彼は思った。
やはり俺が労働力を搾取されるのは間違っている。
八幡は卒業後、手に職がある方が良いという周りの奨めでハローワークに行った。
久し振りに材木座に会ったりしたが、互いに愚痴りあってストゼロ呑んで道端で吐いたくらいのことしかしなかった。
それもそれで友情といえた。
八幡は無事一社にひっかかり、就職が決まった。
県下シェアNo.1のオナホ製作工場勤務だった。
八幡の売りは、本人の怠惰以外に問題が特に無いことだ。
八幡は容姿も戦闘力も高くない。
そしてそれを自覚しているから、無謀なことはしない。
他人の女を寝取って訴えられたり、暴力沙汰で捕まったりとは無縁だった。
それを一目で見抜いた人事担当者は八幡を採用したのだ。
雄として終わってる人間でも、それを自覚しているのなら、雄として自信がある者特有の問題は起こさない。
雄としては価値がない事こそ、八幡の価値だった。
真面目が売りとは、つまりそういう意味だ。
八幡はそこで五年働いた。
しかし、特に昇給もなく、最低賃金を維持していた。
能力が低い自覚があることだけが売りの人間に、昇給も昇進も無駄である。
会社の上層部や人事はそう考えていたし、八幡もそれくらいは理解していた。
だが、チャラチャラしているが咄嗟の判断と行動が機敏な後輩が昇進して、八幡の直属の上司になった時、八幡は普通にタメ語で話し掛けられるようになった。
八幡がそれに対して不満な態度を出すようになった結果、その後輩に呼び出されて勤務態度に関する激烈な説教を受けた。
八幡はもう工場に行きたくなくなりバックレた。
無断欠勤が理由なので、退職金も微妙だった。
八幡は次の仕事を探したが、中々見付からなかった。
八幡にはオナホを作る事しか分からなかった。
なので、ネット上で投資を募り、個人制作のオナホを売ることにした。
八幡は童貞だった。
本物の女の中など知らぬ。
故に悩んだ。
風俗に何度も通う金は無い。
ナンパなんて全然成功する顔ではない。
だから八幡は、実際の女の中など調べもせずに、とにかく自分が気持ち良くなれるオナホを作った。
握り拳一つ分もない大きさの八幡サイズに合わせたそれは、同じ様な男にはさぞウケると思ったが、そうではなかった。
オナホを買うような非モテは、そもそも女の中など知らない。
そして彼等は日頃、彼等でも手が届く対象に向けて精を放っている。
そう!! 彼等は値段とパッケージのアニメキャラのイラストでオナホを選んているのだ。
材木座からそれを教えて貰わなければ、八幡はゲームオーバーだった。
材木座がAIで生成したパッケージをアップすると、途端に売れ行きが跳ね上がり、材木座がSNSでステマを始めたところ、徐々に人気が出始め、作成者の顔として小町の写真を使ったところ、人気が爆発した。
八幡は、二号店は出していないもののそこそこ売れている居酒屋の店長くらいの収入が入り始めた。
地域のお祭りの
八幡はもう30代になっていたし、元の顔もアレなので、今更女側から求められる恋愛結婚は望めないが、良い服を着て良い車に乗る個人事業主ともなれば、キャバ嬢をアフターに誘っても断られない。
聞いたこともない地元アイドルを祭りに呼び込むのに、協賛金が嵩んだりとか、端的に言えば地域のヒモにされたが、舐められるのは慣れている。
それでも八幡は不満顔を隠すのが下手だったが、不満なクセに断れない雄としての弱さは、彼に支出を強要する生物的強者からすれば、それはそれで見ていて面白いものだった。
そんな八幡だが、キャバクラに行くとチヤホヤされた。
葉山と雪乃ご結婚して子供も出来たが、別に羨ましくはない。
材木座が海老名と結婚して子供も出来たが(子供の父親は戸部)、別に羨ましくはない。
風俗に行けば、やりたいことがやれる。
今こそが八幡の人生の絶頂である。
八幡は、漸く幸せになれたのだ。
後は落ちるだけ?
ヒント:年商≠年収