鬼滅の刃  とある一剣士の物語   作:鬼滅ニワカ侍Part2

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機会がありましたので投稿します。

評価ありがとうございます。励みになりますので嬉しかったです。




第16刃  2匹の鬼

 

 

 

 

「──────ひッ……ぃ……ッ!!!!」

 

 

 

 

 鬼殺隊隊員の1人。我妻善逸(あがつまぜんいつ)は生まれてきて、最も強い恐怖に身を強張らせた。

 

 竈門炭治郎が赴いた鬼殺隊士の最終選別に同じくして立ち向かい、最後まで生き残った隊士の1人である彼は、炭治郎と共に下弦が居る山に入り大健闘を見せたが鬼の毒をもらい蝶屋敷で療養していた。

 

 彼は人並み外れて耳が良く、相手の心音を聴くことすらもできる。故に相手の大方の性格などを把握できる。今日も今日とて鬼から受けた毒を解毒する薬(めちゃくちゃ苦い)を飲むのに駄々をこねていたのだが、蝶屋敷にやって来た1人の人物の音を聴いて恐怖した。

 

 

 

「あ〜!来てくれたのね柳さん!待ってたわよ〜。もぅ、全然来てくれないから首が長くなっちゃうところだったわ。しのぶもちょっと元気なくて──────」

 

「姉さん!余計なこと言わなくていいから!」

 

「適当に休んだらすぐに出る」

 

「あらぁ……じゃあいつものお団子、用意するわね」

 

「あぁ」

 

 

 

 善逸曰く、顔だけで飯食っていける胡蝶姉妹と話している柳を見て、聴いて、恐怖した。柳から聴こえる音は凪いだ水面よりも静かだった。静謐すぎるその音に、もはや人間とは思えない。人と話しているのに何も感じていない。つまりどうでもいいと思っている。いや、それどころかその他すべてがどうでもいいのだろう。

 

 どんな状況であろうと、揺るがない冷静沈着な性格。だが静か過ぎてどんな人物なのか全く掴めない。なんだコレ。初めてだここまで何もわからない人。と思ったところで『柳』という名前に引っ掛かり、黒い着流しと三度笠で思い出した。

 

 鬼殺隊でやってく上で絶対に忘れてはならない人物。隊員ではなく、あくまで協力関係を築いているだけの第三者。その人物は鬼を斬るが、人を大勢斬り殺しているまごうことなき人殺し。鬼殺の邪魔をすれば躊躇いなく斬られるため、居合わせた時は喋りかけることなくその場から去ること。それを言いつけられている。

 

 だが明らかに処されてもおかしくない人物なのだが、実力は随一。既に100年以上滅殺できなかった上弦の鬼、その弐を単独で、それも無傷で殺しているという羅刹。善逸は柳が部屋の前を通り過ぎるまで息をすることすら忘れた。

 

 柳が胡蝶姉妹に連れられて部屋の前を通り過ぎるまで息を潜めて、居なくなると同時に大きく息を吸い込んだ。何もしていないのに殺されるかと思った。死ぬところだった。恐怖で短くなっている手足を震えさせ、背中を丸めて脂汗をかいた。その状態は蝶屋敷で看護をしている神崎アオイが来るまで続いたという。

 

 その後、炭治郎が運ばれて来るのだが、彼には柳という人物には絶対に関わらない方が良いと進言した。なお、炭治郎もなんとなく柳のことは危険な人という認識だが、柱合会議の際には助けてもらったので一言お礼は言いたいと思っていると考えを口にし、善逸はそれを聴いて汚い高音の叫び声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……妙だな」

 

「何がですか?」

 

「これは……言葉にするのが難しい。取り敢えず行ってみるとしよう」

 

 

 

 柳は蝶屋敷で団子とお茶を貰ったら少しだけ縁側で休み、夕方になると出て行った。その際には半年前に一緒に行動しようと約束(一方的だが)したにもかかわらず無視されたことを根に持ってるしのぶが同行した。

 

 今は夜となり暗くなった町を歩いている。2人とも日輪刀を持っているので隠すために箱を蝶屋敷から持ってきて背中に背負っている。柳としのぶは歩いて散策しているのだが、これは鬼が出たという目的地に向かって行く途中のこと。今居る町は通過地点だった。

 

 しかしふと、柳が何かを察知した。広大で精密な気配察知能力に何かが引っ掛かったのだ。柳としてはなんとも言葉にできない状態らしく、珍しいと思いながらしのぶは彼女の後をついていく。

 

 

 

「柳さん。こっちに何かあるんですか?特に変わったものはありませんが……」

 

「微かに血鬼術そのものの気配がする。しかし明確なものではなく、煙に巻かれようとしている感覚だ。他には何も感じないからこそ違和感に気がついたのだが……ここだ」

 

 

 

 柳としのぶがやって来たのは何の変哲も無い塀の前だった。木造のそれは他と何も変わらない。しのぶですら困惑した表情をしている。柳は念の為に足元の小石を一つ拾い、前の塀に向かって投げた。すると小石は塀に当たらず……通り抜けるかのように塀に吸い込まれていった。

 

 

 

「これは……っ!」

 

「──────当たりだ。血鬼術によって他の塀と見分けがつかなくされているが、ここには確かに通路ないしは別の空間がある。行くぞ」

 

「えぇ」

 

 

 

 2人は背中の箱を置いて日輪刀を取り出して腰に差し、同時に一歩踏み出し塀の中へ入っていった。中は思った通り別の空間、いや、本来の景色が広がっている。広々とした庭に大きめの家。そして柳としのぶは中に入った瞬間に鬼の気配に気がついた。

 

 柳の方はより鮮明に相手の心理状況が気配で読める。鬼は2匹。その内の1匹は何も気がついていないが、もう1匹はこのカモフラージュの血鬼術を使用しているためか気がついた様子で慌ただしく、焦燥にかられながらもう1匹の方に向かっている。

 

 しのぶは言葉もなく駆け出した。姉のカナエから譲り受けた蝶の羽のような紋様の羽織をはためかせ、軽やかな動きで素早く移動する。柳はその場から掻き消えて超速度で移動すると地上から数メートルの位置を一度の跳躍で跳び、日輪刀を不可視の速度で抜いて壁を細切れに斬った。

 

 そのまま部屋の中に入ると、着物を着た女の鬼が瞠目して固まっている。とっさに動けなかった。その瞬間は柳にとってあまりにも隙だらけだった。しかし普通の鬼とは違った特異な気配をしているのが引っかかり、一人掛けの机の上に着地した。

 

 そんな柳を見て固まっていた女の鬼は鋭く尖らせた爪で自身の二の腕を引っ掻こうとした。それを見て血鬼術を使用すると察した柳が不可視の居合で両方の腕を灼刀を用い、肘から先だけ斬り落とした。鬼は苦悶の声を上げながら後ろに下がり、腕が焼けて再生できないことにまたも瞠目した。

 

 

 

「──────ま、待ってください!私は珠世(たまよ)といいます!()()()()()に敵対する鬼です!貴方に危害は加えません!どうか話を聞いてください……っ!」

 

「血鬼術を私に使おうとしておきながら話を聞いてほしい……と。それで見逃してやるとでも?」

 

「……っ」

 

 

 

 肉が焼ける臭いがする。柳の灼刀は上弦の弐ですら傷を修復することができない怪我を負わせられる。この鬼の瞳には文字が刻まれていない。つまり十二鬼月ではないということだ。気配からして強い焦りを抱いている。それと驚きだ。まあ普通の反応だなと思いながら見ていると、珠世と名乗った鬼はゆっくりと膝をつき、傷口が焼けた腕を差し出しながら体を前に倒した。

 

 敵対する意思がないという服従を示そうとしているらしい。それを見て、ほう……と口にした途端、気配でもわかっていたがもう一匹の鬼がすぐそこまで来ていた。慌てたように廊下を走り柳と珠世が居る部屋のドアノブを握って勢いよく開けた。

 

 

 

「珠世様っ!……ッ!!貴様ァッ!!!!珠世様から離れ──────」

 

「──────はい。追いつきましたよ」

 

「──────がッ!?」

 

 

 

「……っ!!愈史郎(ゆしろう)……っ!」

 

 

 

 扉を開け放ったのは子供の姿をした鬼だった。だが普通の人間と違い、鬼の見た目は実年齢と比例しない。いつまでも若々しいままの姿をとることができる。若い姿で数百年生きている可能性だってあるわけだ。

 

 そんな愈史郎と呼ばれた鬼は、腕を切り落とされて負傷している珠世を目に収めるとこれ以上ないほど怒りに支配された表情をして柳に飛び掛かろうとした。しかしその背後には追いついたしのぶが居り、跳躍して5度の蹴りを背中に入れた。

 

 突然の攻撃に前から倒れた愈史郎。その後跳躍したしのぶは倒れ込んだ愈史郎の背中に勢いよく降り立ち、日輪刀を抜いていつでも鋒を刺せるように腕を引いた。それを察して愈史郎は暴れることはせず、だが柳のことを殺意に満ちた目で睨みつけている。柳はその視線を受けても一瞥もせず、眼の前に居る珠世だけを見ていた。

 

 

 

「お、お願いします!話を聞いてください!私達は鬼ですが、愈史郎に至っては人を食べたことはありません!人から買い取った血を少量飲むだけで生きていける子なんです!」

 

「ふーん?そうか。私が知る鬼には血すらも一滴も飲まず、寝るだけで体力を回復する鬼が居る。珍しいが居ないわけではない」

 

「……っ。わ、私は()()()()()を殺すことを目的とする鬼です!」

 

「おいッ!珠世様になにかしてみろ!ただじゃがァッ!?」

 

「ただじゃ……なんですか?自分の立場理解してます?いえ、理解していませんよね?柳さんが話をしているので今は待ってますが、話が終わればあなたもあの鬼と一緒に殺します。大丈夫ですよ。あちらの鬼は柳さんが斬るので痛みはありません。あなたは……私の毒で死ぬので苦しいでしょうが関係ありませんよね。所詮は鬼ですから」

 

 

 

 ──────この場を切り抜けるにはどうすれば……禰豆子さんのことは鬼殺隊の方々なら知っているはず。けれど私と繋がりがあることを明かせば確実に炭治郎さんが処罰されてしまう。炭治郎さんと禰豆子さんと繋がりがあることを隠しながら、せめてこの状況を好転させるための方法は……っ!

 

 

 

 珠世はどうすればこの場を回避できるか、頭の中で目まぐるしく思考を回転させながらも、心の中では焦っていた。嗅いだ者を惑わす血鬼術を使用しようとして察知され、傷口を焼く斬撃を受けた。この傷はまるで、数百年前に出会い、鬼舞辻無惨をあと一歩まで追い詰めた剣士に通ずるものがある。

 

 しかし、あの花札の耳飾りをつけた剣士よりもより冷徹な目をしている。殺意等は感じないが、なんとなくわかる。この人には回りくどいやり方など通じないと。もはや隠し事などはせず、すべてを正直に話すしかないと。だがその決意めいた思考に、柳は一刀を入れた。

 

 

 

「なんだ、竈門炭治郎と竈門禰豆子のことは知っているのか」

 

「……ッ!?な、何故そのようなことを……」

 

「寝てさえいれば回復する鬼を知っていると言ったとき、お前の心臓が妙な動きをした。思い至ったときの動きだ。つまり知っている。妹が鬼殺隊で認可されたのはつい最近のこと。兄の方はまだ隊員になったばかり。なのに知っているとなればお前が知り合ったのは最近だろう。先程から示すように鬼舞辻無惨の名を口にしているところから察するに、名を口にして発動する呪いはない。気配からしてお前は相当昔に鬼になっている。これだけわかれば十分だ。お前は最近竈門兄妹と接触し、既知の仲である。それを口にしなかったのは普通の鬼と繋がりがあることがわかれば、今度こそ竈門兄妹が処罰される……なんてことを見込んでのことだろう?」

 

「炭治郎君達ともう接触していた……それは本当ですか?柳さん」

 

「間違いあるまい。それに予想が正しければ、お前が押さえつけている鬼は鬼舞辻無惨によって鬼にされたのではなく、この鬼に鬼へ変えられたのだろう。鬼としての気配が独特だ。それにこの匂い、医学に関する本。竈門炭治郎がお前と接触して生かしている理由……お前、人間を鬼にできるように、鬼を人間にできる方法がある……と言って協力関係を結んでいるのではないか?」

 

 

 

 ──────この人は一体……何者なの?何故ほんの少しの情報でこれほどのっ!それに私の心臓の動きを見た……?一体どうやって……っ!?いえ、今はそんなことよりもこの状況です。彼が言っていることは間違っていない。ならば私はこれに乗じてすべてを包み隠さず話し、ほんの少しでもいい……信頼を得るっ!

 

 

 

「私のこと、これまでのこと、そして鬼舞辻無惨のことを包み隠さず全てお話します。ですのでどうか、殺さないでください」

 

「しのぶ。私は暇つぶしに聞くだけ聞くが、お前はどうする。先に任務先へ向かっていても構わんぞ」

 

「そうですね……私は鬼舞辻無惨以外の鬼が人間を鬼にすることと、鬼を人間にする方法について少し興味を持ったのでそこの鬼の話を聞いてみようと思います」

 

「そうか。では話してもらうとしよう。1つ言っておくが嘘偽りは私には意味がない。それと、そっちの鬼。話を遮って暴れるなよ。私は面倒なのが嫌いなんだ。無駄なことをしたら殺す。お前も、一度でも嘘偽りをついたら殺す。それを踏まえて話してみるといい」

 

 

 

 机から降りた柳は椅子を引いて腰を掛け、足を組んで聞く姿勢を整えた。ただし左手は常に日輪刀の鯉口を切っており、しのぶも愈史郎の上から退いたものの間合いの中に収めつつ、日輪刀は抜刀したままである。

 

 なにか1つでも柳の気に障ることをすれば、理由なく躊躇いなく殺される殺伐とした状況下。珠世は愈史郎を安心させるために一度微笑んでから、喉をこくりと鳴らして額に冷や汗を掻きながら、これまでのことを話し始めた。

 

 

 

 

 

 




我妻善逸

鬼殺隊隊員の1人。竈門炭治郎の同期。那田蜘蛛山での一件で負傷し蝶屋敷で療養していた。そこに柳が立ち寄り、この世に居る人間とは思えない音を聴いて心底怯えた。

柳からの興味はゼロ。何か居ることは気配で知っていたがどうでもよく、一瞥すらもしていない。




柳一心

血鬼術の気配も探れるので愈史郎の血鬼術に気がついた。中の鬼や建物などはわからなかったが、ふんわりと血鬼術の気配がするな……けどあやふやだ。なんだこれは?となっていた。




胡蝶しのぶ

半年前に一緒に行こうと思っていたところ、置いて行かれたので今回は付いていこうとスタンばっていた。結果置いて行かれることなく同行することに成功した。

珠世の言う鬼にする術や人間に戻す術が本当なら凄まじいものだが、命乞いで適当に言っている可能性があるのであまり期待していない。




珠世

女の鬼。愈史郎の血鬼術で身を潜めているところを柳にバレてしまい危機的状況に陥っている。炭治郎と禰豆子と接触していたことは絶対に口にしないようにしようと思っていたところ、心臓の動きでバレてしまった。

下手なことを言ったら殺されることを確信しているので数十年ぶりに焦っている。




愈史郎

珠世至上主義。珠世が傷つけられたので柳のことを殺したいほど憎んでいるが、ギャグだとしても殴ろうものなら殺されるので炭治郎のときのようにはいかない。

下手に動いたらしのぶの毒か柳の斬撃で殺される。

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