鬼滅の刃 とある一剣士の物語 作:鬼滅ニワカ侍Part2
久しぶりの投稿となります。
鬼殺隊の共通認識として、鬼というのは鬼舞辻無惨の細胞を入れられることにより変質してしまった人間のことを言う。はるか昔から鬼になった人間は元に戻せない。そんな方法は存在せず、鬼となった者は人を食わねばならない。
鬼になれば殺すしかない。何故なら人間を食うから。当然のようで悲しい現実。だがある兄妹には今までにないことが起こった。炭売りをしている長男の竈門炭治郎が出かけている間に無惨がやって来て、留守番をしていた炭治郎を除く家族全員を殺してしまった。
しかもその内の1人である妹の禰豆子は鬼に変質してしまうという地獄のよう光景。炭治郎は紆余曲折を経て、鬼でありながら人を食わない鬼の妹、禰豆子を連れて育手の元を訪れ、修行を積んで鬼殺隊が隊員として認めるための最終選抜の試験に挑んだ。
結果を言うと、炭治郎は最終選抜を生き抜くことができ、1人の鬼殺隊として隊員に加わることができた。人を襲う鬼を狩りながら、妹の禰豆子を元に戻すために奔走する毎日。そしてある日、那田蜘蛛山へ鬼を狩りに向かった時、十二鬼月の下弦の鬼と出会ったのだ。
友人であり仲間となった嘴平伊之助と我妻善逸等と共に鬼達と戦い、途中『柱』の手を借りる形で那田蜘蛛山での一件は終わった。しかしこの一件で他の隊員達に妹であり、鬼でもある禰豆子の事がバレてしまい、『柱』達が集まる柱合会議にて隊立違反の沙汰を決めるため、鬼殺隊の本部である産屋敷邸へとやって来ていた。
「な、なんだ……この人たち……うぐっ」
「余計な口を挟むな!誰の前だと思ってんだ!?『柱』の前だぞ!そ、それに……」
竈門炭治郎は激しい戦闘により気を失っていた。その間に本部へ連れて来られ、勝手に動かないように縄で縛られて庭に転がされている。上から押さえつけているのは隠の者であり、隠は内心で『柱』の醸し出す雰囲気に怯えつつ、塀に寄りかかっている黒い着流しに三度笠を被る人物に恐怖していた。
三度笠の向こうから琥珀色の瞳が炭治郎を見て、興味を持つことなく転がっている箱に目線を向ける。炭治郎は知らない人物として認識しているが、『柱』は全員柳のことを知っている。
この場に柳が居るのは、人を食わない稀有な鬼が居ると聞いたからである。見たことも聞いたこともないものには興味を持つ柳らしく、滅多なことでは来る方法がいささか面倒な産屋敷邸には来ない。事実、最後に来たのは2年以上前のことだ。
そんな彼女の元へ、美人な女性が近づいた。柳とは何かと関わることが多い、現『蟲柱』の胡蝶しのぶである。彼女は鬼を殺す毒を開発してから素晴らしい速度で鬼狩りを行い、功績に則り『柱』の位に就任していたのだ。姉妹揃って顔がよく、多くの男性隊員が見惚れる顔立ちなのだが、しのぶは今微笑みを浮かべながら額に青筋を浮かべていた。
「柳さん。久しぶりですね」
「……お前か。久しぶりというほどでもないだろう」
「いえいえ。半年は顔を見ていないので久しぶりで合ってますよ。私的には柳さんの動きから色々学びたいので一緒に鬼狩りに行きましょうと行った次の日に置いてかれて、半年放置されていたので気持ち的には半年以上の感覚なんですが」
「わざわざ数えていたのか。殊勝な心掛けだな。どうせお前程度が私の動きを見たところで真似できまい。いや、そもそも見えんだろう」
「私ももう『柱』なんですが……?」
「それよりその微笑みはどうした。姉の真似か。薄気味悪いぞ。不自然で気色悪い」
「はい怒りました。毒撃ちます」
尊敬する姉のように微笑みはガチギレのいつも通りのしのぶの表情となった。本気で毒を撃ち込もうとしているのか、懐から注射器を取り出したところで、柳が指弾により小石を弾いて注射器の針だけを根本からへし折った。顔を顰めてため息をつくと、しのぶは壊された注射器を懐に戻して、もう一度ため息を吐いてから柳を見た。
「もういいです……もう。それで、柳さんは人を食べないと言われてる炭治郎君の妹さんを見に来た……ということでいいんですよね?」
「あぁ。気になったからな。でなければこんな場所に好き好んで来るか。めんどくさい」
「お館様に失礼ですよ、まったく。これから柱合会議ですから大人しくしててくださいね。くれぐれも引っ掻き回さないようにお願いします」
「さて、それは約束しかねる。見る前に鬼が殺されそうになれば、少し動く」
「少しじゃ済みませんよね……。まあとにかく、いきなり斬るのはナシですよ。それと、柱合会議が終わったら蝶屋敷に来てください。半年顔見てないって姉さんが寂しがっています」
「早く終わって夜まで時間があれば考える」
「わかりました。じゃあ、忘れないでくださいね」
鬼殺隊の中で柳と最も長い時間関わっているしのぶ。彼女は柳に意見をはっきりと口にすることができる。意見を取り入れてくれるかどうかは別として、他の者ならばこうもいかない。話すらまず満足に聞いてくれないだろう。
しのぶの姉のカナエもおっとりした性格故に柳と問題なく喋ることができる数少ない人物なのだが、この場に居ないのでしのぶしか柳に注意できない。流石はしのぶだと、他の『柱』から思われている状況の中で、炭治郎は驚愕していた。相手の精神状態までも匂いとして捉える彼は、柳から恐怖の匂いを感じ取った。
──────あの人、柳って呼ばれてる人はなんなんだ……何でこんなに恐怖の匂いがするんだ!?あの人が恐怖してる匂いじゃない、
炭治郎には柳が異質な存在に映っている。だが彼女ばかりに思考を割いている暇はない。近くに禰豆子の気配がしないからだ。陽が出ているので影の中にしか居られず、今は箱の中にいるだろう。だが肝心の箱がどこにも見当たらない。
隠に押さえつけられながら探していると、柳と話が終わったしのぶから、何故鬼を連れていたのかの説明を求められた。隠から解放され、縄は解かれないまま『柱』達に何が起きて、どうして鬼殺隊となり、こうして鬼狩りに励んでいるのか。過去が明らかになり、それは柳も聞いていた。
炭治郎にとっては大切な家族の話。だが鬼殺隊の『柱』にとっては単なる隊律違反した隊員と鬼の話だ。今まで人間を食ったことがないこと、またこれからも食わないことの証明がされない以上、容認する理由がない。どちらも斬首という意見が殆どの中で、風柱が禰豆子が入った箱を隠から奪い取ってやって来た。
彼も反対派でありながら過激派。箱に日輪刀を刺して禰豆子を傷つける。怒り心頭となった炭治郎に、風柱が不覚をとって頭突きを食らうという一幕があったが、耀哉が現れたことで揉め事は一旦終わりとなった。
「すまないね。炭治郎と禰豆子のことは私が容認していた。そして、このことは君達にも認めてほしいと思っている」
「南無阿弥陀仏……たとえお館様のお考えと言えど、私は承知しかねる」
「俺も派手に反対だ。鬼殺隊として、鬼も鬼を連れた隊員も認められない」
「わ、私はお館様のお考えに全て従います……っ!」
「僕はどちらでもいいです。興味ないし、どうせすぐ忘れるので」
「信用しない信用しない。そもそも鬼は大嫌いだ」
「心より尊敬するお館様であるが、俺には理解できないお考えだ!全力で反対する!」
「鬼を滅殺してこその鬼殺隊……竈門、冨岡の両名の処罰を求めます」
たとえ鬼殺隊トップの容認であろうと、鬼というだけで滅殺の対象となる鬼殺隊では当然の意見。水柱の冨岡としのぶは黙っているものの、それ以外の者たちからはほぼ滅殺の意見が出された。このままではどちらも殺されることだろう。
柳は興味を抱いた妹の方が殺されそうになったら、殺そうとした奴を取り敢えず斬り殺して奪い取り、少し観察してから殺そうと考えていた。考え方によっては柳も殺す側の意見とも言える。
反対意見が大多数の中で、耀哉はある手紙を読ませた。炭治郎に呼吸を教えた育手の鱗滝という者からの手紙だ。その内容は、確かに禰豆子が鬼を食っていないこと。その代わりに傷の回復をするために眠ること。そして、これから先人を食ったら自身と冨岡が自害することを約束するというもの。
当然炭治郎もその時は腹を切る。だがそんな、3人の命が掛けられている状況でも、反対する柱は居る。耀哉は笑みを崩さず、この場に居る全員が息を呑む情報を開示した。なんと、炭治郎は鬼舞辻無惨と遭遇しているというのだ。尻尾すら掴めない鬼舞辻と直接遭遇した。それだけで柱は騒ぐ。柳も聞いていて、炭治郎に目を向けた。
「産屋敷。そこの転がっている小僧が鬼舞辻無惨と遭遇し、追手を放っているというのは事実なんだな?」
「そうだよ。だからこそ、私は初めて鬼舞辻が見せた尻尾を掴んで離したくないんだ。一心はどうかな。君も反対かい?」
「まさか。鬼舞辻無惨が見つかるならば利用しない理由がない。鬼の妹が必要なのだろう。ならば、私はそのガキ共を殺させやしない。せっかく手に入れた撒き餌だ。それでも殺すという結果になるなら仕方ない。
「柳テメェ……ッ!!」
「勝手なことを……ッ!!」
「勝手もなにも竈門炭治郎と竈門禰豆子は私の手の中にある。お前達程度がどうやって私から奪うつもりだ?命が惜しくないなら一歩、前へ。寄って切れば全て事足りる。そちらの方が話が早い」
──────ッ!?俺はいつのまにこの人のところへ!?ま、全く気づかなかった……っ!それに禰豆子も……言動からして、この人が庇ってくれてる……んだよな。この人も『柱』なのか?ダメだ、全然わからない!
炭治郎と禰豆子は瞬きをする一瞬よりも早く柳の足元に転がっていた。音もなく風もない。場面を切り取って貼り付けようにその場にいつの間にか移動していた。察知できた『柱』は存在しない。理外の移動速度である。
そして、柳は上弦の鬼を殺してから、早く鬼舞辻無惨を斬りたいという欲が大きくなっている。そこで利用できる炭治郎と禰豆子を殺させる訳にはいかず、庇っているような状況になった。左手の親指で鯉口を切るその所作だけで柱は全員動けない。一歩前に出れば、頸を斬られるという予感があったからだ。
「一心が反対じゃなくて助かるよ。でもね、1つだけいいかな。禰豆子が人を襲っていないことは手紙からわかった。だから次はこれからも人を襲わないという証明をしたいんだ」
「ふぅん……?まあ、いいか。やってみろ。気配で判るがこの鬼は人間を襲ったことがないぞ。それで2年も何もないなら大したものだ。それに、実際に襲わないところも見てみたい」
そう言って柳は禰豆子が入った箱を宙に投げて風柱の不死川実弥に渡した。なぜ彼かというと、柳は不死川が稀血であることを知っていたからだ。普通の血どころか稀血にも反応しないならばこれから先襲うことはほぼないだろうと考えてのこと。
その予想は当たり、渡された不死川はこれ幸いと産屋敷邸の中に入り禰豆子へ傷つけて血が滴る腕を突きつけた。最初は涎を垂らしていたものの、禰豆子が襲いかかることはなく、そっぽを向いただけで終わった。
証明がされた。みんなの前でしっかりと。このことから不死川が勝手に処罰することはできなくなった。それでも禰豆子のことを快く思わない者が多いのは確か。なので炭治郎はこれから禰豆子が人を襲わないことを証明しつつ、強くなり、鬼殺隊に貢献しなければならない。それが処罰されない唯一の道なのだから。
「じゃあ竈門君達は私の屋敷で預かりますね。かなり負傷していますから。はい!じゃあ隠の方達、連れて行ってください!傷が悪化しないように!あ、それと柳さんも先に蝶屋敷へ行っててください。私は柱合会議がまだありますので、また。まさか忘れたわけじゃないですよねぇ?」
「予想よりも早く終わったからな。蝶屋敷には行く。お前が帰ってくる頃まで居るかはわからんが」
「──────待っててくださいね?」
ビキッ……と、額に青筋を浮かべながら攻撃的な微笑みを浮かべてそう言うしのぶに、音柱は頬を引き攣らせていた。対する柳は足元に転がる炭治郎を隠に持っていかせてその後を追いかける。しのぶには背中越しに適当に手をひらひらと振った。
「──────謝れ!謝れよ!俺たちに謝れ!柱チョー怖えんだかんな!わかってんのか!」
「そうよ!謝りなさいよ!すっごい怖かったんだから!」
「えっ、ご、ごめんなさい……」
「……このガキが鬼舞辻無惨に狙われている……か。まあ何でもいい。奴を斬れる駒ならば何でも」
禰豆子を傷つけた事に怒って不死川に頭突きするために引き返した炭治郎に対して、柱が怖いのに怒らせるようなことをしたことにキレている隠2人。騒がしくわちゃわちゃしながら産屋敷邸を後にする柳は、背負われている炭治郎を三度笠の向こうから眺め、目を細めた。
彼女の眼には何も特別なものは映っていない。確かに一般人よりは鍛えられているが、それだけだ。特別な筋肉を持つわけでもなく、骨格的に普通。そこらの一般的な隊員となんら変わらない。禰豆子の方も他と変わらない。この子供がこれからどう動いて鬼舞辻無惨の元まで辿り着けるかは柳でもわからないが、失望するまでは殺さないでおこうと考えた。
では、炭治郎と禰豆子に失望してしまった場合はどうなるのか。それはもちろん──────何の躊躇いもなく斬ることだろう。
柳一心は恐ろしく冷徹で、非情なまでに全てが平等で無慈悲なのだから。
なのに、その鬼は運が悪いことに──────
「──────ま、待ってください!私は
「血鬼術を私に使おうとしておきながら話を聞いてほしい……と。それで見逃してやるとでも?」
──────その柳一心に出会してしまったのだ。
柳一心
鬼でありながら人を食べないという稀有な存在の竈門禰豆子を見てみたいと思って産屋敷邸へ久しぶりにやってきた。
しのぶやカナエとはまだ繋がりがある。他の柱と比べたらかなり親しい部類。それでも完全に心を開いてくれているという感じではない。
炭治郎と禰豆子の話で反対派の柱が居たら、本当に斬り殺してしまうつもりだった。
胡蝶しのぶ
鬼を殺す毒を開発した天才。本人曰く、ちょっとすごい人。
美人姉妹として有名であるものの、柱ということでナンパなどはされない。姉をナンパしようとすると毒を打たれるので実行する人は居ない。
柳一心と1番接する時間が長い人であり、この2年で少しだけ気安く接することができるくらいの関係になった。それでも半年放置されたりするが。
竈門炭治郎&禰豆子
ある日に鬼にされてしまった妹と、鬼になってしまった妹を人間に戻すために鬼殺を行いながら方法を探している兄。
禰豆子は柳が庇ってくれたことをなんとなくわかっている。炭治郎は柳から香る恐怖されすぎた匂いを感じ取っている。