鬼滅の刃 とある一剣士の物語 作:鬼滅ニワカ侍Part2
高評価をしてくださった、アクルカさん、ありがとうございます!
嬉しかったのでもう1話投稿します!
「──────そうか。柳がそう言うなら仕方ないね。無理強いはあまりに危険だ。期間を置いて、また別の機会にしようか」
「いいんですか?」
「うん。柳は鬼の居るところに案内さえすれば必ずや他の上弦も斬ってくれるはずだ。
「……お館様。以前にも言いましたが、鬼どころか人すら斬る奴なんかに協力していいんですか。非公認とはいえ、俺達にも矜恃はある。とてもじゃないが、俺はあんな奴に手を貸したいとは思えない」
産屋敷邸にて、当主の耀哉は報告をしてくれた鎹鴉の頭を撫でると、いつもの柔和な微笑みを絶やすことなく残念そうに言った。上弦の鬼、それも弐の単独撃破に関して聞きたいこと、そしてお礼を言いたくて産屋敷邸まで来てくれと鎹鴉を通して頼んだのだが、にべも無く断られてしまった。
曰く、辿り着くまで時間が掛かりすぎる上に面倒。それに何故態々鬼を殺した程度のことで報告しなければならないのか。私は協力してやっているが下に就いた覚えはない。図に乗るな。だ、そうだ。
もしこれでもう一度招集を行った場合、今後2度と来ることはなく、面倒な奴等だという烙印を押されて協力関係を破棄され、見つけ次第鬼殺隊の剣士にすら手を上げる可能性もある。耀哉の未来を見るとまで言われる先見の明も、そう出ている。柳を上手く使う方法は簡単。鬼の場所に案内し、戦いの邪魔を極力しないだけ。助太刀も何も要らない。ただそれだけでいい。
しかし、そもそもとして人斬りであり、殺人鬼であり、冷酷な面しか見せていない柳と協力関係を結ぶこと自体良く思っていない者も多い。特に今耀哉と話している『音柱』
鬼をこの世から消すために毎夜戦い続けている鬼殺隊なのに、人も斬る柳。ましてや初めて会った時に尊敬する耀哉に無礼な口を叩き、これまで戦い死んでいった隊士達を侮辱するような発言をした人物だ。友好的にとはいかないだろう。人を殺す奴なんかに手を貸したくない。そんな思いが少なくとも一定数は居るのは事実。しかし、柳は類い稀なる実績を持っていた。
「柳はね、変化の波紋なんだ。波紋は大きく、他にも影響を及ぼす。現に『柱』も柳の上弦の鬼撃破の報せを受けてより厳しい鍛練に勤しんでいると聞くよ」
「それは……アイツにばかりやらせるわけには……」
「そうだね。でも、結局はそれも変化だ。行冥が言っていたよ、自分も含めて現『柱』でも柳には力でも実績でも勝てないって。鬼を斃す傍らで柳に勝つため研鑽を積む。良い傾向だ。『柱』が頑張るならその下の者達だって影響されて強く在ろうとする。戦力の強化になっているんだ。意識の向上にもね。何も、悪いことばかりじゃないよ」
「ですが……」
「それでも意見があるなら、意見を言える立場になりなさい。確かに柳は人を斬っているが、今まで誰も為し得なかった単独での上弦の撃破を熟した。位があっても実績が無いのにその発言は、柳への単なる妬みと捉えかねないよ」
「……………失礼しました。精進致します」
「厳しいことを言ってごめんね。けど、みんなには強くなって、死なず生き残って欲しいんだ」
危険人物であることに変わりはないが、居るだけで影響力の大きい人物というのが柳だ。今では上弦の鬼を斬ったことで、協力しているだけの奴に負けていられないという考えの元、より鍛練に身を費やす『柱』が出ているのも事実。実力の高さなら『柱』1とも言われる悲鳴嶼が、誰も柳には勝てないと言ったのも大きい。
鬼を殺すために鬼殺隊に入ったのに、鬼殺隊でもない奴に負けているのは鬼殺隊の名折れもいいところだ。故に『柱』だろうが一般隊士だろうが鍛練を行い強くなろうとする。強くなれば鬼にも勝てるようになり、生存率も上がる。別に悪いことばかりではない。
耀哉はやはり、柳と協力関係を築いて正解だと思った。それに今、『柱』の中で柳に対する忌避感を拭うためにある計画を立てている最中だ。それまでは各々に鍛練に集中してもらおうと思い、耀哉は微笑みながら黙っているのだった。
「──────姉さん聞いた!?柳さん、私が鬼殺について行きましょうかって言ったら『鬼の頸を斬れず、毒でも未だ殺せない奴を連れてどうする。お守りでもしていろと言うつもりか?寝言は寝て言うものだ』ですって!手伝える事があったら手伝おうと思ったのに!人の善意を無駄にしてぇ……っ!」
「まあまあしのぶ。柳さんが好き好んで他人を連れて回らない人だって知ってるでしょ?そんな目くじら立てないで、ほら笑って?お姉ちゃん、しのぶの笑った可愛い顔が見たいな~?」
「はぁ……もう、姉さんったら」
蝶屋敷では、今まで通りの胡蝶姉妹のやりとりが見える。上弦の鬼との戦いでカナエがそのまま死んでしまっていれば永遠に見ることが叶わなかった光景である。その功労者である柳はと言うと、また鬼狩りに出ていた。斬ることが好きなので文句があるはずもないが、しのぶはプリプリと怒っていた。
というのも、柳に命以外の全てを捧げた以上真面目な性格もあって柳の為にできることはやろうと思って鬼殺に同行しようとしたのだが、頸も斬れず、そして鬼を殺す毒すらも完成していないしのぶを連れたら単なるお守りだ。だから余計なことをするなと面と向かって言われたのである。
あまりの言い草に、青筋を浮かべて固まっている内にいつの間にか消えていた柳。しのぶは頬をふっくらと膨らませながら、事の詳細を姉に愚痴を溢していた。聞いてもらわないと1日機嫌を悪くさせてしまいそうだったから。
基本的に柳は鬼を殺すために旅をしている。鬼が居るところに向かうのである意味では宛てが無い。蝶屋敷を発った今、次に姿を現すのはいつになるのか見当がつかない。しのぶはふくれっ面だったが、諦めたのか溜め息を溢しながらカナエに控えめの笑みを見せた。またその内会えるでしょう。そう思いながら。
しかし、意外にもしのぶと柳の再会は実に早いものだった。それは柳が発ってから7日後のこと、鬼を殺す毒の研究の成果を鬼に直接打ち込んで実験をしようと思っていたところ、行きの途中でばったりと出会ったのだ。
「柳さん……?どうしてこんなところに?」
「鬼が近くに居ると情報が入り斬ってきたところだ」
「そういうことですか。では、今からまた別の鬼の元へ?」
「……いや、今日はもういい」
「それでしたら……私のお手伝いをお願いしてもいいですか?もちろん無償でとは言いませんし、鬼を狩ってきたばかりですので無理にとは言いませんが」
「……蝶屋敷で風呂と飯を貰う。それで構わん」
「ふふ。わかりました。それではお願いしますね?」
「あぁ」
内心で、駄目元で誘ったのに意外とあっさり引き受けた事に対して運が良いと思った。いつもの柳ならばそんなもの興味ない。勝手にやっていろぐらいは平気で言ってくるだろうに。今日はそういう気分なのかしら?と思いながら、折角あの柳が手伝ってくれるということなのだ。心強い助っ人をみすみす逃すつもりはない。
鬼が出る時間なので今は夜。周りは暗く、冷えた風が吹く。しのぶは横を歩く柳をチラリと見た。スラリとした体躯。黒い着流し。表情が見づらい三度笠。左腰に差した日輪刀。相変わらずいつもの格好だ。鬼と戦ってきたのに土すら付いていないのを見ると、また目にも留まらぬ速度で寄って頸を斬ったのだろう。
あまりに強すぎる。しかし同時にあまりに他人に興味を抱かない。だから他人を石を蹴るように殺すのだ。その扱いづらさや取っつきにくさからあまり触れないようにという
鎹鴉に教えられて辿り着いた場所は山だ。毒を使う実験なので、鬼は失敗作を投与された場合叫き散らす。そうなると町の中などでやった場合叫び声を聞きつけて警察が来てしまう。なのでできるだけ叫ばれても大丈夫な山などを使っている。しのぶは、鬼を見つけましょうかと言うと、面倒だから此処に居ろと言われた。
何故?と言う前に音や風もなく消えた柳に、なんとなく既視感を覚える。前にもこんなことあったなぁと思っていた矢先に、柳は帰ってきた。右手に鬼の頸を鷲掴みながら。当然のように四肢は斬り落とされ、傷口は灼け焦げている。鬼は痛みに堪えかねて絶叫しているが、喧しいと思った柳の不可視の抜刀を受けて顎から下が斬り落とされた。
「~~~~~ッ!?……ッ!!………ッ!!!!」
「持ってきたぞ」
「あ、はい。ありがとうございます。流石ですね」
「雑魚だからな」
雑魚でもこれは誰にもできませんよ……という言葉をすんでのところで飲み込み、お礼を言って懐から注射器を取り出した。別の容器に入っている毒を入れて泣き叫んでいる(顎がないので叫べてはいないが)鬼の元へ行き、肌に注射器を刺して中身を入れた。すると段々と顔色が悪くなり、嘔吐した。しかし死には至らない。
鬼の驚異的な再生能力によって、注射した毒は体内で分解されて克服された。しかし傷口は未だ焦げたままだ。何で再生できないんだろうと首を傾げつつ、別の容器の毒を注射器の中へ入れてまた投与する。鬼は必死に逃げようと藻掻くが、柳に大人しくしろと言われながら頭を思いきり蹴られ脱力した。
2回目の毒の投与も済ませて経過観察していると、鬼は体を小刻みに震わせて白目を剥き、泡を吹いて絶命した。腕があれば体中を掻き毟っていたのではと思えるような悶え方をした後に動かなくなり、再生能力で毒を克服するよりも先に息絶えたのだ。2人はジッと崩れていく鬼を眺めていると、しのぶは肩を震わせた。
「し、死んだ……?や、柳さんっ!次のっ!次の鬼でもう一度試しましょう!最初の毒の所為かも知れないので、今度は別の鬼でっ!」
「あぁ」
柳としのぶは走って別の場所の鬼の元へ向かった。寂れた場所の中にある寺に住み着く鬼を、また柳が四肢を斬り落として叫ばれるのを防止のために顎も斬り落とした後、しのぶはどこか緊張した面持ちで注射器を取り出して先程と同じ容器に入った毒を入れ、鬼に投与した。
毒を投与された鬼は、全身をこれでもかと痙攣させた。尋常ではない苦しみ方をしたと思ったら目や耳から血を垂れ流して白目を剥き、血の混じった赤い泡を吐き出しながら死んだ。今度は毒を1つしか打ち込んでいない。つまり、鬼を殺す毒が完成した。漸く、自身も自身の力で鬼を殺すことができるのだ。
水の呼吸からの派生で生み出された独自の新しい呼吸……蟲の呼吸は既に完成している。あとは毒さえ完成すれば終わりだった。それが今日果たされた。しのぶはぐっと体を丸めて震えると、感極まった様子で柳に抱きついた。
「やった!やった!!柳さん見ましたか!?鬼が私の作った毒で死にました!完成したんです!鬼を殺す毒を!」
「おい」
「漸く……漸くです!これで私も自分1人で鬼を殺すことができる!もちろん鬼の再生能力によって毒の調合を変えなくちゃいけないのでこれからも大変ですけど、毒が完成しました!」
「そうか。毒で実際に死ぬところを見た以上前例のないもの故興味深かったが、私に抱きつくな鬱陶しい」
「うぐっ……っ!」
身長の割に大きな胸だったり、風呂に入ってから来たのかふんわりと甘い香りがするしのぶだったが、柳は眉を顰めると振り払って抱擁から脱した。無理矢理剥がされたしのぶは
しかししのぶは、あれ……?と思った。嬉しさの勢い余って抱きついてしまったことには申し訳なく思うが、抱きついた時の感触が少し変だった。身長差があるのでしのぶの顔はちょうど柳の胸元辺りになるのだが、男にしては少し柔らかめだったような気がした。想像の中では、悲鳴嶼とは言わずとも、それくらいのカチカチの筋肉はしているものと思っていたばかりに、余計に柔らかく感じた。もちろん普通の人からしたらガッチリしているが。
柳は鍛えられた体をしているが、だからといって怪力無双という訳ではないらしい。確実に硬いだろう上弦の鬼の首も容易く斬ってくるような人なので勘違いしていた。
「柳さん柳さん!今日は毒の製作成功を祝してお祝いするので、晩御飯は豪勢にしますね!柳さんの協力もありがたかったですし、いっぱい食べてください!腕によりをかけて作ります!」
「……そうか」
興奮冷めぬ様子で走り出したしのぶを追いかける柳。毒が完成したのが余程嬉しいようだ。柳の眼にも、透けて見えるしのぶの心臓が激しく動き、興奮している様子が見られる。気配でも歓喜しているのが伝わってくる。
豪勢なものを求めていた訳ではないが、元より晩飯は貰おうと思っていたので文句はない。走って蝶屋敷に帰って行く2人は道すがら、会話をしていた。と言っても柳からではなくて、しのぶからではあるが。
「前から気になっていたんですが、鬼の傷が灼けているのはどうやっているんですか?再生もされていませんし」
「
「多分それです」
「口で言うより見た方が早い」
人目につかないところで立ち止まり、柳は腰に差した日輪刀をゆっくりと引き抜いた。『柱』すらも見たことがない柳の持つ日輪刀は漆黒で、吸い込まれるような造形美だった。ただ、これだけならば普通の日輪刀と何ら変わらない。灼刀とはどういうものなのかと見学しているしのぶに、眼を疑う光景が入ってきた。
鍔の根元の方からゆっくりと漆黒の刀身が赫くなっていったのだ。それも離れていても熱が伝わってくる。冷えた夜だからか奥にある景色が歪んで見えて陽炎になっていた。暗い夜には目立つ、灼熱を纏って赫くなる日輪刀。こんな現象見たことがない。そして聞いたこともない。斬った傷口が灼けていた理由がこれで判明した。
だが少しだけ疑問を抱く。もしかしたら柳の持つ日輪刀が特別性なのではないか。その考えを見抜いてのことか、柳はお前の日輪刀を貸せと言ってしのぶの腰から柄を掴んで引き抜いた。手に持って眺めていると、やはりしのぶの日輪刀も赫くなり、灼熱を纏う。特別性だとかは関係無く、日輪刀ならば何でも可能らしい。
「……興味深いです。どの日輪刀でも可能ということは、誰でもできる可能性があるということですよね?どうやっているんですか?」
「教えたところで
「じゃあできそうな人は誰ですか?」
「ふぅむ……あの大柄の男の『柱』の名は何と言ったか……盲目の奴だ」
「盲目……悲鳴嶼さんですか?」
「そうだ。悲鳴嶼だ。彼奴ならばできてもおかしくはあるまい。“
「……“痣”?すぐ死ぬ?ごめんなさい柳さん。聞いてばかりで。けれど鬼殺隊にとって有力な情報なんです。教えてください」
「言ったところでできる奴なんぞ悲鳴嶼以外に居ないだろうが……そんな事よりも腹が減った」
「あ……ご、ごめんなさい。話に夢中になってました!それなら急いで帰りましょう!きっと姉さん達がお風呂の準備もしてくれている筈ですので。全部終わったら、聞かせてもらえますか……?」
「その時の気分による」
では、是非ともその気分にさせてみせよう。柳が持つ情報というのは、これからの鬼殺隊にとって凄まじく有力な情報に間違いない。仮に柳が使う灼刀を真似ることができたとすれば、必ずや鬼殺の戦いで大いに役立つことだろう。
鬼殺隊全体の戦力増強になるかも知れない情報なら教えて欲しい。だが相手は気難しい柳。今日は何故か簡単に助っ人を引き受けてくれたので、今日はそういう気分なのだと仮定して仕掛けるならば今日しかない。毒の開発の成功した興奮と、柳に灼刀を教えてもらうという使命感に燃えているしのぶと、つまらなそうに溜め息を吐く柳は、早速蝶屋敷へと帰って行った。
柳一心
溜め息を少し吐くようになった。鬼を斬ってもつまらなそうで、鎹鴉はもしかして体調不良ッ!?とビックリしたが、そういう訳ではないらしい。
鬼殺隊でも知らないことを知っている。しかもそれをポロッと口にするので聞き逃し厳禁。何故知っているのかはまだ判らない。
別に教えてやってもいいが、できないのが判りきっているのに態々教える意味が見当たらないので、教えて欲しいならできる可能性がある者が居た方がいい。例えば悲鳴嶼。
胡蝶しのぶ
初めて鬼を殺す毒を作ったちょっとすごい人。
柳がポロッと口にしたり、見せてくれた灼刀に多大な興味を持ち、鬼殺隊の将来的に必要な技術だと確信しているため、盛大におもてなしして教えてもらおうとしている。
恐らく、鬼殺隊の中でも1番柳に関わりのある人。でも本人からの好感度は他の人達と殆ど変わらない。毒を調合できるのか……やるじゃないか程度の認識。十中八九目の前で死んでも悲しまないし、死にかけても別に助けない。
痣
柳の言動からして、何か重要な言葉らしいのだが詳細は不明。