうな、そういう人間って。
んで、そう考える俺たちは、電気代を気にせず冷房の直浴びをしながら歌ってます。
カラオケっていいわ、最高だな。
「お前sumimi歌えたんだな?なんか意外だわ」
「そうか?最近流行ってるからって、無理矢理聞かせたのはお前だろ?」
友人と二人カラオケ、これこそ夏休みの真骨頂。
家にいるより楽しくて、外に出て遊ぶほどの労力もいらない。
まさに最強で無敵の遊び場。
「それは否定しないけどよ、一回で覚えるもんか?」
「一回聞いたらハマっちゃってさ、最近これしか聞いてない」
近々俺の誕生日ということも相まって、友人の全驕りで今日の娯楽を決行している。
最高だ。
「でもちょっとおもしろいな、まなパート全滅なの」
「いやぁ...ライブ映像とか収録とか聞いても全然覚えらんなくてさ」
「分かった。お前
「いやそんなんじゃ...そうなんかな...」
という訳で現在、今話題のユニット、「sumimi」の楽曲を歌唱し終わったところだ。
「そうじゃないと説明つかないだろー?お前が初華パートだけ覚える訳とか!」
「...じゃあ、そうなんじゃないかな」
で、推しが無事にバレたわけなんだけど。
...まぁ、厳密には推しじゃないというか、なんというか。
まぁ、非常に言いづらいんですけど。
「ただいま」
「あっ、おかえり」
「...なんでいるんですかね」
...幼馴染だから、推しと言うにはちょっと恥ずかしいというか。
まぁ、そんな感じです。
俺の家で自分の家のようにふるまう彼女こそ、「sumimi」のギター、
幼馴染、というか、家族ぐるみで仲がいいことは誰にも話してない。
話のネタにはなるだろうけど、そんなことのために話したくない。
「今日はどこ行ってたの?お友達主催の誕生日会、なんて言ってたけど」
「特に変わらずカラオケだよ。高校生の夏休みの暇つぶしなんて、カラオケとゲームしかないんだから」
「それは偏見じゃない?友達にもいるでしょ、海とか行ってる人」
「あんなキラキラしたところ、俺には無理だって。初華、わかってるでしょ」
同い年で、仲良くできるのは初華しかいない。
しかし、何か3つぐらい離れてるように見える。
「確かにそんなイメージはないけど、行っててもおかしくはないよね」
「おかしくはないけど、俺は行かないぞ。めんどくさいし」
「そんな事言って...あ、じゃあそうだ。明日暇?」
初華からの問いにスマホを弄りながら考える。
「えー...明日は何もない。なに?」
「お出かけ、付き合ってよ」
「まなさんと行けばいいじゃん」
「sumimi二人で出かけたら、人だかりできるけど?」
確かにそうだ。
今をときめくアイドルユニットが遊びに行ったらそうなるか。
数秒前の自分を殴り飛ばすと、初華は「それに」とつけてから、
「弟分の意見も聞きたいの」
「同い年だろうが」
そう返したけど、そんな風に見えないのはなんでだろう。
まぁ、だから。
「...分かったよ」
と返す。
「ふふ、じゃあまた明日。10時ぐらいに駅前でいい?」
「了解。お忍びデートってわけだ」
からかうように言ってみるけど、初華はそんなこと気にしてないようで。
逆に、
「デート...そうだね。じゃあ、おしゃれしてきてね?」
と返された。
「無茶言うな」
とは言ったけど、頑張るだけ頑張ってみよう。
「...最悪」
時間に余裕がなかった?違う。
服の種類がなかった?違う。
では、どうして?
「...なんで手癖で選んだんだよ...!」
クローゼットを開けて、何の気なしに選んで、着て、履いた。
そして、駅前に着いて、ふとガラスに映る自分の姿を見て絶望した。
「こんなん、カラスやんか...」
全身黒コーデ、陰キャ代表みたいな格好してるじゃん。
そりゃ最悪なんて呟きも出るもんだよ。
「顔合わせらんねぇ...帰るか...」
そう呟いて来た道に一歩踏み出した瞬間に、後ろから肩を掴まれて、声が聞こえる。
「黒くてわかりやすいね。探すの苦労しなかったな」
「...おしゃれできないと思って『おしゃれして来い』って言ったのか?」
「...いいや?」
「だったら顔逸らすな」
正直な性格だから、嘘は分かりやすい。
というより、俺を揶揄ってる時の嘘は分かりやすいのしか吐かない。
「で、どこ行くの?」
駅前集合とは聞いたけど、行き先は聞いてない。
「あれ、言わなかったっけ?」
「言ってないね」
俺がそう言うと、「違うよ、行き先じゃなくて」と言って。
「言ったよね。お忍びデートだって」
と、悪戯っぽく微笑んだ。
「...それが行き先言わない理由にはならないぞ」
「聞こえなーい」
俺の精一杯のカウンターも、ひらりと躱した。
デートプランも初華の頭の中にあるだろうし、今回の俺は完全に連れ回され要因のようだ。
着いたのはデパート、小1時間ぐらい買い物に付き合わされて、今は休憩スペースで休憩中。
「ふふ、いっぱい買っちゃったな」
「荷物持ちがいてよかったな...」
両手に紙袋の山。
人気アイドルの荷物持ちなんて、ファンからしたらご褒美だろうか?
先に言うぞ、そんなことはない。
一人っ子の「姉が欲しい」と同じ感じだ、伝われ。
「にしても、そんなに物欲あったのか」
「まぁ、たまには。バーッと開放したいとき、あるでしょ?」
「まああるけど」
...なんかこんなにこにこな初華、久々に見た気がする。
何というか、作り笑いじゃない笑顔、というか。
楽しんでる笑顔、というか。
「ん、懐斗?」
「んぇ、なに?」
「んーん。私の顔、そんなにじっと見て、なんかついてる?」
「目と鼻と口」
あぶね、めっちゃ見つめてた。
「ふふ、はぐらかしたな?」
「そんなんじゃない...あとの予定は?」
「あれ、まだ付き合ってくれるんだ?」
「...言わなきゃよかったよ」
言わなきゃ帰れたかもしれなかったのに、チャンスを逃した。
「そんな事言わないでよ。アイドルとお忍びデート、ドキドキしない?」
「俺はファンに刺されないか冷や冷やしてるよ」
まして荷物持ちなんてしてるしな。
こんなのバレたら早急にファンが飛んできて俺の心臓にダイレクトアタックだよ。
次回、懐斗死すじゃないんだよ、なりたくもねえ。
「じゃ、人の目がないところ、行こっか」
「頼んだ」
「それが自分の家とはならんやろ...」
俺大丈夫?
これから夜道気を付けるべきだなこりゃ。
「さ、入って入って!荷物はそこ置いちゃっていいから」
「お邪魔しま...あれ、誰もいないのか?」
「うん。夫婦で旅行。私は仕事あるからって断った」
「もったいねえな」
アイドルユニットがどういう形式で休みを取れるのかは知らないが、今日はたまたまだったのだろうか。
「今日の休み?たまたまだよ。お盆休みはあるけど、7月からずっと休みなしはさすがにきついでしょってことで」
「で、そんな貴重な休みに俺とお出かけとか、よかったのか?」
帰りがけに買ったスポドリを呷りながら聞くと、初華はきょとんとして俺を見る。
「懐斗は、楽しくなかった?」
「いや楽しかったけど。家でのんびりするとかさ」
「それは今からするから」
「今から?」
初華はテレビの電源を付ける。
入力切替でビデオにすると、そこに映るのは明らかホラー系の映画。
「ええと...これ見るってこと?」
「うん。懐斗、怖いのだめ?」
「ダメ、じゃないけど...一人にならなきゃ、平気」
「じゃあ、一緒に見ようね。あ、その前にお風呂入ろっか」
今日は涼しめとはいえ夏の湿度はバカにならない。
一旦汗を流した方がいいだろうと考えていると、
「一緒に入る?」
と何か企んでる顔で言われた。
「ガキじゃあるまいし。それに、一応俺も男なんだけど?」
「小っちゃい頃は一緒に入ったのに」
「それはちっちゃい頃だからだ...帰るぞ?」
「どうせならこっちに着替え持ってきちゃいなよ。お泊りしない?」
まぁ、別に帰ってもすることが無ければ、夏休み中だし帰る必要もないか。
「分かった、じゃあ着替え持ってくる」
「了解。じゃあ、先に私入ってるね。覗かないでよ?」
「俺が戻ってくる頃には上がってるだろ」
そう言って、俺は着替えと寝間着を取りに帰った。
俺が戻ってきたとき、初華は既に髪まで乾かし終えていた。
さっとシャワーを浴びて、髪も軽く乾かして着替える。
リビングに戻ると、初華がソファをポンポンとして、座るように催促してくる。
なので、ソファにちょっとだけ距離を開けて、並んで座る。
「じゃ、再生するね」
始まりは意外と静かだった。
もっとこう、世界がピンチみたいなとこから始まると思ってたけど。
「静か、なんだな」
「ふふ、こっからだよ」
BGMが不吉なものへと変わっていく。
主人公がどんどんと奥に進むにつれ、カメラが近づく。
ふと、主人公が振り返ると、そこに。
「ふーっ」
「うわっ!?」
初華にいたずらされて飛び上がった。
しかし映像上に変化はない。
特に化け物とかが出てくるわけじゃないのかと、安堵した主人公が進む道に戻ろうとした瞬間。
『ヴァアアアアア!!』
「っ...!」
「ふふっ、今度は耐えたね?」
「来るってわかってればね...!」
ホラーの鉄板ともいえる手法だ。
振り返った先に何かがいるか、振り返って、戻ろうとした時に何かがいるか。
分かってれば驚かない。
まぁ、音量でビビったけど。
「懐斗、やっぱり怖いのだめなんだね?」
「いや、そんな、ことは」
手が震えはじめた。
武者震いでは絶対にない。
と、震えている手に初華の手が重なる。
「大丈夫。私がいるよ」
「...ぅ、ん」
手をつないだおかげで距離は自然と縮まり、初華の体温を感じる。
意外と冷たいな、エアコンのせいか?なんて考えている間に、映画は最終局面へと向かっていく。
「さぁ、最後だよ」
「へぇ...」
最後、主人公が世界を元に戻す部分で、無数のゾンビに襲われるシーン。
足や腰にまとわりつくゾンビを見て、少し寒気がする。
「っ...」
「...ちょっと気持ち悪いね」
自分で一回見たんじゃなかったのかというツッコミは飲み込む。
そして、ホラー映画のラストは決まっている。
『ガァァァァァァァァ!!』
ラスボス級がいれば、それが飛び掛かってくるのは十八番だろう。
そして、それが目の前で消えて、何事もなかったかのようになる。
「...はぁ」
「懐斗、やっぱりホラーダメなんだね」
「映画にはビビらなかったよ。いたずらで一番ビビった」
「じゃあ今度、一緒にお化け屋敷行こうね」
「それは無理だ、俺が死ぬ」
いやマジで。
3Dは怖いどころじゃなくて消える。
とりあえず、何かが消える。
「冗談だよ。知ってるってば」
「今のは冗談に聞こえなかったぞ...」
俺を揶揄うときの笑顔は、やっぱり本心のように見える。
sumimiの時とは違う、何も靄がない笑顔。
まぁ、ビジネス笑顔じゃないって考えれば、話は早いかな。
「なぁに?見つめられたら照れちゃうよ」
「...いや、リフレッシュになったならそれでよかったよ」
「目聡いね、バレた?」
「何年一緒に居ると思ってんだ」
実際3,4年ぐらいだけど。
それでもまぁ、ちょっとした感情・表情の変化は分かる。
「別に深刻なのはないよ?ただちょっと、疲れたなーってだけ」
「そうかよ。俺と出かけてすっきりしたか?」
「うん。泊ってくれるならもっと回復しちゃうね」
「過剰回復は逆に毒だからな」
初華が楽しけりゃそれでもいいか、なんて思いながら。
俺たちは一夜を明かした。